とある高校に通う男子高校生がある人に恋をした。

 彼の名前は、前田仁。中学から高校に進学し、華やかな高校生デビューを果たした。この高校では部活動の強制は
なく、自由気ままに高校生活を過ごすことが出来る。
 そんなある時だった。下校中に友人から借りた漫画の続きが気になった前田仁は、学生鞄から漫画を取り出し、
読みながら帰ろうとした時、自分の机に漫画を置き忘れたことに気づいたのだった。続きも気になるし、何より学校で
漫画がバレてしまったら、学校にこっそり漫画を持ち込む事が出来なくなる。それどこか、全校生徒の戦犯となって
今後の高校生活に支障が出かねない。前田仁は体を百八十度回転させ、自分のクラス目指して走りだした。

 夕日が差し込む教室。前田仁は周辺に先生が歩いていないかを密かに気にしながら廊下を歩き、無事自分の教室に
たどり着いた。小走りで教室に来たものだから、息があがっている。はぁはぁという息を荒げながら自分の机に向かい、
先生が来たりしないかという緊張から鼓動が早くなる。机の中を除くと三冊の漫画がちゃんと置いてあり一安心する。
周囲を警戒しながら速やかに漫画本を学生鞄の中に忍ばせ、足早に教室を出ようとした時だった。

 ドン

「きゃ!」
「うわっ!」
 教室の入り口で正面衝突してしまった。手に持っていた学習鞄を床に落とし、あろうことかぶつかった人に
四つん這いで覆いかぶさるこの状況。素早く立ち上がり謝ろうと両手を床に押し付け、勢い良く立ち上がろうとした
時だった。
 むにゅん。と、右手に伝わる柔らかい感触。片手は何も感じぬ冷たい床タイル。嫌な予感がした。床の一部が
柔らかくなるハズなんて事なんてありえない。恐る恐る視線を下げると、嫌な予感は的中した。
 前田仁が四つん這いに覆っている状況で、彼の下には同じクラスメイトの女子、桜城カナが倒れていたのだ。
桜城カナは、桃色のボブカットヘアーのお嬢様だ。家がお金持ちらしい。しかし、そんな事はいまはどうでもいい
事だ。問題はここからである。
 現在、前田仁の右手は、桜城カナのブレザーの中に忍び込み、セーター越しではあるが彼女の胸を揉んでしまったのだ。
右手に収まる丁度いい感じの大きさ。意外と胸があったんだなと、思っていた時だった。
「きゃーーーっ!」
「あだーーー!!」
 スパーン! と、ビンタのフルスイングを右頬に受け、そのまま左側にあるクラスロッカーに吹き飛んだ。頬の痛みと
ロッカーの角に当たった二重の痛みに耐えながら桜城カナを見上げると、ぺたり床に女の子座りをしている桜城カナ。
顔は真っ赤に赤面し乱れたブレザー姿で両腕をクロスして胸に手をあてている。
「へんたいっ!」
「ご、ごごめんなさい!!」
 条件反射で素早くその場で土下座をする前田仁だったが、土下座から顔を上げた時、既に桜城カナの姿はそこには
いなくなっていた。


 *


 あの騒動からひとつだけ、僕に変化がおきた。

 放課後のあの時、僕は桜城カナの胸を揉み、ビンタをくらったあの日から桜城カナの事を意識するようになってしまった。
だが、桜城カナは僕の事は無視。一応、翌日にはあの出来事について勇気を持って謝りにいったものの無視。完全に嫌われて
しまったのだ。
 しかし、桜城カナが僕を無視すればするほど彼女の事を気になってしまう。許してもらいたいからなのだろうか? どうしても
諦めがつかなかった。
 それからというものの、授業中も授業と授業の間の休み時間、お昼休みの弁当を食べるときも僕は桜城カナを見ているように
なってしまった。胸を揉み、ビンタをもらい、変態と呼ばれたが、どうやら本当の変態になってしまったようだ。

 だが、そんな生活も長くは続かなくなってしまった。
 ある日の放課後、僕は下校準備をしている時に、クラスメイトの友達から『桜城カナの事をストーカーしてる?』と言われて
しまった。僕は気付かれずにこっそり桜城カナに見惚れていたたつもりだったのだが、知らないうちにクラスメイトにストーカー
だと思われてしまっていた。確かに、移動教室があったりしたら桜城カナの後ろ姿をただただガン見していたかも知れない。
そういう面々、周りからは危なく見えていたのかもしれない。これ以上、僕が桜城カナに見惚れて僕は満足出来たとしても、
桜城カナは気持ち悪い思いをしていたのであれば、直ちに辞めるべきだと思った。
 ただ、ショックだったのが友人から『好きなの?』と聞かれたのではなく『ストーカーやめろ』だったのは傷ついた。確かに、
そんな危ない人物の話なんて聞いてもらえないよなと思った。
 気がつけば僕は友人の前で半泣きになっていた。僕は震える声で『教えてくれてありがとう』と友人に言うと涙を拭いながら
教室を出た。

