ある日のことだ。俺が上からかけられた任務。砂漠地帯に途中大きな谷があり、その谷の真下に某国で強力な
兵器を作っているという情報がはいり、俺はそこで強力な兵器を回収してくることだった。最近では、その某国
に対して各国ごとで同盟を組み、攻防戦が続いていてあともう一押しというところで強力兵器を完成させてしま
うことはあってはいけない。回収が最善、最悪は破壊。こんなくそったれた任務を引き受ける気にはなれなかっ
たが、カジノのギャンブルで失った金を国が変わりに払い、任務遂行にはそれなりの対応はうけると言って来た。
 私生活のためにも、俺の自由のためにもこの任務に俺は参加せざる終えなかった。

 現場に行くと、思っているより警備がそれほど厳重ではなかった。恐らく、他の兵は戦火を駆け巡っているの
だと思う。廊下にも白衣をきたおっさんばかりだ。しかし、扉はセキュリティーカードが必要らしく、中々奥に
侵入ができない。そこで、いっちょ手頃な研究員をとっつかまえて私物を拝借。とりあえず、ロッカーの中にで
も入れておいた。

 俺は、一応研究員に変装し、奥へ進んでいった。なんだ、一見楽そうな任務だったんだなと思いつつ例の強力
兵器が置いてあるという部屋に入った。
 部屋の中は暗く、とりあえず電気をつけてみると相当広かった。まるでここからスペースシャトルでもうちあ
げるのかとおもうぐらいだった。そして、目の前には強力兵器。こんなものが実在していいのかと思わず後ろに
引き下がる。
「・・・ぅう、今度はなんですが・・・?今日は終わりじゃないんですか・・・?」
 女性の声。偉く上空から聞こえる。女性は、何故か青い水着姿で金色の髪が肩よりやや下ぐらいの長さだ。
兵器と聞いた、俺はてっきり鉄の塊と遭遇するのばかり思っていたが、ここまで刺激の高い兵器は始めてだ。し
かし、人型ロボットなら荒っぽい方法でも持ち帰ることもできそうだ。いや、今ふつーに電子音じゃなかった。
「人間か!?」
「ぅう、酷いです。私だって好きでこうなったわけじゃないです・・・。それに、なんで今更私に『人間』だな
 んて確認を取るのです・・・こんなふうにしたのは・・・貴方達じゃないですか・・・」
 女性は偉く怯えている。が、負けじまいと気を強くもっている。こんなハイテクな機械は見たことがないな。
彼女は人間か・・・。まぁ、こんなに大きな人間が街中を歩くだけでも歩く巨大兵器と呼べるかもなぁ。
「名前は?」
「GIA・・・ギアです。貴方達が勝手に、私の名前を変えておいてって———」
 ギアと名乗る、女性は途中でしゃべるのを止め、こちらに気づいた。
「いつもの研究員とは違う人・・・。だ、だ———」
「静かにしろ!」
 まずいと思いすぐさま大声を上げてしまった。女性はびっくりして身を縮めた。っといっても、両手は吊るさ
れ、ぺたりと座りついている状態だからびくっと肩あげたぐらいだ。
「君を助けに来た」
「私を?」
「あぁ、だから今は静かにしてくれ」
「はい・・・すみません・・・」

 俺は、昇降機に登り、両手を縛っている鎖を外しにかかった。昇降機で上ってる最中に思ったが、相当な高さ
だ。彼女・・・ギアは座っていてこの高さから見渡すことができるのか・・・。
「あ、あなたは・・・いったい?」
「俺は、任務でここにきた工作員さ」
「あぅ、違った・・・えと、あの、お名前は・・・?」
「あー、俺か・・・そうだな・・・コンだ。名前なんてどうでもいい」
 ガチャガチャと鎖の切断に専念する俺。下を向けばギアは俺の方を見上げている。
「しかし、そこまで大きいと俺を見るのも大変なんじゃないか?」
「いえ・・・もうこんな姿になっても相手の姿もくっきりと見えますよ。普通に考えたら、ありえないんでしょ
 うね・・・。私はもう人間じゃないし・・・」
 残念そうな顔をして視線を下ろすギア。望んでこうなったわけじゃないようだ。
「いいや、君は人間だよ。姿形がすこしおかしくなっただけであっても、君は感情のない機械とは違う。立派な
 人間だ」
「・・・こんな私を?」
「あぁ、こんな刺激のある女性は初めてだ」
「ふふ、コンさんってやさしいんですね」

