最近発表されたVR型最新ゲーム。
プレイヤーは現実世界と区別がつかない程リアルなゲームの世界で遊ぶことができる。
そのゲームの発売をずっと待っていた一人の女性がいた…。


「やっと届いた!」

ワクワクしながら箱を開ける。
そう、この箱の中には最新型ゲーム機が入っているのだ。
箱の中から取り出す。
ヘルメット形のゲーム機のようだ。

「さっそく始めるわよ。」



『ようこそ、VR世界の中へ
 あなたのモデルを作成します。まず、モデルの年齢を選んでください。後から変更も可能です。』

「モデルの年齢か…。どうせなら昔に戻ってみたいな。となると、小学生かな。10才で。」

『10歳で登録しました。次に、性別を選んでください。後から変更も可能です。』

「これも後から変更できるのか…。性別ね。もちろん女の子よ。」

『女性で登録しました。次に、モデルを登録してください。後から変更も可能です。』

「モデルね。これなんか可愛い。」

サイドテールのデフォルトで用意されているモデルを選んだ。他にもいろいろが、今はモデルをじっくり選ぶよりも早くゲームで遊びたい。

『モデルを選択しました。最後に、ストーリーモードとフリーモード、どちらをプレイしますか?』

ここで迷う。ストーリーモードから始める予定だったが、こういうゲームは始めてなので慣れるためにもフリーモードで遊んでみることにした。

「フリーモードで。」

『フリーモードを選択しました。ワールドへ移行します。』

視界が暗くなる。ロードが始まったのか。
少し待つと明るくなってきた。建物が見える。道路が見える。自分の手が見える。

「これが最新型ゲーム…。」

ここまでリアルだとは思っていなかった。景色は日本そのもので、現実と区別がつかない。
自分の手を見てみると小さく、小学生の手そのものだった。

『フリーモードの世界へようこそ。この世界では、”システムコール”と唱えることでどのような願いでも叶える事ができます。それではお楽しみください。』

システムコール…?なんでも願いを叶える…?そんな機能があるのか。彼女は試しに唱えてみる。

「システムコール。鏡を出して。」

ぼんっ。目の前に大きな鏡が現れた。自分の姿を確認してみたかったのだ。
選んだモデル通りのサイドテールの日本人らしい黒髪の女子小学生。長袖にホットパンツ、白いニーソとスニーカーを履いたよく見かけるような服装だ。

「昔に戻ったみたい…。お肌スベスベで脚ほっそいなー。髪もさらさらだし。なにより可愛いー!」

自分の姿に感動していると、周りの背景が目に入る。どうやらここは駅前のようだ。
駅名が見当たらないが、この駅の構造、広さから都内のどこかの駅だと察する。
周りには人がぞろぞろとたくさん歩いており、こちらを変な目で見て去っていく。
それもそうだ。駅に突然現れた鏡の前にずっと立っているのだから。しかも自分の姿を見て可愛いなどと叫びだしたぞ。

「ここにいたら恥ずかしいな…。移動しよう。」

走りだす。人混みにぶつかりそうになりながらも小さな体を利用して避けては走る。
しかし、少し走っただけで疲れてしまった。

「ちょ、ここまでリアルなの…。つかれ…た。はあはあ。」

小学生で設定したとはいえ体力もリアルに忠実とは。困ったものだ。

「あ、そうか。システムコールを使えば良いのか。システムコール。
うーんと…無限の体力…?」

こうすればよかったのだ。なんでも願いが叶うのだから。
唱えた途端、先程の疲れは嘘のようになくなっていた。

「これ、便利ね。なら、こんなのもできるのかしら。」

ちょっとした思いつき。彼女は唱える。

「システムコール。童心が欲しい。」

小学生になったのだから気持ちも小学生になりたい。そう思ったのだ。
唱えてみるも、大きな変化は感じなかったが。が、成功していることには間違いなかった。
このなんでも願いが叶う世界。やりたいこと、やりたかったことがどんどん湧いてくる。
楽しむしかない。
彼女は満面の笑みでスキップをしながら街並みの中へと消えていった。




「あ~、楽しかった。」
やりたかったこと。本当になんでもできてしまった。ずっと食べたかったスイーツや、お金を気にせずゲームセンターで散財。洋服屋でたくさんお買い物。他にもいろいろあるが、本当に楽しい。ただ一つ、できなかったことがあった。

