月食

20XX年10月、本日は月食が起きる日である。
さらにこの日は天気も良く雲が殆どない数十年に一度あるか無いかの絶好の月食の観測日である。
この月食は日本全国で観測することができ、老若男女問わず日本に居る殆どの人が月食を観測していた。
都内に住む小○校6年生の『大河 月子(たいが つきこ)』 もその一人である。

「わぁー月が隠れていくよー凄い!凄い!」

名前通り月が光っているかのような長髪の金髪を揺らしながら自宅の近くの小さな公園で月食を観察する月子、周りに大きな建物が殆どないので月食を見るには絶好のポイントだったりす。
しかし、月子以外には人影が見当たらなく月子一人が公園を貸切状態である。

「でもやっぱり、展望台で見たかったなー」

公園に人が居ない理由は簡単だった月子が住む町は住宅街なので高い建物は殆ど無いのだが唯一高い建物が全長500mの巨大な電波塔がありそこの最上階には展望室があり多くの人はそこで月食を観測しているのだ。
しかし、展望室に昇るには入場料が必要で月子のお小遣いでは入れる金額ではなかったのだ。

「みんなズールーイー!!あたしも高い所でお月様みたいー!こんなことならお小遣い貯めておくんだったー」

後悔先に立たずとこうゆう時に使うのかなと思いつつ、ひとつのアイデアを思いつく。

「タワーに昇れないのなら、タワーより大きくなればいいんだ!」

そんなバカなこと普通小○生でも考えないような発想だが、月子は小さいころから自分の身体を巨大化させることが出来るのだ。
何故巨大化できるかは月子自身にもよく分かっていない。
また、最大でどれだけ大きくなれるかも分かっておらず過去に片手で数えられるくらいしか巨大化したことが無いのだが一度限界まで大きくなってみようとして地球が月子の人差し指の指先よりも小さくなってしまうくらい巨大化してしまっても尚限界がまったく訪れる様子がなく慌てて元の大きさに戻った経験がある。

「それ、大きくなるよー」

べつに声に出す必要は無いのだが声に出した方が調子が出るらしく巨大化する時はいつも何かしら声を発しながら巨大化するのが月子の中でお決まりになっている。
そして、月子が声を発すると徐々に『ぐぐぐ・・・』と音を立てつつ身体大きくなってゆく、成長とは違い月子の身体を拡大している感じで身体つきに大きな変化は見られなく、まさに巨大化と表現するのが正しいといった感じだ。


「『小さく』巨大化するのって難しいんだよねー気を抜かないようにしないと、とこれくらいかなー」

月子の身体は300mを超えたくらいで一度巨大化が止まる。
町の住民は月食を観測していたらいきなり巨大な女の子が現れ混乱している様子だが、月子は特に気にする様子はない。

「ふふ、巨大化する時って不思議と気持ちがいいんだよねークセになっちゃいそう、さてこれでタワーと同じくらいかしら・・あれ?」

月子が言った通り巨大化の制御は難しいらしくタワーの方がまだ200m程大きかった、今の大きさでも月食の観測には十分なのだが、タワーより小さいのが月子にとって不服らしく、月子は怒ったような顔をしている。
ただ本気で怒っているわけでは無く怒った顔ではあるがどこか楽しそうな雰囲気も感じ取れる。

「ふ、ふーんだ!タワーの皆さんあたしが見えますか?今はまだあたしより高い位置で月食を観察しているみたいだけどすぐにあたしの方が大きくなるんだから!」

急に一般人にとっては巨大な300mの女の子が現れ展望室にいる人たちは早く逃げないとやら、ただ月子を見ていたりともはや月食どころではなくなっている。

「それ、もう一度大きくなるよ!!」

『ぐぐぐ』とさらに巨大化をはじめる月子、今度こそタワーより大きくなってやるという気持ちが大きいのかタワーと同じ500m程になっても巨大化は止まらない。

「考えてみたらタワーと同じ大きさじゃつまらないよね」

あっという間にタワーの倍の1000mになる月子だがまだ巨大化は止まらず2000mを超えた所で一度巨大化が止まる。

「どーよ!これであたしの方が大きくなったね!これで月食が特等席で見れるね!」

月子は膝辺りにあるタワーを地面から抜き取り抱きまくらのように抱きかかえる足と伸ばし月子的には『ぺたり』といった感じだったのだろうが、実際には『ズシン』と大きな音を立てて地面に座る。