 ガチャンと鎖を外すことにできた。すると、勢いよく彼女の両腕は力なくしたに落ちていった。その間、壁に
などにぶつかり大きな傷を残したが、ギアの手は痛そうにはしていなかった。まぁ、俺もあと少しでこの巨大な
手に潰されそうになったが。俺は昇降機に乗って、ちょっと下に下り今は胸とへその間の階にいる。
「よし、あとは、ギアが立ち上がって天井から逃げれば完璧だな」
 しかし、ギアは動こうとはしなかった。肩をがっくりおとし、手を地べたにおいている。
「どうしたギア?」
「あの、万が一のことがあるかもしれないということで・・・私の足と手に強力な痺れ薬があってうまく力がは
 いらないんです・・・。しばらく、まってくれませんか?」
 そういいながらギアは自分の手で太ももを揉み解そうとしたが、手が震えてうまくいかないみたいだ。まぁ、
確かに、そうでもしないとギアが脱走などしないためにでもあるが・・・酷いありさまだ。
「じゃあ、痺れがとれるまでまとう」
「ありがとうございます・・・」

 数時間がたった。ギアは両腕は回復したが、足の痺れはまだ残りうまく立てないよくてたち膝ぐらいだ。
「大分、痺れが抜けてきました」
「そうか、ところで君はどうしてここにいるんだい?」
「私もよくわらからないです・・・。ここにきて、だんだん以前の記憶がわからなくなってきて・・・どうして
 でしょうね・・・」
 ギア自体、わからないようだ。そんな中だった。緊急事態が発生した。
「うわあああ」
 突如下から聞こえる奇声。俺は急いで下をみると白衣の研究員が尻餅をついて驚いているではないか。
「しまった」
「し、侵入者だぁー!」
 研究員は急いでたちあがり、扉の方ににげようした。しかし、研究員は爆音とともに、また尻餅をついてしま
った。巨大な手、ギアが扉をぶっ壊してしまった。さらに、研究機材を手当たり次第剥ぎ取り出入り口を塞いだ。
「助けを呼ばないでください!私はもうかえりたいんです!!」
 研究員は「ひえええ〜〜」と言いながらギアから逃げて行った。しかし、赤のランプは点滅し、うーうーと、
警報が鳴っている
「えぇ、どうして!?」
「いや、ギアそんな大音立てたら緊急事態発生ぐらいわかるさ。中には少しだけだが警備員もいたしな」
「うぅ〜、ごめんなさい・・・」
「過ぎたことは仕方がない、今はココから脱出することが最優先だ。立てるか?」
「や、やってみます」
 そういうと、ギアは腰をあげた。その間にゴゴゴゴゴと揺れた。ギアの体重がかかり、揺れを引き起こしてる
のだろう。巨体なギアの体がじょじょに高くなるにつれて、肩や胸にあたり鉄の梯子を破壊した。
「うおおお!」
 上空からはギアが接触して破壊した鉄の塊を気合で避けた。ガガシャン!グワッシャン!ガランガランと轟音
をたてる。ギアからすれば少し立ち上がっただけである。
「だ、大丈夫ですか!?コンさん」
「あぁ、なんとかな・・・」
 ゴゴゴゴと地響きをあげギアは俺の元へ近寄ってきた。まぁ、俺からみれば股部分が近づいてきたみたいなも
のであるが、ギアが前進してきたことによって上空の胸が上の階を胸でガガガガっと擂ってまた、鉄の塊が降っ
てきた。が、今回はギアが「あ、危ない」と言い手を傘にして俺を護ってくれてた。
「あ、ありがとう・・・」
「いえいえ、私がいけないんです・・・。気にしないでください。」
 そういうと、ギアは困ったそうに笑った。
「どうも、たち膝がギリギリですね・・・。研究員の人がくるぐらいですから・・・そろそろ薬が切れるんじゃ
 ないでしょうかね」
「そうか・・・だったら、ギリギリまでここでしのぐしかないな」

