どこかの国の森の中に1人の男性が住んでいました。名前はランドル。
ランドルの家系は男性は皆、国のために戦う兵士になる家計でした。だが、ランドルは
人を傷つけることができないうえに対して、運動神経も良くなかった。
 しかし、ランドルは頭が良かった。その覚えのよさに、父は指揮官になるように
言われてきたが、争いを嫌いランドルは指揮官にはならなかった。それから、
ランドルは独自で医学を勉強し、医師の資格を取った。これでケガや病気で
苦しんでいる人を助けられると思った。
 だが、不運なことにランドルが所属する場所は部隊の医療関係であった。
逆らえば、殺される。もし、ランドルがケガした兵士を治しても兵士はまた戦場に
いってしまう。苦しみに耐えながら国のために戦う兵士を見ていられなくなった
ランドルは、ある晩に失踪したのであった。人目のつかない森の中へ。




 ある日、ランドルは森の中で薬草を採集していると、ドカーンと大きな音が聞こえた。
この森の中には凶暴な魔物がすんでいることがあった。恐らくその魔物の討伐に
来たのであろう。戦いと言うと傷を負う。医師としてケガ人を黙って見ぬ振りは
できないランドルは音がした方角に足を運んだ。

 ランドルが戦いの音を頼りに現場に着くとあたり木々が炭だらけなっており、
地面にぐったりと倒れているサラマンダーがいた。サラマンダーの迎え側には
1人の兵士が仰向けで倒れていた。ランドルは急いで倒れている兵士に向かい、
脈を測ってみるとまだ生きている。ランドルは取ってきた薬草で出来る限りの
応急手当を始めた。

手当が終わる頃に、兵士は意識を取り戻した。
「あんた・・・一体誰だ」
「名乗るほどの者ではありません。私はただの森の医者です」
「そうか・・・」と兵士はいい体を起こした。
「一体何があったのです?」
「俺は、国の命令でこの森に隠れ居している最後のサラマンダーを討伐するために
来た兵士だ。戦いの中で俺以外のヤツは死んだ。死体を残さないほどの炎を吐きだし、
灰にした」
 その話を聞き、ランドルは辺りを見渡すが彼とサラマンダーと女性が1人いた。
女性は胸を撃たれ倒れていた。
「あの人は?」
「あぁ・・・。兵士の1人がサラマンダーに奇襲を仕掛けたときに
弾が女性に当たったんだ。・・・そして、この様だ」
 ははは、と薄く笑った。そして、兵士は立ち上がった。
「そんじゃ、ただの森の医者さん。ありがとうよ。
俺は国に現状を報告に行かねばならない」
「そうですか、もう少し休んでからの方がよろしいのですが、
急ぎの用なら止めたりはしません。気をつけてお帰りください」
「あぁ、ありがとうな」と兵士は言い、森を出て行った。その後ろ姿を見届けると、
今度はサラマンダーの元により、女性のもとによった。胸にはどっぷりと血で
にじんでいる。見る限り即死に近いが一応脈をとってみると、わずかに
トクン、トクンと音がした。
「ぁ・・・あ・・・」
 女性は首筋に手で触られたのに気づき薄っすらと目を開けた。その目には光は無く、
涙を貯えていた。
「私の子・・・、私の・・・子を・・・ころさ・・・ない・・・で・・・」
 と、震えた声で話し、力尽きた。彼女が話し終わると脈もプツリと途絶えた。

 私の子を殺さないで。

 それが彼女の最後の言葉だった。彼女とはどこかであったことはないが、何故か
体が反応した。焼け野原をぐるりとランドルは巡回すると、丁度焼けている部分と
焼けていない部分の境目の大きな岩の下にタオルに包まれた、小さな赤ん坊がいた。
赤ん坊は何も知らなかったかのように目を閉じ、長い赤い髪の毛に人指し指で
くるくると巻きつけて寝ていた。
 さっきの彼女の子はこのことだろう。このままでは、この子は飢え死にするだろう。
彼女の想いのことを考え、ランドルは自分が彼女の分までこの子を育てようと思った。
 そして、ランドルは再びサラマンダーのもとにより「失礼します」と1つお辞儀を
して、注射器でサラマンダーの血と彼女の血を採取した。失礼だとは思いつつ血を
とった。彼女の血液がこの子にも流れているの一応確認するため。サラマンダーの
血は最後のサラマンダーの血として血液を摂った。

