このお話は「スパルタの星戦記」のアフターストーリーです。ついでにいうならば「自由と正義のために」「君の名は」「いつまでも君と」などとの一連の連作であるともいえます。単独でお読みいただいてもそれなりにお楽しみいただけるとは思いますが、少なくとも「スパルタの星戦記」は読んでいた方がわかりやすいかとは存じます。

彼らの誤算
by JUNKMAN

またしても2500倍もの巨大な身体を持つ異星人侵略者が地球に現れた。
このたびの侵略者も紺色のセーラー服をきっちり着込んだ女子中学生風だが、黒褐色のセミロングヘアに長い睫毛、ツリ目気味の情熱的な黒い瞳はアジア系のようなラテン入っているような美少女だ。
最近はもはや毎度おなじみとなった巨大JC異星人侵略者に地球防衛軍はお約束通りスクランブルをかけまくりーの雨あられと砲弾を撃ち込みーのと見事な様式美の無駄な抵抗を試みたが、もちろん彼女にかすり傷一つ負わせることもできない。
まあそれも織り込み済みの地球防衛軍はさっさと抵抗をやめてしまって、そして無防備状態になった地球のNeo-Tokyo Cityで彼女は以下のように言い放ったのだ。

「・・・この星はボクがいただいたよ。みんな、命が惜しかったら、大人しく降参して、ボクの支配の下で奴隷になりなよ、くふふふふ♡」

*****

話は少し遡る
・・・
ドデッカ星教育省若手キャリア3人組は有頂天だった。
上層部に提案した新たな教育プログラムが大当たりだったからである。
若くして大仕事に成功したからはもう前途洋洋
黙っていても局長、いや次官だって十分に射程範囲だ。

「・・・ってな具合に油断してちゃダメだよな。」

「そうそう、俺たちの出世を盤石なものにするためにもプロジェクトは粛々と続けようぜ」

「というわけで次の対象者は誰だい?」

「この子かな?」

ジェリカ・ユミ・エルナンデス、14歳
調書の写真で見る限り、黒褐色のナチュラルふわふわセミロングヘア、くりっとしているがツリ目気味の黒い瞳に長い睫毛、ぽったり厚めの唇、うっすら小麦色の肌など、ドデッカ星人にはときどき見かけるアジア系とラテン系のハーフっぽい美少女である

「・・・あの一例目の子、えーと、メリーヌ・ニールセンだったっけ、あの子の同級生らしい」

「ほう」

「写真で見たイメージだけだとなんだか元気そうにも見えるけどな」

「うん、実際についこの前までは弱いもの虐め大好きの意地悪わんぱく少女だったんだそうだ。」

「なーんだ、普通じゃないか」

「ところがこのところ急に元気がなくなってきた」

「ん?」

「ちょうどあのメリーヌ・ニールセンが研修を終えて逞しいお下品傲慢娘になってきた辺りから、まるで彼女と入れ替わるかのように今度はこの子が優しく思いやりのある静かな子になってしまったのだそうだ。」

「それは問題だなあ」

「ちょっと・・・気に掛かるような気もするが」

「でも放置はできないだろ?」

「俺たちの出世もかかってるんだぜ」

「そうだな。じゃ、その子でいくか」

「よし、決まった」

三人は頷きあうと立ち上がってそれぞれの担当の根回しにかかった。
かくしてこのところ急に内気な大人しい子になってしまったドデッカ星人美少女中学生ジェリカちゃん14歳には発達障害を克服するために地球での侵略研修が命じられたのである。

*****

場面はまたしても異星からやってきた巨大女子中学生に侵略されてしまった地球に戻る。
貧相な顔立ちの国連事務総長は余裕綽々の笑みを浮かべながら執務室の椅子にふんぞり返って地球防衛軍長官の報告を聞いた。

「・・・ふん、また巨大女子中学生の侵略かね?連中もこりないねえ」

「・・・」

地球防衛軍長官の表情は心なしか冴えない。
でも事務総長はお構いなしだ。

「それじゃ君、またいつものようにちょちょいと侵略者を捻ってやってくれたまえ。」

「・・・」

長官は苦虫を噛み潰しながら首を捻った。

「どーも今回はちょっとひっかかるんですよね・・・」

「どーゆーことだね君?」

「いや、具体的にどうだということはないのですけれど、どーも、なんというか、その、悪い予感といいますか・・・」

「なーに弱気なことを言っとるんだ。」

事務総長は長官の肩を陽気にぽんぽんと叩く。

「君の実力は十分にわかっているよ。今までにやって来た侵略者はことごとく撃退してきたじゃないか。もっと自信を持ちたまえ。」

「は、はあ・・・」

地球防衛軍長官
幾多の修羅場をくぐり抜けてきた百戦錬磨の剛の者にして戦闘に関してはプロ中のプロ
その磨きに磨き上げられてきた勝負勘が、なぜか今回に関してはどうしても色よい結果を想起させないのだ
・・・
・・・

*****

指導に従ってはじめてその地球という惑星にやって来た日
ジェリカちゃんはその光景を見て思いっきり意地悪そうにほくそ笑んだ。

「・・・くふふ、やっぱ小っさいなあ」

もちろんドデッカ星で予習はしてきたので、この星に棲む原住民が自分たちの1/2500しかない超小型サイズのこびとであることは知識として知っていた
でも百聞は一見に如かず
実物を見てみるとその印象はまるで違う
しゃがみこんで地面に顔を近づけ、もっとよく観察してみた

「・・・くふふふ、どーしようもないどチビどもだね」

地球人ってドデッカ星のアリンコより小さいよ
それでいてボクたちと見た目は同じヒューマノイドって、どーいうこと?
しかも地球ではこの惨めなこびとだけじゃなく、その乗物や、建物も、みーんな超ちびちびのミクロサイズ
それどころか山や川までもすっごく小さくてまるで惑星全体が玩具みたいだよ
・・・
・・・
くふふ
最高じゃん♡
ボクはこの惑星では大きな山も一跨ぎの大巨人だぞ
どーだ、まいったか
言うこときかないとみんな踏み潰しちゃうからね
えっへん
くふふ
気分いいな
・・・
うん
そうだよ
これこれ
この気分を味わうために今まで頑張ってきたんだ♡

