ダンジョンの3層を降りて4層目、
階段をくだりようやく目的の階層に付いた!と意気込み新たに歩もうとしたところ。

「勇者くん、ちょっとバック確認してみない?」
と、仲間のプリーストさんが口を開いた。

それはそうだ、この先は目標エリア。何があるか分からない。

解毒ミント、辛党人参、目覚めのポーション、のど鳴り飴、その他色々…。盗まれてないか…。
よし…揃ってる。

「うん、大丈夫だよ」
「よかったぁ、まぁ私達なら全滅しても貴重な物持ってきてないし大丈夫だよね!」
「そんな縁起でもない…」
「でも女神様なら何とかしてくれるから!勇者くんも気に入られてるし!」
「うーん…だとしても回復の為に教会へ行くのはちょっとなぁ…」
とはいうものの、『負けても失う物がない』状態はある程度気楽なものがある。
酒場に貼られた討伐書を片手に2人でダンジョンに乗り込み、
勝つにしても負けるにしてもパパッと戦い今夜の酒場で祝勝会か反省会か。
プリーストさんとは仲が良く目的も合致しているので雇用費もかからない。
そう、これは『負けても勝っても良い戦い』なのだ。

今回のダンジョンミッションはイタズラ妖精の討伐依頼。
普段は1層で群れて新米冒険者を四方八方から飛び散り撹乱するモンスターだが…。
たまに2層に降りて来る個体がいる。その個体は他のモンスターと群れ出て状態異常をかけ
戦略の幅が出て来るので、これまた鬱陶しい。

また、戦闘中でなくともその小さな体を活かし、
容赦無くバックからアイテムを盗むのでこれも痛い。

その為にポーションやら解除剤やら、盗みの囮であるブドウを買う必要が出て来るので、
これがまた新米冒険者の壁となっている。
『コストとリターンとリスクに見合うかどうか』という
お財布事情とのにらめっこが新米冒険者の大きな課題である。
この時に白魔術を使える仲間が居れば非常に頼もしい存在となるだろう。

だが、ここまでならいい。

経験していけば慣れる事だからだ。
けれどもその次、3層にもなると妖精の姿は
時おり囁きが聞こえるだけで影も形も見せはしない。
それほど弱く小さい生き物なのだ、あのモンスターは。

しかし、4層で目撃情報が入った。
いや…被害報告とも言うべきか。
それなりの数と戦力のパーティーだったらしいのだが…道中暗くなったかと思いきや…
ひとり…ふたり…と、奇襲で次々脱落して行き…目を覚ました頃にはダンジョンの外。
厄介なのがその後の状態異常で、強制脱出してもステータスで残る
麻痺、石化、重力拡大と面倒臭い状態異常が残されていてもう散々だったらしい。
他にも半壊の被害があちらこちらと…。

その為、状態異常には念には念を入れて対策して来た。

けれどもその『イタズラ妖精』には未確認な情報が多い。
地震でグラつかせて来たとか、突風を浴びせて来たとか、巨大なスライムを使役するだとか…
みんなチグハグだ。それほど厄介な相手というわけなのだろう。

おそらくレベルが上がったか…魔法のスクロールを盗んで習得したか…
1層で他を出し抜き、2層で味をしめて、3層で腕を試し…4層で自分の巣を張る…。
つまり…群れから出世した特殊個体、それなりの経験があるやつで油断は禁物らしい。

「うわぁ…なにこのアイテム…しけてるねぇ…」

チリッと耳元をくすぐる音に思わず飛び跳ねた。
全身の血液がサーっと引いて、無理矢理身体を動かそうと
激しく心臓が高鳴りそれを受け止めようと足が地を踏みしめ臨戦態勢!

眼前に飛び廻るは目標のモンスター!イタズラ妖精が飛び出して来た!
「2人で来るとかデート気分?私、そういうの見るとめちゃくちゃにしたくなるんだよねー」

不意を突かれた…!けれどもこれは好都合、探す手間が省けたからだ…!

「プリーストさん!」まずは一手、
呪文で強化して貰おうと声を張り、来たる興奮に呼吸を整える!

…が、来ない!

えっ?と振り返るともどがしそうに口をパクパク開けバッグを漁るプリーストさんが…!
沈黙の状態異常だ…呪文を唱えられないでいる…!
それにしてもと道具を漁る時間が長い…まさか!

