2.
 土曜日になり、約束の日が来た。七海は今日という日を楽しみにしていた。何故楽しみかというと、今日は俊介とデートする日だからだ。朝起きて自分の部屋のカーテンをあけて空を見てみた。空は晴れていたが、陽射しが強くない。七海は楽しみで早く起きてしまったようだ。2度寝するには時間はあまりない。七海は起きることにした。ベットから体を起こし、体を伸ばした。洗面所に顔を洗いに行こうとした。そのとき、七海は気づいていなかったようだが、寝巻きの裾が短くなってきていた。
 顔も洗い終わり、自分の部屋で服を選んでいた。陽射しがだんだん強くなってきた。よし!これにしようっと服を選んでみたが、その服は小さくなってきており、服を着るのを諦め、ずっと前にサイズ間違いで買った服があったからそれを着てみた。服は丁度いいが、七海はどこか残念だった。
「これ・・・結構気に入っていたのにな・・・」
心残りはあるが、無理して着ていけば途中で破けそうだったから、着るのを諦めた。下はスカートにした。実を言うと下も選んではいたが、どれも小さくなりがちなので、一番大きいスカートで俊介の待つ公園に向かった。だが、このスカート前までは膝ぐらいまであったものだが、今は太もものところしかないことに七海は気づいてはいなかった。
 七海が、公園についたときには約束の時間の5分前についた。ベンチに座り俊介が来るのを待った。しばらくして、俊介がきた。俊介は少し寝坊したらしく、約束の時間の10分後についた。
「ごめん、待った?」
俊介は言った。七海は無事に俊介が着てくれたから遅れてもあまり怒る気持ちには慣れなかった。
「私も着たばっかりだからさ、大丈夫だよ」
七海は首を振りながら俊介に言った。俊介は七海が怒っていないから安心した。笑いながら俊介は遅れた理由を喋った。俊介が喋っている間に七海はベンチから立ち上がった。
「そういやあさ、永井さん」
「どうしたの?俊介君?」
俊介はまた何かに気づいたらしく、顔を傾けながら
「永井さんってさ、やっぱり身長伸びてきてないかい?前まで肩より少ししたぐらいだったけど、今じゃ俺の首ぐらいのところが頭のてっぺんじゃないかな?」
「そうかなぁ〜?」
七海はそういわれてみると目の前には俊介の首があった。以前は確か、肩ぐらいだった気がした七海であった。

 公園をでた二人は、七海の知っている範囲で俊介にこの街のことを教えた。日が暮れはじめた頃に、七海はあるところを是非俊介に教えてあげたかった。その場所は裏山にある杉の木である。ただ、場所はわかるが実際にその木がどこにあるかは記憶にない七海はどうしようか迷っていた。
「へぇ〜、永井さんって、いろんな場所知っているんだな」
迷っている七海に急に俊介が話しかけてきて七海は戸惑った。
「え?あ、うん・・・。部活してないし・・・。家帰っても何もすることないから、よくブラブラしているんだ。私って暇人だね・・・」
七海は今まで自分は結構無駄な時間を過ごしていたなと思った。だが、俊介は
「いや、スゴイと俺は思うけどな。」
俊介に笑われるかと思った七海にとっては予想外な返答が帰ってきた。
「どうしてそう思う?」
七海は今の疑問を俊介に聞いてみた。
「だってさ、俺は無駄な時間はないと思うんだ。ほら、永井さんだってブラブラしたからこの街のこと色々しっているんだろ?俺だったら、永井を俺の前済んでいた店を教えろ!って言われたら、コンビニとかぐらいしか知らないよ」
「そ、そうかな〜」
普段やることのない七海がとっている行動が初めてすごいっといわれた。家ではよく『そんな暇があるなら勉強しなさい!』っと親からは怒られていた。でも、俊介は違った。七海自信意外なところをほめられたから嬉しくなった。
「ほかにどこかいい所しらない?」
「じゃあさ、あそこいってみない?」
七海は山に指を指した。俊介も七海が指を刺している方向を見た。
「山?」
「うん・・・。あそこのどこかに私小さいころいったことあってね。場所は忘れたけどすんごく大きかった杉の木があるの。その杉の木を俊介にも見せたいなって思ってさ・・・」
俊介は腕を組んで山を見た。
(やっぱり、あんなところいきたくないよね。その前に私、杉の木どこにあるかわかんないっていっちゃったし・・・)
変なことを言ったなと七海は後悔した。道の知らないバスガイドに観光しに来た人がついていくわけないか、と七海は思った。
「ん〜、いいよ。永井さんがでっかいっていうなら一番でっかい木を探せば見つかるしな」
「え、いや、その、いやなら・・・別にいいんだよ。本当に場所わかんないんだよ!でっかい杉の木があるぐらいしか記憶にないし・・・」
七海は俊介を説得した。山に行って杉の木がまだ立っているかもわからないし、誰かに伐られたかも知れない。そのうえ、日が暮れてきているし迷子にでもなったら、帰れなくなっちゃうかもしれない。
「いや、行こうよ。忘れていてもさいってみれば思い出すかもしれないじゃん」
明るく俊介は言った。その俊介の顔は楽しそうだった。

