「…で、私を引き抜きに来たというのですか?そんな話、飲み込むわけがないじゃないですか。」

今、非常にまずい状況にいる。
天才魔法使いのルナ、と話題の子とコンタクトを取ろうとしたところ、不届き者とレッテルを貼られ金縛りの魔法で身動きを取れずにいた。

勇者というものは名ばかりで、伝説の剣を持っている訳でも無く、勇者の血筋を受け継いでいる訳でも無く、ただただ自身で名乗っているだけである。
そんな俺も勇者を名乗り、パーティメンバーの仲間を引き連れて世界を旅し、魔王討伐へ向けて常日頃特訓をしている。
ある日、興味深い情報を耳にした。
どうやらとある勇者パーティに、1000年に1度とも呼ばれるほどの天才的な魔法使いがいるというのだ。名前はルナ。
15歳にして既存の魔法を全て習得。今は創作魔法で腕を磨いているという。
そんな逸材、是非ともパーティメンバーに加入して欲しい。つまり引き抜きだ。
まずは交渉から。その魔法使いが運良く今同じ村にいるというので、コンタクトを取る事にしたのだが…。

「わ、悪かった。もうこんな話は持ちかけないから、帰させてくれないか。」
「ふぅん…。ところでお兄さん、結構たくさん経験値をお持ちのようで。」

何か企んでいるのか。小悪魔のような悪い表情を浮かべた魔法使いは、何かを思いついたような仕草をし、俺に向かい魔法をかけてきた。

「勇者は、私のパーティの勇者様1人で十分です。貴方のような勇者を名乗る不届き者は、私のパーティの糧になってもらいましょう。」

気がつくと、魔法使いよりも身長が高かったはずの俺の目線は、魔法使いを見上げるような形になっていた。
目線が低いだけではなく、周りの景色が大きくなったような気もして…。

「貴方を小さくさせていただきました。」

この魔法使い、何を言っているのかと思ったが、どうやら自分の姿は指先で摘めるほどの小さな姿になっていた。
ひょい、と簡単に巨大な手に襲われ、指先でジタバタと抵抗をしながらも高度は上昇していき、やがて魔法使いの目の前まで運ばれた。

「ドレインキスって知ってます?通常、HPを吸い取るようなキスですけど、私のキスはちょっと違って、経験値を吸い取れるんです。」

(ん、"経験値を吸い取れる"…?)

「今までたくさんの魔物を狩って努力してきたのでしょうけど、経験値、全部頂いちゃいます。レベル1からやり直してくださいね。」

俺の小さな身体が、右手の人差し指1本で魔法使いのぷっくりとした柔らかくて艶やかな唇に押し当てられ、唇が身体の形に沿って優しくへこむ。
その瞬間、脳が"早くこの場から離れるべき"と感じ取った。
それもそのはず。俺の身体から魔法使いの唇へ、経験値が吸い取られている感覚がわかるのだ。
今まで鍛え上げた全身の筋肉という筋肉が少しづつ衰え、体に力が入らなくなってゆく。
唇から少し指先を離し、位置を少し変えて何度も何度も押し当てられる。
その度に卑しい音を立てて、興奮するな、と言われても難しい状況に追いやられる。
たまに甘い吐息で誘惑し、「クスクス」と小さく笑いながら、再び唇への全身キスが再開する。

「あはっ…♡興奮すればするほど、いっぱい吸いとれますから、その調子ですよ。今度は…♡」

左手の手のひらに移動され、うつ伏せになり逃げようとしたところを簡単に指先で転がされ、仰向けの状態にされる。
目の前には先程まで何度も身体を押し付けられた唇が広がる。
すると、本来小さいはずのとても大きな口が糸を引いて開き、中から唾液で妖しく光る舌がこちらに向かって登場した。

「ん…♡」

これが女の子の舌であることを見せつけるかのように目の前でうねらせ、俺の興奮を高めた上で唾液にコーティングされたその舌を使って俺の全身をねっとりと舐め上げてきた。
それも1度きりではなく、何度も何度も股間や顔を念入りに舐め上げる。
舌の表面はザラザラとしており、粘土の高い唾液と相まってとても気持ちのいい感触で俺を襲う。
その度に俺の経験値が止まらずに吸い取られ、みるみるとレベルがダウンしていく。
舌だけで飽きないように、唇や吐息なども交えて、俺の心は魔法使いの口先に蹂躙されていた。

「結構…たくさん…吸い取れましたね…。では…最後に、いただきます…。」

ぐったりとした俺の体は右手の指先でつままれ、魔法使いの口が大きく開き、舌を長く突き出す。
その舌の上に俺の体は丁寧に運ばれ、魔法使いは舌の上に俺が乗っていることを確かめると、ゆっくりと舌を口の中へと収納していく。
俺の体は完全に魔法使いの口の中へと運ばれ、出入口である唇は完全に閉じて塞がれてしまった。
吸い取れる経験値が残っているかどうかも怪しいこの体から、魔法使いは容赦なく口の中で何回も何回も俺の体を転がし、どこかに経験値は隠れていないのかな?と念入りに確かめる。
どうやら経験値が残っている部分からは味がするようで、その味が無くなるまで飴玉のように…。

口から吐き出された頃には、俺の体はとても貧弱に、1人で歩くのが精一杯なほどにまで経験値を奪われてしまっていた。

「う…ぐ。」
「ふふっ。ごちそうさまでした…。」

返事をする気力もない。
この悪魔め、元の大きさに戻ったら……

「この事が周りに知らされてしまったらとてもマズイので、記憶は書き換えておきますね。」

魔法使いは魔法をかけてその場を去った。


その後宿に戻り、パーティメンバーに今起こったことを全て話した。

「実はさっき、1人で洞窟を調べていたら魔王の幹部に遭遇してな、経験値を全て奪われてしまって…」