12.
 徐々に気温が上がり、夏が始まろうとしていた。部活動も大会等々がせまり、ピークだった。そ
んな中、七海の長身を生かし、部活動に入部させようとしたが全て断り、最終的には茶道部に入部
したのであった。
 そして、入部して初日のことだ。七海は小さくなってきた扉をくぐり、茶道部のいる部室に入っ
た。中には猫山が既に畳の上で正座をしのんびりしていた。
「お〜、やっときたかにゃ〜」
「あ、はい。途中からだけど、よろしくね」
「いーの。いーのそんなことは、茶道部っていっても私1人だけだっただけだけどにゃ〜」
 にゃはははっと笑いながら猫山はこっちゃこい、こっちゃこい手招きしていた。七海はあははと
少々困りながらも猫山さんの前に立ち、座ろうとしたところだ。猫山は七海と比べるととにかく小
さい。しかし、七海が急成長をする前も七海より若干小さいぐらいだった。七海も高校2年生の春
先まではわずか、140cmだったが今では225cmある。
「しかし、七海さんは大きくなったにゃ〜、半分身長分けてもらいたいぐだいだにゃ〜」
 カツカツカツと茶具でお茶を作り出す猫山。
「あはは、でも一番びっくりしてるのは自分ですよ」
「何か身長伸びるものでもないかにゃ〜」
 はぁ、とため息を吐く猫山。自分の身長の低さにコンプレックスを抱いているのだろうか?と思
っていると猫山からお茶をいただいた。七海は「ありがとう」と言いお茶をもらった。七海は茶道
のことはよくわからないから特に意識して飲むことはできなかった。一口飲んでの感想は苦い。顔
にでていないか不安になった七海であったが、案の定顔にでていて猫山はにやにやしていた。
「苦かったかにゃ〜?」
「え?あ、うん・・・お茶のこと、私全然わからないし」
「私もわからにゃいから気にしなくてもいいにゃ」
 それでは、茶道部の意味がないんじゃないかと七海は思ったが、それは置いておこうと七海は思
った。
「それにしてもそんなに大きいと生活は大変じゃないかにゃ?」
「あ、うん。2m超えた辺りから色々と大変になった・・・かな。扉も大きい感じなんだけど、頭
 とか打つようになったし・・・あはは・・・」
「うちも、そんぐらいほしいにゃ〜」
 ほのぼのと物欲しそうな顔で猫山は七海をみる。まるで、ペットが主人に物欲しそうな顔をする
かのような感じだ。


 七海はふと、謎の風邪薬を思い出す。前に、優衣と三咲とあったときにもらった風邪薬を今持っ
ている。公園で彼女達の長身の原因は風邪薬にあるのではないのだろうか?風邪薬という名の身長
を伸ばすサプリだと七海は思った。現にその薬は手持ちにあり、猫山もぼんやりしておりさり気な
くお茶の中に入れることは不可能ではなかった。
 猫山は自分の身長の小ささをコンプレックスをいだいているのだろうか?だったら、ちょっと試
しに入れてみようかと七海の中で思った。しかし、得体のしれないものを猫山に使っていいのだろ
うか?と七海は考える。しかし、これは優衣と三咲も使用済という保証がある。あそこまで大きく
なるかはわからないが、七海は猫山のお茶にさり気なく薬を入れてみた。
「ん〜、どうかしたかにゃ?」
「え、あ。別になんにもしてないよ〜」
 急に声をかけられ七海の大きな体がビクンと動く。しかし、どことなく逃げ出したい気持ちもある。
「ちょっと、お腹痛くなったかも…トイレ行ってくるね」
 と、七海はその場をごまかして、トイレに逃げ込んだ。

 ドタドタドタとトイレに向かう七海。別にお腹が痛いわけじゃないが、七海はトイレの中に入った。
ふぅ、と一息ついたが柵から完全に頭が出ておりそのトイレに七海がいるというのが一目瞭然だった。
ここで、改めて自分の長身さを認識する。柵の一番上に両手を乗せ、前のトイレの方を覗き込んだ。
人は居なかったが今の自分では楽々こんなことが出来るんだなと思う。が、この光景を他の人に見ら
れるのは非常にまずい事に気づき急いでしゃがみこんだ。
 勢い良くしゃがみこんだが故に膝にトイレットペーパーホルダーにぶつかり、カシャンという音が
トイレに響き渡った。膝でぶつけて壊れてはいないことを確認すると七海は一安心したが、内心は恥
ずかしいことばかりやっている自分に七海は思わず、
「あーもう、何やってんだろう私・・・」
 
