物陰に隠れては通りかかった人間に「驚けー!」と今日も彼女は言う。
彼女の名前は多々良小傘、人間を脅かしては驚いた姿を見ては嬉しそうにしている。
しかし、脅かし方もワンパターン化してきていつしか「驚けー!」と言えば「またお前か」
という扱いにまで人間の間では慣れてしまった。人間より人間の子供の方が簡単に驚いてくれるのを
思い出し、脅かしてみせれば、今度は人間の親からマークされ、近寄り難い距離感になった。
道端で歩いていればあっちから遠ざかる。これでは、脅かしたくても脅かすことはできない。
そこで小傘は考え、一つの答えに辿りついた。
「そうだ、人間の里に行こう」
来ないのならこっちから人間の集まる里に向かいこっちから仕掛ければいい。
そう思い立ったが吉日、さっそく人間の里に向かう小傘。
当然、子連れの人間は極力小傘との距離をとる。なかなか上手くいかないものだ。
ここで一旦物陰に隠れて脅かしてみようと、家と家の間に隠れて通りかかった人間を脅かそうと試みるものも、
自身の傘が邪魔で上手く隠れることができない。体は入っても大きい傘は入れず傘は壁に引っかかりガッガッガッ
という音を出す。
その姿を寺子屋帰りの子供達に目撃されては「傘が引っかかってる。すごーい」「何これおもしろーい」と注目を
集めた。コレを脅かすチャンスだと思った小傘は傘を一気に上に持ち上げて「ばぁ!」と大きめの声で脅かしてみる
と、子供達は冷め切った表情、一部ちょっとびっくりしていたという微妙な手応え。
「…?驚かないの?」
と小傘が子供達に聞いてみると、子供達は「知ってた」「それより傘が見たい」「どうやって傘を作ったの?」と
いう反応に釈然とせず、「もう、帰る!」と大声を上げて人間の里を後にしたのであった。



人間の里を後にしてからどれだけっただろう?まさか人間の里で子供達にバカにされたのが悔しく、道行く人を
驚かそうと地蔵の隣に隠れていた小傘であったが、陽はまもなく西の空へと沈み、夜が来ようとしていた。
今日はもう諦めよう。また明日がんばろうと思ったその時だった。
「こんな遅くまでご苦労様ね」
不意に後ろから声が聞こえてびっくりした小傘はそのまま地蔵にゴツンとぶつけてしまった。
額に手を当て声のする方を急いで振り向くと、そこには空間に一本の紐の様なものが浮いていた。最初は
よくわからなかったが、その紐避けるなり空間にスキマの様なものが現れそこに一人の妖怪が現れた。
「あら、驚いてしまったかしら?」
ここら辺では見かけない妖怪に困惑しながらも様子をみる。怪しくないと言えばウソになるが、何が目的なのか
わからない。身構えながらも相手の顔をみる。
「貴方の様子を失礼ながら今日一日中見守らせてもらったわ」
「なっ!私になんの用だわさ!」
「これといって用はないわ」
「・・・?じゃあ、なんで?」
「暇だったからよ」
顔を扇子で隠していても、その顔には笑みを浮かべているような気がして、
どうも馬鹿にされているような気分で自然と相手を睨みつけてしまう。
「そんな怖い顔しないでくださいな。私は貴方の力になりたくてここにいるのよ」
「私の・・・力に?」
「えぇ、そうよ。人を驚かそうと頑張っている姿がとっても微笑ましくて」
「うぅー・・・わちきを一体どうするつもりでござるか」
「まず、キャラを安定させた方がいいわ」
「げふん」
「それに、貴方の人を驚かそうとするスタイルそのものが古いのよ。同じ事の繰り返しでは人は慣れてしまうわ」
「なにかどこかで聞いたことある台詞だわさ」
「そこで一旦、貴方には“強者”になってもらうわ」
「強者?」
「えぇ、何者にも屈しない強靭無敵の強者になって人間を驚かせばいいのよ」
「簡単に言ってくれるけど、どうやってすぐ強靭無敵の強者になれっていうんだわさ?」
「そこで、私の出番なわけよ」
バスっと開いた扇子を一瞬で閉じ、扇子で縦に線を引くかのようになぞってみせれば、何も無かった空間から
気味の悪いスキマが姿を現した。
「この空間に入れば、貴方は一旦幻想郷の外にでることができます」
「幻想郷の外に?なんで!?」
「邪魔な固定概念は自身の成長を妨げるわ。今までのスタイルを貫き通したいのなら私は止めはしないわ」
「でも・・・」
「いきなり人間より妖怪の方が強い外の世界に行ってこいだなんて簡単にできないわよね。でも、
