この話は普通の男の子の紀光と、普通の女の子(仮)神奈の話である。


 新年、新しい年を迎えた。高校2年でいよいよ今年から受験勉強が始まるのかと考えると嫌になるものだと思う。
部活もしていなければただ暖々と日々を過ごしている。それに新しく勉学が含まれるのだから困ったものだ。一応、
進路は就職が厳しいから進学してみることにした。そして、今日は初詣に彼女と行く予定で待ち合わせの公園に向
かうところである。
 待ち合わせの公園に着いてのはいいものの、神奈の姿は見えない。どうやら一番乗りのようだ。俺は公園に入る
なり、近くのベンチに座って待つことにした。しばらくの間、神奈が来るまで携帯電話でとりあえず、ポチポチと
ニュースなり見ていると軽い揺れを感じた。俺は携帯電話から視線をどかし、電柱からぶら下がる電線を見てみる
と揺々と揺れている。風も吹いているものだから最初は気にもとめずに再び携帯電話イジリを始めた。しかし、
次第に揺れは大きくなり遠くから地響きか何かが聞こえてくる。近くで火山でも噴火したのかと思い携帯電話で確
認をとろうとした瞬間、辺りがふっと暗くなった。例えるなら、雲が太陽を隠したかのようなもの。
「ごめ~んのりみつ君」
 頭の上から聞こえる声。聞き覚えのある声だが、いつもより遠くから聞こえるから継いたばかりかと思い顔を上
げれば目の前にいるのは彼女、神奈だった。しかし、いつもの神奈ではない。
「か・・・な・・・?」
「えへへ・・・びっくりした?」
 そう彼女は俺の目の前で両手を腰に当て、えっへんポーズで神奈は俺の目の前に立っている。ダッフルコートに
身を包み、ミニスカから黒のサイハイソックスにブーツ姿。格好は問題ないが、大きさに問題があったのだ。俺は
「どういうこと・・なの?」とおそるおそる聞くと「ふふーん。大きくなっちゃった」と答えたのであった。
 もはや初詣でどころではない。

 

 今の状況は俺はベンチに座っていた。しかし、目の前にいるのは巨大化した彼女。目の前にあるブーツも幅6mは
くだらなくはない。対象物がわからない。とりあえず、大きい。100倍ぐらい大きい。頭も90度頭を上にしている
状態だ。
「隣座っていい?」
「無理に決まってんだろ!!だいたい、足だけでもぺしゃんこになるわ!」
「じゃあ、ここに座るもん」
 
 ズゥシィイイイン

「ずしーん」
「『ずしーん』じゃねぇよ!もっと重々しいわ!!」
 俺の目の前で女の子座りをした神奈は公園のジャングルジム、シーソー、ブランコが一瞬のうちにぺしゃんこに
してしまった。揺れもすごかったが、公園の敷地内の8割以上は彼女の下敷きになったが、被害はそれだけに収まら
なかった。尻から座った神奈が次にとった行動は大きすぎる太ももを大地に落としたのだ。太ももは公園の敷地内
を飛び越え住宅街に侵入し、俺はその間にいる。
「あのー・・・神奈さん?どうしてそこまで大きくなったんですか?」
「う~~ん」
 神奈は両手を組み考えている。
「・・・お餅の食べ過ぎ?」
「んなわけねーだろ!!」
 俺は思わず立ち上がって指を刺した。ここでつっこまないで何時つっこむむのだ!

 ドゴォォォン!!

 俺の後方で凄い音がした。その後に砂埃もすごくでた。後ろにミサイルが落ちたのかと思うと神奈が両手で体を
支えて俺の方にのりだしてきた。
「そんなことより・・・。初詣、行こ?」
「は・・・はい・・・」
 俺は神奈が差し出した手に乗り、ぐんぐんと高くなっていき、肩の高さにポンと乗せられた。てか、落ちたら
即死じゃね?
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
 そう神奈が言うとゆっくりと立ち上がった。そして、景色もぐんぐん高くなる。俺はダッフルコートをしっかり
掴んで恐る恐る下をみてみると、そこにはベンチだけ残った公園と、数軒下敷きになっている家があった。こうし
てみると、公園の敷地内に今の神奈は入れそうにない。公園を挟んだ道路に足があり、そこから俺を見ていたんの
だと思う。パンパンっとスカートに付いているゴミを叩き終わると神奈はゆっくりと神社の方角へむかったのであ
った。公園は犠牲になったのだ。さらにいうと、尻の下敷きになった家も数軒確認できた。

