次の日、提督は興奮冷めやらぬ朝を迎えた。
果たして、昨日あのような体験をしてしまった自分は、これから彼女達を前にして理性を保っていられるのだろうか。抜錨した彼女達を見て、正気でいられるだろうか。

時津風「しれ~、おはよ~……」

提督を眠たそうな声で呼ぶのは、秘書艦の時津風だ。

時津風「しれーも眠そうだね……寝ちゃおっか」
提督「いや、駄目だろ……」
時津風「とか言って……うつ伏せになってるじゃん……じゃああたしも」

時津風は、机に突っ伏している提督に覆いかぶさってきた。
この無邪気さに惹かれ、着任してすぐに秘書艦に任命したのはつい最近の事である。
この覆いかぶさりも、ほぼ毎日やられている。もはや日課だ。

時津風「と、油断させておいて!」
提督「ん?」

時津風の様子がいつもと違う事に気付くには少し遅かったようだ。
時津風は、提督のだらしなく開いた口に何か錠剤のようなものを放り込んだ。

提督「何だこれは?」
時津風「お薬だよ」
提督「俺は別に病気ではないんだがな」
時津風「いんや、提督は病気だよ」

時津風はいそいそと執務室の扉へ向かうと、何重にも南京錠をかけた。
もう出ることは出来ない。一体何をするつもりなのか、提督には皆目見当がつかなかった。
とりあえず時津風の下へ向かい、事情を聞きに行った。

時津風「そろそろかな? お薬が効き始めるの」
提督「ん?こ、これは……」

身体中に倦怠感が走り、頭は朦朧としてきた。この感覚には覚えがある。
間違いなく昨日の龍驤の店でのものと同じだった。相変わらず原理はわからないが、提督は急速に縮み始めたのである。
逆に、目の前に居る時津風はどんどん巨大化し、提督の目線の先には時津風が首からかけている錨の飾りがあった。

時津風「おぉ~、本当に効いてる効いてる」
提督「も、戻せ! 時津風!」
時津風「え~? 戻しちゃっていいの~?」
提督「ど、どういう意味だ……」
時津風「聞いちゃったんだよね~。提督の趣味の事」
提督「お……」
時津風「はいっ! という訳で、戻してあげない! いや、逆に戻さないで下さい! 時津風様~、かな?」

提督は自分の帽子や服に飲み込まれ、外が見えなくなってしまった。100分の1ほどになり、縮小化が終わった所で、提督は迷宮と化した自分の服から脱出を試みた。

時津風「あ、出てきた。それじゃあお出迎えの~、踏み踏みだよ~!」
提督「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
時津風「うりうり~、あたしの足に跪け~」
提督「や、やめろ!!! 中身が、中身が出る!!!」
時津風「ん~、何か言った? 小さすぎて聞こえないな~?」

時津風は足を提督の体から離し、しゃがみこんできた。そしてその顔を提督に覆いかぶせるように近づけた。

提督「どこで知った……」
時津風「龍驤さんから聞いたよ! 秘書艦たるもの、提督を喜ばせてあげるんやで、って」
提督「あいつは……」
時津風「それにしてもしれー、変態さんだね」
提督「……」
時津風「いつもそんな目であたしを見てたんだ?」
提督「べ、別に……」
時津風「じゃあ何で今、おまたを大きくさせてるのかな?」
提督「……」
時津風「大きいあたしに踏まれて、それで興奮するなんて。やっぱり病気だよ」
提督「な、何も言えねぇ……」
時津風「まぁ別にいいけどね。誰にでも変な趣味の一つや二つあるよ」
提督「時津風……」
時津風「でもねぇ、あたしに隠し事はよくない、よくないな~」
提督「すまん」
時津風「いいって事よ! さて、誰も来ない内に色々しますか~!」

時津風がそう言い終わると、ゴゴゴという音を立てながら立ち上がり始めた。
その迫力に、提督は思わず目をみはる。黒いストッキングに包まれた脚は、小柄ながらも美しい曲線美を描いている。
時津風の身長は130m超。脚だけでも70mはある。その大きさは、提督を嬲るには十分すぎるものだった。

時津風「しれー、見過ぎだよ。そんなに見つめてると叩くよ? ……と言っても、今のサイズ差だと、潰しちゃうよね。だから、軽く小突く程度に……おりゃ」
提督「うおわっ!」

時津風は膝を床に突き、提督にその巨大な右手を近づけ、軽く「デコピン」をした。
だが今の提督の体は時津風の人差し指にも満たない大きさである。
そんなものに衝突された提督は、為す術もなく弾き飛ばされ、執務室の絨毯に放り出された。

