日が落ちる頃、迷いの森を馬車が走る。馬車の荷台には大きな荷物を積んでいるようで大きく盛り上がっている。
一見、大量の荷物を運んでいるかのように見えるが、馬車には商人だと思われる人間一人しか乗っていない。万が一
賊にでも襲われたりしないように用心棒の一人や二人付けていてもいいんじゃないかと思う。
 それに、この迷いの森には魔物に襲われるという危険性もある。しかし、数日前に勇者とその仲間が魔王を倒した
という噂もあり、人間と魔物との争いは今の時点では凍結している。商人は魔物から襲われる事なんてないという自信
でもあるのだろうか?
 しかし、迷いの森も名前の通り伊達ではない。大きく育った木が太陽の光すら満足に入ってこれないから常に薄暗く
視界が悪い。夜になれば一寸先は闇。下手に動けば取り返しのつかないことになる。それを承知で商人はこの夕暮れの
時を目掛けて迷いの森に入り込んだのであろうが、やっていることはあまりにも無謀である。闇社会で動く者が人目の
付かない所で落ち合うというのなら話は別だ。この商人には、他の人に知られたくない事でもあるのであろうか?


 迷いの森に入って数時間、すっかり日も落ちてあたりは暗闇に包まれてしまった。そこで俺は松明に火を点けると、
ある言葉を思い出した。この言葉っていうのは俺の住む村にある言葉だ。
『夕暮れに迷いの森に入ってはならぬ。明日にしろ』
 という言葉だ。今、それを実際に体験している所だが、確かに暗闇の中を下手に進めば間違いなく迷う。迷いの森を
迷わない為にいくつか目印があるが真っ暗でいつも以上に見えない。たまに草で隠れてしまうからぶっちゃけ意味がない
所もある。
 だが、俺の目的は迷いの森を抜けることが目的ではない。とっても大切な物をある人に届けるためだ。予定では今頃
目的地点に着いているはずなのだが、どうやら迷ったようだ。目印となるものも見つからない。コレ以上は下手に動か
ない方がいい。取り返しのつかないことになる。申し訳ないが待ち合わせには間に合いそうにない。相手がこっちを
心配して探しに来るのを待つしかない。この松明の灯りを頼りに見つけてもらうしかなさそうだ。目は結構良いし、
多分大丈夫だろう。

 バサッバサッバサッ

 遠くで何かが飛んで来ている見たいだ。音も次第に大きくなってきている。上を見あげれば木々の間から大きな翼の
ようなものが見える。恐らく上空にいるようで、こちらの様子を覗っているようだ。
 
 バサッ、バサッ、バサッ―――・・・ドシィィン!!