 しばらく歩いて裏山についた。ここからは、七海は知っているけど知らない道だ。小さいころにお父さんと軽く着ただけなのだから。とりあえず、七海と俊介は裏山の方に進んでいった。急な坂道ではなく緩やかな坂道なので、道で転ぶってことはなさそうだ。
山を登っているときに七海何か変な違和感を感じていた。気のせいかはどうかは七海自信どうもよくわからないが、違和感だけは感じていた。そんな違和感も俊介といるとどうでもいいやっと七海は思い山を登っていった。気がつけば七海の前には俊介が前のほうを歩いていた。たまに俊介が後ろを向いて
「この木の根っこ気をつけろよ」
っと呼びかけてくれる。いつのまにか、七海が俊介に案内されているみたいだった。気がつけば二人は山の頂上に来ていた。山から街を見た。小さい山ながら街が小さく見える。東の空はだんだん暗くなってきていた。七海はそろそろ帰った方がいいと思い。俊介に話をかけた。
「こんなところまで来たけど、杉の木なかったね・・・。ごめんね、変なところに誘って・・・」
「まぁ、永井さんが言う杉の木がなくて残念だけど、俺こういうの嫌いじゃないよ」
沈黙が続いた。二人は山の頂上から降りようとした瞬間に俊介が何かに気づいた。
「なぁ、永井さん。あれ見えるか?」
俊介が指を指す。俊介の指先には木々があり一本だけ異常に大きかった。
「永井。一応見に行こう。おまえが言ってる杉の木かもしれないし、いこう」
俊介は大きな木が並んでいるほうに歩いていった。その少し後ろから七海は着いてきた。俊介が進むと急な崖があった。足を滑れば一気に下まで落ちそうだ。俊介は慎重に下りた。
「お〜い、永井さ〜ん。大丈夫か〜?」
下のほうから俊介が七海に向かって話しかける。七海は俊介を見る。俊介が小さく見える。
(俊介君が小さく見えるなぁ。あんなに大きかったのに、私の方が大きく見えちゃう・・・。)
だが、今はそんなことを思っている場合じゃない。今七海がいるところと俊介がいる段差はおよそ5m。たった5mだが、七海は怖くて降りることができなかった。むしろこのまま俊介を見下ろしたくもなった。自分も俊介と同じ目線でもいいからなってみたいっと。
「永井〜。早くこいよ〜。見えちゃうだろ〜」
俊介がわけのわからんことを言っている。見える?何が?七海は自分の服装を確認した。確認したと同時に顔を赤くしてしまった。今日はスカートで来ていたのだ。俊介のほうから七海を見上げれば無防備な小さくなっているスカートからパンツを見ることは簡単なことだ。恥ずかしさあまりに両手でスカートで隠した。が、力を入れすぎて太ももを強く押して、七海はバランスを崩した。
「わっ、と、っととと」
七海は両手でバランスを取ろうと手をばたばたしていた。その光景を俊介からみると急に七海が両手をばたばたしはじめたので鳥のまねでもしているのかと思った。七海の体がどんどん前に近づいていく。そして、ついに・・・七海は段差約5mの崖から落ちたのだった。
ドン!
七海は下の段に落ちた。しかし、あまり身体を強打していなかった。下を見てみると俊介が七海の下敷きになっていた。俊介は落ちてきた七海を受け止めようとしたが、落下地点を誤り下敷きになってしまったようだ。
「ご、ごめん!俊介君!」
急いで、七海は俊介の体からどいた。そのとき七海の服がミシミシ音をたてていたのは気づかなかったであろう。
「ゲホォ、ゲホォ」
俊介は酷く咳をしている。体も丸くなっている。
「だ、大丈夫?俊介君」
七海は俊介を見る。咳をしている俊介であったが、やっと咳が止まり落ち着いたらしく、苦笑いをしながら、体を起こした。
「ゲホォ、あー、やっぱ映画みたいに受け止めるってことはできないな」
そういい、俊介は立ち上がり体についている砂や葉っぱなどを落とした。今度は七海が気づいた。
(あれ?俊介君と公園であったときは首あたりだったけど・・・。今は俊介君の鼻があるところに目がある)
ジーっと七海は俊介を見る。
「大丈夫だって、永井さん。ぶつかったときは痛かったけど、体にはなんの問題はないから」
「え、あ、ごっ、ごめんなさい!」
七海は体を90度を曲げて俊介に謝った。このときも吹くからビリビリっと小さな音がしていた。体を90度曲げたとき、七海の体が締め付けられているような気がした。
「もぅ、いいて。俺も永井さんのこと気遣ってもっと安全な道を探せばよかったんだし、おあいこだよ」
七海はそういわれて体を上げた。しかし、体に感じる違和感はさっきより強くなっている。体を曲げているときの方が強かったが、この違和感は消せない気がした。服の裾を見た。裾が最初のころと比べてみると小さくなっていた。軽く腕をまくっている感じまで小さくなっていた。七海の身長が伸びていることにまだ気づいていない俊介は七海の後ろにある大きな木に指を指した。
「永井さん、あれじゃないかな?」
七海は後ろを振り返ったその大きな杉の木とほかの木を比べるとぜんぜん比べ物にはならなかった。二人はその杉の木に近づいてみた。

