世の中わからないことが起きるものだ。俺は極普通の高校生なわけで、それなりにマイライフを楽しんでいたわけ
だった。だがある日のことだ。突然自分の身体に降りかかる災難に出くわしてしまうとは・・・。


 学校。まぁ、別に格別凄い学校っというわけでもない。こうやって、学校に向かっているといつもの場所にてアイツ
が入るわけだ。
「ちょっとあんた!学校遅刻するわよ!」
「あ~わりぃわりぃ」
 と、小学校からクラスだけはずーっと一緒のコイツの名前は池田弥恵。少々怒りっぽいのは学校に遅刻するかもしれ
ないというギリギリの時間に俺が優雅に歩いてきたことに腹を立てているようだ。
「別にあんたは遅刻してもいいかもしれないけど、私は遅刻するわけにはいかないの!」
「はいはい。あー、教室ついたら英語のノートみせてくんね?宿題やってねんだわ」
「だーれが!あんたなんかにみせますかってのよ!」
 そういうなり、池田はスタコラサッサと走ってしまった。走って行くくらいなら俺をわざわざ待っている必要はない
んじゃねぇかと思うが、まぁいいか。


 というのが、今までの日常だったわけだ。それが急に世界がかわっちまうんだもんな。

 
 放課後。英語の宿題をやっていないわけで、提出しないといけないわけで、居残り学習をさせられているわけだ。
まあ、当たり前だ。英語は不運なことに1時限目からスタート。チャイムと同時に入場した俺にはその場で「誰かノート
を写させてくれ!」なんてことは言えず、今日の放課後までノートを出すということで、他の皆のノートは回収された。
中には、俺と同様やっていない奴もいたのだが、うまい具合に頭の良い奴からあとから教えてもらってさっさとゲーセン
やらカラオケやら遊びに消えていったわけだ。裏切り者め。
 放課後にはノートは帰ってくる。っと思った矢先、先生はちょいと出張らしく、出張先の学校でチェックを入れるとか
で帰ってきたノートをコピーすることもできなくなった。
 トンズラすっかとも考えていた時だ、教室の扉から散っこい奴がこちらを覗き見しているのだ
「ぷぷぷー、健ちゃん一人でなーにしてるのー?」
「なんだ、チビか」
「チビっていうな!」
「池田チビ、暇ならコレ教えてくんね?」
「チビじゃないって!弥恵だってば!」
 ズカズカ御怒りの様子でこっちに近づいてくる池田弥恵。前の机に座りこっちを見下す。コイツは教える気がねぇな
と判断した俺はよくわからん文章の解読にあたる。
「あんたってさ・・・鈍感なの?」
「・・・は?何いってんだチビ」
 放課後の教室に男女2人だけ。雲行きが怪しいのかなんなのかは知らんが、雨が急に降ってきた。最近流行りのゲリラ
豪雨だ。
「うわー、雨降ってきてやんの。やむのかコレ?」
「ねぇ?」
「止むか。コイツ終わらねぇ限りどうせ帰れねぇし。まぁ、いいか」
「ねぇってば!」
「なんだよチビ。さっきから用がないならさっさと帰ればいいだろ?」
「~~~っ!」

 ガタっと立ち上がった池田。立ち上がるなり、俺に指をさしてきた。
「チビチビいうな!このバカ!お前の方がチビだ!」
「・・・まぁ、座ってるからな」
 ピカッ・・・ゴロゴロゴロ。と空も荒れてきている。
「あ、池田~この天気で帰れっていうのに怒ってんのか?雨止むまでコレ教えてくれよ」
「うるさい!」
 あははは、完全にお怒りだ。目線を外して外を何となくみたんだ。また、雷がピカっと光った瞬間、緑色の閃光、
プラズマがこっちめがけて飛んできているように見えたんだ。
「え?何?」
 よくわからないんだが、体が勝手に反応して立ち上がったんだ。そして、池田の方に飛び込んでたんだな俺。その時
池田もびっくりした顔をしてたけど何言ってんのかは俺にはわからなかった。
 とりあえず、突き飛ばしてでもいいから閃光から池田を守らないというのがあった。