 そして、翼を羽ばたくのを止めてそのままこちらに墜落してきた。目の前の大木をいとも簡単に踏み潰し、暗闇から
俺を探すかのように青い瞳がこちらを見つめている。
「よぉ」
 俺は右手を前に上げて挨拶をすると、声に聞き覚えでもあるのであろう。疑問が確信に変わったかのようにのっし
のっしと足音を立てながらこちらに近づいてきた。
「あっ!やっぱりサトーだ!」
 暗闇からぬっと出てきた少々大きな生き物のは俺の姿を見て安心した表情を浮かべた。
「ルナ、お前はもうちょっと、ゆっくり降りるってことを知らないのか?万が一踏み潰したら大変だぞ?」
「大丈夫だよ~。だって、サトー以外だったら怖くなって悲鳴を上げるか逃げ出すし。それに踏まないようにちゃんと
 距離をおいたから、だいじょーぶ」
「仮に踏まなかったから良かったとしても、これで何回目だ?毎度の事だが、どっすんどっすん墜落してきては迷いの
 森が穴だらけになるぞ」
「むぅー。でも、まだ四回ぐらいだもん」
「厳密に言うと今日で五回目だ。森林破壊は色々と良くないぞ?」
「だって、サトーが毎度の事のように迷子になるんだもん。上から探している身にもなってもらいたいかもーっ!」
 ふむ。流石にこればっかりは仕方がない事だ。俺は暗闇の中、迷いの森を慎重に進んでいるつもりだが、どうしても
道に迷ってしまう。これでまた“待ち合わせ場所”が一つ増えてしまった。森には悪いが“待ち合わせ場所”が増えれ
ばルナもこっちを見つけやすい事になるだろう。
「あぁ、悪い悪い。次、会う時はここを待ち合わせにしよう」
「うん。それはいいけど、サトーはまた道に迷うと思うかな?」
「そういうなって。過ぎたことは仕方がない。それより、今日はお前にプレゼントがあるんだ」
「・・・?ぷれぜんと?」
「まぁ、これを見ればわかるだろう」
 そう言って俺は荷台のシートを取り外す作業をはじめると、ルナも四つん這いで更に近づいてきている音が聞こえる。
ふふっ、中身が気になるのか?
「わぁ、すごーい。アーディ、全然怯えなくなったね~。偉い偉い」
 ちなみにアーディというのは馬の名前だ。てか、馬の方かよ。
「そりゃ、五回もルナの墜落見てきたんだから慣れたんだろ。俺とルナは昔からの知り合いだったから何ともなかったが、
 アーディも慣れたんだろうな」
「きっと、飼い主に似たんだね~」
 それは一体、どういう意味なのかが非常に気になるところだけど、突っ込まないことにしよう。そんなこんなしている
うちにシートをどかして、荷台の荷物を広げてルナに見せる。
「それよりルナ、こっちも見てみろよ?」
「えっ?うわあああ!こっちもすっごい!!」
 ははは、そうだろそうだろ。普通の人間じゃまずすることのないものだからな。
「ぷ、プレゼントってこれのことなのかな?」
「あぁ、そうだ。ルナの為に作ってきたぞ」
「わっはーい!ありがとうサトー♪丁度切らしていて困っていたんだよね~」
「あぁ、やっぱり」
 ってことは今、ルナは履いていなかったのか。いや、まぁ、だからこそ急いで作ったといっても過言ではないんだがな。
風の噂で俺の村に“翼と尻尾の生えた巨人からパンツをもらった”とかいう噂を聞いたもんだからな。そんなのルナしか
いねぇなと思って、その噂の発信源まで調べて実際にその人から話を聞くぐらいだったんだ。
 その人は、登山中に崖から落ちて荷物という荷物を失って遭難していたそうだ。やがて日も暮れて雪が降ってきたそうだ。
ここで死ぬかも知れないと、覚悟を決めた瞬間目の前に、現れた大きな翼と尻尾を生やした巨人の目の色はは青。髪は白の
ロングで白のワンピースを身に着けていたそうだ。どう聞いてもルナだった。
 登山しに来て、崖に落ちて、仕舞いにはとんでもないバケモノに食われてしまうとその人は言った。しかし、あろうことか、
そのバケモノは寒さに震えるその人を見て可哀想だと思ったんだろう。自ら下着を脱いで寒さに凍える人間に私てそのまま
どこかへ飛んでいってしまったそうだ。その人は、ルナの下着を毛布の様にかぶりながら無事に村まで帰ったそうだ。
 そして、その下着を見せてもらった。その下着は、間違いなく俺がルナに作ったパンツだった。そこで直ぐ様思いついた
事が、確かルナには予備がなかったなと。こうしてはいられない。要件を済ませるなり、俺は急いで自分の村に帰った。
村に帰れば、仕事が待っている。俺の職業は仕立屋、服を作る職人だ。受けている注文は一旦、仕立屋の我侭で店を七日ほど
休業して、材料を調達して、急いでルナの下着を制作したものだ。最近あったのは、いつだったか?記憶という記憶を辿って
思い出し、だいたいこんな感じだったというイメージの元、設計図を作った。俺は目測には多少自信がある。後は人間には
決して履くことのできないパンツをせっせ作ったものだ。
 まぁ、こんだけ喜んで貰えれば作った甲斐があるってもんだ。
「んぅ?『やっぱり』って、サトーは丁度パンツを切らしていたのを知っていたの?」
「い、いやぁ。そのぉ・・・そろそろ替えが必要な時期だと思ってな。二つ持ってきたんだ」
「二つも!?」
「あぁ、まずはその白い奴と、もう一つは黒い奴だ。黒い奴は紐で結ぶタイプでな。結び方わかるか?」
「うん!覚えているよ。ちょーちょー結びはずーっと前にサトーから教えてもらったからね」
 なんか、非常に不安なイントネーションが聴こえたんだが、どうしたものか。
「あー、一応その黒いの履く前に結んでみてくれ」
「いいよー。こうやってね、こうして、ギュッとして、わっかつくって、くぐらして、ギュッとしたら~ほら、
 ちゃんとわっかが二つできてちょーちょー結びになったでしょ?」
「ほー。一応結べるんだな。じゃあ、さっそく履いてみたらどうだ?履きながらは難しいぞ?」
「それは、やだ」
「どうして?」
「サトーがいるから」
「そうか。それは残念だな」
「それに、ルナは黒の方よりこっちの白で真ん中にピンクのリボンが着いている奴がいいの!」
「ふぅん。まぁ、何を履きたいかは履きたい人が決めるもんだからな。無理には言わないさ」
「じゃあ、サトー。回れ右、しよっか」
 すると、女の子座りしているルナは右手人指し指をビシッ!ビシッ!と突きつける。
「あ~、はいはい。見ませんよ」
「サトーのえっち」
「だから見ねぇっていってるだろ!」
「顔をこっちにむけるなー!」
「あー、わりぃわりぃ」
 思わず振り向いっちまった。膝立ちをして丁度立ち上がる所だった。見てはいない。ルナに背を向けて一旦、間を開けて
からズシンという音が聴こえた。そして、すぐにもう一度ズシンという音が聞こえた。
「サイズ合うか?」
「うん。バッチリ!流石サトーだね。あ、こっち振り向いても大丈夫だよ」
「そりゃよかった」
 まぁ、俺は目測には自信あるからな。大きいだのキツイだの言われるはずがない自信がある。それに、俺は寸法を測る
っていうのが嫌いだ。メジャーとか紐とか使って相手の長さを測るあの行動が、どうしても恥ずかしくて、やらしく感じて
俺は基本やりたくはない。そんなことするぐらいだったら、相手を360度の角度から眺めればだいたいわかる。実際に相手の
体に触れば確実にわかる。
 だが、ルナにはソレができない。寸法を測るって事はやりたくないし、触るというのも対象があまりにも大きすぎて、
残念ながら参考にはならないからだ。だから、ルナとは定期的に会っては気づかれないようにルナの身体を観察している。
最近、ちょっと太ったような感じもしたから紐のも用意したとは言えないがな。あくまでアレは見えない所のオシャレだと
思ってくれればいい。

