ズシーンズシーンと音を立て、黒髪和服美女とドレスを着た美少女が都市へ向かって歩いて行く。
集落の一つや二つ、踏み潰したかもしれないが、気付いているかも怪しい。

「見て、お母さん。小人の街よ」
都市まで数歩というところで、少女がはしゃいだ声を出す。
「そうね」
と微笑んだ母親はしかし、すぐに目を細めて不機嫌さをあらわにする。
「小人は小さすぎて表情が見えなーい!これじゃせっかく蹂躙しても、快感が半減以下だわ」

その言葉を受けて少女がハンドバッグから何かを取り出した。
「そんな時はこれ。ミヅキ博士の拡大鏡よ。掛けてみて」
母親は流れるように優雅な所作で、差し出された拡大鏡を受け取った。
それを掛けてみると、青ざめて震えている小人の表情までハッキリ見えた。
「すごい!ミクロレベルの黒目までハッキリ見えるのね」
そんな興奮気味の母親から、娘が静かに離れていく。
「あら、どうかしたの?」
「ねぇ見てお母さん」
笑顔で母親の質問に答えた娘は、彼女たちにとっては小さな高層ビルの上に足を上げた。
そしてゆっくり下ろしていき、音もなく足は接地した。微かに何かを踏んだ感触はあったかもしれない。
「ちょっと足を乗せただけで、ビルが粉々になっちゃう私だけど…」
そう言いながら、どこからか取り出したもう一つの拡大鏡を、少し離れた小人の町に置いた。
彼女は拡大鏡と町に背を向けると、ビルに足を乗せた時とは違って、勢いをつけて腰を下ろした。
町はどの建物より大きな拡大鏡とともに、それより遥かに大きなお尻の下敷きとなった。
「ほら、そんな私が座っても傷一つない」
立ち上がった娘は、拡大鏡を拾い上げて自慢気に見せる。
「あらら、町一つどころか、振動や衝撃で二つも三つも跡形もなくなっちゃったのに」
拡大鏡と町を交互に見ながら、母親は感心しきりに呟く。
「さすがミヅキ博士よね。とっても丈夫なの」
「本当!見やすくて丈夫。素晴らしいの一言ね」
そこで二人は寄り添って立ち、カメラに向かって満面の笑みを浮かべてポーズをとる。
「私たち、ミヅキ博士の拡大鏡がだーい好き」