 外に出ると、いつもより一層秋風が寒くなったなぁと感じた。グラウンドには元気よく声を張り上げながら部活動を頑張って
いる学生。嗚呼、僕はなんてバカだったんだと後悔しかない。今日はもう大人しく帰ろう。誰とも合わず、漫画読んでさっさと
寝よう。そう思った時だった。今日も懲りずに友人から借りた漫画本を返し、また新たな漫画本を受け取ったのだが、その漫画
を鞄に入れた記憶が怪しくなった。学習鞄を開け、中身を確認したが、借りた漫画は入っていなかった。
 記憶の糸を辿ってみる。ついさっき友人からは厳しい事を言われ、最後に漫画を入れるのを忘れたという結論がでた。今から
教室に戻る気にはなれなかった。もしかしたら、友人がまだ教室にいたら気まずい。だが、それ以上に漫画がバレてしまったら
全校生徒の戦犯となり、今よりもっと居心地の悪い思いをしてしまう。意を決して、僕は教室に戻る事にした。少々精神面が
ボロボロになっていても、前回教室に戻ってきた時と比べれば早く気づいてよかったと前向きになるべきだった。ヤケクソ気味
のポジティブ思考だなと、漫画とかでよくある心のなかで涙を流している自分の姿を想像しながら教室に戻ると、桜城カナが
教室の中にいたのであった。
 気まずい。友人以上に気まずい相手が教室にいたが、僕は桜城カナを見ないように自分の席へと向かい漫画を学習鞄へと
入れて、速やかに教室を出ようとした時だった。
「忘れ物?」
 ビクッ! っと突然後ろから声をかけられ驚いてしまった。後ろを恐る恐る見ると桜城カナが僕の真後ろに立っていた。
「あ、はい」
 恐る恐る返事を返した。桜城カナのストーカーとクラスメイトの間で噂になっている僕に張本人が話をかけているのだ。
どう思われているかなんて考えたくもない。
「何忘れたの?」
「あ、いやこれは・・・」
 漫画を学習鞄に入れる時に話しかけられたもんだから、手に持っているのを見た時に桜城カナも察したようだ。
「漫画?」
「はい・・・」
「どんな漫画?」
「いや、これは・・・」
 内容なんて言えるわけなかった。この漫画は、小説から漫画になったものだ。屋敷にたった一人で住む主とそこにやってきた
メイドの話。初めはメイドの方から積極的に館の主とコミニケーションを測り、次第に仲良くなった時に不幸な出来事が置き、
ある日を境にメイドは姿を消したものの、最終的に館の主とメイドは再び再開し、『おかえり』と言って終わる物語らしい。
正直、まだ最後まで読んではいないのに、結末がわかるのはあの友人がネタバレをしてしまったからなのだが、このメイドという
キーワードは危ない。
 きっと、この変態はメイド好きの変態なんだと思われてしまう。そう思った時だった。
「その漫画おもしろいよね。実話らしいし」
「えっ?」
 思いもよらない答えが返ってきた。お嬢様ともあろうお方が、この漫画の内容を知っているのかという所だ。だが、桜城カナが
知っているということはどういう思考なのかと勝手に勘違いされてしまいそうで怖い。僕はメイド好きではない。が、メイドは
嫌いではない。だが、問題はそこではない。
「じゃ、じゃあ」
 僕は逃げるように教室をでようとした。
「待って!」
 桜城カナの声に反応し、体が止まる。そして振り向くとどことなく悔しそうな表情を浮かべ僕を見ている。
「逃げないでください」
「!?」
 ズキっと何かが突き刺さるような感じがした。僕は桜城カナのストーカーと見られている中、どうして桜城カナは僕を引き止める
のか? いや、これは桜城カナが直々に裁きを下そうとしているんだ。悪いのは全部僕だ。ここで逃げてしまうのもいいだろう。
でも、桜城カナに嫌われていると僕を引き止めるからには何か理由があるのだろう。むしろ、桜城カナから話をかけてくれるのは
最大の救いなのではないか? と思い始めた。
「どうして、私から避けてしまうのですか?」
 さっきから驚きの連発である。僕は、避けられるべきだと思っていたが、桜城カナはそうは思っていないと見える。僕は握り
こぶしをつくり、勇気を振り絞って桜城カナに打ち明けることにした。あの放課後の出来事から翌日の謝り方、そして日頃から
桜城カナを見惚れ、観察していた事を、すべて洗いざらい喋った。