 *

 それからは、一通り最近あった話をお互いお話をした。そろそろお開きの頃の時だった。
「ねぇサトー、今からなんだけどさ、ちょっと、ほんのちょっとなんだけど、付き合ってくれないかな?」
「ん?どうした急に」
「えっとね。その、いっつもサトーにばっかりお世話になってるからさ。ちょっとだけ、恩返しがしたいかな~って
 思って」
「恩返しねぇ。別にそんなものは気にしなくてもいいぞ?」
「だ、だってぇ・・・」
 人差し指と人差し指をツンツンとしながらルナはうつ向いてしまった。
「あ~、じゃあルナが一番シたいことに付き合ってやるよ」
「ほんと!?じゃ、じゃあ空中散歩しよ!」
「あ、あぁ、あんまり早く飛ぶなよ・・・」
 この空中散歩というのは、ルナが俺を載せて空を飛ぶというのだが、過去に一回空中散歩をした時にさじ加減を謝って
俺の意識が飛ぶという事もあり正直不安な面もある。
「大丈夫だよ~。今回はゆっくり、ゆーっくり飛ぶから安心してよね」
 ルナはそう言いながら俺の両手で包み込んだ。アーディは、ここでお留守番だ。
「それじゃあ、飛ぶよ」
「あぁ、優しくお願いします」
 とんっとルナは地面を蹴り翼を羽ばたかせて空に舞い上がった。優しくしてと言ったのにも関わらず、急上昇した。
いや、ルナにとっては加減したつもりなんだろうが、俺にはやっぱり強かったな。一瞬で酔った。
 一定の高さまで飛ぶと次はその高さを維持しながらゆっくりとグライドを始め、空中散歩が始まった。ルナの両手から
下を覗きこむと本当に高い。迷いの森とちょっと先には俺の住む村が見える。月明かりの影響もあって、意外と視界は悪く
なかった。改めて待ち合わせ場所の数を数えてみたら、待ち合わせ場所は六つになっていた。五つではなかったのだ。