「せっかく可愛い洋服を見つけたのにサイズが足りなかった…。」

洋服屋で可愛い洋服を見つけたのだが、このサイズでは着られなかったのだ。
あと少し身長があれば。ここでひらめく。

「うーん。ちょっとやってみよう。システムコール。私の身長を教えて。」

唱えてみる。すると目の前に140と書かれたスライダが現れた。

「このつまみをいじって身長を変えるのかな…。」

よく使い方がわからないが、スライダを右にいじってみる。

「これでいいのかな…。」

彼女は異変に気づく。

「ん!?!?!?」

目線があまりにも高い。ビルの3階の窓がちょうど目の高さだ。世界が小さく見える。スライダには1400と書かれている。

「1400…?さっきの10倍?」

全てが小さく見える。周りにいた人々は、彼女を指差してなにか叫んでいる者、必死に逃げている。腰を抜かすものまでいた。

「ちょ、こんなはずじゃ…はやく戻らないと…。」

その時だった。何かが彼女の心をくすぐっていた。それは先程手に入れた「童心」だった。

「せっかくだし…。どうせゲームだし…。ちょっと。ちょっとだけ暴れてみようかな…。」

人がいない方へ足を一歩踏み出す。コンクリートで出来た道路にはヒビが入ってしまった。
さらに足を踏みだす。道路にはどんどん足跡が出来ていく。

「なにこれ楽しい…。」

彼女は新たなゲームの楽しみを見つけていた。現実世界でこんなことは絶対に出来ない。

「人間がちっちゃくてかわいい。えい。」

少し足で踏んで見る。足を離すと、そこにいた人間は跡形もなく潰れていた。

「対して力も入れてないのに…。もしかして私って最強?」

周りにいた人間をテンポよく踏み潰していく。気がつけば彼女のスニーカーは真っ赤に染まっていた。

「物足りない…。」

そう彼女は呟く。完全にこの状況を楽しんでいた。

「システムコール。私の身長を最初の100倍にして。」

景色が一気に変わる。ビルの殆どが自分の身長よりも低い。

「そうね…。もっとみんなには楽しんでもらおうかしら。
システムコール。私を見たものは誰もが魅了するようにして。」

そう唱えた途端、人々の目がこちらに向く。先程まで怖がっていた表情が一気にデレデレの表情へと変化するのが確認出来た。

「ふふっ。このロリコンどもめ!」

周りの人々が反応する。ドMにした覚えはないのだが。

「ふふ。あはは。みんなちっちゃい。可愛いわぁ。ほんと。」

彼女はご満悦の様子。この大きさに勝てるものは存在するのか。

「そういえば、この靴汚れちゃったし、もういらない。」

彼女がスニーカーを脱ぎだす。白いニーソを履いた足が露わになる。散々遊び回ったその足は汗で少し蒸れていた。
脱いだスニーカーを遠くに投げ捨てる。物凄い爆音が聞こえた気がしたが、そんなものは彼女には関係なかった。
再び足を地に戻す。それだけで何人もの人々が犠牲になっただろうか。

「これ、私の足よ。ほら。もっとこっちに近づいて。」

彼女に魅了された人々が足にどんどん近づいてくる。足元はライブの客席のように人で溢れてしまった。彼女の足は少し臭うだろうに、お構いなしにどんどん人が集まる。

「いい子よ。いい子。」

可愛らしい彼女の顔に人々が引き連れられていく。
その時だった。

「システムコール。私の足の臭いを1000倍にして。」

突然彼女が唱える。すると足はとんでもない悪臭を放ち始めた。
あまりの臭いの強さに足元の視界が曇って見える。
足の周りにいた人々は臭いに耐えきれず、その場で失神を起こして倒れてしまった。

「あら、倒れてしまうとは情けないわね。システムコール。起きなさい。」

失神を起こしたものが一斉に起き上がる。一瞬で失神を起こす臭いを目の前に彼らはどんな気持ちで立っているのか。

「あはは。立てるじゃない。いい子よ。女の子の足の臭いを嗅いでどんな気持ち?」

彼らに反応はない。

「あれっ、反応なし?…。つまんないの。」

そういいながら彼女は右足のニーソを脱ぎだす。白く細いすべすべの脚が現れる。

「私の生足よ。もっと魅力的でしょう?」

彼女は脱いだニーソをなるべく人がいないところへ投げる。

「でもね、罰ゲームよ。システムコール。さっき失神したものは私の右足のニーソの中へ入りなさい。」

そう言うと人々がぞろぞろとロボットのように動き出す。とてつもない悪臭を放つニーソの中へと自ら入っていく。

「あれれ。どうして入っていくの?そんなに私のニーソが好き?じゃあ、もっと楽しんでもらわないとね。
 システムコール。私の右足のニーソの中の臭いはさらに1000倍。倒れちゃダメよ。」

