あー、もうでっかいサンタ(?)さんがやってきたよ!
 
 クリスマスパーティ、俺は何かの月刊誌か何かで目にしたクリスマスパーティイベントに参加した。
『○○年代限定! 彼氏彼女での参加、いない方でもウェルカム!』といった感じの紹介文、会費は
男女差別がなく、同額のイベントに珍しいものもあるもんだなと俺は思った。・・・まぁ、なんとなく
期待なんてものはしなかったが、楽しく飲めればそれはそれでいいのかと思い電話連絡を入れた。
 当日、集まったメンバーは男性陣が7人、女性陣が6人でクリスマスパーティが始まったが、主催者側の
判断を見誤ったのか参加者多数で別の部屋へ移動した。そこからテーブルに付き、ドリンクをオーダー。
料理はセルフでバイキング式だった。適当に誰かが乾杯の音頭をとりってクリスマスパーティはスタートした。
 このパーティは大方2人、友達や知り合いを誘って参加という感じで初対面の人とは喋らない、まぁ
興味が無いのか、ビアガーデン感覚で参上したのか人によっては色々あり、出会いを求めて来たというのは
大失敗なのかもしれなかった。まず、男性陣は俺は知り合いが当日仕事の都合でこれなくなり、一人で参加。
まぁ、俺以外にも一人で参加したという輩はいたが、他は友人、知り合いといった感じだった。対する女性陣は
同じ職場関係といった感じだった。大雑把に分けて2人と4人。話をしている内容からざっくりそれは割れた。
 そこから適当にお酒とトークで盛り上がるも相手にその気がないのか、何から切り出していいのかわからない
感じで適当に話を振った。
 出身は? お仕事は? 学校は? 部活動は何していた? など、そこから僅かな会話づくりのキッカケを
作ろうと話をふり適当に流れていく。そして何気なしに他所のテーブルから年の話が聞こえてきたもんだから
こちらも失礼では無ければ教えてくださいと問うと「気持ちは永遠に20代です」
 年齢制限を一応しているのに実はオーバーしてますみたいな解答をしてくるのだ。ここで初めて会話が
噛み合わなくなる。何故なのだろうか? 有耶無耶にする必要なんてものはないし、既に答えは出てしまっている。
職場の仲のいい人達と来ましたという4人組、高校からは短大だの卒業している情報はあった。が、微妙ながらの
上下関係みたいなのは当然あるもんだから『今の仕事してから何年なりますか?』と、聞くとあっさり8年だの
9年、5年と答えてくれた。はい、特定しました。ありがとうございましたと心のなかでツバを吐き、その
クリスマスパーティは延長等せずにラストオーダー限りで現場から退場したのであった。

