6.
 七海は自分の部屋にいた。朝っぱらから騒がしいのだ。
その原因は七海がまた急成長をしてしまい、制服が小さく
なりすぎたことだ。そのせいで、七海は学校を休むことにした。
部屋で何気に七海は小さくなった制服をきて鏡の前で前後左右に動いていた。
「うわ〜、見える見える。無理していかなくってよかった」
特に階段の上にいようが下にいようが七海の今の制服の大きさでは
パンツがいやでもみえてしまう。歩幅を狭くすれば見えないが、
制服からおへそが出ている今、学校にいってしまったら、
先生方から何を言われるかわからない。
 お昼ごろになると母は帰ってきた。七海の制服の件は、
今の七海にあうサイズがないので、来週まで待ってくれとのことだ。
「ちょっと!学校は来週までってわかっても普段何を着ればいいのさ!」
「そうねぇ・・・とりあえず、男性用の服買ってきたからこれでも着てなさい」
そういうと母は七海に男性用の服を渡した。七海がなんで男性用なのさ!
っと聞くと母は女性で今の七海に合うサイズの服が取り合わせてなかったと言った。
 夕方になり、運動部以外は帰宅の時間帯になった。七海は部屋で掃除をしていた。
七海にとって特にやることもないので、自分の部屋を掃除していた。
掃除しているときに七海は感じていた。その感じる力が強くなるのは本棚とか、
大きい家具を掃除している時であった。
「前までぜんぜん届かなかったのに、大きくなったら届くようになったから
掃除もラクチンだね〜」
4月の七海と比べると身長が50cm以上も伸びている。前までは椅子など
の上に乗って掃除をしていたが今は軽く背伸びする程度で届く感じになっていた。
 ピロピロ♪ピロピロ♪ピロピロ♪
いきなり携帯がなった。七海は携帯電話を取り出した。相手は非通知であった。
七海はでようか迷ったが、掃除の休憩にでもっということで電話をとることにした。
「もしもし?」
『お、七海?体調どうだい?』
聞きなれた声がした。相手が俊介だと七海はすぐわかった。しかし、何故
非通知何だろうかと七海は疑問に思った。
「俊介君?別私は元気だけど?」
『え・・・?だって、先生は七海は体調を崩したって言っていたぞ?』
どうやら母は今日七海の欠席の理由は前に引いた風邪がぶりかえって体調を
崩して、学校を休んだことになっていたようだ。
「ん〜、俊介だけに教えてあげる。私、風邪引いてないしよ。・・・ただ、
私が学校休んだ理由はね、制服が・・・・・」
『あぁ〜、前みたいになったら大変だからねぇ』
電話しているが、俊介が納得したかのようにうなずいたと七海は思った。
その後、軽く学校であった出来事を喋り、電話を切った。俊介から来た電話が
なぜ非通知だったのかは、俊介の携帯電話のバッテリーが危ないから、近くの
公衆電話でわざわざ七海のことが心配で電話をしたようだ。
 その日の夜。七海は最近夜が楽しみの一つになってきている。なぜ夜が好き
かというと寝れるからである。そして、夢を見て、アノ夢を見れるのかが楽しみ
にしていた。七海は小さくなった寝巻きを無理に着て寝ることにした。母からは
「どうして小さな服を着るの!」っと怒られたが、これは七海なりの工夫である。
寝ている間によく急成長を起こす七海であるから、この小さくなった寝巻きを
着ながら寝て寝巻きが破ければ体が大きくなったっと体に暗示を掛けれる。
大きくなれば、また自分が巨人になった夢を見れるのではないかっと七海は考えた。
目を閉じ、七海は眠りを待ち、アノ夢を待った。
 
 七海が目を覚ませば、あたりは真っ白であった。下を見ても真っ白。ただの真っ白
の部屋に閉じ込められたかのような空間にいる夢を見ているんだなっと七海は思った。
自分が工夫して寝てみたのが馬鹿馬鹿しく感じてきた。すると、目の前に光の玉が
現れ、七海の近くによると弾けた。七海は驚き、夢の中で目を思いっきりつぶった。
目を開けてみれば目の前にはどっかで見覚えのある老人がいた。
「ひょ、ひょ、ひょぅ。よぅ、みない間におおきくぅなりおったのぉ〜」
老人は七海に聞いた。七海は過去にない夢に動揺したが、今まであってきた人物を
考えた。老人の背は猫背であり、背も小さい。七海と比べると胸よりも下の
位置にいる。
「あ!」
七海は思い出した。この老人と会ってから七海の生活がガラリと