 スイスイっと空を泳ぐ、ルナと俺。夜の空中散歩も幻想的でいいが、できれば日の当たる時間帯でも見てみたいよなと
思うが、それはできないんだよな。ルナの体は巨体でそんじゃそこらの魔物なんかより数倍でかい。そんなのが日中バッサ
バッサ飛び回っていたら、それをみた人達は混乱してしまうし、やがてルナの討伐隊なんかが結成されるかもしれない。
残念だけど、視界の悪い夜しかルナと馴れ合う事は出来ないんだろうな。そして俺は今、夜風を浴びて非常に寒い。
「ねぇ、サトー」
「ん?」
「熱くない?」
「いや、全然。むしろ寒い」
「えぇ!?なんで。私、結構汗かいてきてお風呂入りたいとか思ったんだけど」
 あぁ、そうか。ルナは俺に合わせてスピードを限りなく抑えて飛んでいるから非常に神経を使うと。普通に飛ぶのより
数倍疲れるかもしれないな。
「じゃあ、帰るか」
「待って!」
「な、なんよ?」
「さ、寒いんでしょ!?じゃ、じゃあ、お風呂入って温まった方がサトーもいいじゃないかなーって思ったの!」
「お風呂って言ってもルナが入れるのなんてあるのかよ?」
「あるよ!あそこのグツグツ山に良い感じの温泉があったんだよ」
「マグマじゃないよね?」
「失礼な!ちゃんとしたお湯、温泉です!マグマに入るとか、私をバケモノか何かだと思っているでしょ!」
「あー、わりぃわりぃ。お湯なら大丈夫だけど、俺は溺れちゃうんじゃないの?」
「ソコは結構大丈夫」
「どう大丈夫なんだよ」
「っというわけで、お風呂にしよー!」
 なんか、急にルナが楽しそうに見えてきた。スピードも心なしか徐々に早くなっているような気もする。我慢だ俺、
我慢するんだ。


