「よしっ、上手く行った!」

この状況は非常にピンチである。
山賊として活動している俺は、山で一人ノコノコと歩いている小娘を見つけ、高く売れそうだと喜んでいたところを、この小娘に魔法をかけられてしまった。
その魔法は「縮小化魔法」。小娘が大巨人に変身したかと思えば同時に周りの景色が一変し、自分が小さくなっていたのだ。

「山賊さん、私のことを狙っていたんですよね?危なっかしくて怖いので、ついでに攻撃力を弱体化させる魔法もかけますね。」

俺は縮小化魔法、攻撃力弱体化魔法をかけられ、為す術なく小娘に持ち去られた。

「縮小化魔法が1発で成功して良かったです。ふふ。」

この小娘、性格自体は優しそうに見える。そこで助けを乞いたいのだが、先程かけられた攻撃力弱体化魔法のせいで声帯に力が入らず、声を発することも出来ずにいた。

「何か言ったらどうなんです?怖気付いちゃいましたか?」

縮小化魔法など他の魔法使いでは到底真似ができないほど上等な創作魔法であり、相当に頭がいいはずなのだが、恐らく小娘は俺が今声を発することが出来ないことに気がついていない。頭がいいのか悪いのか、よく分からない小娘だ。

「これで今日の夜、勇者様の特訓の相手になれそうです。良かったー!」

勇者様…。そうか、勇者のパーティの一人だったか。俺も運が悪かったな…。

「本来の目的はこれで達成しているのですが、勇者様に縮小化魔法をかける前に色々試させてください。あと、もう1つ別の魔法も試したいし…。」

そういうと小娘は、俺を手のひらの上に乗せ、力が入らずグッタリとしている俺の体をじっくりと見つめ始めた。

「小さくすると、貴方の装備していた武器や防具なんかは、なんだかミニチュアの玩具みたいですね。ふふ、すぐに壊せちゃいそう。」

小娘のもう片方の手が現れ、俺の装備している防具を指先で摘み、簡単に壊し始める。

「ちょっと力を入れただけですぐに崩れたり破れたりしちゃいますね。ただ縮小化魔法をかけただけでは、潰れてしまって危険なのかもしれません。」

俺は小娘の指先で簡単に裸にされてしまった。
本来なら抵抗をしたいところだが、体に力は入らない。

「潰してしまうと悪いので、防御力をあげる魔法をかけておきますね。」

どうやらこの小娘、俺を殺す気はないらしい。
ホッとしていると、何やら小娘は別の呪文を唱え始めた。

「これ、勇者様にいつかかけたい呪文なんですけど、効果がちゃんとあるのか試させてください。決して悪い呪文ではないので、安心してくださいね。」

小娘が呪文を唱え終えた頃から、俺の思考の調子がどうもおかしい。
手のひらの上に乗せられ、目の前にある大きな小娘の顔は、何だかとても可愛らしく感じる。
小娘が呼吸をする度に、その鼻息は全身をくすぐるだけではなく、心臓の鼓動を早くする働きをかける。
手のひらの温かみが背中に伝わり、先程まで感じられなかった女の子特有の甘い香りを、小娘の全身からこれでもかというほど脳に記憶させられる。

「今かけた魔法は、私のことを好きになる魔法です。はじめてこの魔法を使ったので、上手くいっているのか教えて欲しいのですが…。」

天才だ。この魔法は成功している。
一瞬でこの小娘のことが好きになってしまった。
ただ問題がひとつ、この魔法が成功していることを小娘に伝える手段がない。
全身を何一つ、表情筋ですら上手く動かすことが出来ず、ただただ小娘のことばかりが脳内をめぐる。

「上手くいっていないのでしょうか…?もう一度かけてみてもよろしいでしょうか…?」

嫌な予感がし始めた。もしやこの小娘、自身の魔法が成功したとわかるまで何度も試す気ではないのだろうか。
それでも俺の脳内では、この小娘のことをもっと好きになりたいという気持ちで埋め尽くされていた。

「もう一度かけてみたのですが、どうでしょうか…?まだ緊張しておられるのですか?」

もう一度呪文をかけられた俺は、もう小娘のことしか考えられずにいた。
小娘の手のひらに包まれて幸せだ。
小娘の黒目の中には裸の俺が反射して写っており、つまりは俺は小娘に裸を見つめられている。
小娘の香りをもっと感じたい。
小娘のことが、好きだ…。

「あの、反応をして貰えないと困るのですが…。」

好きになってしまったこの気持ちを小娘に早く伝えたい。伝えたいのだが…。

「反応を貰えないなら仕方ありません。男の人って、おちんちんを刺激されると気持ちよくなって、絶頂するんですよね?」

急に小娘は何を言い出すのか。

「緊張して上手く反応出来ないんですよね。突然小さくされて、当然かもしれません。お詫びになるかもわかりませんけど、気持ちよくしてあげますから…。」

そういうと、小娘は人差し指と親指で俺の股間の先を優しく摘み、小刻みに指先を捻じるように動かし始めた。

「どう、ですか…?」

気持ちいい。気持ちよすぎる。
ただ、体に力が入らないため、俺は勃起を上手くすることも出来ずにいた。

「ここを刺激すると硬くなるって聞いたのですが…。あ、ちゃんと硬くなってる…。」

どういうことだろうか、勃起をしている訳ではないのだが…。
自分に何の呪文をかけられたか思い出す。
防御力をあげる呪文だ。
俺の体は、小娘の魔法によって全身が硬くなっていたのだ。

「ならこの魔法、成功していたってことであっていたんですかね?ふふ。」

小娘は、嬉しそうにしながら指先の運動を早める。
しかし、実際に興奮はしているのだが、勃起をしている訳では無い。つまりは、この状態では絶頂まで達することができない。
全身に力を入らないため、射精という行為を行うことが出来ずにいた。

「まだ射精しないんですかー?」

射精はしたい。
頭の中は小娘のことでいっぱいで、脳内では好き、好きと何度も何度も連呼し、その小娘に手コキをしてもらっている状況に喜びを感じている。
その気持ちは何度も昂り、頭の処理では射精はもう既に何度もしているのだが、自分の体の機能が小娘の攻撃力弱体化魔法の影響によって麻痺しており、実際に射精をすることが出来ないこの体で、脳は何度も何度も射精の合図を体に送り、その度に体力は疲弊し、射精した時の気持ちよさだけが頭に残り、余韻に浸る前に射精の合図がまた頭から体へ送られる。

「おかしいな…。もう1回魔法をかけて…。」

ただでさえ小娘のことしか考えられず、何度も脳内で射精を行っているこの状況で、またしても小娘のことが好きになる魔法をかけられ、頭がおかしくなる。
小娘の指先の力はさらに強まる。

「射精していいんですよ?どうしたんですか?」

射精したい、射精させて欲しい…。

「私のこと、好きになったわけじゃないんですか…?」

好き、好き…。

「何か言って欲しいのですが…。」

伝えたい、この気持ち…。



「はぁ…。失敗か…。」

小娘の指の動きが止まり、俺の体から離れていく。

「この魔法、失敗だったみたいですね。変なことに付き合わせてしまってすみませんでした。」

悲しさと愛で気持ちが溢れてくる。
射精させてほしかった、この辛さ。

「あの、今日使った魔法が周りにバレる訳には行かないので、すみませんが処分させてください。」

小娘のことで頭がいっぱいなこの気持ち。

「まず、防御力をあげる魔法は解いて…。」

貴方のことが好きです、そう伝えたいだけなのに…。

「さようなら。」

その手は、ギュッと閉じられ、赤いシミだけが残った。