「・・・あー、地球人のこびとくん、ボクはドデッカ星からやってきた大巨人の女の子だよ。キミたちってばほんっとに小さいねえ・・・ん?何を驚いてるの?もしかして自分たちがゴミみたいに小さなこびとだって今まで自覚してなかったの?くふふ♡ねえねえ、そんなに小さいのってどんな気持ち?ボクみたいな女の子を足元から遥かに見上げなきゃならないのって、どんな気持ち?ボクみたいな女の子になすすべもなく踏み潰されるかもしれないのって、どんな気持ち?悔しい?やっぱり惨めな気持ちなんでしょ?そうなんでしょ?うん、そうだね、惨めだね、くふふ、いい気味だね♡」

おうおう、慌ててる慌ててる
でっかいボクを見上げてびっくりしてる
すっごい優越感
いい気分だなあ
ま、このちびどもがボクを怖がるのも無理ないけどね
だって巨人がこびとを虐めるのは当たり前だもん
じゃ、さしあたって何人か摘みあげてやろうかな
えーと
あれ?
・・・
結構難しいなあ
キミたち小さすぎてなかなか上手に摘まめないよ
・・・
・・・
・・・
ぴかっ
ぴかっ

「!」

その時はじめて気が付いた
差し出した指に向かって、地面を這っている小さな小さな金属製の乗物がぴかぴか光りながら何かを撃ち出してくる
そういえば周りをぶんぶん飛んでいる小さな羽虫みたいなやつも何か撃ち込んできた
これって
これって
もしかして

「・・・こびと防衛軍の攻撃?」

・・・
・・・

・・・
くふふふふふふ
これが防衛軍なんだ
こんな小っさいのが防衛軍なんだ
これでも攻撃してるつもりなの?
ボクにダメージが与えられるとか思ってるの?
くふふふふふふ
もう笑っちゃうね
ここまで小さいとそれだけでギャグだね
我慢してこの地球に侵略研修に来た甲斐があったよ

「・・・さーて、どーしてやろうかな?」

だって玩具にもならないようなミニミニ軍隊だよ
ボクがぷちっと踏んだだけで全滅しちゃうだろうな♡
そんなことしなくても人差し指一本で致命的大打撃を与えられちゃう自信あるけど
・・・
ダメダメ
できないよそんなこと
もったいない!
すぐに遊べなくなっちゃうじゃない
もっと時間をかけていたぶって、からかって、で、自分たちの惨めさを思い知らせてやらなくちゃ
・・・
じゃあどうすればいいかなあ?
・・・
ジェリカちゃんにはすぐには答が見つけられない
それで「どうしようかなあ?」とにやにや笑いながら突っ立って防衛軍のお手並みを拝見していたのだ。
もちろん地球防衛軍にそのあたりの経緯は理解できない。
そこでとりあえずこの巨大女子中学生に無駄な攻撃を仕掛けてみたが、すぐに全然通用しないことはわかったのでさっさと攻撃を中止してしまったのだ。
・・・
・・・
え?
もうお終い?
・・・
あーあ、とことん使えないちびどもね
もうちょっとこの不毛な攻防戦(笑)を続けてみたかったんだけどなあ
でも、反撃してくれないんじゃしょうがないや
マニュアル通り速やかに征服宣言でもするしかないわね。
というわけでジェリカちゃんは優越感で胸いっぱいになりながらNeo-Tokyo Cityのど真ん中に聳え立って「征服宣言」してみたのだった。

*****

「・・・この星はボクがいただいたよ。みんな、命が惜しかったら、大人しく降参して、ボクの支配の下で奴隷になりなよ、くふふふふ♡」

身長3800 メートル、体重600メガトン(推定)の堂々たる超大巨人が、このような征服宣言をした。
あり得ないほどの巨大さ!!!
もの凄いド迫力!!!
しかも侵略者は自分の巨大な体躯を誇示するように堂々と胸を張って
・・・
・・・
うん
・・・
ほんとうに堂々とふんぞり返って胸を張ってる。
両手を腰に当て大股開いてスカートの中のパンツを足元の地球人たちに豪快に見せつけながら仁王立ち
高層ビルはおろかそこらへんの山だって余裕で踏み潰しちゃえそうな圧倒的巨体に似つかわしい傲慢で威圧的なポーズだ。
・・・
・・・
こんどこそ地球人は彼女の足元にひれ伏して命乞いするしかないのか?
いや、今度もまた地球防衛軍は、地球防衛軍長官は、この巨大な侵略者を撃退してくれるのか?
人々は固唾をのんでその成り行きを見守った。

*****

「・・・これはダメです」

地球防衛軍長官は淡々とした表情で呟いた。
傍らの国連事務総長はぎょっとした表情で振り返る。

「き、君、ダメって、それはどういう意味かね?」

「文字通りです。勝てません。」

「勝てないって、君、今回の異星人の行動パターンは、今までに君が鮮やかに撃退してきた過去の異星人侵略者の行動パターンと全く同じじゃないかっ!」

「確かに一見すると行動パターンは似ています。ですがこの戦いには勝てません。あの雰囲気はダメです。不肖わたくしの勝負勘が限りなく不幸な結果を予想しています。ここは潔く彼女に降伏して奴隷になることを条件に命乞いしましょう。」

長官は顔色一つ変えずにさらりと凄いことを言う。
事務総長はいきり立った。

「き、君は我が惑星の防衛の最高責任者だろう!」

「はい」

「その立場にある者がそんな無責任な発言をするとはどういうことかね?」

「私は軍事を担当するスペシャリストです。勝てない戦いに臨むことを進言する方が無責任と心得ています。もちろん最終的な決定は事務総長の判断にお任せいたしますが、如何いたしましょう?」