 そしたら、桜城カナは大笑いをした。


 *


「あっははははは、はっはっは」
「ちょ、ちょっと、何がおかしいんですか!? 確かにおかしいことばかりして申し訳ない事をしてしまったという自覚はありますが
 そこまで笑われるとなんか、おかしくなっちゃいますよ」
「あははは。ごめんごめん。そんなに気にしてくれてたんだ。ごめんね」
 未だに笑い続ける桜城カナ。僕が生きた中で一番の謝り方をしたハズなのにここまで笑われてしまうと、今まで自分が考えていた
事が馬鹿臭くなってしまう。
 でも、桜城カナが僕を無視するのには理由があった。話をしてわかったことが、確かに、あの出来事には怒っていたが、次の日には
すぐに謝りに来てくれた事は関心していたみたいだけど、場所とタイミングが悪かったらしい。移動教室の時に、誤ったのが問題だった
らしい。考えてみれば『胸を揉んでしまってごめんなさい』とか言われればあっちも迷惑だし、その言葉から桜城カナの友達が心配し、
僕を監視している時に、僕のやっていた事はすべて分かっていたようだ。そうなると、気持ち悪い奴がさらに気持ち悪くなったとして、
桜城カナを守る為に、僕がストーカー行為をしているというちょっと度が過ぎた出来事に発展してしまい、桜城カナが僕の事を心配して
くれていた。
 そして、この時がくるのをずっと待っていたようだった。今はちょっと、余りにも真剣に謝り続ける僕がおかしかったのか、笑いを
爆発している。でも、ひと安心した。桜城カナは僕のことを嫌ってはいなかっただけで励みになった。枕を濡らし、悔いて眠る事はない
ようだ。
 こうして、僕と桜城カナとのイザコザは解決したように思えた。
「でも、やっぱりあの出来事には前田仁くんに罰を与えたいかな」
「・・・え?」