 お姉さんは小傘ちゃんの成長を応援したい、ただそれだけなのよ」
いつの間にか手を握られ、熱い期待を浴びさせられていた。正直言えば、同じ妖怪であっても初対面の相手を
信じろっていうのも難しい話である。
だが、スキマから現れたこの妖怪の言っていることも事実。前は驚いてくれた事も今では無反応で呆れられている
冷め切った表情を見るのも多くなった。簡単に驚いてくれる希望の子供達からも慣れから馬鹿にされているような
感じもする。私の驚かす行為よりも傘の方が興味があるというのは面白くない。
「わかった。よろしくお願い申す」
仮に行った所で不快な思いをしてしまったとしても、向かう先が人間より妖怪の方が力のある世界。
力で負けることがない以上、悪くない話でもある。
「ふふ。素直でいい子ね。じゃあ、こちらへどうぞ――」
こうして、私は先の見えない暗闇しかないスキマの中に入るのであった。



「んっ・・・?」
いつしか私は意識を失って眠っていたようだ。ついさっきまで暗闇の中を歩いていたような気がしたけど、
あれは夢?地蔵に頭をぶつけたのは覚えている。アレから気を失って眠っていたのか?やれやれっと思いながら、
うつ伏せから四つん這いになるように体を起こし周りを見渡す。
「あれ?ここは・・・どこだわさ?」
辺りは見慣れない風景、地蔵の姿もない所をみるとどうやらスキマの中に入っていつしか意識を失っていたようだ。
地面は大なり小なりと一部盛り上がってでこぼこしており、その先には小石とは違うものとは別の何かが密集している。
「なんだろ?あれ」
興味本意。というよりは別に周りには何もないから近くで見慣れないものを見てみようと思いそのまま四つん這いで
近づいてみることにした。
一歩一歩、腕を前に付き出してはズズズっと地面がぬかるんでいるみたいで地面が沈む感触があるものの泥々している
地面でもなくなんとも不思議な感覚である。
「着いた」
そんなに遠く離れた場所にあったわけでもなく、あっという間に辿りついた。
近づいてみてわかったことは、小石とは違う何かは長方形の形で大なり小なり様々な大きさがある。試しに小石を
一本引き抜いてみようとしたら小石は思いの外脆く、握った瞬間バラバラに崩れ落ちた。
「壊れちゃった・・・」
石を拾うのではなく、引き抜くという感覚もおかしい感じはしたものの外の世界の石は想像以上に脆かった。いや、
スキマ妖怪の言う、人間より妖怪の方が強い世界だからなのか?そう思いながらも気を取り直してまた石を引きぬいて
見ようとするものの上手く綺麗に抜き取ることはできない。掴んだ瞬間に壊れたり、引き抜こうとしたらバラバラに
崩れ落ちたりとなかなか上手く引き抜くことが出来ない。
何回か握りつぶした後に、ようやく一本綺麗に抜き取ることができて思わず「やった!」と喜びを口に出した瞬間に
空中で握りつぶしてしまった。どうも力加減が難しい。
気がつけばあんなに沢山あった大きめの石も残り僅か。残るとはカラフルな苔のようなものが沢山あるだけ。
「今度こそは・・・」
ここで一番大きい石を持ち上げることにした。石に手を当ててみると手の平からはみ出すぐらいの大きさの石だ。
なるべく優しく握り締め、ゆっくり持ち上げる。
バキバキという音を出しながらゆっくり、途中で力んで握り潰さないよう慎重に石を地面から持ち上げた。根本の方が
若干欠けてしまったしまったもののこれまでになく一番綺麗に持ち上げることに成功した。そこから安心して
握り潰さないよう慎重に石を顔に近づけてみると、石からは自分の姿が見える。
「まるで鏡みたいな石だわさ」
苦労して取ったかいがある。ピカピカ光る石に映る自分の顔を更に近づけてみると石の中が透けて見える事に
気づいた。目を細めて中を観察するものよくわからんものがゴチャゴチャと散らかっていて、その中に小さく動く虫
みたいなものもちらほらと見える。
「まったく、不思議な石だわさ」
一通り観察を終えると今まで慎重に扱っていた石の力加減を謝りギシギシと軋むような音を立てる。このまましていれ
ば今まで潰してきた石と同じ末路を辿るんだろうなと石から悲鳴のような声が聞こえたような気がした。
念の為にもう一度石を眺めてみると石の中はさっきよりグシャグシャになっており、先程の虫もいる。
人の様な悲鳴、もしやこの虫は人間なんだろうか?