「言うまでもない。抗戦だ!」

事務総長は頬を紅潮させて叫んだ。
長官は相変わらず表情を変えない。

「・・・勝てない戦いですが、それでもよろしいですか?」

「勝負を始める前に勝てないと決めつけるのはけしからんよ。勝つんだ。どうしても勝たなければならない戦いがそこにある!」

「いえ、勝てません。」

「今回に限って、君はどうしてそう後ろ向きなんだい?」

「冷静な判断で勝負を予測するのがプロの仕事です。今回は勝てません。もちろんそれを承知で事務総長が戦えと命じられるのならば、私は死を覚悟して勝てない戦いに臨む所存ではあります。」

「・・・いいよ、もう君には頼まん」

「は?」

「はじめから勝てないと決めつけている者が戦ってもロクな結果にはならん。ここは私が出陣する。」

「はあ?」

「だから、私が直接あの巨大異星人を蹴散らしてくれる。まあ見ていたまえ。」

事務総長は鼻息荒く頷いた。

*****

Neo-Tokyo City屈指の繁華街、銀座
そこで勝ち誇って仁王立ちする超巨大女子中学生異星人の足元に、一人の男が颯爽と歩み寄り、手に持ったスピーカーシステムを使って話しかけてきた。

「・・・お前は、この星を侵略し、征服しようというのか?」

我らの国連事務総長である。
地球征服宣言をしたジェリカちゃんは、面倒くさそうに耳元のイヤホンのチューニングを合わせ、この足元の砂粒みたいに小さな地球人に返答した。

「あったりまえでしょ。何度も同じこと言わせないで。この星はもうボクのものなんだから。」

事務総長は深呼吸してから大声で交渉を始めた。

「私はこの惑星の最高責任者である国際連合事務総長だ。お前がこの星を真剣に侵略するつもりなのならば、もう我々は抵抗しないでおいてやらないこともない。」

「何よ偉そうに・・・」

ジェリカちゃんは舌打ちする。

「ボクはまだキミたちが抵抗してくれても構わないよ。つーか、その方がいろいろと愉快なんだけど・・・」

「いやいや、遠慮するな。抵抗はしないでおいてやると言ってるだろう」

事務総長は狼狽しながら辛うじて話を続けた。

「た、ただしだ・・・お前は本当に、わ、我々を征服して支配する覚悟があるのか?」

「はあ?」

ジェリカちゃんは露骨に不機嫌そうに小首を傾げた。

「・・・覚悟も何も、ボクはキミたちを支配する気満々だけど?」

「!」

うーん
どういう風に話を展開させていけば良いのかわからない
えーい、でもここは気合で乗り切るしかないな

「と、ともかくだ、はっきりいってお前にはこの地球を支配しようという覚悟というか、意気込みのようなものが感じられないのだ」

「そう?」

「そ、そもそも何ださっきのあの『征服宣言』は?『征服宣言』とはもっと堂々と背筋を伸ばし大都市の上で大股ひろげて仁王立ちになって高らかに行うものだ。」

「そうしたけど?」

「ん!」

これはジェリカちゃんの言うとおりである。
Neo-Tokyo Cityの真上で両手を腰に当てながら大股開いてふんぞり返り、パンツまる見せでこれ以上ないくらい傲慢な仁王立ちを披露しながら高らかに征服宣言を言い放った。
まさに事務総長が注文つけたその通りのポーズである。
十重二十重に取り囲むNeo-Tokyo Cityの市民たちも皆うんうんと頷いてジェリカちゃんの言い分を支持している。

「なんか文句あるの?」

唇を尖らせて見下ろすジェリカちゃんに向かって腰が引けながらも事務総長は交渉を続けた。

「・・・お、お前は我々地球人にパンツを見せるのが恥ずかしく・・・ないようだな」

これも途中で腰砕けになってしまった事務総長にジェリカちゃんは猛反撃する。

「あったり前じゃん。なんでキミたちみたいなゴミつぶこびとに気を遣う必要あるわけ?つーかキミたちボクのパンツまるまる見上げてるけど、でもちびすぎるからどーせ届きもしないんでしょ?くふふ」

「な・・・ならば脱げ」

「?」

「パンツを見せるくらいで調子に乗るな!こ、この地球を支配する気概があるのなら、そのパンツも脱いでしまえ!!」

「いいけど」

ジェリカちゃんは唇をあひるのように尖らせると、こともなげにパンツをするりと脱ぎ捨てた。

*****

どっさああああああああああああああああああああん
・・・
・・・
ジェリカちゃんが無造作に放り投げたほかほかのパンツはふらふらと銀座の3丁目から4丁目のあたりに落下した。
ごった返すNeo-Tokyo Cityの市民たちはこの予期せぬ巨大JCパンツのご褒美、もとい、来襲に喜び勇み、もとい、慌てふためいた。
その巨大な全体の質量をもろに喰らってしまった三越や松屋のビルは半壊してしまったが、しかし素材自体はふわふわの合成繊維なので下敷きになったところで市民に怪我はない。

「うわあ、くんくん、み、身動きが取れないぞ♪」

「こ、困ったなあ、くんくん♪」

「しようがない、くんくん、しばらくこのまま、くんくん、このJCの匂いを楽し・・・もとい、匂いに耐えてじっとしているしかないな♪」

「そ、そうだな、くんくん、ここは我慢だ♪」

なぜくんくんなのか?なぜ我慢なのに♪なのか?という素朴な疑問を抱いたためかどうかは知らないが、大多数の市民が巨大パンツに監禁された状況をエンジョイしている中、一部の市民は一目散にこの巨大パンツの牢獄から這い出すと、パッと開けた上空を見上げて歓声を上げた