 *


 そして、僕は保健室に案内された。これといって具合も悪くなく、ケガもしてもいないのだが桜城カナと一緒に保健室にきたのだ。
教室では場所が悪いらしく、保健室に移動。そして、今現在桜城カナは保健室の先生と廊下で話しをしている。良からぬ出来事でも起き
てしまうのではないかと、心臓がバクバク破裂しそうになる。一旦、ベットに座って落ち着こうとベットに腰を下ろすと、しばらくして
保健室の扉が開く音が聞こえ、ついでに鍵をかけるような音も聞こえた。
「おまたせ」
 そういうと桜城カナは僕の向かえのベットに腰を下ろし、笑顔で話かけてきた。
「あの、保健室に鍵をかけたけど大丈夫なの?」
「先生には出ていったもらったの」
 あの出来事の罰を与えると保健室に呼ばれたはいいが、次第に罰ではなくむしろご褒美がもらえたりするんじゃないかと期待してしまう。
そして、先生は退室。先生不在の中、俺は桜城カナと保健体育の授業の予習をするのではないかと期待してしまう。ここに来るまでの間、
桜城カナは僕の事を嫌ってはおらず、むしろ心配してくれていた辺り、僕に気があると思ってしまう。次第に高まる僕への罰。いったい、
どんな罰が降りるのであろうかと期待している時に、ふと異変に気づいた。
「あれ? 桜城さん、大きくなった?」
 確か、桜城カナは僕より背は低く鼻の位置に桜城カナの頭がくるぐらいの背の高さなのだが、こうしてベットにお互い座り、見つめ合って
いると目線が一緒。いや、桜城カナの方が高くみえる。座高が高いのかな? とか思ったりもしたが、次第に目線が首元胸の高さと代わり
次第に、床に付いていた足もつま先立ちのようになってきている。
「大丈夫、パニックにならななくても大丈夫だよ」
「ちょ!? 桜城さん!?」
 桜城カナは、おもむろにブレザーを脱ぎ、襟元のリボンを外すと、第一、第二ボタンと次々と外し始めたのだった。これは本当にイケナイ
保健体育の授業が始まってしまうのか?! そして、桜城カナは立ち上がり僕に覆いかぶさるようにブレザーを脱がし、ネクタイに人差し指を
突き刺し引き下ろせば、ネクタイはするすると落ちる。目の前には桜城カナの胸の距離も近い。心臓と脈がドクンドクンと加速する。いったい
今から何がはじまるのか、目が回ってくる。桜城カナさんが大きく、大きく見えてくる。
「そう。もっと、興奮していいよ。魔法が効きやすくなるから」
「あぶぶっ」
 僕は桜城カナが僕の顔をわし掴みにされ口がタコチュー星人みたいになっている。右頬に親指が突き刺さり、左頬には残りの指が左右から
押し付けてくる。次第に、小指、薬指、中指と指が解けていくと、僕はいつしか桜城カナに親指と人差し指に摘み上げられている状態になって
いた。
「だいたい3cmぐらいかな?」
「な、なんだこれは!?」
「ふふっ。こんにちわ、小さな小さな前田仁くん」
 前方には大きな大きな桜城カナのとびっきりの笑顔が待ちかねていた。
「皆には私がこんなこと出来るなんて言わないでね?」
「は、はいぃぃぃいぃい!?」
 はい。と返事をしようとした時に摘んでいる親指と人差し指が僕の両肩を圧迫してきた。
「仁くんは素直でいい子だね」
「ど、どうも・・・」
「じゃあ、さっそく仁くんにはあの時、私を滅茶苦茶にしてくれた罰を与えます。でも、ただ、一方的に罰を与えるのは可哀想なので、私の
 対して・・・魅力的でもない身体で・・・罰を与えたいとおもいます」
 どことなく自分のプロポーションに自身がないのか言葉の最後あたりはくちもごって何を言っているのかよくわからなかった。でも、僕には
言いたいいことはわかっている。
「へんたいさんだから・・・いいよね?」
「よ、よろこんでー」
 とりあえず元気よく返事をする僕。むしろ、桜城カナの身体で罰を受けさせてもらうのは、むしろご褒美なのではないのか? と、好きな人
からいじられるなんて、こんな幸せなことはないだろう。
「じゃ、じゃあ・・・何からしようか・・・」
 うーん、うーんと考える姿が微笑ましい。体格差では桜城カナは怪獣の様に大きい存在のハズだが、不思議と恐怖心は沸いてはなかった。
「と、とりあえず舐めるね」
 そう言うと僕と桜城カナとの距離は急接近し、小さな口も今ではとてつもなく大きく、丸呑みされそうなぐらい大きい。そして、口の中から
ニョロっとでてきた下が僕の全身をペロリと舐める。
「ぷぇっ!」
 顔をなめられる時に、息ができなくなり舌から解放され、おもわずそんな言葉が出てしまった。
「く、苦しかった?」
「いや、大丈夫大丈夫」
 苦しかったといえば、多少苦しかったけど、これも罰の一つだから受け入れるしかない。おかげで体は全身唾液まみれになったけど、罰を
与える桜城カナがいちいち心配してくれるのが可愛い。
「や、やっぱり、やめた方がいいかなぁ・・・」
「えっ?」
 思わず声が出てしまった。いや、全身舐められるだけで罰が済むのであれば、それはそれで幸福なことなのだろうけれども、もう少し
物足りなさがある。
「あっ、え?」
 僕の声を多分、変な方向に聞き捉えてしまったような気がする。桜城カナはちょっと困ったような顔をしている。もっと! もっと! 虐めて
くれ! っていう風に聞こえてしまったのだろう。
「あ、いや・・・」
 そんなことはないですよと言わんばかりに、摘み上げられている中ジタバタと唾液を飛ばしながらデスチャ-して無罪を主張をする。
「ちょ、ちょっと仁くん。そんなに暴れないで」
「いや、ちょっ、えええええ!!?」
 体全身で表現したつもりのデスチャ-をしたつもりだったのだが、自分が今唾液まみれでぬるぬるしているいう状態を忘れていたようだった。
その成果、デスチャ-をしている間に僕を摘んでいた指が滑ってしまったようで、自由落下をしてしまった。下はベットだからもしかしたら
助かるかもしれないと祈りながらも落下したが、落ちた先は桜城カナの以外に大きかった胸に落ちた。
 が、落ちるまでは良かった。体は全身ぬるぬるローションまみれのような状態で、胸に弾かれそのままスリップし、くるくる回りながら僕は
桜城カナの谷間へと吸い込まれていった。
「ひぃぃぃぃやぁぁぁああ!!!」
 桜城カナの悲鳴が保健室をこだまする。僕は落ちまいと、必死に抵抗しようと上へ上へと上がろうとするが体が滑ってもがけばもがくほど
谷間の奥底へと沈められて行き、桜城カナの悲鳴もエキサイティングする。
 結果、僕は桜城カナの谷間を抜け、振り飛ばされないよう必死にしがみつく。やがて腹部へと到達し、へそと思われる溝にバランスを奪われ
ながら落下して行き、最後はスカートという滑り台を滑って無事ベットの上に生還したのだった。
「えっち・・・」
 ベットの上で大の字で倒れていると、若干涙目で桜城カナが僕を睨みつけている。
「あっ、あははは・・・ごめんなさい~~~!!!」
 体格差で絶対に逃げ切れるわけなんて無かった。でも、これは逃げるしかないと脳が僕に信号を送り、ヘロヘロの身体でベットの上で逃げる。
が、当然見逃してくれるわけなんてない。全力ダッシュで逃げても両サイドからギシィ! ギシィ!っっと両腕が空から墜落してきては足場が
凹み、体制を崩しながら頑張って逃げる。そして、お布団の中に飛び込もうとした瞬間目の前に突然指の壁が僕の進行方向を遮断し、そのまま
金魚すくいのように僕は捕まってしまった。
「一度にもならず二度までも・・・」
「ごごご、ごめんなさい!! 悪気があったわけではないんです!」
「もう、仁くんなんて食べちゃうんだから!」
 必死な口弁を通用せず、僕は桜城カナの口の中に放り込まれた。口の中に灯りはなく、暗闇に包まれておりまるで洞窟のようだった。むわむわ
と桜城カナの口臭に包まれた洞窟内で、暗闇の中から巨大で柔らかい何かが僕を襲いかかる。舌以外考えられないのだが、その舌に僕はぐるん
ぐるんと上下左右、行ったことはないけど宇宙船に乗っている宇宙飛行士になった気持ちになった。
 だが、、桜城カナにとっては僕を飴の様な感覚で舐めまわしているのだろう。しかし、次第にビシャビシャと湧き出てくる唾液に口内の
浸水率も高まっていると思う。実際、息も辛い。そろそろ出してくれないと死んじゃう。そう思った時、洞窟は突然開き、光が差し込んだと思った
瞬間、ペッ! と吐出された。
 ぼやける視界。暗闇から明るい所にだされているのか、さんざんぐるぐる回されて頭が酔っているのかよくわからない。だが、僕は今桜城カナの
両手の中にいる。
 もう、罰は勘弁して下さい。薄れゆく意識の中、桜城カナが僕に何か言ったような気がする。

