私、永井七海は高校2年になって、いまだに身長が140cmしかない高校生です。この小さな体をどうにか、
大きくしたいとごはんも食べて牛乳も飲んでいますが、胃が小さいためにたくさん食べることができません。
そんな私も最低でも160cmにはしたいと努力しています。


1.

春休みがあけて、今日から高2になった七海でしたが、あいからわず身長に変化はなし。微妙でありなが、みんな
少しずつ背が伸びているみたいだった。どうして、私だけなんだろう・・・っと身長のことばかりで彼女は自分の
事が嫌になっていました。別に親が小さいわけではない。母の身長は162cm父が175cmである。
高校生にもなると身長が止まる人は止まる。七海はそのことが嫌だった。このまま、140cmというままになるの
が怖かった。でも、思うように身長は伸びない。

学校が始まり、春の課題テストも終わり、部活も何もしていない七海はそのまま家に帰るのは流石に暇になるから、
いつも街のあっちこっちをブラブラしながら帰っていた。今日のブラブラコースは今まで行ったことのない所へ行っ
てみました。人気のない1本道を通ってみた。幅は2mもないぐらい狭い道で周りは壁に落書きとかがあり、よく
この辺でカツアゲなどがありそうな道だ。
そこに、小さく露店を開いている老人がいた。七海は特にやることもなくその店を覗いてみた。老人は70代後半で
あろう体で、猫背でたばこをプカプカ吸っていた。店のテーブルには何もない。老人は七海に気づいたらしく話をか
けた。
「おやぁ、こんな人気のないところに小さな女の子がなんのようだぃ?」
老人は言った。久しぶりに人の顔を見たかのように・・・。無視するわけにもいかないので七海は老人に聞いてみま
した。
「あの・・・、ここって、何をしている店なんですか?」
「ここはねぇ、人の夢を叶える店じゃよ」
「は・・・はぁ・・・」
七海は困った。そんなうさんくさいことを喋る老人。そんな夢が叶うのであるなら誰もがこの店によるであろうっと
七海は思った。さらに老人は喋り続ける。
「あんたぁ、最近なにかぁ・・・悩んでいるかね?見る限りじゃぁ結構前からじゃのぅ」
何だこの老人はっと七海は思った。確かに、七海は自分の身長を気にしていた。もしかしたら、身長を伸ばすという
夢が叶うかもしれない。まぁ、この際だし、騙されたつもりで買ってみようっと七海は老人に自分の願いを言ってみ
ることにした。
「あの、夢って何でも叶うんですか・・・?」
「あぁ、叶うとも、願いが強ければ強いほどにね」
「それじゃ・・・身長を伸ばす薬とかありませんか?」
七海は言った。自分の身長をどうにかしたいから顔を赤くしながら言った。しかし、老人は少し困った顔をした。
「ごめんねぇ・・・。身長を伸ばす薬はないんだよ」
「あっ、そ、そうですよね・・・身長をのばすだなんておかしなこといちゃいましたね・・・」
やっぱ、あるわけないよ・・・ね・・・。七海は諦めて店を去ろうとした。
「お嬢ちゃん。薬はないけどね。願いを叶える物ならあるんじゃよ」
そう言って、老人はテーブルの下から一冊の白いノートを出した。外見ただのノートに見える。
「この、ノートはただのノートじゃ。だが、そんじゃ、そこらのノートではない。願いを叶えるノートじゃ。願いは
1つだけ聞いてくれる。願いを頭の中で強く願いながら自分の名前を書くんじゃ。そうすれば、願いは叶う」
老人は笑顔言い、七海の元に近づいてノートを渡した。そして、老人は喋りつづけた。
「夢、でも願いでもいいじゃろ。頭でイメージするんじゃよ。そして、名前を書けば願いは叶う。書いたあとは・・・
そうじゃな・・・学校の授業などで使ってもいいじゃろぅ」
七海は思わず、自分の身長が伸びていくのを想像した。この小さい体で人を見上げるのではなく、人を見下ろす自分
を想像した。
「素直でいい子だね」
老人は言った。七海はこのノートをもらうことにした。
「あの、お金・・・いくらですか」
「そうじゃな〜、別にいらんよ」
「でも、それじゃおじいさんが損するばかりじゃ・・・」
「お金はいいんだよ。どうしても払いたいのなら、君の笑顔でいいじゃろ」
老人は笑いながら自分の店に戻った。不思議な老人だ。七海は思った。店を後にしたあと、七海は疑問点がいくつかでてきた。
本当に願いが叶うのかな?


本当に身長が伸びるのかな?


あの老人を信じていいのかな?