 ランドルは家に着くと赤ん坊は目を開けた。知らない人がいると思ったのか赤ん坊は
一気に泣き出した。赤ん坊の面倒を見たことのないランドルに対してはコレは一種の
試練だろう。ランドルは高い高いとか体を軽く揺すったりしたが、泣き止まなかった。
「困ったな・・・」
 と苦笑を浮かべて、赤ん坊の頭を優しく撫でた。すると、赤ん坊は泣き止み
大きな赤い瞳をつぶり、「きゃははは」と笑った。
それから、しばらく頭を撫でていると赤ん坊はいつの間にかまた眠ってしまった。
寝顔を見ながらランドルはこの子の名前を考えた。コレといってぱっとこない名前。
髪を撫でている時に感じるサラサラとした髪。
「あぁ、神よ。僕のネーミングセンスの悪さをお許しください。
この子の名前はサラと名付けます」
 髪がサラサラするから“サラ”こんな簡単な理由で名前をつけた自分に
悔やんではみたが、それまで考えた名前よりは一番まともだった。


 それから、月日が立ちランドルはサラの面倒を見た。例え同じ血が流れていなくとも、
月日が流れ我が子の成長は楽しみなものである。子育てをしているときにふと父親の
想いなどがわかる気がした。自分は親不孝もんだなと思う。だが、今は自分の義理の
娘を健全に育てることに生きがいを感じる。
 それから、サラが喋れるようになると楽しそうにおしゃべりをする。今日何を
したこと。動物さんとおしゃべりしてきたなど嬉しそうに話をしてくるが、
時々サラと話をしていると困った質問も多い。
「どうしてお母さんはいないの?」
 何も知らない純粋な目から聞かれると回答が詰まる。
「お母さんは、ちょっと遠くへ出かけているんだよ」
 と、しか言えない。だが、サラはどうして遠くへ行ったのかまでは聞かなかった。
「どうしてお父さんの髪の毛は緑なのにサラの髪の色は赤なの?」
「それは、お父さんが長い間この森に住んでいたら
髪の色が森の色と同じになったんだよ」
「ふ〜ん。サラもなるかな?」
「どうだろうな〜。サラはお父さんみたいに
親不孝物じゃないから難しいかな」
「え〜」
 と、困った表情をとり、「お父さんだけずるいな〜」と頬をぷくっと膨らませた。

 そして、サラが6歳ぐらいになり、ランドルとサラが初めて会った日になると、
ランドルはサラと一緒にある場所に向かった。ある場所は簡単に言えば、
ランドルとサラが初めて会った場所である。ランドルとサラはローブを身に
まといその場所へ向かった。今では焼け野原も草木で覆っており、
女性とサラマンダーとの戦いで犠牲になった兵士達の墓があり、
奥にはランドルが自らサラマンダーを埋めた大きな墓がある。
「お父さん、お父さん毎年ココにくるけど、どうしてココにくるの?」
 頭を傾げながら聞いていくるサラ。それに答えようとランドルは両膝を
地面につけて、右手をサラの頭に乗せる。
「ココに大切な思い出があるからくるんだよ」
 と、ランドルは笑顔で言った。
それから、ランドルは「両手を揃えて目を閉じて黙想するんだよ」とサラに教えた。
サラはよくわからないが、ランドルの見よう見まねをした。
 そして、帰る際に1人の灰色の髪をした男性が現れた。
彼もまたここで亡くなった兵士の親族かと思っていると、
どこかで見覚えのある男性であった。しばらくすると、
灰色の髪をした男性はランドル達に気づいた。
「あんたは・・・」
 そういうと、男性は近くに寄ってきた。男性が近づいてランドルも気づいた。
彼は5年前にここで戦っていた兵士の生き残りの人だった。
「お久しぶりです。いつかの兵士さん」
「あぁ、やはりあんただったか。あの時はありがとうな。
あなたの手当てがなかったら俺は死んでいたかもしれなかったな」
「礼にはおよびませんよ」
 そう会話をしていると、サラがランドルの服の裾をぐぃ、ぐぃっとひっぱる。
何やら不安そうな顔をしていた。
「子供さんかい?」
「えぇ、そうです。ほら、今からちょっとお話するからお前は先にお家に帰ってなさい」
 そうランドルは言うと、サラはコクリと小さくうなずいて軽く走る感じで
その場を去っていった。サラの後ろ姿を見届けるとランドルは男性に聞いた。
「あなたも、墓参りですか?」
「あぁ、それもある。墓参りはほんのついでだ。
今は国に言われている2つの任務中だ」
「任務中・・・ですか」
 任務中という言葉にランドルは少々不安に思った
「あぁ。そうだ、あんたこの森に住んでるんだよな?
ここに他に住んでいる人はいるか?」
「・・・はい。確か、北の方にも住んでいる人がいたと
思いますが・・・どうしてですか?」
「いやぁな、この森に“シュー・マ・ランドル”という男が逃げ出してなぁ、そいつをひっとらえて来いっていう命令が来てな」
「そうですか、任務がんばってください。私は娘を家に1人に
しておくわけにはいかないので帰りますね」 
「あぁ、気をつけてな。森の医者さん」