 そんな訳でやってまいりましたグツグツ山。グツグツ山っていうのは、簡単に言えば火山である。山頂付近には火山灰
などで、緑とは無縁の地帯。そして、山頂からはグツグツ水蒸気が舞い上がっている。きっと、山頂から覗いてみれば
マグマがグツグツ煮え混んでいるんだろうと思っていたら、そこにはマグマではなく白く濁ったお湯、温泉である。人間、
勝手に妄想を膨らませてはいけないなと思う。たぶん、問題はない。
 そして、俺は今ルナと一緒に温泉に入っている。むしろ、ここはルナぐらい大きくないと入れそうにない。俺は落ち
ないようにルナの胸に乗って温泉に入っている。滑られば谷間に落ちるもんだから、ルナは両腕で胸をぎゅっと少し寄せて
落ちないようにしている。
「あ~っ、気持ちいい!サトーはどう?」
「俺はちょっと恥ずかしい」
「・・・?どうして?」
「はぁ・・・。お前はよくさっきまでよく人にえっちだの言えたな」
 呆れてくるが、ルナが楽しそうだからまぁいいや。
「んふふ。谷間温泉の湯加減は如何ですか~?」
「あ~、丁度いいですよ~。でも、ルナもよくこんな温泉見つけたな」
「私もホント偶然見つけたんだよ。初めは、お風呂ってのを知らない時はこの蒸気を浴びているだけだったし」
「ルナも苦労しているんだな」
「うん。で、ある日勇気を持って中に入ってみたら、そこには温泉がありましたってね。ラッキーだった。あと・・・」
「あと?」
「こうやって、サトーと一緒に温泉に入れて私はとっても満足しているよ。ありがと、サトー」
「な、なんだよ。気持ち悪い。俺もこんな凄い所、教えてもらってうれしいよ」
「えへへ」
 見あげれば笑顔のルナが俺を見ている。やっぱ、俺はルナのこの顔が好きなんだよな。
 こうしてルナと一緒に入れるのもすっごく楽しいし、癒される。俺は、ルナには辛い思いをさせたくはない。あの日から
そう決めているんだ。
 数年前、俺が子供の頃。迷いの森で薪拾いをしている時に俺は初めてルナと会った。俺と同じぐらいの大きさだったが、
ルナは人間とは違い、翼と尻尾が生えていた。人からはバケモノと呼ばれ、魔物からは人間みたいな姿をしやがってと
イジメられ、孤独だったルナ。
 だから、初めて会った時はどうしてこの子はこんなに怯えているいるのかが、わからなかった。そして、わかったんだ。
他の人がおかしいのが、俺がおかしいのかはわからない。だけど、ルナだってちゃんと生きているんだ。差別されて孤独で
一人ぼっちなのは寂しかったんだ。
 迷いの森で出会って、友達になって、こっそりお互いに約束して迷いの森でおしゃべりしたり、家からくすねてきた
食べ物をルナと一緒に食べては遊んでいた。そして、ルナの体は日に日に大きくなっていった。最初に着ていた服を破いて
それを繋ぎあわせて来ているルナが可哀想だったから、俺は仕立屋になってルナに服をつくってやろうと決めたんだ。
 最初は失敗ばっかりだった。でも、ルナにもちゃんとした洋服を着せたい。そんな思いから頑張って頑張ったら、いつの
間にか目測だけで人のスリーサイズがわかるようになって、それが話題になってお客が増えた。幸いにも服のデザインも
良かったのかもしれない。
 お金に余裕が出てきてからはやっと、ルナの下着でもなんでも作れるようになった。はたから見れば、巨人の服でも
作っているのかとか、なんで作っているのとか、天才はなにやらかすかわからねぇなとか色々言われたのも懐かしい限りだ。
ルナがいたから、俺は今の自分がいるんだろうなっと思う。どうしようもない昔話だがな。
「サトー?ずーっと見上げてどうしたの?」
「え?あ、いやのぼせたかな?」
「あ、危ないよサトー。やっぱり、熱すぎるのかな?あがろうあがろう」
 そういうと、ルナは俺を山頂にまで乗せていく。
「あ、私の服タオル代わりにしていいよ」
「え?あ、あぁ、ありがとう。じゃあ、ルナはどうするんだよ?」
「私?私はいっつも、こうしているよ?」
 そういうと、ルナは一気に急上昇し、もの凄いスピードで辺りを飛んでいる。
 もしかして、アレで水切っているのだろうか?湯冷めしねぇのかよ!?と突っ込みたくなる。夜空をぐるんぐるんと
アクロバティックに飛ぶルナ。すると、月を隠していた雲が晴れて青色の月が姿を現した。
 そういえば、今日はブルームーンの日だったな。青い月に照らされるルナが青白く発光しているように見えてなんとも
幻想的である。綺麗だなと眺めていると、ルナがこちらに向かってこう言った。
「こっちをみるなー!」
 あぁ、はい。そういえば、今、全裸でしたね。
「あ~、みねぇよ。早く着替えろ~」 
 両手で目を隠すと隣にドスンと着地した揺れがあった。スッスッスッスと服を急いで着る音だ。
「ルナはいっつもあぁ、やって水切ってるのか?」
「うん。ひんやりして気持ちいいよ」
「そうか。こんどは、バスタオルを作ってこないといけなくなったな~。アレじゃいつか、風邪を引くぞ?」
「なんとかは風邪引かないから大丈夫だよ」
「まぁ、楽しみにしてろって。後は、っと・・・」
「どうかした?」
「白か。いつかは黒いのも見てみたいから履けるようにするんだぞ」
「白?黒?・・・あ!こら、ちゃっかり見るな!!」
「あ~、わりぃわりぃ。俺が作ったものだ。眺めて何が悪い」
「もう、これは私のなの!サトーのじゃないの!えっち!」

 こんな素敵な時間が永遠に続くといいなと、ルナとサトーは思うのでした。

 めでたし、めでたし。