七海は家に帰るまでにそのことを考えていた。
歩き出して、30分。自分の家に近づいてきた。本来なら20分で着くところ白いノートと途中で鞄から見たりしていたら普段
より時間がかかってしまった。あの十字路を曲がれば家に着く。十字路を曲がった。
 ドン!
七海は何かにぶつかって尻餅をついてしまった。目を開けて、目の前をみた。男性だ。その男性も七海とぶつかって倒れており、
胸に手を当てていた。七海は立ち上がり男性の近くに寄った。
「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
「ゴホゴホ、あぁ、大丈夫。君は?」
「あ、私は大丈夫です」
「そうか、よかった。ぶつかって、ごめん・・・」
そういい、男性は立ち上がった。大きい。私と並ぶと男性の胸の位置に私の頭がぶつかる。だから、男性は胸に手を当てていた
のかがわかった。男性は手で自分の服についていた砂をはたいた。
「いぇ、私もちゃんと前を向いて歩いていなかったので・・・ごめんなさい・・・」
男性は七海の小ささにびっくりした。七海の服装は高校生の服装。ここまで小さな高校生がいるのかと驚いたようだ。
「あの、私に何かついていますか?」
「え、あ、いや、ほら、君も転んだのに、制服の砂とかはたかないのかなって思ってさ」
「あ・・・」
よく見るとスカートに砂がついていた。それを急いで叩いた。叩き終わると男性は七海に軽く頭を下げてその場を去った。

家に帰り、七海は自分の部屋に入った。鞄から白いノートを取り出した。願い事は決まっている。あとは、このノートをどうす
るかだった。学習に使うにはもったいないような気がしたので、日記帳にすることにした。
ノートに名前を書く。願いは『身長が伸びたい』どのぐらい伸びたいって聞かれたら伸びれるだけ伸びたいなっと思った。七海
はあることを思い出した。七海が小学3年生ぐらいのとき近くの裏山にお父さんと一緒に言った記憶だ。場所は忘れたが、その
杉の木はお父さんのお爺さんの代からあって、その木に傷をつけて自分の身長を測っていたのを思い出した。
「そういえば、あの杉の木・・・でかかったなぁ。あの頃の自分と今の自分ってどんぐらい背が伸びたのかなぁ」
七海は想像した。が、あの頃と対して身長は変わらないのではないかっと思う。恐らく今の身長と比べると肩ぐらいであろう。
それと同時にあることを思い出した。
このノートは本当に願いが叶うのかな?
そればかりが、気になる。しかも、願いは1回きり、試すこともできない。嘘なら嘘で終わるけど、本当だったら大変なことに
なる。たとえば、『地球に隕石が降ってくる』なんて書いたら、それだけで大問題だ。嘘ならもちろんノートに書いた落書きで
終わる。
七海は考えた。どうせ伸びるならあるだけ欲しいとも思った。嘘かもしれないし、嘘じゃなかったら、嬉しいだけである。どの
道損することは一切ない。七海は『あの杉の木より大きくなりますように』っと頭のなかで願い、白いノートに『長井七海』っと
書いた。

翌日、七海は体に異常があるかなっと思ったが、身体には特に以上はないようだった。これが、嘘ならそれはそれでいいと思った。
だが、今日は身体測定日。もし、身長が伸びていたら、あのノートは本当かもしれない!っということだ。七海自信何かの賭けを
しているみたいで楽しみだった。
学校に着き、自分の席についてみると昨日まで自分の隣に席はなかったのだが、何故か1つだけ椅子と机が置いてあった。朝の
ホームルームに担任の先生が入ってきた。
「今日から、このクラスに転校生が来ることになった。君、入ってくれ」
七海は誰だろぅっと思い小さな体をがんばって伸ばした。ドアから転校生が入ってきた。だが、七海は見覚えのある顔だった。
「君、かる〜く自己紹介して」
担任の先生が気軽に転校生に話しかけている。転校生は教卓に立ち
「親の転勤で引っ越してきました。山井俊介といいます。わからないことばかりだと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
軽く拍手が鳴ったところで、先生が
「え〜っと、山井君は・・・長井の隣の席な。みんな仲良くしろよ。えーっと、今日は…」
先生の説明中、自分の席の隣にやってきた背の高い人・・・昨日家の近くでぶつかったあの人であった。七海のクラスにはこれと
いって身長が高い人はあまりいなく、俊介がきてから、俊介がこのクラスで一番背が高いことになった。

身体測定が始まり、身長計で七海は身長を測った。身長は141cmだった。座高は73cmだった。座高の方が大きいのかっと
七海は思った。ここで、ノートのことを思い出した。この1cmはノートの力なのか、それともただ普通に背が伸びたのかもしれない。
結局のところわからないっという結果に終わった。