 警報装置が作動してから数分。侵入者がどこにいるのかがわかっている状態でここまで動かないのはコンにと
っては初めてだった。しかし、出入り口の扉はギアがぶっ壊し警備兵も中に入ることができない状態だ。緊迫し
た中でコンはギアの回復をまった。が、壊れた扉をバズーカだかでふっ飛ばし、扉に大きな穴があいた。
「ま、まずいぞ!ギア、まだか!」
「あ、あと・・・ちょっとなんですけど・・・まだ、違和感が・・・」
「なら時間を稼がないとな・・・」
 そうコンが言うと、ギアはしゃがんだ状態から向きを変えて元扉だった穴にドスンと座った。この行動には予
想がつかなかった。
「これなら大丈夫ですね」
「あ・・・あぁ・・・」
 その辺の資材で穴を塞いだり、手で入り口を塞ぐという考えにいたらなかったのかとコンは思った。
「あぅ」
「どうした?」
「なんか、今・・・お尻になにかあたりました」
 そうギアがおそるおそる言うと数秒後には爆発音と叫び声が聞こえた。
「なんなんでしょうか・・・私、怖くなってきました・・・」
「いや・・・気にしなくていいだろう・・・」
 恐らくバズーカかなんかをぶっ放したがやわらかい尻は、それを弾いたのだろう。まったく、重火器を弾くと
は恐ろしい・・・とコンは思った。それから、ギアは足の痺れを速く良くなるように違和感のある場所を揉んだ。

 ドゴーン

「ひぃいぃやぁ」
 突如、ギアは奇声を上げながら勢いよく立ち上がった。その際壁に背中をぺったりとつけていたギアの体に触
れバキバキバキという音が鳴った。また、頭にもたくさんの鉄製の橋が乗っかった。
 ドシンドシンドシンっと両足をばたつかせながらギアはお尻を両手で隠した。その際、足元にあったものはひ
とたまりもなく沈没していた。
「今度はどうしたギア!」
「あわわわ、すみません。ちょっと急にきたもんで、びっくりしちゃいました・・・」
「何がきたんだ?」
「え・・・え〜っとですねぇ・・・今思うと、こんなに驚くもんじゃないんですけど・・・あつってきて・・・
 その・・・」
「なるほどな。でも、なんかそのショックのおかげで立てるようになったじゃねえか」
「あ・・・」
 そびえたつギア。改めて見ると凄い大きさだ。コンがいる階からすると膝ぐらいの大きさだ。さきほどギアの
突然の出来事で一部破壊されている。正面にいたら即死だったろう。しかし、そんな安堵している場合ではない。
警備員が部屋に入ってきた。ギアなら助かるかもしれんが、俺はギアみたいにはいかない。
「とりあえずギア、逃げるぞ」
「は、はい・・・でもどうやって?」
「上だ上。両手両足を壁に着けてよじ登るんだ」
「わ、わかりました。やってみますぅ」
 ギアは両手を壁につけ力を加えるだけで壁は軋み凹んだ。この場所は大きな穴みたいなところであり、ギアが
出陣する際はいちいちこうするのかと考えると馬鹿げているようにみえる。いや、ここはギアの製造所であるな
ら使い捨ての施設なのか?深さも天井には屋根があるがギアなら簡単に破壊できるだろ。ジャンプしてグーで叩
いて辛うじて届かないと上手い具合につくってある。突如ギアは俺をつまみあげ、胸元に下ろした。
「脱出するときはそこにいてください・・・恥ずかしいですけど・・・頭だと天井で潰れちゃいますから・・・」
「あ、あぁ・・・」
 俺は凄い弾力のあるところに載せられた。まさか、こんな夢にまでないことが起きた。
「きてよかった」
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。それより、急ぐぞ」

