5.
 もし、あのノートがなかったら私はいったいどうなっていただろう。
 もし、あのとき俊介がいなかったら私はどうなっていただろう。
 もし、私が人間の領域を超えたらどうなるだろう。

 朝になると七海は目が覚めた。今日から5月が始まる。いつも道理に朝の
したくを七海はした。制服を着てみると小さく感じていた。寝ている間も
七海は小さく成長している。
 学校に着くなり七海は保健室によった。保健室の先生は「体調が悪いの?」
っと聞いたが、七海は身長をはかりにきただけなので先生に測ってもらった。
結果は178cmであった。たった1日でも着実に七海は背が伸びていた。
クラスでは七海の急成長は驚いてはいたが、今尚その成長は止まらない。
しかし、クラスで七海の背について話すことはなかった。毎日七海を見ている
クラスメイトでも、1cmずつ伸びていると気づかないものであった。
俊介は気づいているかはわからない。七海は最近俊介と並ぶばかり考えていた。
七海はノートのおかげで背が伸びているのは気づいていたが、肝心なことを
七海は忘れていた。俊介と並ぶことばかりで大事なことを忘れていた。
 キーンコーンカーンコーン
朝の予鈴が鳴り、七海は急いで自分の教室に向かった。朝のホームルームが
終わり、今日の授業が始まる。

 1時間目の授業は体育だった。七海は基本的に体を動かすの好き
ではなかった。しかも、今日はスポーツテストをするとの事だった。
七海は気は乗っていない状態で体育着に着替えた。
 スポーツテストが始まり、最初は短距離走であった。七海は正直言うと
足は早くない。小さいときからがんばって走っても足は早くなれなかった。
走るときに一気に4人で計るように先生が指示した。七海は自分と走る
女子を見た。もちろん七海より背が高い人はいなかったが、見る限り足速いよ
っというオーラはでていた。先生がメガフォンを持って
「位置について・・・よーい、ドン!」と叫んだ。4人は一斉に走り出す。
スタートダッシュが遅れた七海であったが、去年とは違う感覚がした。
1人、2人っと七海が抜いていく。そして、一番先頭を走っている人も抜かし、
七海は初めて短距離走で1位を取った。七海自信なんで1位を
取れたかはわからない。走った女子と七海は比べてみた。身長差はだいたい
七海の肩より上下の女子達と走っていた。
(どうして、私なんかが短距離走で1位取れたんだろう・・・)
七海は気づいていないが、七海自身走る時の足の回転は速いが、前の身長だと
歩幅でどうしても差がでていた(もちろんスタートダッシュは遅い)が、
今の七海はその歩幅で負けるなどというのは恐らくないであろう。
 その後も、七海は去年とはまったく別人な結果を残した。

 学校での1日が終わり、七海は帰る際にまた保健室に入った。保健室には
誰もいなく、七海は身長計の前に立ち、1人で身長を測った。七海は身体計の
メモリを見た。すると七海の身長は180cmになっていた。
「へ?」
七海は思わず身体計を疑った。間違えたかな?っと思いもう一度計りなおそうと
したら、ドアがガラガラっといいながら開いた。保健室に俊介が顔をだした。
「あ〜、やっぱりここにいた〜」
七海のもとに俊介が寄った。様子から見ると七海は自分の身長を測っていること
がわかった。
「手伝おうか?」
「う、うん。お願い」
七海が身体計に乗り、俊介がメモリを見る。
「えーっと、181cmだね」
「はぁ?」
思わず七海は俊介の言葉も疑った。七海は急いでメモリを確認するが、
メモリは181cmに指していた。七海は俊介のほうを見る。目線がほぼ一緒に
なっていた。すると、七海は今日始めて俊介を見たような気がした。
今日は基本的には移動教室が多いので俊介と一緒にいる時間はほとんどなかった。
「七海って、すごい成長してるな」
俊介は目の前の七海を見て驚いた。が、それは七海自身も驚いた。七海は今日
今の段階で身長が4cm伸びたのだ。
「俊介君・・・私、最近身長毎日のようにはかってるんだけどさ・・・
今日4cm延びているんだよ」
「4cmもか!?しかも、181cmってことはちょうど俺との身長差も
4cmだね。今月中には俺より大きくなるんじゃないかな?」
「や、やめてよ〜」
七海は嬉しそうに困ったしぐさを取った。
(あとちょっとで、俊介と同じ身長かぁ)
七海は心の中でつぶやいた。そのあと、2人は一緒に家に帰った。

 その日の夜。七海が寝ようとおもい、ベットに横になった。胸が熱い。
七海はまだ自分の体は興奮してるのかなっと思ったが、今日は久しぶりに
体を動かしたので、体はつかれきっていた。七海はすぐ寝てしまった。

 トクン、トクン、トクン

 七海は何回か体が以上に熱くて起きたが、体は一切動かず、目も閉じた状態。
体が熱くて寝づらいようだ。途中七海は布団を蹴っ飛ばしたら、丁度いい温度に
なったのでそのままで寝てしまった。