 杉の木を目の前にして二人は杉の木を見上げた。本当に大きい。この木なら裏山の周りを歩くだけでも目立ちそうだった。また、その杉の木から見える街の景色は綺麗だった。その杉の木からは七海の家が微妙に見えた。
「あ、私の家がある」
七海は思わず声に出してしまった。自分の身長の目標としていた杉の木がこんなに近くにあるものとは知らず七海は、少し恥ずかしくなった。俊介は大きな杉の木に手をあてながら見上げていた。
「なぁ、永井さん」
急に俊介が七海に話をかける。俊介のもとに近寄ると俊介は杉の木に指を指した。指した指は横に線が引いてありそこに不器用に「ナ ツ ミ」っと書いてあった。
「これ、小3の頃お父さんに付けてもらった印だぁ」
七海はその印を見てみた。小さいな。っと思った。俊介はポケットからペンを取り出して七海に問いかけた。
「今の身長、測ってみる?」
「うん。お願い」
七海は迷わずに言った。小3からどれだけ自分は身長が伸びたのかが知りたかった。俊介が、「わかった」っといい、七海の身長を測ろうとした。
「永井さん、また身長伸びてない?しかも、朝と比べたらすごい背伸びてるよ」
そう、このとき俊介は永井の身長に気づいた。朝のときは首までが頭だったのに、今じゃ鼻のところに頭がきている。頭に手を当て杉の木に印をつけた。小3のときと比べると身長は伸びてきている。そこで、七海はその印のつけた位置の隣に俊介に並んでもらった。
(確か、俊介君って185cmあるから・・・って、えぇえぇええぇえぇええそんな、だいたい165cmぐらいあるんじゃないの!?)
七海はびっくりした。一体一日でどんだけ身長が伸びているんだ私はっという顔をしているのは俊介にもわかっていた。その顔が面白く俊介は笑ってしまった。
「ちょっと、何が面白いのよ!」
七海は向きになり右手を上げた。右手をあげてついに服は耐え切れず。

ビリビリビリビリ!!
七海の右脇の服が一気に破けた。穴は大きく、急いで左手で穴に手を当てて穴をふさごうとしたら、

ビリビリビリビリビリィ!!
今度は左脇の部分から穴が開いた。穴をふさごうとしたら逆に穴を開けてしまった。両脇から大きな穴が開き、その穴からは七海の胸が見えた。胸にはブラジャーはなく、破ける音とともに、ブラジャーも切れたようだ七海は上半身を丸めてしゃがみこもうとしたら

ビビビビ!ビリビリビリビリ!!
ついにはスカートが破けた。次から次えと起こる災難に七海は後ろの木に隠れて体を丸くしてしまった。これは、もうほぼ、全裸に近い状態である。まぁ、無理もないだろう。もともと140cm代の服しか持っていない七海には今の体に合うはずがないのだ。私服が破けたっとなると制服も着れないと七海はわかった。
(ど、ど、どどど、どうしよう・・・。これじゃあ、家にかえれないよぅ)
七海は焦った。このほぼ全裸状態で家に帰れば完全な変態扱いされるからだ。それだけは、回避したい。だが、どうしようか。周りには葉っぱとかしかなく、とても服の代わりになるようなものはなかった。影が七海を覆う。太陽が沈んだんだろう。ついに、七海は泣き出した。
「永井さん」
上のほうから俊介の声が聞こえた。が、俊介のほうを見ることはできなかった。恥ずかしくて体がまったくうごかなくなっていた。そんな、七海の肩に上着がかけられた。そして、俊介は七海のそばから離れた。5mぐらい離れて俊介は七海が隠れている木のほうを見て
「永井さん!その上着使ってください!家から服もってくるんで、それまでまっていてください」
そう言うと七海は木から俊介を見た。七海は小さくうなずいた。俊介はうなずいたのを確認して山を降りた。

寒くなったので肩かかっていた上着を七海は着てみた。やっぱり、俊介の服は大きかった。七海は自分の手を見てみた。すると、裾から手がちょこんとでていた。あたりが暗く怖くなり七海は携帯電話を見てみた。時間は7時を過ぎていた。ここから、自分の家まで帰るとなると40分はかかるであろう。しかも、40分間誰からも見つかることなく家に着くのは不可能だっとおもった。携帯の画面を見て30秒ぐらいでピィー!っという音がなり携帯の画面は真っ黒になった。
携帯の画面の光でもあれば、少しは明るくなる。が、たったいま携帯電話は電池が切れて一人で暗闇の山奥にいることになった。
寒い、怖い、、寒い、怖い、寒い、怖い
七海は泣きそうな声で
「俊介君・・・早くかえってきてよぉ・・・寒いよぉ・・・寂しいよぉ、怖いよぉ・・・」
七海は無事俊介が帰ってくるのをただ願うしかなかった。