時津風「んなバカな……見失っちゃった……」
提督「な!? おい! 時津風! 俺はここだ!」
時津風「ん~、しれーどこ~?」

時津風は再び立ち上がると、提督を捜索し始めた。
どうやら本当に見失ってしまったらしい。これはかなり危険な状態だ。この絨毯の森では、自由に身動きも取れない。だが、気付かれずに踏まれたり、蹴られたりしたらまず命は無い。
その為、いち早くここから脱出し、時津風に気付いてもらう必要がある。

時津風「こっちに吹っ飛ばしたような気がするんだよね」
提督(ま、まずい……)

ズウウウウウン……ズウウウウウウウウン……

時津風は提督の居る絨毯の方へと、大きな足音を立てながら近づいてきた。
巨人の接近に、提督は昨夜の興奮を蘇っていくのを感じた。
黒いストッキングの巨塔が提督の眼前に降ろされ、そのまま頭上を通り過ぎていった。見上げると、漆黒のアーチが天に広がっている。
時津風はちょうど提督の真上で脚を広げたまま、静止したのである。あまりに荘厳な光景を目の当たりにし、提督は逃げることも忘れてその場に立ち尽くしていた。

時津風「ここらへんかな……よっこらしょっと」
提督「ま、まさか座る気か!?」
時津風「ここに居たらごめんね~、でもあたしのお尻に潰されて死ぬのなら本望でしょ?」
提督「ほ、本当に死んでたまるか!」
時津風「3,2,1……ドーン! 時津風、着陸~!」

提督は何とか時津風のストッキングのシミにはならずに済んだ。
着陸時の風圧も絨毯にしがみつく事で耐えられた。その時提督は、たった二日で虫としての生き方を概ね掴み始めた自分に感心すると共に、少し情けなさも感じていた。
気を取り直して辺りを見渡してみると、周りは巨大な物で覆われ、逃げ場が無くなっていた。先程の流れから察するに、これが時津風の脚であり、ひいては秘部であるのは間違いない。

提督「こ、これが時津風のおみ足か……」
時津風(あ、居た……良かった、潰してなくて。面白そうだから、このまま見てよっと)
提督「登ってみようかな……」

提督は意を決して時津風登りを敢行した。
手始めに時津風の股間目掛けて突進し、抱きついた。仄かに生暖かさを感じ、鼻孔を時津風の香りが満たした。
ひとしきり堪能すると、まるで体を弄るようにさらに上へと登っていく。

時津風(か、かわいい……ちょっといじめてみたくなっちゃうじゃん)
提督「それにしてもでかいな……登り切るのにどれくらいかかるんだ、これ」
時津風「あ~かゆいな~(棒)」

時津風はわざとらしい演技をしながら、提督の居る股間に目がけて手を伸ばした。
もちろん、提督を潰さないよう、細心の注意を払ってだが……提督にとっては脅威以外の何物でもない。
そして時津風の電柱のような指が、提督のすぐ近くに降臨した。ゴリゴリと不気味な重低音をかき鳴らしながら、その指は提督の方へと向かっていく。

提督「こ、これはまずい! 飛び乗るしかない……か」
時津風(この指から逃げられるかな~)
提督「とう!」

提督は巨大な掘削機のごとく動いている指に、見事掴まる事ができた。

時津風(ん? もしかして指に引っ付いた? やるじゃん)
提督「うおっ!」

時津風は提督をくっつかせたまま、指を眼前へと持っていった。

時津風「へ~い、しれー。また会ったね」
提督「わざと俺の頭上に座り込んだだろ……」
時津風「ん~ん、あれは本当に偶然。それ以降はわざとだけど」
提督「本当か~?」
時津風「あたしの事、信じてくれないの?」
提督「あまりにもピンポイントすぎてな」
時津風「まぁまぁ細かいことは気にしない! 楽しかったんだからそれでよし! ね?」
提督「……」
時津風「名残惜しいだろうけど戻してあげるね。はい、これ浴びて」

時津風は頭上から謎の液体を垂らした。それを浴びた途端、提督の体が急速に元の大きさへと戻っていった。

提督「本当に何なんだこの技術は……」
時津風「だから細かい事は気にしない! また遊んであげるから、楽しみにね」
提督「お、おう……」
時津風「今度はもっと小さくしてあげる。ここに居る……」
提督「?」

時津風は言葉を途中で切ると、脚を振り上げ、床に目がけて一気に振り下ろした。

ドスン!

時津風「ノミよりも小さくね! 大体1000分の1くらいかな?」

その仕草に思わず勃起してしまった。提督の眠れない夜は続く。