1000倍の1000倍。どうなっているのか想像もつかない。罰ゲームといったが彼らにはご褒美かもしれない。
通常の100倍の大きさのニーソの中へ人々が入っていく。先程まで小学生が履いていたものだ。不思議な気分だろう。中はモワッとしていて、とてつもない臭いで精神がおかしくなるに違いない。

「私も楽しむとしますか。システムコール。私の足の臭いを戻して。」
そう言うと彼女は歩き出す。足の臭いを戻したのは、臭いだけで倒れてしまっては面白くないからだ。
歩くたびに足の裏の刺激が気持ちいい。たまらない。建物や人々、車などを確実に踏み潰していく。
すると目の前に彼女よりも大きなビルが現れた。

「むう…。このビル、私よりも大きい。ムカつく。システムコール。私の身長を更に10倍にして。」

世界が大きく変わる。先程まで目線にあったビルの数々は足元に群がっていた。
足場もなく立つだけでも建物を破壊してしまう。
片足素足、片足ニーソの状態。
先程まで見えていた車や建物の区別があまりつかなくなってしまった。
一歩踏み出してみる。ゾクゾクっとした感覚に襲われる。この一歩だけで何人もの犠牲者がいるか。先程の100倍とはわけが違う。1000倍だ。足の大きさも1000倍。もともと20センチだとしたら、200メートルだろうか。考えるだけでゾクゾクが強まる。
足で街を踏み潰していくだけなのに、とても気持ちがいい。
歩きだすと、先程よりもくっきりとした足の形が出来上がる。指の一本一本、足の裏に街が押しつぶされ、形が出来ていくのだ。
足の裏には小さな建物の瓦礫がへばりつく。
足を持ち上げ、足の指をグーパーと動かしてみると、へばりついていた瓦礫がパラパラと落ちる。

「全部、壊しちゃえ!」

一歩一歩強く踏みつけていく。どんどん街が壊されていく。

「踏むだけじゃ飽きちゃうなあ。失礼しまーす。」

彼女はホットパンツを脱ぎ捨て、さらにパンツも脱ぎ二本指でつまむ。
女子小学生の小さなおしりが露わになる。最早下半身を露出することに彼女は恥などなかった。

「やっぱりホッカホカに蒸れているね。システムコール。このパンツのムレムレをさらに100倍にして。」

パンツの熱気が強まり、思わず少しびっくりする。
そしてそのままパンツを足元の街へと近づける。
街の中ではどんどん気温が上がっていき、人々は苦しんでいるだろう。
想像するだけで興奮してしまう。

「女子小学生のおパンツだよ?欲しい人とか、いるんじゃない?」

パンツを遠くへ投げ捨てる。思わず笑ってしまう。
ムレムレのパンツに覆われた街は、パンツの重みに耐えられずに崩れていく。

「左足のニーソでもやろっか。」

左のニーソを脱ぎだす。両足とも素足になってしまった。

「システムコール。このニーソの臭いをまたきつくして。うーん。1000倍くらい。」

とてつもない臭いがしてくる。思わず鼻をつまむ。

「システムコール…。私の嗅覚をなくして…。」

あまりのきつさにシステムコールに頼ってしまった。
ニーソをゆっくりと街の方へしゃがみながら降ろしていく。ぶつからないギリギリの高さで止める。

「はい、またしても私のニーソだよ。どう?」

ニーソを少し下に降ろし、つま先の部分だけ引きずる形にして、腕を動かし街をササーと壊してみる。ニーソに引きずられただけで崩壊していく街並み。

「あはは。やばいねこれ。」





次々と彼女は街を破壊していく。誰も彼女を止めることなど出来なかった。
しかし、彼女にとって見ればこの程度のことは造作もない。


「システムコール。リセット。」

所詮ゲームに過ぎないのだから。