「まさか・・・人間?」
いや、人間だ。目を細めて観察して見ていたが、虫が二足歩行で石の奥へと走り去っていく姿をみた。目を細めている
時に手にも力が入り石が軋みだしたから逃げ出したんだと思う。
「これは大変だわさ」
まさか自分が圧倒的な大きさの巨人となっていることに今気づいたのであった。



スキマ妖怪の案内で人間より妖怪の方が強い世界に来たもののまさか、わちきが圧倒的大きさの巨人になっていたとは
予想にもしていなかった。一体この大きさで何をすればいいのだろうか?
っといっても、既にこの世界の人間の作った家?にしては大きい建物をいくつか握り潰してしまったのも事実。
人間からすれば突然巨大過ぎる妖怪が現れて異変だと大騒ぎしているのだろう。
異変?マズイ。このままでは博麗の巫女に退治されてしまう。一度博麗の巫女から痛い目にはあっているものだから
本能的にマズイという事態を察した。
しかし、この体格差で人間に負けるのであろうか?力のある博麗の巫女でもこの世界ではゴマ粒の様に小さい。得意の
弾幕も大したことないんじゃないかと思うとちょっとぐらい悪さをしてもいいかと思う。
いや、違う。
ここは幻想郷でなく、外の別の世界。つまり何をしようが博麗の巫女が異変を解決に現れること事態がありえない。
つまり自由だ。好き勝手な事をしてもいいのだ。わちきは今、圧倒的優位の立場にある。
「ふっふっふ。今からゴマ粒の様に小さい人間の世界を観光してやるわさ」
イタズラっぽい笑みを浮かべ手に握っていたものをぐしゃりと握り締め、わちきは立ち上がった。
空を飛んでいるわけでもなく、足を地面につけ人間の作った建物を優雅に見下す。道という道はあるといっちゃ
あるが、小さすぎて通れるわけもなく人間に合せる必要もない。足を上げ、さっきの石っころみたいな建物をいくつか
まとめて下駄と一緒に踏み潰し中へと入っていく。
「あはは。わちきの下駄よりちいさいわさ」
これだけ圧倒的なのだ。下駄で踏み歩くよりかは素足で歩いてみるのも面白いかもしれないと思い、下駄を脱ぎ、
ゆっくりと素足を地面につける。素足ならチクチクするんじゃないかと慎重に足を下ろすと、以外にもプチプチプチと
素足の中で潰れていく感触もまた癖になりそうだ。



一方、この世界に住む人間たちはいい迷惑をしていた。突然現れたオッドアイの巨人(何故か傘を持ち歩いている)
に困惑を隠せなかった。遠くから四つん這いでこちらに向かってくるなり圧倒的大きさに本能的に巨人から逃げるよう
走りだす。死にたくないと一生懸命走りだすと、巨人は高層ビルに興味をもったのか、手当たり次第次々と触っては
握りつぶしたりともの凄いスピードで高層ビルを破壊し始めた。
ただ、数をこなす度に巨人の表情からも焦りのようなものを感じるあたり、ただ壊すのが狙いというわけではない
ようだ。
やがて、この街で一番大きい高層ビルに手を差し伸ばしゆっくりと持ち上げ中の様子を見始め、何かに気づき、
怯えた表情を見せたかと思えば、不敵な笑みを浮かべ、一思いに握りつぶし、立ち上がったのだ。
四つん這いの姿でも十分大きかったうえ、立ち上がってしまえば圧倒的な大きさにどこへ逃げてもすぐに追いつかれ
て踏み潰されてしまうんじゃないかと思う。
そして、巨人は『今から観光する』と宣言し、大きな大きな足を持ち上げ振り下ろす。当然、重力に耐え切れず