 ドゴン!ドゴン!1つずつ丁寧に上るギア。もし、少しでも間違えたら即に下まで落ちるだろう。そのときは、
俺は死ぬのだろうか?と考えていた。下では警備兵がギアに狙撃を試しているのだがギアはまったく気にしてい
ないようだった。
「攻撃受けてるけど・・・大丈夫なのか?」
「ふぇ?あ、はい。全然大丈夫ですよ。ただくすぐったいというかなんというかわからないですけど」
 そして、気づけば天井付近でついに頭がぶつかり天井を突き破る。ガラガラと残骸が降ってくる。胸元にいる
とはいえ、安置ではない。残骸が降ってきた。避けれないと思った刹那。足を滑らせ谷間に吸い込まれて直撃は
しのいだが、壁と壁に挟まれている状態である。嬉しいが窮屈で正直しんどい。
 ドォンとギアはようやく地上に上半身を倒すことができた。その際に俺もぺちゃんこになるかと思ったが、奇
跡的に潰れなかった。俺という存在を忘れていたのだろう。
「あぁ!!コンさん大丈夫ですか!」
 バッドエンド。いや、残念ながら生きてるよ。大穴からギアはでて、胸元から俺を救出してくれる。開放され
たが貴重な体験をした。今後一生ないのだろう。このあとギアはどうされるのだろうか?俺の知らない場所で殺
されるのだろうか?
「コンさん!コンさん!返事をしてください!」
 大音量で呼びかけるギア。気絶したふりをしたら鼓膜がどうにかなりそうだ。目を開ければ目の前には巨大な
ギアの顔。普通なら塵でもみるかのような感じなのかな?それともダニとかノミあたりか、別にそんなことはど
うでもいい。体全身が痛い。嬉しかったが。
「俺は大丈夫だ。後は、味方がくればそれでよし・・・」
 これで、いい・・・。そのあと、俺はくたりと倒れてしまった。
「コンさん?コンさん!ダメ!死んじゃだめぇ!!」


 私の目の前で、侵入者が倒れている。普通侵入者なら排除すべきなのかな。でも、不思議に排除とかしたいと
は思わなかった。別に侵入者は殺せというきまりはないし、だいたい私にはどうでもいいこと。むしろ侵入者に
救われた。薄暗く、やや大きい箱に閉じ込められていた私を侵入者である、彼、コンは私を救ってくれた。しか
し、彼は今目を閉じ倒れている。あたりを見渡せば戦闘機が空を飛んでいる。あの、ロゴは・・・この施設でも
みた。敵だ。私はあっちの人間ではない。
 でも、どうすればいいんだろう?私を拉致し、謎のカプセルに入れられ、日がたつごとによくわからなくなっ
て気がつけば大変なことになっている。もう取り返しのつかないことをアイツラにされた。でも・・・でも、戦
闘機を叩いたら死んじゃう。人が死んじゃう。嫌だ。敵だけど殺してはならない。
 逃げる?どこへ?私1人で?嫌だ!
「コンさん・・・、私どうしたらいいのかな?ねぇ・・・返事をしてよ。また、指示してよぉ・・・コン・・・」
 ダダダダと銃器の音。標的は私。でも、このままだと流れ弾でコンさんにあたったらどうしよう・・・。ここ
まで来て捕まりたくない。私1人逃げたくない。でも、どうしていいかもわからない。私はわからなくなり、コ
ンさんに弾のあたらないように傘になってあげた。私1人じゃなにもできない。
「あ、あんた達の攻撃なんて痛くないもん!」
 私はアイツラに一言いってやった。本当はそれでも気が済まないけど、これでいいの。四方八方からの攻撃が
私にくる。やがて、銃声から爆発音まで聞こえた。一気に総攻撃を仕掛けたのかと思ったら、いつの間にか、攻
撃が止んだ。私はコンさんから視線を変えあたりを見渡す。すると、アイツラが制圧されている。
「どういうこと・・・?」
「ふぅ・・・なんとかなったか」
 私の下から聞こえた小さな声。でも、私にはその声が何なのかわかった。思わず目に涙を浮かべてしまった。
最後の最後で私自身が窒息させて・・・殺しちゃったのかと思った・・・。
「コンさん!」
 私は思わず彼に言った。そしたら、コンさんは後ろにちょっと飛んじゃった。でも、嬉しかった。