「おおおおおおおおおおおおおおお」

まあ、そりゃあそうだよな
パンツをするりと脱ぎ捨ててポイした後にその場で仁王立ちしてるんだからそりゃあまあ上空にはもの凄くもありがたい光景が広がっているわけですわ、しかもJCの美少女ですぜ
結局パンツの牢獄に留まった市民と這い出した市民は「嗅覚+温もり」を選んだか「視覚」を選んだかというだけのどちらも勝ち組だったのだ。
なーんて思っていたら、なんと這い出した後に回れ右してパンツの山に登り、そのふかふかの布地に身を沈めながら仰向けに寝転ぶことで「嗅覚+温もり」と「視覚」をどちらもお楽しみになる剛の者が出現した。
おおお、大天才!!!
というわけで、大勢の市民が我先にとパンツの山に登ってJCの幸せな匂いに包まれながら壮大なおっぴろげショーを楽しむという凄い展開になってしまった。
最近は巨大女子中学生の侵略にも妙に慣れてしまったためか誠に逞しいNeo-Tokyo City市民である。
一方のジェリカちゃんの方も、足元で地球人のこびとたちが自分の脱ぎ捨てたパンツに群がっていく様子には満更でもなさそうだ。

「くふふ、ボクの脱ぎ捨てたパンツにたかるなんて、キミたちはホントに虫けらなんだね。こびとって、やっぱ人間じゃないんだね。情けないね、くふふふふ」

巨大女子中学生の脱ぎ捨てたパンツに群がりながら、その本人に人間性を否定されるまで罵倒される。
この状況を共にエンジョイする市民とジェリカちゃんはこの段階ではwin-winの関係にあった。
しかし気をよくしたジェリカちゃんは、にやにや笑いながら脱ぎ捨てたパンツを跨いで更に深々と腰を落としたのだ。

「てか、キミたち変態こびとは、ホントはパンツよりボクのまんこが見たいんでしょ?いいよ。見せてあげるよ。ほらほら、こんなにでっかいんだよ♡」

しゃがみ込んだ姿勢のジェリカちゃんは、自分の股間を地面に脱ぎ捨てたパンツに触れるほど近づけて、ご丁寧に二本の指でくっぱーと薄桃色の大陰唇をこじ開けてみせる。
ふかふかパンツに上っていたNeo-Tokyo City市民たちの直近の頭上で14歳のJCがとんでもない拡大率のご開帳である。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお」

銀座のど真ん中でビルを遥かに跨ぎ越しながら下半身もろ出しで豪快なうんち座りを披露する。
ジェリカちゃんは支配者ならではの下品で傲慢な行動に酔いしれていた。

「くふふ、どう?みんなボクのでっかいまんこが見られて嬉しい?あ、もしかしてオナニーしてるんじゃない?くふふ、いいよ。キミたち遠慮なくそのマイクロちんぽをしこしこしなよ。そうだ!じゃ、ボクも一緒に一人えっちしちゃおうかな♡」

ぶちゅ
・・・
Neo-Tokyo City市民たちが見上げる頭上で、侵略者の超巨大美少女は空いていた方の人差し指を自分の膣口に豪快に挿し込んだ。
・・・
ぐじゅ
ぐじゅ
ぐじゅ
・・・
挿し込んだ人差し指を前後左右に動かしながら軽やかにピストン運動させる
普通の指ではない
遠目で見ればほっそりしたまだ子供らしい指なのだが、直近で見るその実態は直径30メートルくらい、長さは200メートルもあろうかいう高層ビルも顔負けの人差し指である
そんな巨大な指がまだ蕾のような膣口に易々と呑み込まれている

「・・・くふふ、どう?真下からでっかい女の子のオナニー見られて嬉しい?ボクはキミたちが見ていると思うといつもより気持ちいいよ♡」

ぐじゅ
ぐじゅ
ぐじゅ
ぐじゅ
ぐじゅ
はあ
ぐじゅ
はあ
ぐじゅ
はあ
ぐじゅ
はあ
ぐじゅ
はあ
ぐじゅ
・・・
・・・
だんだん荒い吐息が混じり始めると共に、挿入された指の脇からぽたり、ぽたりと淫汁が滲み出してきた

「・・・はあ、はあ、はあ、どう?みんな楽しんでる?・・・はあ、はあ、ボクは気持ちイイよ、はあ、はあ・・・もう、びちょびちょに濡れてきちゃったよ、はあ、はあ・・・いま、えっち汁落としてあげるから、キミたちも匂い嗅いでいいよ、はあ、はあ・・・きっと臭いよ」

ぐじゅ
はあ
ぽた
ぐじゅ
はあ
ぽた
ぐじゅ
はあ
ぽた
ぐじゅ
はあ
ぽた
ぐじゅ

あああ
ああああああああああ
・・・
・・・
・・・
どしゃああああああああああああん
どしゃああああああああああああん
どしゃああああああああああああん
どしゃああああああああああああん
・・・
よがり声を上げるジェリカちゃんの指の脇から滲み落ちてくる淫汁のしずくは、しかし地球人にとっては直径10メートルほどの巨大な水滴である
それがねっとりと糸を引きながらNeo-Tokyo City市民たちの頭上に墜ちてくる
直径10メートルである
直撃を喰らえば命はない
しかし、もかもかしたパンツの上にいるNeo-Tokyo City市民たちは足場を取られて素早く動くことができない
それどころかジェリカちゃんの激しい身体の動きのためNeo-Tokyo Cityが銀座を中心にぐらんぐらんと大揺れし、その震源地にあるパンツは地上数メートルも舞い上がったり落ちたりの大騒ぎで、市民たちは振り落とされないようその場にしがみ付いているのがやっと
逃げることなんかできなかったのだ
そんなわけで、避けることもできず淫汁の直撃を受けた市民たちはひとたまりもなく木端微塵に弾け散っていった