 ドォン ドォン ドォン

「ちょっと!ちょっとちょっと!神奈さん!下!下みて下!!」 
「ん~~~?」
「よし。まず止まって!お願いだから!」 
「酔った?」
「それもあるけど、もうちょっと下見て歩け!色々と踏んでるぞ!!」
「私に?」
「まず、俺の話を聞け!!」
 人が道路を歩くのは問題ない。が、その人がもし100倍サイズだったらどうでしょう?足は道路からはみ出し住宅
に侵入。半壊のものもあれば綺麗に踏み潰された建物もある。
「さっきから、足に色々ひっかかるの・・・」
「それは電線だろうな。しかし、それより家を踏むな家を!」
「ほら、見てよ?ブーツの紐にこんなに絡まってるの」
「あぁ。俺の話を聞かないか?」
「それは置いといてさ、一つ言っていい?」
「・・・なんだ?」
「神社通り越したね」
「あんだけリズミカルに進めばな。てか、ここ駅前じゃねぇか」
「ふーん」
 肩に乗る俺は馬鹿なのだろうか?さっきから大声をだし、やっと今神奈は止まったのだ。神奈の目の前には駅の
セントラルタワー、確か110mぐらいあるのだが、神奈の方が遥かに大きく屋上に育ち盛りの胸のヘリポートみたい
な感じだ。神奈にとってはやっと障害物が立ち塞がったのだった。
「セントラルタワー・・・大きいね」
「そうだな。外からここの屋上より高い所で景色を眺めるとは思わなかったよ・・・」
「頂上行く?」
「やだ」っと言う言葉を聞くまもなく神奈の巨大な手に摘まれ頭の頂上にポイっと落とされた。
「引っ張らないでよ?」
「何故頭に置いた?」
「しっかり捕まっててね」
「俺にどうしろと?」
「ほんっとうに、大きいね」

 ふっふーんっと神奈の声が口元から聞こえた気がした。セントラルの窓ガラスから巨大な神奈の姿が映しだされ
ており、今から悪戯するぞ!という顔だ。左手を肩に当て、右手をぐるんぐるん回し、3回小さくジャンプ。その
ジャンプの影響か、セントラルタワーの窓に亀裂が入った。そして神奈は「よーし」と言う。よーし?捕まってて
ね?ん?何かがおかしい。
「待て!何をする気だ」
「ボディボンバーーー!!」

 ドス ドス ドガァアアアッシャアアンン!!

 ボディボンバー、別名ただの体当たりは勢い良く神奈のおっぱいは屋上を擦り始めた途端、腹部、股、膝とセン
トラルタワーに次々と直撃し神奈という巨体がフロアというフロアを満遍なく覆い跡形もなく粉砕し、神奈はセン
トラルタワーを貫いた。
「アハハハハ~おもしろ~い」
「殺す気かバカヤロウ!!」
「ごめん、ごめん。元の位置に戻してあげるから、ね?」
「違う!そういう・・・あー、勝手に掴む・・・ぐぇ」
 話の途中で俺は神奈に捕まり、また肩の位置に置かれる。くるり、とセントラルタワーを振り向くと、神奈の膝
より下の高さの建物なっていた。幸いにも当たり判定から免れたのだろう。
「ちっちゃく・・・なっちゃったね」
「セントラルタワーはゴールテープではございませんよ?」
「うん」

 ドスン! ドスン! ドスン!

「ってなにやっとんのじゃお前は!!」
「神罰」
 ドスンという地響きを立てながら神奈はセントラルタワーの残った部分をブーツで丁寧に踏みつぶしてあげていた。
「・・・神々の鉄槌。ふふ・・・」
「何言ってんだお前は?」



 そんなこんなしている内に空は薄暗くなってきていた。昼間から待ち合わせしているのだからもたもたしている
とあっという間に陽が沈むのだ。そして、神社の前にきた。此処に来るまでどのぐらい被害総額がでたのだろうか?
「なぁ、神奈さん?お洋服がボロボロですよ?」
「あ、本当だ」
 流石にボディボンバー以降から派手な動きはしていない神奈ではあったが、あまりの楽しさに体に継いた砂埃と
いうなの瓦礫を神社の前で叩きだしたのだ。ボンボンと叩くたびに、服についていた瓦礫は神社、及びお客様を
標準に無差別に降りかかった。
「可哀想に・・・」
 そう俺は呟いてしまった。一体どうしてこんなことになったのかと。そして、膝元から落としていたゴミを払う
手がついに肩に来た。
 
 ボスッ

 という、音と共に巨大な平手を位俺も瓦礫と共に叩き出されたのだ。建物を軽々く粉砕できる神奈の手に真正面
から衝突して自分の体を維持していられるのは神様が俺にくれたお年玉なのだろうか?「あっ」という声もあとか
ら聞こえてきた。
 俺がんばったよな、つっこみ。薄れ行く意識の中で自分に納得する答えを出した。
 



 ドテン

 
 そんな間抜けな音と共に俺は目を覚ました。ここはどこ?俺の部屋。今日何日?今日1日。ぐるぐるまわる記憶
さっきの出来事はなんだったんだろうか。夢か。そうだよな。夢だよな。あーーーーよかった。初詣か。待ち合わ
せは何時だっけ?13時。今何時?13時。よぅし、少しぐらい遅れても大丈夫だろう。
 そう、勝手にテンションをあげ、でかける支度をしていると部屋がふっと暗くなった。電気を付けるスイッチを
おそうと手を差し伸ばし、窓を見ると
「のりちゃんおっそいからむかえにきたよ~」
 と窓に収まりきれない神奈の顔があった。開いた口がぽかーんとなる。
「どうしたの?」
 外から神奈が俺に言う。「っふ」と俺は鼻で笑い、乱れた布団を正し、ベットイン。


 おっし。寝るか