「まっずーい!人間達ってホントにロクなもの作らないわね!」
沈黙解除用のど飴を舐められている…!さっき盗まれていたか…!

完全に半分戦力を削られた…!
けれども一太刀浴びせるか、
情報を持ち帰れば今回は"勝ち"であるから戦闘を続行する…!

「ねーぇあなた達、他の人間のようにブドウとかリンゴとか持ってないのー?つまんない!」
「討伐対象にそんな贅沢用意すると思っているのか?」
「こんな可愛い妖精の私を倒そうっていうのー?ひどーい!もったいなーい!」

その時、グラッと心臓に電撃を撃ち込まれたかのような衝撃を感じた。
うっ…確かに…もったいない。
スレンダーな身体付きも…盛りが大きい方が自分の好みだが何故かグッと来てしまう。
もしかしたら話し合いで解決できる相手かもしれない。
相手は人型、どう考えても人間とコミュニケーションが取れるタイプのモンスターだ。
見れば見るほど、凝らして見るほど人と違うのはただ大きさだけとも思えてきた…。
もっと…もっと…近くで見てみたい…。

むにゅっと背中に当たるものがあった。
それは厚ぼったい皮の鎧からも分かるような…
柔らかさと良いハーブの香りで…。
これは…プリーストさん?

誰でも分かる甘い香りを振り払い、ついに正気に戻れた…!
自分は魅了の術をかけられていたらしい…。
ペンッペンッとやきもち気味に頬を叩かれこそばゆい。

「はー!?なにそれ!?そんな癒し方あんの!?ずっるーい!」

魅了には魅了で打ち勝つのが一番。状態異常の鉄則だ。

けれども納得がいかないのか…それとも魅了の術の邪魔をした
プリーストさんが憎いかキッと見返すイタズラ妖精。
なにか、逆鱗に触れたようだ。

「そんなにその子の胸が大好きなら一生そこに住んじゃいなさい!」
ひとつ、スクロールを、ふたつも、スクロール。みっつに呪文を唱え…。
あれは盗まれたとされる冒険者の使い切りのスクロールだ!

思わず盾を構えて来たる呪文に思考をねじる。
紛失物として届けられたのは炎と氷の簡易スクロール。
見切って弾けば大したことはない…が、問題なのは妖精の呪文の併せ撃ち!

ずんっと身体が重くなり今まで以上に重力を感じる…!
プリーストさんも喰らったらしい、慌てて背中に手をついたのだろうこれまた重い…!
しかして呪文を受け止めればどうにでもなる術だ。重い背中をピンと伸ばし攻撃魔法に備え前を向く!

けれども眼前には閃光で煌めく回避不能の状態異常の光線が飛んで来ていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「勇者くんっ…!勇者くんっ…!」

頭と鼻頭がつーんっとなって、青空のすがすがしい空気が肺を通る。
うっ…これは全滅特有の強制帰還。自分たちは…負けたのか。
まぁ負けて当然、それより情報を書き留めないとっ…
と、手を突いた地面がふにゃりと柔らかく…空を見上げるとプリーストさんの大きな顔が…。

「あっ…これは…」
「あははっ手ひどくやられちゃったねー…」

手を伸ばしても顔にも届かないこの縮尺、
近くに見える木が1歩2歩では届かないほどに霞んで遠距離感が分からない。
ミニマムだ…!ミニマムを覚えていやがった…あのイタズラ妖精。
サキュバス系統の中級呪文、物質を縮小する厄介呪文ミニマム。
そんな呪文を使うのなら…やはりそれなりのレベルの奴だろう。
今度はきちんと対策を打って出向かわなければ。

「で、それでね…あの…手を突いているそれなんだけど…」

えっと周りを見渡しすぐ把握する。
これは…プリーストさんの胸の上だ…!

「ご、ごめん…。今、降りるから…。」
「そういうわけじゃなくって…!」

ミニマムになった経験は幾らかある。
体重が軽くなり、わりと高い所から降りても反動は小さく、思ったよりも軽快に動ける。
なのでダンジョンではミニマムをされた時、そうやって逃げ回り
物陰で縮こまり味方の助けを待つのが常だが…。

だが…降りてみるとまるで重力のベクトルが地面ではなく…逆に上…今しがた降りた胸の方。

まるで『あなたはここに居なさい?』というように柔らかく、
けれども有無を言わさぬ圧力がかかって…下乳にぺたりと張り付いた…!