「!」

・・・
・・・
・・・
違う
・・・
・・・
今までの侵略者とは違う
・・・
容赦なくぐらんぐらんと揺れ続けるパンツの上で、遠慮なく上空から降ってくる甘酸っぱ臭いえっち汁の絨毯爆撃を受けながら、Neo-Tokyo City市民たちははっきりと違和感を覚え始めていた
違う
侵略されながらもなんとなくじゃれあっているうちに最後はほのぼのした関係になってしまった今までの侵略者と、この巨大美少女は違う
この侵略者は自分の下品な行為を我々地球人に見せつけて心から喜んでいる
その下品な行為自体を自ら楽しんでいる
我々地球人に対する心配りはない
我々地球人の命が奪われることを何とも思っていない
・・・
これはマジでやばい奴なんじゃないか?
・・・
・・・
・・・
そんなとき、ふとパンツの大地の揺れが止まった。
淫汁の爆撃も一段落。
上空を見ると、巨大美少女は膣口から人差し指をぬっぷり引き抜いていた。
ようやく壮大なオナニーショーが終わったのだ。

「・・・ふうう、気持ち良かった」

ほんの今まで何十人もの地球人を圧死させるほど残虐な行為を行っていた人物であるとは信じられないほどにあどけなく愛くるしい笑顔が、地上のNeo-Tokyo City市民たちを覗き込んだ。

「どう?ボクの一人えっち見ながらキミたちもちんちんしこしこできた?気持ちよかった?ザーメンいっぱい出た?まあ、ボクのまんこには届かなかったけどね、くふふ・・・」

そこまで言いかけたところで、巨大美少女は何か思いついたかのように急に眼を丸く見開いた。

「そうだ!」

ずうううううううううん
ジェリカちゃんは開脚したまま膝を伸ばして立ち上がり、身長3800メートルの壮大な姿を改めて見せつけた。

「・・・キミたちさあ、あんな近くからボクの一人えっち見てたけど、でも実際にボクのまんこには触れなかったよね。届かないもんね。ちびだからね。」

膝を伸ばしたまま腰だけくの字に曲げて地上に手を伸ばす。
身体の柔軟なジェリカちゃんはその姿勢で苦も無く足元のパンツを拾い上げると、再び腰を伸ばして立ち上がり、パンツを顔のすぐ近くに寄せて覗き込んだ。

「いるいる、うじゃうじゃいるねえ、地球人のミニミニこびとくん。ボクのパンツが大好きなんだ。くんくん、あ、くっさーい!朝からずっと穿いてたからね。キミたちこんなくっさい臭いが好きなの?こんな臭い嗅いでちんちん勃ててるの?どうしようもない変態だね♡」

ジェリカちゃんはこれ見よがしに自分の圧倒的な巨大さを見せつけながら、パンツに囚われたNeo-Tokyo City市民たちを挑発し続けた。
もちろんNeo-Tokyo City市民たちには言い返す気力もない
その様子を見て、吊り上った巨大な眼が、きゅっと愉快そうに細まった。

「・・・でもそのへんたいのキミたちは結局ボクのまんこには触れなかったよね。可哀想だね。でもボクはキミたちみたいなどちびでもボクのまんこを思う存分触れる方法を思いついたんだよ♡」

そう一方的に言い放つと、ジェリカちゃんは両手で両端を持ったパンツを腰の前におろし、また腰を曲げながら片足を高々と上げた。

「・・・そう、ボクがこのパンツを穿けばいいんだよ。そうすればパンツの中のキミたちはボクのまんこに触り放題。やったね♡よかったね♡ボクって優しいでしょ?」

ずぽっ
ずるずる
きゅっ
ジェリカちゃんは地球人のこびとたちがどっさり載ったパンツを穿きなおすと、丁寧にその両脇を引っ張り上げて、股間にぴっちり密着させた。

「うわああああああああああ!!!」

「どう?パンツ穿いたよ。ボクのまんこに触れて嬉しい?良かったね、くふふ。あ、まんこと間違えてもっと臭い穴の方には行かないでね。まあ、行ってもボクは別に構わないけどね♡」

「ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

「もちろんボクのまんこの中に入ってもいいよ、くふふ。でもキミたち小っさすぎるから、ボクを気持ちよくさせることはできないだろうなあ・・・ん?やれるものならやってみてもいいよ。期待はしてないけどね。だって、ほら、ボクのまんこはこんなにでっかいんだよ。キミたち自身と比べてごらんよ。ね、でっかいでしょ?キミたちのマイクロちんぽじゃ相手にならないでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、そうだ!キミたちボクを気持ちよくしようとか考えなくていいから、そのかわりボクのまんこの中に入ったらみんなでそこを綺麗にお掃除してよ。くっさーいまんカスがどっさりあるかもね。きっとキミたちの身体より大きいよ。たいへんだね。大仕事だね。くふふ、頑張ってね、くふふふふふ♡」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

上機嫌に一人で喋りまくるジェリカちゃんに対して、パンツの中の叫び声は徐々に小さくなって、しまいには全く聞こえなくなった。

*****

「・・・事務総長、やっぱりダメです。勝ち目はありません。降伏しましょう。」

改めて敗北を確信した地球防衛軍長官は事務総長に奏上した。

「ぐぬぬぬぬぬぬ」

もちろん事務総長にも現状のやばさは十分に理解できる。
でももう引っ込みもつかないので戦いを止める気にはなれなかった。
集団をカタストロフィックな敗北に導く典型的な愚将のパターンである。
やけくそになった事務総長は思いっきり虚勢を張ってパンツの中のNeo-Tokyo City市民たちとお楽しみ中のジェリカちゃんに挑みかかった。

「・・・お前、け、結局、パンツを穿いてしまったな。ホ、ホントは恥ずかしいんだろう?」

「・・・」

無言でうざそうに足元を見下ろすジェリカちゃんの表情を見て、地球防衛軍長官は慌てて事務総長の傍らに駆け寄った。

「事務総長、撤退しましょう。今回はどう見ても負け戦です。というか、もう危ないのでこの地点からも避難すべきです。」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」