身体測定も終わり、昼休みに俊介の周りに男性陣がほとんどいた。
「山井〜、前の学校で部活とかしていたのか〜?」
「いや、俺外形より体弱くてさ、部活はしていないんだ」
「へ〜、お前あたり、背が高いからバスケとかしているイメージあったけどな」
「あぁ、よくいわれるよ」
「で、身体測定でお前身長何センチよ?」
「身長か〜185cmっていわれたっけがな」
俊介は頭を掻く。
「デケーなお前。このクラスではダントツじゃね!?」
男性陣は勝手に盛り上がっている。
(俊介君・・・185cmもあるんだ・・・いいなぁ・・・私もそんぐらい背が伸びたいなぁ)
 学校が終わり、荷物をまとめて家に帰る際に昨日老人にあった人気のない1本道を通ったが、老人の店はなかった。しかたなく、
やることもなかったので家に帰ることにした。家まであと少しの十字路で七海は止まった。この十字路で七海は昨日俊介とぶつかった
のを思い出していた。あの時、軽くぶつかっただけなのに、俊介は胸に手を当てて、咳をしていた。
「また、転んだのか?」
背後から、声がして七海はびっくりした。後ろを振り向くと俊介がいた。やっぱり、俊介は大きいなっと七海は思った。
「転んでないよ。ただ・・・昨日ここでぶつかったなって思っていたら・・・」
七海は昨日のことを懸命に思い出していた。確か、あの時俊介はかなり苦しそうな様にも見えたからだ。ひょっとしたら、どこか体を
悪くしているのだろうかっと七海は不安になった。
「あぁ〜、そうだったな。ここでドン!ってぶつかったんだよな」
俊介は何事もなかったかのように話す。しかし、どうしてこうも俊介と会うことが多いのだろうかと疑問に思った。ストーカーをする
ような人には思えない。
「あのさ・・・」
七海は俊介を見上げる。
「俊介君の家って・・・その・・・どの辺にあるの?」
「俺?俺はこの十字路を左に曲がったところにあるよ。きみは?」
「私は、この十字路を右に曲がったところに・・・近所だね」
ほほぉ〜っとした顔で俊介は少し考えて
「・・・そうだな。あのさ、迷惑ならいいんだけどさ、休日時間あるか?」
「えっ?」
急に俊介が『休日時間あるか?』って聞いてきて胸がドキドキしながら七海は
「ひ、暇だけど・・・」
「じゃあさ、休日あたり、・・・この辺のこと色々教えてくれないかな?」
俊介も照れくさそうに七海に言った。身長差はあるけど、逆から考えれば、俊介のことを知ることができると思い、七海は
「いいよ。いつがいい。私も・・・その俊介のこと・・色々知りたい・・し・・・」
どんどん声が小さくなる七海。後半からは何をいっているかは俊介にはわからかったが、俊介はじゃあ、お願いするよっと言い、曜日は
14日の土曜日にした。
(これって・・・デートっていうのかな・・・)
七海の顔はどんどん赤くなっていく。いまさら恥ずかしくなってきたようだ。それを見て俊介は笑った。
「きみって面白いな」
「ど、どこが?」
七海はさっきまでの赤い顔は一瞬に消えてムッっとした顔になった。
「ん?色々とね」
だが、ムッっとした顔は俊介の笑顔を見たら急にムッっとした顔がなくなり、気がつけば一緒に笑っていた。
「そういえばさ、きみって背伸びた?」
いきなりの身長の話。確かに、身長は1cm伸びたが、どうしてそんなこと聞いたのかが不思議になった。
「どうして、そう思う?」
「いや、気のせいだと思うんだけど、昨日は大体俺から見るときみの身長が俺の胸あたりあったような気がしたんだけど、今日は俺の肩
より少ししたぐらいに見えたからさ」
そういわれてみれば、そんな気がするような気がした。その後二人は軽く喋ったあとにそれぞれの家に向かった。最後に分かれる際に、
七海は俊介に自分の名前を教えた。転校してきたばっかりで、クラスの名前を覚えていなかったようだ。
 家に着き七海はロビーのソファーに倒れた。七海にとってこんなに長く男性と喋ったことがなかった。
「土曜日・・・か、晴れるといいな〜」
七海はつぶやいた。そして、メジャーを持って自分の身長を測ってみた。身体測定は今日会ったが、俊介に『背伸びた?』っといわれて、
気になって測ってみた。身長は145cmだった。
「うそ・・・、1日で4cmいや5cm?伸びたのかな・・・。身体測定のとき猫背にでもなっていたのかな」
七海は少しあのノートの力が本当なのかなと思った。