 ガタガタガタ

 ゴロゴロゴロではなく、ガタガタガタ。ちょっと、机を押した時みたいなあの音だ。
「ちょっと!なにすんのよー!」
 池田の声がやけに大きく聞こえる。まあ、急に机ごとふっ飛ばしたから声が荒々しくなったんだろう。 四つん這い
になって、その下に池田がいるとおもったんだけど、池田がいない。声は聞こえるのに池田はいない。
「・・・って?アレ?健ちゃん?けんちゃーん?」
 どうやら池田もこっちが見えていないらしい。意味がわからん。とりあえず、立ち上がるかと思い、四つん這いから
立ち上がった。ったく、こんなデッカイケシカスだれが捨てたんだよと床にあるでっかいケシカスを見てふと思う。
・・・ケシカス?
「ッ!?」
 改めて周りをよく見てわかったことが1つ。どこだここは?周りは無数の大きな柱があり、床の一部は何かの打撃を
受けて破損シている。そして「けんちゃーん」というコールが当たりを響き渡るのだ。
 謎の神殿にでも飛ばされたのか?っとまで、ありえないことまでも考えてしまう。そういえば、自分の名前を呼ばれ
ている方角をまだ見てないな・・・。何故か、恐怖心があってみようとしていなかったのかもしれない。勇気をだして
声のする方角を見てみると、底には山の様に大きい巨人、池田弥恵が座り込んで周りをキョロキョロしている。足を
ちょっと開いているからスカートのカーテンから白い生地が薄暗い闇の中から見える。
 いや、問題はそこではない。なにがおきているんだ?俺は、小さくなったのか?

 ドシーン

 急に強い風と揺れに俺はバランスを崩し、尻餅をついてしまう。イテテテを尻を撫でながら前を見ると、巨大な手と
顔が俺を覗き込むかのようにみていた。犬が伏せのポーズをとっている感じなのだろうが、迫力のあまり思わず後ろに
下がってしまう。
「けん・・・ちゃん・・・だよ・・・ね?」
 目を大きく開いたボブカットの池田は俺に気づいたらしい。
「ねぇ?何がどうなってるの?」
「知らん。なんで俺が小さくなってるのかもわからん」
「ほんっとに小さいね。何cm?てかそんなことしてる場合じゃないよね・・・」
 池田も池田で心配しているみたいだ。しかし、その言葉と裏腹に俺の筆記用具から定規を取り出し横にドスンと並べる。
「うわ~、けんちゃん、5.5cmだって、前世は何cmだっけ?」
「人聞きが悪いな。俺はまだ死んでいないぞ」
 定規の壁に手を当て、1mmってこんなに広かったんだなとふと思う。とりあえず、制服も一緒にちっちゃくなったのは
不幸中の幸いってことなのかな。

 ガラガラガラ、ピシャア!

「オー、誰かいるかー!?」
 唐突に誰かが教室に入ってきた。この声は、英語の先生の声だ。ピシャア!って音に俺と池田はびくってしたけど、
今の俺を他の者に見られてはマズイ。
「うわっ!はっ!っほへーい」
 池田は訳の解らんことを言って上半身を立ち上がらせ、巨大な右手でおれをつかみ、スカートの中に放り込み、足を
締める。当然、ポイっとされたわけで、俺がぶつかったのは温かい白い生地、通称パンツがクッションになったと思っ
た時に足を閉じられるわけだからパンツにぎゅ~っと絞めつけられているわけで非常に息苦しい。
「なんだ、池田か。そこで何をしている?」
「え?あ、はー・・・」
「確か、池田は前田とは中が良かったな。前田がどこに行ったかわかるか?」
「えーっと、前田君はですね・・・」
 一方俺は息苦しい。バンザイ状態でとりあえず両手で白い生地目がけてバンバンとギブアップのサインを出す。
「ヒャン!」
「・・・ヒャン?」
「あ。ひゃ、ひゃ、ヒャッハー」
「・・・大丈夫か?池田」
「だ、大丈夫ですよ~」
 ギュウウウウっと引き締めが強くなった気がした。バタバタできねぇ・・・。死ぬぅ・・・。
「前田君は、ヒャッハーかえってやるぜ~といってその場から立ち去りました」
「荷物置きっぱなしだが・・・帰ってこないのか?」
 僕はここです。INドリーム。
「先生、あの前田君ですよ。荷物置いて帰るなんてやりそうじゃないですか」
「まぁ・・・前田だしな。ありそうだ。・・・っしかし、様子見にきてやったのにまったく困ったやつだ」 
「私から、彼に言っときましょうか?」
「あー、じゃあ。頼むわ。次提出物忘れたらレポート10枚なってな。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「わかりました。せんせーさよーならー」

