では、ほのぼのしたメイドモノを一筆(w
館の主 エルンストは高熱のため一週間ほど床に伏せていたが、
今日になってようやく熱も下がり 快適な朝を迎えることができた。
ベッドから起きあがり カーテンを払って窓を開けると、
朝露を含んだ爽やかな風が 汗で湿った部屋の空気に代わって入ってくる。
それと同時に、彼の右手 館の傍らで膝を抱えて眠っているメイドが目に入った。
膝を抱えているメイドといっても、彼女の膝はエルンストの視線
つまり3階の窓と同じくらいの位置にある。
「メルフィ、どうしたんだい? こんなところで」
思わず出た頓狂な声に反応し、そのメイドは伏せていた顔を上げる。
「え?……あ、おはようございます、ご主人様ぁ」
いかにも眠そうな、間の抜けた声。メルフィと呼ばれたメイドは
身を乗り出して窓の近くまで顔を寄せ、まだ幼さの残る主人をじっと見つめる。
「もう体調は宜しいようですね」
しばしの観察の後、彼女はそう言って微笑む。
視界の半分を占める暖かい笑みに、エルンストの表情も自然に緩む。
その反応を見て、メルフィは小さなご主人様に こう提案した。
「もしお体に障らないようでしたら、少し散歩に出ませんか?」
「いや、朝ご飯がまだだから……」
エルンストはそう言って断ろうとしたが、「庭を回るだけでも」と
押し切られてしまい、結局差し出された掌に乗ることになってしまった。
朝の散歩の代償として、朝食時に彼女がこっぴどく絞られたことは
もはや説明を要するまい。