「さて、小さな皆も一緒に月をみましょ・・・・あれ?」

月子が巨大化をしてる間に月食は終わっており、さらに段々空が曇りはじめ満月すらも見えない状態になっていた。

「あー!月食終わってる!月もなんだか見えないしもーサイアクー!」

しょうがないので元の大きさに戻ろうとしたとその時月子に一つのアイデアが閃く。

「月が雲に隠れて見えないのなら!」

月子はタワーを投げ捨てる、タワーは近くに落ち大きな音をたてながら跡形なく崩れてしまう。
おそらく、中にいた人は殆どが助からないだろうがそんなことは気にする様子もなく再び巨大化しはじめるのであった。

「雲がある位置より大きくなれば月が見えるじゃない!」

どんどん大きくなる月子さっきまでの2000mの大きさでも十分な大きさを誇っていた月子だがそれすらも霞んでしまう程の大きさになってゆく大きくなるにつれて月子が座っている範囲も当然広がっていき次々と町が月子のお尻に潰されてゆく。
そして、ついに月子は座った状態でも胸から上は雲の上50000mまで巨大化していた。

「くぅーっやっぱり巨大化は気持ちがいいわね、つい大きくなりすぎちゃうわ、でもこれで夜景が私が独り占めできたわね」

月子の言うとおり当然だが周りには人も建物もなく月子の独占状態であった。

「月はーっと、あったあった、大きくなったせいかさっきより月が大きく感じるわ!素敵ねー」

しばらく夜景を楽しむ月子であったがずっとじっと座って月を見ているのは流石に暇になってくる月子。

「んー飽きた!」
「なんだかかんだで月って遠くにあるのね、もっと近くで見てみたい!!」

『ごごご』と今までよりも勢いを増して巨大化をはじめる月子。

「巨大化すればもっともっと近づけるよね!それ、それ巨大化ー!!」

座っていても胸より上が雲な月子がさらに巨大化していき頭はもう宇宙にある月子それでも巨大化は止まらない、どんどんどん巨大化していき座っていても雲がある位置は月子から見れば地面から数センチの場所になる程巨大化していた。


「もっともっとー」

ついには地球の半分ほどの大きさになる月子それでもまだ巨大化を続ける月子。

「ふふふ、巨大化気持ちいよぉー」

そして、地球より少し大きくなった所で一度巨大化を止める月子。

「どれどれ、月はーっと、あったけどまだ遠いわね、それもう一度ーっ」

さらに早いスピードで巨大化する月子地球がどんどん小さくなっていく。
それと同時に月までの距離は縮まっていくが地球より小さい月はさらに小さくなってゆく。
そして、ついには地球が片手に収まる程の大きさになる月子、元の10億倍元々の月子の身長が145cmなので145万kmほどになるのだろうか月子から見れば月なんてゴルフボールくらいしか無い大きさである。

「月がちいーい、地球もちいさーい」

月子は月を掴みしばらく指で遊んだ後さらに巨大化し100億倍の大きさになる。

「じゃあ最後に月を食べちゃおうかなーこれが本当の月食だね、いただきまーす」

月子にしてみれば小さい口を大きく開け一口で月を食べてしまう。

「んーあんま美味しくない?てか、味なんて殆どしないや、さて今度は」

あろうことか今度は地球に目をやり地球をぱくりと食べてしまう。

「ふふふ、地球って青くて美味しそうだったんだよねーまあ、月と同じで味なんてしなかったけど」

そして、月子はさらに巨大化をはじめる。

「この際だからもっともーっと大きくなって巨大化の限界に挑戦してみよう」

どんどん巨大化していく月子は火星や水星など太陽系の惑星や衛生を潰したり食べたりして巨大化を続ける。

「これが太陽?ちいさーい、あたしの小指の方が大きいんじゃない?つぶしちゃえー」

一瞬で太陽を潰す月子それでも巨大化はとまらない、銀河をいくつも潰しブラックホールすら、米粒以下に小さい存在になっていた。

「まだまだ、あたしの限界に達しないのにもう、大きいものが無くなっちゃった・・・あっ」

ググググググッッッ!!!

「ついに宇宙より大きくなったよ、それ宇宙どかーん」

宇宙より大きくなった月子、それでもまだまだ限界にはならないようだ。

「宇宙の外に別の大小沢山の宇宙があったのね、でもあたしの方がずっとずうぅぅぅぅっと大きくなるんだから!」

言葉通り月子はどんどん大きくなっていった。
今では月子の細胞の核一つに宇宙が数えきれない程の数が収まる程に大きくなっている。

「あーあ、もう比べるものが無くなちゃった、まだまだ大きくなれるのにー」

結局月子の巨大化に終止符が打たれることはない今も無限に巨大化を続けているという。