抵抗もなく高層ビルは下駄の下敷きになった。この時、我々人間が一生懸命作った高層ビルは巨人の履く下駄の歯
の高さよりも小さいことがわかった。
これから、あの下駄にグシャグシャに踏み潰されるものだと絶望した。しかし、巨人は下駄を脱ぎ始めると今度は
巨大な素足が空を覆うと、ゆっくりと落ちてきた。下駄とは違うとはいえ、我々人類に勝るものはまるでない。
巨人は楽しそうな笑みを浮かべるとありとあらゆる建物を踏み潰しはじめたのであった。



一通り歩きまわると徐々に歩き回ることにも飽きてきた。丁度いい大きさの山があったので、そこに腰を下ろし
一休みすることにした。スカート越しに木々をまとめて尻の下敷きにしズズズっと少し山頂が沈んだ。
肘を膝に当て両手で頬を持ち上げている姿勢を取り、変わり果てた人間の住む集落を
見下ろす。何か大事なことを忘れているような気がする。
わちきは何のためにここへきたのか?巨人になって散歩に来たわけではないのだ。この大きさでは些か不便な
所もある。人間の様子がまるでわからないのだ。それは、わちきが大きすぎるのがいけない。
「スキマ~!」
とりあえず叫んでみた。どうせ返事なんて期待などしていなかったのだが期待は大きく裏切られた。
「なにかしら?」
どこから声が聞こえたのかはわからない。左右を見渡してもスキマ妖怪の姿はあらず。
「飽きた!」
「あら、飽きちゃったの?困ったわねぇ」
姿は現さずともスキマ妖怪の声はハッキリ聞こえる。まるで耳元でささやいているかのように。テレパシーでも
使えるのだろうか?
「じゃあ、ちょっとだけ小さくなってみない?世界が変わって見えるわよ?」
若干面倒臭いが、拒否権もなく、シュルシュルと体がどんどん収縮してきた。山に座って足は人間の住む集落に
まで伸ばしていたものまるで、伸びているゴムが戻ってくるかのように足は集落から離れていったのだ。
やがて収縮は収まり大きなクレーターの真ん中にただ一人取り残された。
「じゃあ、後は適当に頑張ってくださいな」
そう言うと、スキマ妖怪の声は聞こえなくなった。
正直帰りたいという心境から不機嫌そうな顔でクレーターを登っていくと、山の山頂に辿りついた。
「うわぁ・・・」
思わず驚いてしまった。さっきの自分が如何に巨大であったのかと。このクレーターはさっき座った時に沈む感触
に出来たもので、所々にある足跡は今のわちきの大きさとさほど変わらないのだ。
さっきの倍率が1000倍だとしたら今は100倍ぐらいなのだろう。なんて圧倒的な破壊力だったのだろうと思うと怖く
なる。前方には廃墟と化しているが、後ろには破壊されていない人間の集落がある。どうやらこの山が境界線の
役目を果たしているのだろう。なら、壊滅的被害を受けた所に戻るのではなく、無傷の人間の集落に行ってみよう
と思う。きっと、この大きさなら人間の姿もハッキリみえるであろう。
そうだよ。わちきは破壊しにきたのではなく、優位の立場から人間を驚かしにきたのだ。目的を見失ってはいけない。
「よーし、次こそはちゃんとやるわよ~」
と、意気込みわちきは反対側の人間の集落のある場所に向かったのであった。



勢い良く山を降り、田畑を無視して踏み潰し人間の集落に辿りついた。今の大きさはさっき一生懸命摘み上げようと
頑張っていた石とだいたい同じぐらいで、わちきの方が若干大きい。この大きさだと石より石版だろうか?さっそく
