勇者、いや、使い魔セラの朝は早い。
なぜなら、あの寝相の悪い魔王ノアを起こさねばならない。
それも、危険な旅をしてではないと、辿り着かないほど遠いのだ。
…正しくは、彼女がそれほど小さいのだ。なぜなら今の彼女の大きさは、人間の1/100の大きさなのだから。

彼女の寝床は、彼女のベッドの脇の、水差しを置くテーブルの上に置かれた。
いや、寝床とは言ったが。これでもかなり豪華な家である。
ドールハウスなどではなく、しっかりとくみ上げられた、まぎれもない家。
もちろん、彼女が勇者であった頃に住んでいた屋敷と比べれば、簡素極まりない家である。

しかし、今の彼女からしてみれば、それでよかった。
一応、意地悪そうにノアは、君の家をそのまま家の隣に作ってそこに住んでもいいといったが、セラは全力で断った。
もしもこんな体であのような屋敷に一人で住むことになれば、まず家から出る前に干からびてしまうだろうし、
それに、世話をしてもらっていたメイドに害虫として踏みつぶされるか、あるいは、そのままごみとして捨てられるかのどちらかだっただろう。
逆にもし、小さくして、という意味であったなら、仲の良かったメイドの少女を自分と同じ目に合わせることになる。
そんなことはご免であった。

さて、彼女が、日課をこなすためには、まず、この家を載せているテーブル。
ここから下に降りて、ベッドに登り、ノアを起こさなければならない。間に合わなければ罰ゲームを受けることになる。
初めは、丸飲みにされて、体内の掃除をさせられた。あんなのは、できればごめんだ。

「私は大腸菌ではないのだ。彼らよりは断然強い。なんせ、1cmもあるのだ」

…まぁ、危うく、腸内で魔王の肉体の一部になるところだったが。

もはや、自分が比べている相手が、ムシケラ未満で、それを誇りに思っている。
そんな自尊心を守る方法でしか、彼女は正気を保てないのだ。

さて、彼女が考えたのは、まず、どうやって下に降りるかだ。
復活にはノアが意識をしていない場合は時間がかかるしなにより痛い。
それに、復活地点を私の寝床にされてしまったため、デスルーラはできない。
よって、この断崖絶壁を降りなければいけない…訳だが。

「今回は、切り札がある。そう!私が使っていた布団!これを使えばパラシュートのように降りれる!
場合によっては、魔王のところまで一っ飛びだ!ふふ、このショートカットを思い付いても実行するものはいないだろう…
まぁ、私だからできることだしな。」

うんうん、と納得するようにうなずきながら、セラは机のはしに…では遠すぎるため、
適当なところまで下がる。そして、一気に駆け抜け、飛び降りる

レベルは下がってはいるものの。工夫などはできる。
戦闘で生かすことができないことであろうと、空を飛ぶことくらいできる!

そうして、彼女は間違いなく飛行した。
しかし、左右に揺れる。
直線でいくことなどはない。頭の真上に落ちるはずが、
忌々しい魔王の大きな…大きな、おっぱいのふもとに落ちてしまった。

セラの胸は、それに比較して、ものすごく貧しい。
もともと、比較的長身だったのに加え、鎧姿であったこともあり、男と間違えられこそしないものの、中性的とまで言われてしまうほどだった。
まさに、小揺るぎもしないのだ彼女の胸は。レベルが下がったとから以前に!貧しすぎて。

そして、彼女が相対するのは、彼女の身長をはるかに超える胸。
セラから見れば、まさに、山。そして、彼女がまさに立っているノアの体は、大地としか言えない。
彼女が何かをしたとしても、小動もしないだろう。
もちろん、セラとは全く違う理由で。

「っと、眺めている場合ではなかった、早くしなければ…また、罰を」

少し悩んで、胸の谷間を進むことにする。
彼女の体では、胸を上ることは、難しい。なんせ、ノアは・・・。
上半身の衣服を一切まとっていないのだ。

つまり、つかめるところがない。そんなところを進むことはできなかった。

そして、セラが半分ほど胸の谷間を進んだころ。まさに、上りに入ろうとしたところで

「うーん」

世界が反転する。
いや違う。ノアがゆったりと寝返りをうっただけだ。
しかし、胸の谷間にいたセラにとっては、それだけのことですら致命的な一撃であった。
バチン!と山が二つ合わさり、大きく揺れる。

セラはというと、辛うじて、すりつぶされるこそなかったが、ノアの山のように大きな胸の谷間に閉じ込められてしまう。

むっちりと、小さな空間に閉じ込められる。

じっとりと、汗をかく。春先だと言うのに、まるでサウナのような息苦しさを味わう。

これがただ、魔王とはいえ、女の子が寝返りをうってできた、ただの胸の谷間なのだ。
「私も…いい加減に理解しなくてはいけないな」

私はもはや人間ですらないと言うことを。

しかし、虫けらであれど抵抗はするのだ。

力を込めて…おっぱいを押し退け突き進もうとする。
しかし、あぁ、しかしだ。

「山を動かせるわけも、ない、なぁ」

どれだけ力を込めても…胸をへこませることもできない。
ものすごいはりだ。そして、それだけではない。
柔らかさのなかに。みっちりと中身がつまっている。
まるで、そう。脂肪の代わりに柔らかい筋肉のように。
もしかして、このおっぱいは、肥大化した筋肉なのではないだろうか。
この魔王、筋肉でバストアップでもしたのか。

そんな頭の悪い妄想をしながらも、セラは自身を奮い立たせる。
こんなところで、倒れてしまうわけにはいかない。

「あいつが起きてしまってはまた・・・」

「くく、だれが起きるんだい?」

「それは、もちろん。魔王・・・?!」

すでにノアは起きていた。
そして、しっかりとセラを見ている。

「い、いつから見ていたのだ?」

「んー?そうだねぇ。君が、家から出てきたころかなぁ?」

つまり、セラの行動はずっと見られていた、ということだ。


「くく、しかし、かわいかったよ?私があげた布の切れ端で空を飛んだり、
ただのおっぱいに挟まれて動けないセラちゃんは」

「ぅ!このデカ乳魔王め」

今の彼女から見れば幼子のものでも、デカ乳だが

「んー?なにかいったかなぁ??もう一回行ってくれるぅ?」

ぎゅう!っと胸だけで体をしめつけられる。

「くく、ずいぶん楽しい冒険だったみたいだねぇ?ボクのただの体の上だったのに。でも、ここまでだよ」

「それで、勇者よ、魔王の胸で倒れてしまうとは情けないなぁ。もっと強くならないと。だから、今日一日は、そこで過ごしてもらうよぉ?あぁ、今日は森に遊びに行きたい気分だなぁ」

今日の彼女の受難は始まったばかりだ。

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キャラクターNo.2
勇者 セラ

この物語の世界での唯一の勇者。
身長は、女性の中では比較的高いほうで、170cmを超えていた。
レベルに関しては彼女が言っていたがレベル1程度なら超えることはあれど、レベルが二回り違えば、本人のみでは覆せないほど。
その中でレベルを蓄えていたセラは間違いなくこの世界観では最大クラスの戦力であった。
が、しかし、魔王ノアによって小人にされた彼女は間違いなく虫けらに等しい。
(実際に、復活後二回目の蘇生理由は、クモに捕食されている)
外見は金髪碧眼ポニーテイル。そして、何より絶壁である。
おおよそ胸といえるものは一切ない。