 目を覚ましてたった一言喋ったら吹っ飛ばされた。寝起きの目覚まし時計なんて敵じゃない。
「いきなりどうした」
「あぅ、ご、ごめんなさい・・・私、嬉しくって・・・本当によかったぁ・・・」
 ぐず、ぐずっと彼女は大きな体を起こし、目をこすりながら泣きながら喜んでいた。大きな手に囲まれていた
が、今はそれがない。そして、あたりでは増援がきて任務は無事遂行。
「よかったな、ギア。これで自由だ」
「はぃ・・・、ひっく、ありがとう・・・ごじゃいました・・・」
「泣くな、せっかくの顔が台無しだぞ?」
 そう言うとギアは顔をごしごしして涙を拭った。そして、にこっと笑った。「えへへ」とでも言いそうだ。そ
のあと、ギアは俺を肩の上に乗せてくれた。
「でも、どうしてこんなことが起きたんでしょうね?」
「ギア・・・。俺の話聞いてなかったろ?」
「え?何か言ってましたか?」
 思わず、呆れた。
「俺が倒れる演技をする前に“味方がくればなんとかなるだろう”って」
「アレって演技だったんですか?!」
 いや、意識はもうろうとしていたが、黙っておこう。
「こう見えても鍛えてるんだよ。でないとギアを助けられなかったよ」
「私のために・・・」
 勘違いしているように見える。
「でも、ギアが戦うという選択を取っていたら正直どうなってたかわからなかった。ギアは優しいから例え、
『敵であっても攻撃はしないだろう』てね。おかげで作戦どうりに言ったてことだ。敵もギアが攻撃をしたらや
 ばかったけど、性格を知っていたから攻撃をしてきた。アイツラは一気にごり押しするのが得意戦術だから小
 細工をかけてやったのさ」
「はぁ・・・」
「後ろから攻撃したら防御のとりようがないだろ?」
「そうですか〜?」
「じゃあ、びっくりして奇声を上げながら足の痺れを吹っ飛ばした女の子は何なのかなぁ〜?」
「ううぅ・・・コンさんのいじわるぅ・・・」

 こうして一通り説明をしていたらアッチも片付いたようだ。迎えのヘリがきたが手の信号で『先に帰れ』とサ
インを送るとヘリからもサインがでて、ヘリはどこかへ行ってしまった。
「何をしていたんですか?」
「ヘリと会話してたんだよ」
「工作員ってすごいですねぇ。私もなれませんか?」
「いや、ギアは無理だな。というか、女の子が戦場を駆けてはならない」
 時間帯も夕方だ。地平線にまもなく沈む太陽がみえる。砂漠地帯に工作員と水着姿の彼女。実際はありえない
話だ。
「ギアはこれからどうするんだ?」
「私は・・・わからないです・・・」
「そっか」
 この後、彼女は一体なにをどうされるんだろうか。こんな大きな体では街で生活はできない。むしろ人として
扱ってもらえないだろう。
「でも、私、嬉しかったです。コンさんに『人間だよ』て言われたときは。私、閉じ込められていた時は研究者
 たちに化け物、化け物っていわれてましたから・・・」
「酷いこと・・・されたんだね」
「でも私は強く生きたいと思うんです」
「そうだな」
 ギアの右手は砂を掘ったり埋めたりというしぐさを取っていた。機械ではこんなこと高速ではできない。
「G、I、A、か・・・ギアじゃなくてガイアの方いいんじゃないか?」
「ガイア・・・ですか?」
「あぁ。歯車より大地の女神の方あってるよ。ギアは優しいから」
 おっと、ギアっという単語ばっかり連呼していたから癖になってしまった。するとギアは頬を膨らませてこう
言った。
「ギアじゃないですぅ。ガイアですぅ。私、女神様になれるようにがんばりますぅ!」
「そうだな。ガイアならきっと女神になれるよ」
「コンさんはどうするんですか?」
「そうだなぁ・・・。わからん」
「あのぉ、迷惑じゃなければお願い聞いてくれませんか?」
「ん?」
「私、そのぉ・・・女神っといってもですねぇ・・・何をしていいか分からないから・・・その、コンさんと一緒
 ならわかりそうな・・・気がして・・・あ、でも、迷惑ならいいです」
「別にかまわんよ?」
「ほ、本当ですか!やったぁ!」
 夕日に映る彼女の顔は本当に嬉しそうであった。ガイアが女神になるっために俺を必要と言われても、俺も女
神なんてまったくしらない。まぁ、なんとかなるだろう。国が借金返してボーナスっぽいのもくれるのだし。結
果的に何でも良かった。


 後日。国の要求に対して、増援をしたということで借金を返すという話は無かったことになり、ちょっとした
お金だけもらった。しかし、コンに後悔はなかった。借金になれているというのはおかしいが、ガイアとふたた
び、砂漠に来てガイアに砂風呂というのを教えたところ「やってみたい」といい、穴を掘ったところが偶々油田
だったという。今ではコンは石油王。しかし、工作員はやめてはいなかった。
 そう、彼は自由を愛しているからだ。そして、ガイアと共に日々を送っている。