 *

 帰り道。ほんと期待なんてしていなかったが、後半の胸糞の悪さが際立つイベントであった。どこかで飲み直そう
かと思いながらの歩いて帰る。何かこう、スカッとするような出来事でも起きやしないかと。あるわけないじゃん
とか何気なしに道の端にあるゴミ捨て場のガラクタを見つめる。何を思ったのか魔法のランプのようなものが捨てて
あり、少し考え周囲を見渡し、誰の目にもとまらぬのを確認し、ランプを手に取る。
 はは、俺はバカか。そんなおとぎ話のような出来事でも起きるわけもでもないっていうのに、こう、擦ると
魔神のようなものがでてきてなんでも願いを叶えてくれる。なーんて事あるわけないじゃん。が、酔っぱらいだし。
別にいいかと。適当にランプのフタの部分を手のひらで適当に撫でてみると、あろうことか起きてしまったのだ。
ランプの口から黙々と紫の煙を吐き出したもんだから、思わず手からランプを離す。カーンという金属を鳴らし、
紫の煙はあたりの視界を遮るように吐き出した。
「ふぉふぉふぉふぉ、私はランプの魔神じゃ。べったべたじゃがそなたの願いを叶えてやろう」
 なんかでた。うっすらと紫の煙のもやから何かが。そしてそれはのっそのっそとこちらに歩みよると、俺の目の前には
褐色色の肌に、紫のロングヘヤー、ほぼ全裸に近い布切れで局部を隠しているほぼ全裸のねーちゃんが俺の前で
仁王立ち。
「ふぉふぉふぉ、青年よ。現在の時刻は21時半じゃ。リアルに時間がないから手短に進めようぞ」
 と、さっきの俺のやっていた行動を知っているかのような感じだった。まぁ、たしかに開始時間から2時間コースで
さっさと退場では嫌でもそうなる。
「あんたはいったい?」
「ふぉふぉふぉ。私は見ての通りボンキュボンのグラマーなランプの魔神じゃ。今日はクリスマスで特に何もなく
 帰る輩を私の気まぐれでほんの少しでも慰めてやろうかとおもってべったべたな所にいたもんじゃが、案外今のご時世
 落ちているものは拾わんのじゃな。危うく明日のゴミ収集車に処分され、ランプと言う名の我が塒を破壊される
 ところじゃった。もう、そんなことなったワシ・・・私めっちゃ切れてこの世界を破滅とカオスと混沌の闇に叩き
 おとしてやろうと思ったのじゃが、それは無事なさそうじゃな。おめでとう青年よ。世界はお主に救われた! そして
 私は塒を失わずに済んだ! まさに英雄! おめでとう!」
 ・・・。
 なんかめっちゃ喋ったぞこの褐色グラマー(自称)ランプの魔神。いや、まぁ確かにセクシーだと思うけど、喋りすぎ!
なんというか、黙っていれば美人さんなのに口を開けばどんどんポンコツ残念な子になる類の生き物だ。
「ほれ、黙っとらんで何か言うてみい。ちなみにラブホォ、とかいう輩はこっからでは少し歩かねばならぬみたじゃぞ?」
 何いってんのこの魔神!? 淫獣?! いや、淫神か!?
「いえ、僕は、そのあってすぐにそんな事できないし、例えグラマースというあなたの体格でもそれはご遠慮させてもらいたい」
「ほほーう、さてはドウテェイじゃな?」
「うるせぇな!」
「ふぉふぉふぉふぉ。図星じゃな青年よ。恥じるでない」
 くそこの変態魔神め。明日ゴミ収集車にランプメチャクチャに破壊されればいいのに。俺のばか!
「とまぁ、時間は有限に使わねば損。ワシ・・・私の力を使えば何でも叶えてやろう。なんせ破滅とカオスと混沌の闇に世界を
 落とせるんじゃからな」
 どうでもいいが、『カオス』と『混沌』って同じ意味じゃねぇんすかね? このめんどくさい言葉力。しかもさっきから
自分の事は『私』ではなく『ワシ』って言っているんじゃねぇんか。いや、もうそんなことはどうでもいいか。このままじゃ
やつのペースだ。願いを求められている以上願いを言って損なことはないか。リアルに現金が欲しいとかそういうのでもいいのか?
 いや、それでは面白みに欠けるか。
「あんたの力がどんなものかは知らんが本当に『破滅とカオスと混沌の闇に世界を~』とか言ってるの本当なんですか?」
「せやで」
「・・・軽いっすね。じゃあ、魔神とかいうなら魔神らしく巨大化してこの駅前近辺の雑居ビルとかを破壊とかできるんですか?」
「ええで。青年がソレを望むならワシはその願いを叶えるまでじゃ。あ、私」
「もう言い辛いならワシでいいですよ」
「ワシの事はワシと言って良いのか? 一気にババ臭くなって勃つものも勃たなくなったら困るのじゃが」
「魔神っというよりかサキュバスですか?」
「そんなスケベな事を考えている種族と一緒にしないでもらいたいのじゃが!?」
「どーだか。かからかってるのか素なのかやれるならやって見せてくださいよ」
「ほほうこの魔神ルストタールの力を信じていないのじゃな? ならばとくとその目に焼き付けるが良い。刮目せよこれが
 ワシの力じゃ」
 するとルストタールと名乗る魔神は腕を組み、一呼吸おくと身体が薄く発光して徐々に身体が膨張、拡大、巨大化を
はじめたのだった。