悔しさのあまり歯ぎしりする事務総長
しかしもはやそんなことで無駄に時間を費やしている場合ではなかった

「・・・つーか、キミさあ、さっきから何様のつもり?いい加減うざいんだけど・・・」

ぶーたれながらその場にしゃがみ込んだジェリカちゃんは、口をへの字に曲げたまま事務総長の立つ周辺に向かって巨大な手を伸ばしてきたのだ。

*****

高層ビル並みの巨大な指が襲ってくる。
小心者の国連事務総長は血相変えて逃げ出した。
もちろんジェリカちゃんに比べれば砂粒ほどでしかない事務総長が全力で逃げたところで、そのスピードはたかが知れている。
ジェリカちゃんの巨大な指はすぐに追いついてしまった。
ただ、小さすぎることは悪いことばかりでもない。
事務総長の身体は小さすぎるので、ジェリカちゃんの指では上手に摘まめないのだ。

「事務総長、あちらです」

その隙をついて、地球防衛軍長官が事務総長を京橋の安全な秘密地下シェルターの方向に誘導する

「間もなく彼らも援護に・・・あ、到着したようです」

長官が肩越しに指差す彼方を事務総長は振り返る。
地球防衛軍の主力戦闘機F-717だ。
長官がスクランブルを指示したのだ。
そうか、そういえばこのたびは戦力を温存したままだった。

「彼らに時間を稼いでもらって、その間に事務総長はシェルターに向かって急いでください!」

「君はどうするんだね?」

「わたしはここに残って彼らの戦闘を指揮します」

「・・・すまん」

瞑目して一礼すると、事務総長は銀座通りを京橋方面に向かって駆け出した
一方、上空ではF-717戦闘機がジェリカちゃんに向かってミサイルを撃ち始めた
ひゅるるるるるるるるるるるる
ひゅるるるるるるるるるるるる
ひゅるるるるるるるるるるるる
ひゅるるるるるるるるるるるる
・・・
・・・
もちろんこんな攻撃でドデッカ星人のジェリカちゃんにダメージを与えられるはずはない
でもジェリカちゃんはツリ目をくりくりに見開いておかんむりである。

「・・・キミたちさあ、邪魔しないでくれない?煩わしいんだけど」

当然であるがF-717戦闘機は完全無視である。
ジェリカちゃんは口をへの字に曲げて可愛い頬っぺたを膨らませた。

「ボクたちドデッカ星人の動体視力と敏捷性を舐めちゃダメだよ。大勢で一斉にこられたら面倒だけど、一匹一匹なら瞬殺だよ。」

ぷち
ぷち
ぷち
ぷち
ぷち
ぷち
ぷち
ぷち
・・・
・・・
自ら豪語した通り、ジェリカちゃんは飛び交うF-717戦闘機を次から次へと指2本でぷちぷちと摘まみ潰していった。
マッハの速さで飛行する戦闘機をほいほいとピンポイントで摘まんでみせるのである。
まさにドデッカ星人の驚異的な身体能力のなせる業だ。
この間わずか十数秒
全力で走る事務総長が京橋の裏通りにあるシェルターの入り口に到達するまでの時間も稼げなかった。

「・・・もうお終い?」

ジェリカちゃんは両手をぽんぽんと叩いて埃を払いのけながら、事務総長が駆け去っていく銀座通りを遥かに見下ろす。

「で、うざいおじさん、おじさんは小さすぎるからもう摘み上げるのは諦めたよ」

なに?
・・・
じゃあ、わたしは助かるのか?
銀座通りを京橋方面に向かって駆け続ける事務総長の胸に、小さな希望が湧き上がってきた

「・・・でも、許してもあげないよーだ!」

どがあああああああああああああああん

「うわあ!!!」

いきなり目の前に薄汚れた白い巨大物体が投下されてきた。
その重みで落下地点の銀座通りと立体交差する高速道路がメチャメチャに破壊されて、瓦礫とともに京橋方面への交通を完全に遮断した。
ダメだ
シェルター入口への動線がブロックされた
あれは乗り越えていくには巨大すぎるバリケードだ
しかも
・・・
・・・
事務総長は目の前に聳える白いバリケードを前にして、両手で顔を覆った。

「・・・ぐええええええ、く、臭い」

薄汚れた白い布製の巨大なバリケードは、すっぱ臭い汗と腐敗の入り混じった強烈な悪臭を発していた。
事務総長ばかりではない。
同じように銀座通りを京橋方向に走って退避していたNeo-Tokyo City市民たちも、みな一様に喉をかきむしりながらその場に蹲った。
耐え切れずその場に嘔吐している者もいる。
痙攣している者もいる。
そのまま気を失った者もいる。
いずれにせよ、これ以上この有毒バリケードのそばにいることは危険すぎた。
止むをえない
どこか別の退避先を探そうと考えて、事務総長は回れ右した。
そして上空を見上げ
息をのんだ
・・・
・・・
息のかかるほど近くに
彼女の顔があった
・・・
・・・
しゃがみ込んで
ツリ目を細めて
逃げ場を失ったNeo-Tokyo City市民たちを嘲笑っていた
ほんとうにすぐ近くだ
実際に、事務総長は彼女の甘ったるい吐息を確かに感じた

「・・・くふふ、ざーんねん♡、逃げられなかったね。キミたちは小さすぎるからボクの脱いだ靴下も乗り越えられないんだね。ちびはホントに何をしてもダメだね。」

ボクの脱いだ靴下?
それはあの薄汚れた白いバリケードのことか?
あれはこの巨大少女の靴下だったのか

「くんくんくん、うわあ、くっさいなあ・・・ごめんね、この靴下、ほんとは真っ白なんだよ。でも朝からずっと履いてたから靴の中で蒸れちゃって、酷い臭いがするね。しかもちょうど足裏の汚れたところが通せんぼしちゃったから、キミたちはその中でもいちばん凄い臭いを嗅いだんだよ。たいへんだったね。それとも嬉しかった?女子中学生の脱ぎたて生靴下の臭いを嗅ぐなんて、滅多にできないことだよね、くふふ♡」

ずうううううううううううううううう
ジェリカちゃんが立ち上がる
全ての希望を失って銀座通りにへたり込むNeo-Tokyo City市民たちの真上に、身長3800メートルのジェリカちゃんが悠々と立ち上がる
確かに片足はローファーも靴下も脱いで裸足だった。