「私の初めても奪ったんだから責任とってよね」



 *

 

 意識を取り戻すと、僕は保健室のベット上で寝ていた。いったい何があったのか。記憶のせいりがつかない。とりあえず、上半身を起こし、腕を
組み考え事をする。寒い。よくよく考えてみると上半身裸、いや、全裸の状態で僕はベットの上で寝ていた。
「ど、どゆこと」
「あら、ようやく気がついたのね」
 そういうと、保健室の先生がやってきた。僕はヤバイと思い、布団をひっぱり、体を隠し、頭だけだしている状態にする。
「もう、女の子じゃないんだから堂々としてればいいじゃない?」
「いやいやいや、先生。意味がわからないですよ。どうして僕は全裸なんですか!?」
「それは私が知りたいわよ。全身ずぶ濡れだから、全部脱がしたのよ。そこにある適当な体育着でも来なさいな」
「あ、はい・・・。ありがとうございます」
 そういうと、先生はカーテンを締めてくれた。僕はとりあえず、学校指定の体操着を借りることにした。着替えが終わり、カーテンを開けると、
俺のずぶ濡れの制服が干されていた。いったい、何があったのか、記憶の整理がつかず、干された制服を学習鞄になんとか入れる。
「それじゃあ、先生。僕帰ります」
「えぇ、気おつけてお帰り。あと、借りたらクリーニングかけて返してね」
「はーい」
「あと、最後にひとついいかしら?」
「・・・なんですか?」
「今回は、桜城カナちゃんに免じて目をつぶるけど、保健室でヤるなんて前代未聞よ?」
「はぁ? いえ、そんな事してませんよ」
「そうかしら? 私、廊下に傷んだけど『ちょ、ちょっと仁くん。そんなに暴れないで』とか『ひぃぃぃぃやぁぁぁああ!!!』とか、カナちゃんの
 声、凄かったんだからね?」
 無駄に桜城カナのモノマネがうまくてイラッときたけど、実際にそんな体験をしたような気がする。
「ま、若者よ。がんばれよ!」
「先生は、桜城カナさんから何かされたんですか?」
「いいえ?特に。ただ、ほんのちょっとお小遣い貰っちゃったの」
 そういうと、先生は嬉しそうに札束を俺に見せてくれた。そういえば、桜城カナさんってお金持ちだったんだな。でも、お金があるからって、
札束常備してるっておかしいよっと思った。今度、教えてあげよう。

 あと、この先生・・・桜城カナに買収されてたのね。



 
 おしまい。