 七海が目を覚ますと、目の前にはビルが建っていた。ビルの方が大きいが、
普段七海が見ているビルよりは小さく見える。下を見れば車や、人々が七海の
そばから逃げていた。
「うわ〜、またこの夢か〜」
流石の七海も今回は夢だと確信した。以前も七海自身が巨人になった夢を見たが
そのときの夢よりは七海は小さかった。今回の夢の七海の身長はだいたい50m
ぐらいだろう。すると、七海は自分の意思ではなく体が勝手に動き出した。

 ドシン、ドシン
七海はビルめがけてゆっくり歩き出した。
「え、ちょ、ぶつかるよ〜〜〜〜」
夢の中で七海は叫ぶ。ビルの目の前に七海は立ち、両手両足を開き、自分より
大きいビルに抱きついた。抱きつく時にビルの窓ガラスがパリーンと一斉に壊れた。
そして、そのビルに徐々に力を入れていく、ベキベキベキっとビルが悲鳴をあげる。
七海はビルに体重を乗せると、ビルは根元から折れて七海と共に崩れた
ズドーン
夢の中だが、七海はビルを1つ押し倒してしまった。地面に倒れた七海。しかし、
また体が勝手に動き出す。両手、両足をバタバタし始めたのだ。ドガン、ドガン、
ドガン、ドガンっと両手両足をパタパタし、力の限り地面に力を入れる。まるで、
七海は街中で泳いでるようだった。しばらくすると、七海の体は止まった。
七海やっと自分の意思でコントロールできるようになり、ゆっくりと立ち上がった。
周りを見渡すと何もない足元は地面が酷く安定しておらず、デコボコ道になっており、
半径50mの物というものは形の原型を留めていない。50m先は七海が地面で
バタバタ動き、地面が動き倒れているところは倒れていた。小さい建物はほとんど
ヒビだらけになっていてい今にも壊れそうであった。七海は夢の世界を歩こうとした
瞬間視界が真っ白になった。
 気がつけば太陽の光がカーテンから漏れ、七海の顔を照らし、七海はまぶしさ
ゆえに起きてしまった。
「・・・あぁ〜〜〜、起きちゃったぁー。やっと自分で動けるように
なったのにぃ〜〜〜」
七海はがっかりした。こんな夢を見れるのは嬉しいが、今度はいつ見れるか
わからない。いいところで七海は目を覚ましてしまった。七海は夜中に蹴った
布団を抱き枕にしているような常態で寝ていた。七海は何故ビルに抱きついた
かがなんとなくわかったような気がした。七海はゆっくり体を起こし、
顔を洗いに行こうとした。そのとき、七海の寝巻きから七海のおへそがでていたことに
七海は気づいていなかった。顔を洗ったが、七海はまだぼーっとしている
状態であった。七海は制服に着替えた。着替え終わり、台所に向かった。
「おーはーよー」
「七海、おはよ。眠そうだね」
母はそういうと七海を見た。母は思わず尻餅をついてしまった。
「どうしたのさ、お母さん」
「な、七海。あ、あんた、なんてかっこうしてるの!?」
「え、ただ、制服着ているだけだよ。いつものことでしょ」
すると母は、ゆっくりと立ち上がり、七海に「鏡を見てきなさい!」っと母に言われ、
大きな鏡が置いてある部屋に向かった。
「う、うそでしょ〜」
七海は驚いた。服装がすごいことになっていたのだ。おへそが堂々と見えている。
昨日まで170cmの七海でもきつくは感じていたが、まだ着れる程度の大きさで
あったが、今日はおへそが完全に見えていた。胸も大きくなっているようだ。
そういやぁ、ブラジャーをつけたっけ?っと七海は思った。
さらに、そこだけでもない。スカートもまた、大変なことになっていた。
前までは膝よりちょっと高めに位置をしていたスカートであったが、
今じゃふとももよりちょっと上のところまでしかない。超ミニスカをはいている
ような状態であった。歩くだけで七海のパンツが見えそうなぐらい小さい。
この服装で、登校したら、1人だけ夏気分の生徒だ。そのうえ、過去に七海は
裏山で自分の成長に耐え切れず制服が破けたこともあったので、学校であの惨劇は
起こしたくない。七海は学校を休むことにした。母はまた、制服を買いに
出かけなければならない。今の七海の身長に合う私服はない。しかたなく、
メジャーで七海の身長を測ってみた。
「七海、あんたの身にいったい何が起きてるの?」
「わ、わかんないよ。私だって身長伸びて嬉しいけどさ・・・」
母は椅子に乗りながら七海の頭の天辺に手を乗せ、メモリを読み上げる。
「190cm!?」
「嘘ぉ!?」
七海と母はほぼ同じ顔になっていた。流石親子っというぐらいシンクロしていた。
一晩寝ただけで、七海の身長は9cm伸びていた。七海の身長は4月の
最終日で177cmであり、5月2日(今の段階で)では身長が190cmある。
2日で七海は13cm身長が伸びてしまった。この時点で七海の身長は俊介を
上回っていたが、七海はそんなこと忘れていた。