「あっ…!」
「ああー…そうなっちゃうかー…」

まるでそうなる事が分かっていたかのように、導くように。
下乳にするりと優しく差し込まれた手においでおいでと誘われたので
下乳に沈む身体をグッと這いずらしやっと乗る。
優しく包むように握られる手が心地良い…。
グングンと上昇する手には身体を全て預けてしまいたくなるようだ…。

だが…胸の上に乗せられただけで…対面する事は許されなかった。

「勇者くん、知ってるよね…?結界魔法の事…」
結界魔法…ダンジョンに発生する大型モンスターに追われた時に、たまに使うことがある。
原理は分からないけど、対象の相手をフロアに封印し逃げたり戦ったりなどなど…。
完全には止められないものの、
相手はまるでその重力からは逃れられないといったように便利な魔法だが…。

「うん…それがね…勇者くんを対象に私のおっぱいにかかっているみたい」

なんと…まどろっこしい事を…。

確かに胸の上で背をもたれようと…まだそこは完全に安定している場所なわけでなく…
圧力で引っ張られる場所はその奥、胸の谷間に吸い込まれるように流れているようだ。
現にずぶずぶと乳の奥へと身体が呑まれ行くのを時おり戻しているのが現状だ。

「ご、ごめん…」
「まーまー、私は大丈夫だし…役得だって思おうよ!」
役得…なのかなぁ…確かにふかふかの胸の上に寝そべるのは……気持ちが良い。

「でも仕方ないから早く教会行って戻してもらお?ね?」
「う、うん…」
状態異常アイテムは基本的な物しか買ってなくて、プリーストさんもそこの治癒は覚えていない。
縮小や封印系の状態異常はそれこそ教会で全回復したほうが話が早い。
ただ…他のシスターにこの醜態を見られるのは…。ちょっと恥ずかしいかもしれない。

「じゃあ、ちょっとそこで待っててね」
すると空が雲に覆われたかのように巨大な…前掛けが垂れ落ちた。
あぁそうだ、忘れてた。小さい身体だから忘れてた、
タイツばかりに目がいっていたが…これがプリースト本来の姿だ。

「あはは…こうなっちゃうと見えないね。まぁ…だけどこれなら恥ずかしくないかな?」

プリーストさん自身は…そうかもしれない…。
ただ自分からすると…外の景色が見えなくなったり…外界との接続を切られたようで…。
薄暗く…光の差込口は脇にかけての一筋の光なだけで…。
まるで空間がプリーストさんに支配されてしまったかのようで…。
よりいっそう…なんだか恥ずかしい。

「まぁ…恥ずかしくはないかな?」と、噓をつく。
布越しにくぐもった声は…ちゃんと格好ついたのであろうか?


プリーストさんの足音に合わせて…胸がゆさゆさと揺れ動く。

ははっ…巨大な機兵に乗り込んだようだと。
自分もいつかは巨大ゴーレム兵を用いて冒険をしたい…と、思って…。
なるべく…プリーストさんの『女』の部分を意識しないようにしているのだが…難しい。

…少々、胸に沈む感触は否応無く頭をとろけさせ…
もし許されるのなら…顔をうずめたくなるし…いっそ沈んでしまいたくなる。

また、空間による支配も強敵で…。
脇の端から流れる涼しい空気を、
プリーストさんのタイツ越しに蒸される体温を感じ…安心感を求めるように身体を暖める。
そんな事ばかりをしているから…依存してしまう。まるで年上に甘える子供のように。

「ちょっと~くすぐったいよ~」

意識すると急に無性に身体が疼いて来た。
この空間は…気持ちが良いと。頭の芯で分からされて…魅了された時のように快楽で沈む。
このまま…このまま…ここに居たら自分は…。

「あははっ、ちょっと蒸してむず痒くなっちゃったからどいて貰える?」
それは何気なく無意識にしてしまった行為なのだろう。

落ちないようにしてくれたか、サービスのつもりか。
見えない勇者を手探りで探し当て。右手で身体を片乳に押し当て…
もう片方の手でポリポリとむず痒い場所をかく。
そんなただ普通の行為。

だが小人としてはどうだ、火照る身体を突然持たれ…
重力を放つほど引かれる乳に押し当てられたのだ。

一瞬、ビクっと身体が跳ねて思わず快感が脳裏に伸びる。

それに気付いたのがプリーストさんだ、
『えっ』と手を放して…乳を放り出してしまい…。
ぶるぶる揺れる乳から逃げられない憐れな小人をぺちんと両胸で押し潰し…!
まるでそれが呪文の最終目的であるように双方の胸が小人をずりずりと揉み刷り込む…!

