さて、2人と鎮守府が巨大化して、2日ほどたった。
たったのだが、実は、大きな問題ができてしまったのだ。

「翔鶴の大破率がおかしくないか?」

「・・・・・・えっと、その」

「小さすぎて、翔鶴さん、ボクたちが動く時の波に巻き込まれて、その隙を」

「うぅ・・・すみません提督」

まぁ、予期していた事態ではあった。
ただの動きでさえ、私や翔鶴を振り回しているのに、、ましてや戦闘行動。

翔鶴に被害が出るのは織り込み済みだ。

「それとコアは」

「・・・・・・えぇ、今回も無理だったわ」

この問題も、懸念していたことであった。
考えれば当然ではあるのだ。

【小さかった時点ですら取り出すのに慎重を期す必要があったコアを、今の二人がそう簡単に取り出すことができるか】

結果として、普段、1-2や1-1と呼ばれる海域の駆逐艦たちでは、2人よりも大きさが小さい敵では、コアを残すことができない。

辛うじて取り出せたのは翔鶴の一撃で何とか沈めることのできた駆逐艦一隻分だけであった。

「まさか、戦力の強化のせいで、戦力の強化ができなくなるとは思わなかった・・・・・・」

「それと、もう一つ、私と皐月には殆ど経験が入ってないわ」

「相手にすらならないから、か」

有りがたいことに、戦闘力があがり、翔鶴が大破する以外は、被害をうけなくはなった。
巨大化により時間も短縮した。
当初1-1海域には、3回だった出撃を6回に出来る程だ。

が、それも、2人には経験が入らないし、翔鶴は大破する。
これでは、出る意味がない。

「・・・・・1-2海域は?」

「んー、索敵が足りないのか、何時も見失うんだよね」

「・・・・・・まぁ、巨大な二人なら、電探を積んでればすぐにわかるか」

つまり、翔鶴がある程度育たなければ海域を突破するのも難しい。

「それに、あんまりあのあたりまで行ってると、何が出てくるか分からないしね」

相手の配置も、変わってくる。
かつての希望といわれた艦娘たちの大きさは、今の皐月たちよりも小さかったといわれているが、しかし、練度は皐月たちよりは上だった。

「そうなると・・・・・・ふむ。演習だな」

菊月以来・・・・・・。
だが、まぁ、何とかなるだろう。

コアは手に入らないが、翔鶴の練度向上は間違いなく、戦力の補強につながる。

「幸い、というか、練度不足とはいえ、二人の大きさは、ほかの艦隊の目によく止まった。これは利点だ」

そう、つまり、

『対深海棲艦との戦闘と考えるとある程度大きなほうが、立ち回りがしやすい。ってことだね、司令官』

「そういうことだ。ほかの鎮守府のデータを問い合わせてみたが、どうやら、基本的にそこまで大きくなることは少ない。
つまり、巨大な深海棲艦を相手にするにはこれまで実戦するしかなかったわけだ。
慰安艦の場合は基本動けないからな。演習の相手にはならない」

そういいながら、手元に来たデータ資料を確認する。

「・・・・・・幸い上位の提督から駆逐艦部隊での演習の申し込みがあった。受けれるか?3人とも」

『勿論』

『上位提督だからって負けないわよ!』

「勿論、了解です」

申請を上に挙げた。



「「「「よ、よろしくお願いします!」」」」

『よろしくな!みんな』

元気よく声を出した駆逐艦6隻。

・・・・・・、なのだが、圧倒されている。

レベルは、寧ろ、彼女たちのほうが高い。
全員、改と呼ばれる段階に達成する寸前。
ゆえに、改に至るための、最後の一押しのため、だったのだろう。

私や翔鶴からすれば、巨人といって相違ない。
だが。

「サイズ差が、ありすぎるからか?」

神風に運ばれた小さな家の中から、覗き見る。

「・・・・・」

通信はちゃんとしている。
前回の、遠距離から眺めるだけの演習ではなく、リアルタイムで光景がわかる。

艤装からのカメラ通信が、アクセサリーとしてのこの家に送られる。

翔鶴からみれば、いつもの状態と変わらない、いや、いつもの敵に比べれば、小さな敵艦。
それでも、彼女の一撃がいつもより有効打になるかは、分からない。

だが、それでも、そのあとに見える景色からすれば、まともであった。

彼女たちの大きさは改に至ってない。
提督補正を加えても、精々、30倍ほどなのだ。

「ねぇ、大丈夫?みんな」

「大丈夫!負けないんだから!」

そう意気込むリーダーの少女。
だから、きっと、神風たちは胸を借りるつもりで、演習に移ったのだ。

結果は、ひどいものだった。
そう、この時、敗北、あるいは、いい演習ができていればよかった。

結果をいえば、中止になってしまった
だが・・・・・・

「っ!?あ・・・・ぁ・・・・・!?」

「!?みんな!?大丈夫!?翔鶴さん!司令官と相手の提督に連絡を飛ばして!」


その演習は、失敗としか言えないものになってしまった。

その時の私たちは、演習は肉体言語もありな、菊月との戦いを覚えていた。
実際、演習の中には、そういうものを、全員認知していた。
そもそも、其処まで、差が開く演習は行われなかったからだ。

だから、神風は、物理的に攻撃してしまったのだ。

足元をくぐろうとした相手を踏みつけた後、蹴り飛ばす。たったそれだけだった。

だが、それを行ったのは神風だ。

駆逐艦の少女たちは30倍ほどしかない。
対して神風の大きさは、500倍。

体重差は、・・・・・・・5000倍あった。

蹴り飛ばされた少女は、悲鳴を上げる暇もなく。

海岸にボロボロで倒れ伏していた。


・・・・・・。
以降。
私たちの艦隊に、演習の届けが来ることはなかった。