「・・・それじゃあいい思い出もできたことだし、そろそろお終いにしよっか」

すうううううううううう
音もなく裸の生足が上空に舞い上がり、日差しを陰らせる。
ジェリカちゃんの生足が、銀座の1丁目から4丁目までの上空を覆い尽くす。
見上げるNeo-Tokyo City市民たちのもとに、さっき嗅がされた靴下の悪臭と同じ臭いがほんわりと降り注がれた。

「・・・踏みつぶそうかなあ?やめてあげようかなあ?くふ♡」

侵略者の巨大女子中学生は、あたかもこの足元の地球人たちにまだ生きる望みが残されているかのように嘯く
しかし事務総長は完全に見切っていた
そんなはずはあるまい
どうせまたあの意地悪巨大娘の思わせぶりな悪戯だ
期待させておいて裏切るのだ
そうさ
俺はここでこいつに踏みつぶされて死ぬのだ
俺はこの銀座一帯を一足で更地にできるこの超巨大女子中学生に一匹の虫けらとして踏みつぶされて死ぬのだ
俺が命をかけて守ろうとしてきた地球の多くの市民たちと一緒に踏みつぶされて死ぬのだ
もはや慌てたところでどうなるものでもない。
・・・
そういえば地球防衛軍長官はどうしただろう?
姿は確認できないが、奴もまだきっとこの周囲にいるはずだ
うまく逃げられたとは思えない
いや、奴が逃げたとも思えない
ここで俺と一緒に踏みつぶされて死ぬのか
・・・
今までよく頑張ってくれた
ありがとう
お前と一緒に踏み潰されて死ぬのは、俺にとって本望だぜ
・・・
・・・
・・・
はたして事務総長の読みは正しかった。

「・・・んーと、やっぱ踏みつぶすことにしよっ♡」

ずしいいいいいいいいいいいいいいいいいいん
・・・
・・・
・・・
ジェリカちゃんの巨大生足が踏み下ろされた銀座一帯は、更地ではなく、一瞬できれいな足の形をした窪地になってしまった。

*****

「くふふ、みんな、ボクの力がわかったかな?」

ジェリカちゃんは放り投げた靴下を拾って履きながら、上機嫌にツリ目を細めて小首を傾げる
小さくて無力な地球人に自分の巨大な力を見せつけるのが嬉しくてたまらないのだ
うん
それならばもっともっとボクの力を見せてあげよう

「じゃあ特別に、キミたち未開の土人たちには想像もつかないほど面白いものを見せてあげるよ。」

ローファーもしっかり履きなおしたジェリカちゃんは、一歩前進して日本橋あたりに達すると、自分の右の手首にはめた腕時計のようなものを足元のNeo-Tokyo City市民の上空にかざして見せた。

「・・・ボクってキミたちから見たら大巨人でしょ?もともとこんなに大きいんだよ。だけどボクたちドデッカ星人はキミたち下等生物と違って文明人だから、科学も進んでいるんだ。で、文明人が異星を侵略するときは、普通は丸腰じゃなくて武装をするの。キミたちは科学が未発達な上にちびで弱すぎだからそのまんまで侵略されちゃったけど、でも、見てみたいでしょ?ボクたち文明人が武装するとどうなるか・・・」

ジェリカちゃんは得意そうに鼻をならしながら、手首にはめた腕時計のようなもののメーターをくりくりと回して見せた。

「・・・宇宙では武装=巨大化ということなんだよ。これはボクの巨大化装置。ドデッカ星人なら小学生でも持ってるよ。とりあえず今日は控えめに20倍にしといてあげる。」

かち
ジェリカちゃんが20倍にセットした巨大化装置のスイッチを入れた。
Neo-Tokyo Cityの市民たちは固唾をのんで上空を見上げる。
ジェリカちゃんはにやりと笑うと、目を瞑り、両腕を組んで、精神を集中した。
・・・

ぐぐぐ
ぐぐぐぐぐぐぐぐ
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ

「!!!」

Neo-Tokyo City23区をまるで南北に引き裂くかのように遠ざかりながら急成長する4000メートル級の真っ黒い山脈
ローファーである。
さっき履きなおしたばかりのローファーが、南北方向に遠のきながらずんずん巨大化して山脈のようになったのだ。
そしてその山脈の尾根からオーロラのように上空に伸びていく超自然現象のような脚。
Neo-Tokyo Cityの市民にはそれ以上のものを視覚で確認することができなかった。
雲の上の話だからだ。
足首よりちょっと上になると、もはやうっすら白い雲の向こうになってしまうのだ。
それでもNeo-Tokyo Cityの市民たちは感覚的に理解した。
あの地球を侵略してきた巨大な女子中学生が、更にもっともっと超巨大化して、このNeo-Tokyo City23区を跨いでいるのだ。
雲の遥か向こうの、上の上のそのまた上にあるはずの、彼女の表情を窺い知ることはできない。
でも地上のNeo-Tokyo City市民たちはみんな知っていた。
あの情熱的な美少女は、真下を見下ろして、意地悪そうに吊り上った目を細めて上機嫌に地球人たちを嘲り笑っているはずだ。
2500×20=50000倍
身長76000メートル
これが身長7600メートルにまで巨大武装化した少女の姿だった。

「・・・どうかな?ボクの姿が見えるかな?」

天空から少女の声が轟きわたる。

「ボクからキミたちは見えないよ。なんだかもやもやした白いものの下になっちゃったからね。でも、たとえこの白いものがなかったとしても、もうキミたちなんか見えないはずだよ。だって、キミたちはボクの5万分の1しかない微生物になっちゃったからね、くふふふふ♡」

・・・
・・・
誰もがもう言葉もなかった
無理だ
こんなのありえない
もしありえるとしても、そんな相手にかなうはずがない
・・・
土下座しよう
額を地面に擦り付けて謝ろう
降参です
何でもします
何でも言うことをききます
家来になります
いや奴隷になります
だから命だけは助けてください
・・・
・・・
・・・
せっかくNeo-Tokyo City市民はそう覚悟したのに、それを実行に移す猶予は与えられなかった