 *

「ふぉふぉふぉふぉ。どうやらびっくら仰天で声もでないようじゃな青年よ」
 魔神ルストタールは本当に巨大化した。倍率的に先ほどの100倍ぐらいはしており、肩幅程度に足を広げ、両手を腰に手を当て
ては俺を跨ぐ用に仁王立ちをしている。そして、気づけば先ほどの紫の煙幕もはれてさっきいたゴミ捨て場の風景が姿を表した
のだが、一部巨大化したルストタールの犠牲になっている部分がある。
 まず、靴など履いていないルストタールの素足はアスファルトに重々しく沈み込んでおり、素足は道路に収まりきれずに
電柱をなぎ払い、近辺に止まっていた車も押し飛ばしていた。
「さて、では始めようかの」
 にやっと笑うと膝を少しおり、ふん!と腕を振る。俺の真後ろに会った建物に下から上に拳を振るアッパースイング。
メキメキメキと音を立てる余地すらなく、そのままスパーンと爆ぜた。木っ端微塵とはまさにこういうことなのだろう。
「どうじゃ! すごいじゃろ? まだまだお楽しみはこれからじゃ」
 楽しそうに言うルストタール。ズシンズシンと巨大な足を動かし、次の獲物を探しに歩く。2階建ての小さな民家を楽々
踏み潰す巨大な素足。膝ぐらいの高さのビルを跨ぐなり、腰を落とす。尻が屋上に触れるや否や何の抵抗もなくフロアを
押し潰す巨尻。座り込んで数秒、いや一瞬だろうか瞬く間に地面にドッシンと到達。あたりに軽く衝撃波を起こし、建物を
揺らし一部窓ガラスは割れていた。
「なーんじゃ貧弱じゃのー」
 と、人間の作る建物は魔神にとっては椅子にもならんものなのかと呆れたかの表情を見せる。そして、座ったままの状態で
胸より少し高いビルを目にすると両手で大きく立派なおっぱいを下から持ち上げるように持つと、そのビルに前屈みになる。
両手で掬った水をぱっと離すかのように手を離せば、ぽろんっとおっぱいは両手からこぼれ落ち、屋上にずっしりを乗せてみ
るが、一瞬は耐えた屋上では合ったが徐々に重さに耐えられなくなり、これまたズドンと屋上を突き崩し、下のフロアへと
落ちる。
「ふぉふぉふぉふぉ。一時は耐えたがワシのおっぱいのGには耐えられんかったようじゃのぅ」
 と、ビルに手を突き刺し、まるでビルからをおっぱいを引っこ抜くかのようにこちらにおっぱいを見せる。
「さて、次は青年と遊んでやるとしようかのしかし、この大きさでは少々小さいかの」
 するとふん!っという掛け声と共に今度は一気に身体が大きくなったルストタール。大雑把にみて、さっきより一気に5倍
ぐらい大きくなっただろうか? 女の子座りしていたルストタールだったが、徐々にゆっくりきょだいかではなく、いきなり
巨大化するものだから、さきほどまで何もなかった部分にルストタールの身体がギュン!と伸び、そこにあったものを容赦
なく吹き飛ばした。おっぱいを乗せて遊んでいたビルなど、今度は膝が突き刺さりそのまま膝の上に乗っている。なんとも
惨めな建物であろうか、さっきはおっぱいに弄ばれていたかと思えば今度は一気に巨大化して下のフロアを吹き飛ばされ、
地上と屋上の中間部分のフロアだけが申し訳なく膝の上に残っている。だが、それもルストタールが膝立ちをすれば、するする
と流れ落ち、地面に落ちて廃墟となった。
「では、青年よ。ワシとオニゴッコをしようではないか。ワシはハンデで四つん這いになってお主を追いかける。捕まったら
 ゲーム終了。実にシンプルじゃろ?」
「え? あ、いや。これ以上はだめだ。もう充分力がわかりましたので暴れないで下さい」
「だ~めじゃ。ワシの力をあまくみた青年が悪い」
 そんなばかな。と思いたいが、ルストタールは辞める素振りをみせない。ズシンズシンと両手を地面に、ゆっさりとぶら下げる
巨大なおっぱいを地面につけスタンバイオーケーの構えである。
「ふぉふぉふぉふぉ。今からワシが作る道はパイズリ街頭として歴史に残るじゃろうなぁ」
 ゴゴゴゴっと近づいてくる巨大なおっぱい。そこに何があろうが関係ない。おっぱいに押し潰されたアスファルトはルストタールが
全身すればぐちゃぐちゃになった地面をまるで除雪車が走るかのようにおっぱいの外へ外へと押し寄せていく。しかし、被害はそれだけ
じゃない。いかなる障害物があろうと関係ない。人がいようが車が止まっていようが飲み込まれ、潰され、うんよく盛り上がった土に
乗り上げたとしてもそれも一時。外へ外へと転がり落ちれば、後方から地面をすり潰しながら迫る足、膝、脛などに磨り潰されて
しまうだけだ。
「・・・はっ!」
 そんなことを観察している暇などないのだった。オニゴッコは既に始まっていたのだ見とれていてはならない。ぐらぐらと収まらない
地震の中を走って少しで長い時間ルストタールから逃げなければならないのだ。だが、当然道行く人もパニックである。携帯電話を
写真を撮るものもいれば、どこへ逃げて良いのか右往左往人間同士でおしくらまんじゅう状態。当然そんな中遠くへ逃げられるわけもなく
巨大な影に飲まれる。
「ふぉふぉふぉふぉ。青年よ、どうやらゲームオーバーのようじゃな」
 ズドンと左右にあった建物はもぐらたたきの如く叩き潰され、建物の代わりに巨大な褐色色の柱が存在し、後ろを見るとありと
あらゆるものをすり潰したであろう柔らかく凶悪な巨大な谷間が現れる。
「いやだ! 死にたくない!!」
 思わずルストタールを見上げ半泣きになりながら叫ぶ。
「ふぉふぉふぉふぉ。安心せい青年よ。これは『夢』じゃ」
 にっこりと微笑むルストタール。
「・・・へ?」
 状況をよく理解できず背後からガバッと何かに飲み込まれた。