 その後、七海は茶道部の部室に戻ってくると部室には猫山がお茶を用意しており七海を見るなりに
こりと笑いながらこう言ったのだ。
「結構長かったけど、おっきいのでもでたかにゃ?」
「だ、大丈夫ですよ。あははは〜・・・」
 七海は座り、自分のお茶だと思われるものを口に運ぶと猫山も合わせてお茶を飲んだ。大きな体を
丸めながらがらおろおろと猫山の方を見る。やはり、悪いことをした。と七海には罪悪感が湧いてき
た。誤ろう、七海は思った。
「あ、あの・・・猫山さん・・・」
「どうかしたかにゃ?」
「えっと、その・・・ですね・・・」
 急に口が回らなくなってきた。言いたいことは喉まででているがこれから先が言いにくい。その表
情を見るなり猫山も申し訳なさそうな顔をし、うつ向いた。
「やっぱり、苦かったのかにゃ〜?ごめんにゃ」
「え?」
「だって、苦くて口をごまかすためにさっき砂糖をお茶に入れたんだにゃい?無理して飲まなくても
 いいにゃ」
「え?ええ?そんなことはないですよ。猫山さんのお茶とってもおいしいですよ」
 ゴクゴクゴクっと自分のお茶を一気に飲み干す七海。その反応を猫山を驚いた。
「あにゃー。砂糖の入ったお茶を無理して飲まなくてよかったにゃ」
「そんな、砂糖入りだなんて・・・えぇ!?」
 急に意識が朦朧としてきた。やはり、悪いことはできないようだ。得体の知らない薬をお茶と一緒
に飲んだ七海はそのまま倒れてしまった。

 朦朧とする意識の中誰かが呼ぶ声が聞こえる。七海は自分が意識が飛んで眠っていることに気づく
うっすらと目をあけると猫山が細い目で心配そうに七海に呼びかけている。心配をかけちゃいけない
と思い七海は体を起こす。
「にゃ!?大丈夫かにゃ七海ちゃん。ごめんにゃ、緊急事態すぎて先生呼べば良かったんだけど・・・
 怖くなって目が離せなくなってにゃ・・・ごめんにゃ」
「だ、大丈夫だよ猫山さん。ちょっと貧血だよ。あはは・・・」
 どことなくいつもより小さく見える猫山。七海は頭が働いていないからそんな感じに見えるのかと
思った。どことなく、息苦しく吐き気があるかもしれないと思った七海はトイレに向かおうとした。
「ちょっと・・・トイレいってくるね」
 七海が立ち上がろうとした時、体が重い。ちょっと重症かな?と思った矢先、ゴツンと頭を打った。
その光景をみて猫山はもっと不安になる。足を大きく曲げ、背中を丸めながらゆっくりとトイレに向
かう。さっきほど、部室の方で見た掛け時計を見る限り意識がとんだのは10分、20分ぐらいだ。七海
は気持ちの問題だ!と強く自分に言い聞かせ、トイレにたどり着く。扉を開け、和式の便座にしゃが
みこんだ。するとビリっと何かが破けたような音が聞こえた。そしてまた向かえの壁に膝をぶつけた
のだった。七海は少々バックしたが背中が壁についてしまった。
「え?」
 さっきから、やたらモノにぶつかるのはふらふらしているからだと思っていたが、自分が大きくな
てっいたら?を考えると、制服ががふがふするがきつくなっており、七海の胸に盛り上げられてお臍
を見せていた。スカートも大変だ。腹部がきつく、お腹を自然にへっこませている感じだ。そして、
大事なことが先程の不吉な音、やけに感じる爽快感、七海のパンツは見るも無残な姿に形を変えてい
たのだった。
「ど、どうしよう・・・」
まさか、またこんな経験をすることになるとは七海は思ってもいなかっただろう。そんな七海は
現在330cmの女子高生になっていたのであった。