「・・・さて、この街はお仕置きされなきゃならないね。身のほど知らずのウザいおじさんがいたからね。キミたちは連帯責任だよ。地球のみんなも良く見ておくといいよ。ボクをむっとさせたらこういう目に遭うんだよ。」

するり
雲の向こうで超巨大少女はさっき穿いたばかりのパンツをまたしてもずり降ろした
そしてぷりんとした張りのあるヒップを丸出しにすると、そのままその場にしゃがみ込んだ

*****

「!!!」

うっすらと白い空を突き破って、上空から急に肌色の双丘が降臨してきた。
山手線の内側をまるまる覆い尽くしておつりのくる超巨大サイズの双丘
ヒップだ
剥き出しのヒップだ
つるりとしたゆで卵が莫迦莫迦しいほど大きくなったような超巨大ヒップだ
押し潰す
いや、押し潰される
Neo-Tokyo Cityの中心部がみんなまとめてあの超巨大ヒップの下敷きになる
逃げられるはずがない
だってあの巨大さだ
もうダメだ
Neo-Tokyo Cityの市民たちは頭を抱えてその場に蹲った
・・・
・・・
・・・
あれ?
・・・
何も起こらない
・・・
どうしたのだろう?
・・・
・・・
市民たちは恐々と顔を上げ、上空を見上げた

「!!!」

地上200メートル
その巨大さに比べたらほとんど地面ぎりぎりともいえるその上空に、超巨大ヒップは浮かんでいた
いや、物理的に浮かんでいるはずはない
遥か東西を見渡せば、ちゃんとあの巨大ローファー山脈は地上に聳え立っている
その両足で踏ん張って、ほんの少しだけ尻を浮かせているのだ
ほんの少しだけ尻を浮かせて、しゃがみ込んでいるのだ
そう、彼女はほんの少しだけ尻を浮かせて、このNeo-Tokyo City23区の上にしゃがみ込んでいるのだ
和式トイレに跨るように、このNeo-Tokyo City23区の上にしゃがみ込んでいるのだ
和式トイレに跨るように
和式トイレに跨るように
・・・
・・・

「!」

Neo-Tokyo City市民がその危機に気づくのと、超巨大少女が最後の言葉を発するのはほぼ同時だった。

「・・・じゃ、おしおきいくよ。今度こそほんっとに臭いよ。くふふふふ、みんな、バイバーイ♡」

・・・
巨大なゆで卵のようなヒップの裂け目に、まるでスローモーション映像を見るようにゆっくりと代々木公園サイズの開口部が現れ
・・・
・・・
ぶぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ
・・・
・・・
・・・
いきなりそのゆで卵が腐敗したような悪臭を放つ大爆風が炸裂した
大気圧下では200億立方メートルほどの体積になるはずの超大量の有毒ガスが、極度の圧縮状態から一気に解放されたのだ
地球人類がそれまでに出遭ったこともないレベルの爆風
Neo-Tokyo Cityに存在していた全てのものが一瞬で木端微塵に吹っ飛んだ
・・・
・・・
・・・
もうもうとしたメタンの悪臭が晴れると、かつてNeo-Tokyo Cityであった一帯は、生命の痕跡もない巨大な一つのクレーターと化していた。

*****

ドデッカ星教育省大臣執務室
呼び出された例の3人の若手キャリアたちが大臣の前で首項垂れている。

「・・・で、その後その地球という惑星はあっという間にメチャメチャにされた、と」

「はい。あ、しかし時間を巻き戻しておきましたので、もうちゃんと復旧はしております。」

「ふん。で、いったいどうしてそんなことになったの?」

金髪をお団子にまとめたハイミスの教育大臣は、提出された報告書を神経質そうに片手で掴みながら黒縁メガネの奥から3人に向かってカミソリのような厳しい視線を投げつける。
その迫力の前で若手キャリアたちはもうおしっこチビりそうである。

「あ、あの子供にしてやられました」

「・・・」

「ジェリカ・エリナンデスという子は本当は侵略研修なんて必要ないわんぱく少女だったのです。」

「・・・」

「ところが、このところわざと内気で優しいふりをしていて、それに我々が騙されたのです。」

「・・・その子はどうしてそんなことをしたの?」

「は、はい」

若手キャリアの一人がおずおずと説明した。

「実際のところ、あの地球という惑星に棲む極小こびと原住民を虐めるのは、普通のドデッカ星人の少年少女ならこれ以上ないほど楽しいことのようなのです。内気な心優しい『発達障害』のふりをすればその地球での侵略研修が受けられる。これは子供たちにとって数か月間大好きな弱い者いじめを我慢するに値するほど魅力的なことなのだとか・・・」

「そういう子供たちを見抜くことは?」

「難しいです」

「では同様なケースの再発は?」

「・・・ぼ、防止できないか、と・・・」

ばーん!
教育大臣は報告書を執務机に叩きつけた。
3人の若手キャリアは思わず首をすくめて目を瞑る。

「・・・予算、って、知ってる?」

「は、はい?」

「・・・このキミたちが考案したくだらないプロジェクトに、わが省がどれだけ予算を費やしたかわかってる?監査する財務省にどう申し開きすれば良いかわかってる?・・・と、訊いているのよっ!!!」

黒縁メガネの奥の眼はもはやカミソリではない。
ごうごうと燃え盛る地獄の業火である。
若手キャリア3人組はもはや生きた心地がしない。

「プロジェクトはただちに中止!あの地球という惑星は元の所有者に返しなさいっ!」

「はいっ!」

「キミたちは速やかに始末書を提出すること!書式は省のフォーマットに則って!提出期限は本日の午後3時!」

「はいっ!」

「・・・それと、わかってるとは思うけど、キミたち、今度の人事異動では覚悟しておくように」

「は・・・はい・・・」

夢破れた3人の若手キャリアは力なくその場に崩れ落ちるのだった。

彼らの誤算・終