 *

 あれから数日。大掃除の住んでいない部屋にせっせと新年に向けて片付けをする男女の姿がいた。
「ほんとゴミ収集車に塒をめちゃくちゃにされればよかったのに」
「ふぉふぉふぉふぉ青年よ。まーだ根に持っているのか。なかなか刺激的なくりすますぷれぜぇんじゃなかったかの?」
 俺は今ルストタールと一緒にいる。逆に言うと行き場を失ったルストタールが勝手に住み着いているのであるが、ある程度家事等々
やってくれるのでなんともいえず仕舞いになってしまったのだ。あのパイズリクリスマス大事件はルストタールが俺に本当に夢であったのだ。
あの何かに飲み込まれた感覚のち、意識を取り戻すとゴミ捨て場の褐色娘に膝枕を受けていたという。本気を出せばあの夢を本当に
リアルで再現することもできるらしいが、あの日の俺はよっぽどひどい顔をしていたらしく、ルストタールがほんの少しでもと
慰めてくれた。っという事になっている。
 あまりにも急な出来事の連続、今でも混乱していてよくわからないが、あの後は周りの目が気になったし通報される前に上着を被せ、
そんままルストタールの手を引き家まで連れてきたが最後、追い出すにも追い出せなくなった。だって、褐色露出狂といってもいい
ぐらいの露出の高い衣装、、サバンナからでも逃げてきたのかと。周囲の目もあり、後日ゴミ捨て場に戻ったが、ルストタールのランプは
見当たらず、塒を失ったルストタールが俺の家に住み着いているという状態である。

 まぁ、強引に手を引っ張った俺にも問題はあるのだろうが同居人が増え、色々めんどくさい所もあるが退屈はしないのかな。
「・・・ところで青年よ。ご両親さんにはいつ挨拶にいくのじゃ?」
「いかんわ!」



 おしまい。