あっ…!と、ひと際大きな波が来て………。


「あははっ………ごめんね?ちょっと…間違えちゃったね…」

プリーストさんが…ガバっと胸を開けてくれて…
胸にぺたりとねばつき貼られた勇者を水で濡らした布巾で拭ってくれた。
自分が…非常に情けない…。

「ま、まぁ今回は勇者くんの番だったわけで…いつもは私が守られているからさ!
今度は私がお世話して守る側になっただけだよ!大丈夫だって!」
そういう問題では…ない気がする。

「ほら、まぁ…男の子なら仕方ないし、こんな機会はもう無いと思うから…さ!」
「うわわっ!」
ほら、ぽーんぽーんって…ふざけるように…胸を上下に揺らす。
もちろんそんな事をしたら…トランポリンのように飛び跳ねさせられたら…
待ち受けているのは…胸の谷間なわけで…ずにゅっと呑まれるように潜り込み…。
光が漏れるその乳穴からはプリーストさんがニヤニヤと笑っていた。

「そー、そー、こんなのエロサキュバスの呪文なわけだからさ、仕方ないと思うのよね。
確か…全身パイズリ拘束魔法だとか…。すっごいよね~サキュバスのこだわりというかなんというか。
それともサキュバスにとってはこれが一番コストが安くて合理的なのかな?」

プリーストさんの言い分は…なんとなくわかる。
つまりはこの情事は…不慮の事故。気にしなくて大丈夫とは言ってくれている…。

だからって…!だからって胸の奥底に置き去りにするのは違うんじゃないだろうか…!
それにしたって先程から…好奇の上ずる調子に乗った声が聞こえているのだ…!
もしかして…プリーストさんは、この状況を楽しんで…?

ずりずりと…
歩きに合わせてふるえ…身体の、肉体の隙間に潜り込もうとする乳の肉。
昔、砂鉄を溶かして食べる鉄スライムを磁石で捕獲する冒険者の姿を見た事がある。
それと似たような感触だ、タイツ越しのはずなのに胸がくっ付こうとぬるぬる這う…!

タイツを掴み…よじ登ろうにも…そのタイツ自体が胸の奥底へと押し込んでくるのだ…!
掴んだ瞬間、ぐわっと手にくっ付き…汗と胸の蒸気でぬるぬる押し込められる…!

それを見てかふふっと微笑みパチンっと乳穴を閉ざすプリーストさん。
その微笑みには…聖女の様な慈愛の心は含まれていなかった…!

まず、精神を落ち着かせるために深呼吸。
肺にむわっとプリーストさんの汗と蒸れが立ち込めるが…。まだ大丈夫。
もがけばもがくだけ楽しませることになる。
このままじっと…身体を丸くしていれば大丈夫…。

「………。」

ドク…ドク…と、ただただプリーストさんの心音が聴こえるのみ。
早く街についてくれと…ただただ祈る。
ただその祈る姿をプリーストさんは感じ取ったようだ。


「あっ!」と、聞こえた途端、突然乳から放り出された。
重力がぐるりと身体を回し…何事かと思いきやプリーストさんが転んでしまったようだ。
そのまま…逃げられるかと思ったが、そんなはずもなく。
下乳にずるりと到着。

「あははっ…ごめんねー…転んじゃった」

いいや、わざとやったのではないか?という
わざとらしい声が振りかけられてくる…。

だが…良いかもしれない。
下乳と腹に挟まる情けない姿だが…先程の乳圧に挟まる空間よりはずっとまし。
ずりずりと…重力に抗うように下乳の裏側に回り込もうとするが…。

プリーストさんは、
「あれ~どこ行くんですか~?勇者くん大丈夫ですか~?」と、
片乳をぷるっと揺らし、むぎゅむぎゅとほだし、パクっと開けた穴で定位置へと誘うのみ。
それだけで…乳に落ちてしまった。

あなたはこっちでしょー?と胸の奥底に引きずる力に、
いいやそこは自分の居場所ではないと抗うものの…
つぷっと指で押し込められたらもはや逃げられない…!