中を覗いてみると人間の里の寺子屋みたいに沢山の机があって、全員わちきの姿をみて驚いている。
石版越しから「きゃー」「うわー」という驚いている声がなんとも気持ちがいい。
これは手応えがある。そう確信したわちきは石版と石版の間から見えた人間に目が行く。
「ばぁ!」
と、体を近寄らせて言えば人間は一旦尻もちを付き無様に逃げていったのだった。
「そうそう、これよこれ」
逃げ出したくなるほど驚いて、びっくりしたんだなと思うと嬉しくなる。
続いて、集落の中にどんどんと足を運ぶと人間はわちきの姿をみるなり「きゃー」「うわー」と声を張り上げて逃げて
行く。ただ、歩いているだけで勝手に驚いてくれるとは大袈裟な奴らだとズンズンと人間共を追い掛け回す。
途中、石版を倒しては行く手を阻んだりして人間達を追い詰めていく。
ふっふっふっふーん、驚いてる驚いてる。と気分がどんどん良くなってきた。
こうなったら今追い掛け回している人間達の逃げ道を完全に塞いでやろうと次から次へと石版を倒していけば、もう
逃げ道はない。さぁ、次はどんな反応をしてくれるのか。ニヤニヤしながら人間達に近づく。
すると、聞こえてきた言葉は「きゃー」は「きゃああああ」となり、「うわー」は「うわああああ」と断末魔の様な
叫び声に変わっていった。
その声を聞いて、わちきはピタリと動きが止まった。
違う。やっぱり違う。わちきが求めているのはこんなものではない。
こんな、この世の終わりのような声を聞いて何になるというのだ。
これでは、“驚かす”ではなく“脅かしている”だ。
わちきが求めているものではない。人間の悲鳴聞くなり、我を取り戻したのかやり過ぎた感、罪悪感までもふつふつ
と沸き上がってきた。
「スキマ~いる~?」
「えぇ、いるわよ」
あたかも当然のようにすぐ声が返ってきてびっくりした。
「そろそろ帰りたい」
「あら?もう満足したのかしら?」
「ここにはわちきの求めているものはないわさ」
「そう。まぁ、潮時感はあったわ。後は任せなさいな」
どこから声が聞こえるのかも結局わからなかった。最後に、追い詰められ怯えきっている人間を見ると悪いことを
したと思う。
「あ、あの・・・ごめ―――」
プツリと糸の切れた操り人形の様に力が入らなくなった。膝から崩れるように倒れ込みやがて視界には
何も映らず真っ暗闇。やがて、意識が遠くなっていった。



「ちょっと、あんた。こんなところで何してるの?」
・・・!誰かに呼ばれている。目を開けてみるといつぞやの巫女がこちらを見ている。
「お前は・・・博麗の!?」
「こんなところで何地蔵と一緒に雑魚寝してんのよ?」
気づけば地蔵をだき枕にしているような形でわちきは眠っていたようだ。
「あれ?あのー・・・なにこれ?」
「それはこっちが聞きたいわよ」
「あ。霊夢小さくない」
「あ~?」
「・・・?そうだ、霊夢」
「次は何?」
「驚け―!」
ドス
「あぶぅ」
「どうだ!驚いたか!!」
「人が心配してたというのにいきなり『驚け―!』って殴ってくる妖怪がいるか!」
ゲシッ!
「わちき!」
お返しと言わんばかりに霊夢も倒れていたわちきに蹴りをお見舞いしてきた。


やっぱり、こっちの方がしっくりくる。
一方的に驚かすことができてもいずれはやりがいを失う。なら、たまには失敗して痛い思いをして
また驚かすこっちの普段と変わらない日常の方がわちきはあっているなと思う。