 ピシャ!

 先生が去ったのを確認したのだろう。足は開かれ、ようやく解放されてその場で倒れこむと巨大な右手が俺の足を
掴み引っ張り出す。ブワッと、視界は明るくなり目の前には逆立ちになっている池田がこっちをみていた。
「変な声だしちゃったじゃない」
 知らんがな。っと言いたいところだが声がでない。
「なんか言いなさいよ」
 無理。
「死んでないよね?」
「・・・ハイ」
 がんばって声を出したが、声になっているかはわからない。
「よかった~。じゃ、帰ろっか♪」
 なんで池田はこんなに楽しそうなんだろうか?とりあえず、帰るって何処に?なーんて思っていたら荒々しく胸の
ポケットだと思われる所にポイっと入れられた。その後の記憶は覚えていない。多分、気絶したんだと思う。


 意識を取り戻したときはそこは知らない天井だった。大の字になって寝ていたようだ。床が硬い、これは机の上に
寝かされていたのだろうか?視線をズラすと、池田の顔。なにやら黙々と作業をしているようだが、カリカリって聞こ
える当たり宿題をやっていそうだ。てか、ベッドあるよな?なんでそっちにおいてくれないんだよ?
「おーい、池田」
 とりあえず、体を起して声をかけるが、凄い体が痛い。
「あ、気づいた!どう気分は?」
「凄く最悪です」
「だろうね。じゃあね、けんちゃん。お風呂にする?それともご飯にする?」
 どこの奥様ですか?と思った。
「体痛いんなら先にお風呂にしたほうがいいかもね。じゃあ、ちょっと待っててね」
 そういうと、池田は立ち上がり部屋から出ていった。どっちでもいいけど、風呂っつったら、風呂ですんじゃねぇの?
とか思ったけど、深く考えないことにしよう。

―――混浴。いや、何を言っているんだおれ。

 とりあえず、つまみで食っていたと思う、ミニポテトチップスを適当に食べる。1枚でも十分な気がしてくる。口飽き
るけど、がんばって食ってみることにする。ある意味、普段ではできないことだよなコレッとか思いながらポテチ1枚に
悪戦苦闘を繰り広げていると、ルームマスターの池田弥恵さんが帰ってきました。
「お待たせ~。記念酢べき初お風呂は牛乳風呂で~す」
「・・・は?」
 何を言っているんだこの女は!牛乳風呂って・・・。俺の目の前にドスンと置かれたドラム缶より大きいマグカップ。
ジャンプして、両手で体を持ち上げてみてみると、マジで牛乳だ。膜はってやらぁ・・・。
「一度やってみたかったんだよね。牛乳風呂」
「お前がやれよ・・・お湯がいい・・・切実に」
「私はあんたみたいにチビじゃないからこんな贅沢できないもん。だからあんたにはチビの贅沢をさせてやろうかと」
 ついに、池田から俺はチビ扱いされそうです。
「俺は、牛乳風呂なんて入らないぞ!」
「なんでよ!?お肌スベスベになるよ?」
「んなこったぁ、どうでもいいわ!あがったらベタベタするだろ!牛乳くせえだろ!」
「別にあんたが入る訳だし、関係ないでしょ?残ったら自分でお飲み」
 色々とふざけんなっと言いたいが、逃げ場などない。俺は片手で抑えられ、もう片方の手で俺の服をビリビリに破か
れてしまった。
「お、お前!俺の制服!!」
 鼻歌と共に破かれた俺の制服、そして裸の俺。くそ、ここで元に戻れたらやり返してやる。と思いながらも池田を
睨みつける。
「けんちゃん、怖い顔しないでよ~」
 と、あそこを隠している俺をまたしても軽々しくひょいと掴み、マグカップに入れられる。幸にも、チンしてすぐの
あっつい牛乳ではないようだ。普通の風呂みたいな温度。
「どう?」
「どう・・・って、いい湯加減でございます」
 まぁ、たって風呂入っているみたいなもんだけど、悪くないのかな?牛乳風呂、普通だったらできるわけないもんな。