「あはっ勇者…かわいい…
全身パイズリ拘束魔法のせいかな…おっぱいが吸い付きたいーって動くんだ…
もし…クセになっちゃったらどうしよう…あの妖精さんのところまで魔法の事聞きに行こうかな?」

ぐにぐにと…胸を擦っては…時たま走ってぶるぶる小人を翻弄する。
四方八方に振り回すのが楽しくて…今まで勇敢に戦っていた勇者を一挙一動だけで楽しくて…。
どんなに弄んでも最終的には最奥に戻ってくるその感触を楽しんでいるのだ。

いつのタイミングかは分からない、射精してしまっていた。
2回か…3回か…それ以上か。

そんな果てた身体に気付いたか、
プリーストさんは前掛けをずらし…べろりと楽しみ…ただそれだけ。
癒しの呪文を唱えただけで、また前掛けを降ろし暗闇へと置き去りにした。
もはや優しい言葉をかけられずこのまま繰り返し何度も何度もただ快楽を貪るために…。

サキュバスが何故この魔法を開発したかお互い思い知る事になった。
もっとも捕食者と、獲物としての視点だが。

装備も服も全部外され、自分も何回胸に腰を打ち付けたか分からない頃。
ようやく街の活気のある音が耳に響く。
やっと…やっと着いたか、と少しずつ人間性を取り戻す。
プリーストさんもプリーストさんで、社会に生きる以上最低限の体裁を保つため
猫背で貪っていた時とは違い、しゃらりと伸びて背筋をピンと立てて…。
『待っててね』と前掛けを降ろし隠してくれた。

色々あったけど…まぁ楽しかったなぁ…と。胸の上で振り返り、
しみじみと…とんでもないことをしてしまったと…のんびり街並みを眺めながら思想にふける。
脇の隙間から見える街の景色が小さい身体だと新鮮で、
これも役得かもな、と…。だらだら見続けていると…教会が見えて来た!

だが…足は教会の方ではなく…宿屋の方へと向かい…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
イタズラ妖精の件は方が付いた。

プリーストさんが説得してくれたのだ。
甘味、お菓子、果物、その他色々。
わりと人型モンスターによくあるように、交渉に応じてくれたらしい。
討伐依頼報酬は…というと、ほどほどには貰った。まぁギルド面子もあるからなと。

ただ交渉してからというもの、
4層に入ると時たま妖精が手助けしてくれるという話を聞くようになった。
もっとも…甘いものが無いと状態異常をかけられるとか、
助けてもらうも縮小魔法をかけられ危機から脱出させてくれただけで
パーティーメンバーに小さい姿を笑われたとか…。まだまだ課題はあるらしい。

ただプリーストさんから聞くに
友人になったとか、ちょくちょく会っているという話をよく聞いている。
状態異常解除の魔法を聞いてたりもするとか。
さながらミニマムはミニマムを重ねがけすることで解除出来たりするだとか。

自分はというと元には戻れた。身体も魔力も異常無し。
プリーストさんに引っ付く姿を女神像には呆れられた様な視線を向けられながらも、
なんとかは…戻れた。ただ…。


ただ…自分は…足繁く妖精の元に通う、プリーストさんが気になって…つけてみることにした。
だって…今日はいつもと違い他の冒険者を連れ込む姿を見たからで…。
そこらで適当に捕まえたのだろう…新米冒険者を4層に連れ込んで…
わざと見つかってイタズラを受ける…。のを、観察する。姿を見た。

米粒以下か縮小された冒険者を貼り付け妖精が魔法の原理を説明、
こうすると男の子は喜ぶんだよーと実演を見せている。

思わず声が出そうになりうずくまる。あの呪文を学ぶ恐ろしさからか、あの快感が忘れられないからか…
呼吸が早く、荒く、そんなものがバレないわけもなく…。

突然、目の前が真っ暗になった。

いやでも知っているあのハーブの香りがする…前掛けの匂い。
じっと抱き着かれながら、彼女に重力を引き込まれながら…。

「勇者くん、ちょっと手伝ってもらえるかな…?」
と、新しい呪文を披露したい魔術師かのように言い放った。