変わったのだから。七海にノートあげた人だと七海は思い出した。
しかし、どうして夢にでてきたのだろ。七海は違う形で七海にとって意味のある夢が
見れたと思った。
「ひょ、ひょ、ひょ、悪いのぉお嬢さん。わしゃあ、あんな裏路地で
商売している爺とは違うよ、お嬢さん」
「え、だって、おじさんが私にあのノートをくれたんじゃないんですか?」
「ひょひょひょ。確かに、ノートはあげたのぅ。じゃが、今ここにいるワシは
ワシじゃない。まぁ、同一人物と考えてもいいかのぅ」
結局のところ、あのときであったお爺さんで間違いはないようだっと
七海は思った。ただ、今回はボケが回ったお爺さんになっているとのことで
問題はないし、第一、コレは夢だから別にいいやと七海は思った。老人は
話し続ける。
「ひょ、ひょ、ひょ。そろそろ、6月じゃの〜。長いようで短い。それが
世の中じゃ。6月が過ぎればあっという間に夏が来て、あっという間に
冬がくる。この間おぬしはノートのチカラによってどんどん成長する
じゃろう。かわいそうじゃの」
「え〜。別に困らないよ私は〜。大きくなって色々楽になった事だって
あるんだから!みんなを見上げなくてよくなったし、高いところに手が
届くようになったし。前までの身長と今の身長を比べるとぜんぜん
今の方がイイ!!」
思わず七海はムキになってしまった。夢の中でこの老人を閉め殺して
やろうかと思った。そんな殺意に満ちた七海に老人は冷静に話し続けた。
「ひょ、ひょ、ひょ。そんな怖い顔をするでない。何かを得れば何かを
失うもんじゃよ?それをわかっているかわかっていないかじゃ。ワシは
それを聞きにきただけじゃ」
「何が言いたいのよ?」
七海はイライラしていた。今でも自力で目を開けてやる!っと思っていても、
いざやるとできないものだなと自分の無力さに七海は思わず泣きたくなった。
「いまのうちだけじゃよ?ワシは少なくともおぬしを心配してこんな形で
現れたのじゃ。今なら身長をこのままで止めることもできる。
まぁ、聞くまででもないと思うがな」
老人の目は諦めていた。結果は聞くまででもないからだ。
「ぜっっったいヤダ!
死んでもヤダ!
どうして、身長が伸びることを恐れているの!?
大きくなればいいことしかないと私は思うんだけど!」
七海の怒りは頂上にまでに達していた。今まで自分が身長が
伸びなくてどれだけ苦しんできたかわかる?っと七海は老人に
問いかけたかった。
「ひょ、ひょ、ひょー。そうか、そうか。聞くまででもなかったか。
まぁ、いいじゃろ。ただし、これからお前さんはいろんなことが
おぬしに襲い掛かるであろう。いいことばかりがおきるばかりでは
ないのだよ。そのうち気づくであろう。わしの言葉を・・・。」
 パチン
老人は指パッチンをした。
七海の目の前には白のビキニに現れた。
「ひょひょひょ。これをプレゼントしよぅ」
七海とりあえず、手にとって見た。今の七海にしては大きいサイズだ。
「・・・なにこれ?これをどうしようというの?」
「ひょーひょひょ。そのビキニは不思議なビキニじゃ。夢から目が覚めたら
タンスの中を見るがよい」
そう老人が言い残し、姿を消した。真っ白の夢の中には七海と老人から
もらった、色もなにもないただ真っ白のビキニがある。
「これを私に着れっていうの?」
七海ははぁっとため息をついた。今回の夢はなんだかんだで疲れたなっと思った。
そのあとから七海が巨大化した夢は見れなかった。

 翌日。
七海はタンスの中を調べて見た。すると、あの夢にでてきた白のビキニが
でてきた。夢で見たあのビキニが本当に置いてあったのだ。
「・・・正夢なのかなぁ・・・」
七海は今回の出来事をどのように処理していいのかが、わからなくなっていた。
まぁ、もらえたものは貰っておこうと七海は思い、下着をしまっているところに
白のビキニをしまった。
 お昼になり、七海は部屋の中で考えてみた。夢の中であの老人は結局のところ
七海になにをいいたかったのだろうか?七海は別に背はないよりあったほうが
いいっと思っていたから逆に伸びなくなるのは困る。
ここまで、急成長しているなら、いっそどこまで大きくなれるか七海自身毎日が
楽しみになっていた。七海なりに昨日の夢の解釈は『ノートをくれた老人に
似ていた人がビキニをプレゼントにきた夢』ということにした。