 服を破かれ、牛乳風呂に入れられ、ティッシュで体をふかされた俺に新たな試練がやってきた。服です。流石女の子
なわけで、人形の服をたくさん持ってたり自分で作ってたりしていたようでバリエーション豊富です。そして、俺は今
小さなシルクハットみたいなモノを被り、赤いドレスを来ているという状態。まさか、女装させられるとは思わなかった。
「け、けんちゃん・・・結構にあってるじゃん。ぷぷぷ」
「他の服は無かったのですか?男性用とか」
「無いわよ。そんなもの」
「いや、『お人形さんの服があるから大丈夫よ』って説明したのはいいけど、男性用のは本当に無いのか?」
「捨てたわよ。私、女性用のファッションデザイナーになりたいんだもん」
「人形遊びと言ったら『貴方、今日もお疲れ様です。ご飯にしますか?お風呂にする?』『ハハハ、何を言っている。
お前に決まっているだろ~』『きゃ、あっ、貴方。駄目ですって』『今夜は寝かせないぞ~うえへへへ』ってことを
するのが人形遊びじゃないのか?」
「ねぇ?私の話聞いてた?」
「俺の話はスルーか」
 こんな冗談が言えるぐらい自分でも慣れてきたんだなと思う。池田の話があの時楽しそうに見えたのはまさか、俺を
実験台にあんな服やこんな服を着せるためなんだろうかと思う。ちっこいのを作るのは大変だろうときいてみると、
生地代考えれば安く済むからそこは努力でなんとかするって、たいしたもんだとしか言えなかった。
 そういえば、俺は自分の将来なんて考えたことなかったな。てか、明日からどうするんだろう俺?ドレスで登校?
それ以前に登校できないだろう。

 気づけば、時間も時間になっていた。人形の家の赤い屋根の家は邪魔だから捨てたらしいから、一緒にねることにな
った。潰されないか心配になるが、女の子だし、寝相は多分いいだろう。多分。
 横を見ればシャンプーの良い香りが漂う。
「潰れないでよ?」
「いや、潰さないで」
「ふふ。じゃあ、電気消すねー」
 パチン。という音と共に当たりは暗闇に包まれた。暗闇の中、グランとまた揺れたのは池田が体を横にしたからだろう。
「死んだ?」
「死んだ」
「死んだかー。じゃあ、おやすみ~」
 サラっと変な会話だが段々慣れつつある自分が怖い。暗闇のなかでも、やがて目が慣れてくる。暗闇から池田は体を
こっち側に向けて寝ている。スゥスゥと寝息を立てる当たりもう寝たのか!?と思うが、あんだけ騒いではしゃいだもん
だから疲れてしまったのだろう。明日は金曜日だ。頑張れよ。さて、俺もねるか。
 ぐーっと上半身を伸ばし、体を倒す。横を見ると、池田。まるで巨人と一緒に寝るかのような感覚だ。俺も色々疲れた。
早く寝よう。願うのならば明日の朝には、元に戻っていることを願うのだった。