 家に着くとランドルの顔は真っ青であった。今頃になって自分がこの森に
住んでいるという情報があったということにランドルは愕然としていた。
「お父さんどうしたの?顔色悪いよ?」
 ッハと、ランドルはサラを見た。サラはさっきから何回か呼びかけていたが、
まったく気づかなかった。背筋がぞくぞくする。嫌な予感がして適当に嘘を
ついたが、嘘がばれるのは時間の問題。この森にはランドルとサラしか住んでいない。
「あぁ、ごめんよ。ちょっと風邪でもひいたかな。夕飯の準備をしよう」
 ははは、と笑うが内心焦っていた。サラもその表情に違和感を感じていた。

 夕食が終わり、サラが寝る前にちょっとサラから血を採った。どうして血を
採ったかは、「サラが風邪をひかないためのワクチンを作るために」と
ランドルはいうとサラは納得したらしく痛い注射を我慢した。
 サラが寝るのを確認してから、ランドルは5年前に摂ったサラマンダーの血を
冷凍保存庫から取り出した。過去にサラの母親だと思われる女性の血とサラの血は
同じ反応がでたので、サラは彼女の子であることがわかった。
 しかし、最近になってサラは動物と話をしてきたという言葉に不信に思い、
サラの血液とサラマンダーの血液で実験してみると信じがたい結果がでた。
「サラには・・・サラマンダーの血がまじっているのか・・・」
 思わず自分の目を疑う。だが、同じ反応が出ているからにはサラにも
サラマンダーの血が混じっているといわざる終えない。
 そして、どのようにしてサラマンダーと彼女との間にサラが生まれてきたのかは
わからない。種族を超えた愛なのだろうか。
 さらに、墓場で会った男性の言葉を思い出す。2つの任務。
1つはランドルの捕獲。もう1つはサラだろう。ランドルは寝ているサラの元に寄った。
彼女は何事もないかのようにすやすやと寝ている。ランドルは彼女の髪を触る。
あの日からずっとかわらない髪の感覚。恐らくもう長くはこんなことはできないだろう。
「サラ、私は恐らく殺されるだろう。起きていると
うまく言えないよ。私は死んだとしてもお前は殺したりはしないよ」
 そうランドルは言うと、明日の朝の準備をした。サラだけでもいいから
逃がすためにも。


 翌朝、朝食を食べると必要最低限の荷物を持ってランドルとサラは歩いた。
「お父さん、今日はどこにいくの?」
サラは、今までにない荷物を持っているランドルの顔を見て聞いてくる。
「今日は、ちょっと船に乗ってみようか」
「船?船ってなーに?お父さん」
 無邪気に聞いてくるサラ。ランドルは「ついてからのお楽しみだよ」と言い、
海に向かってまっすぐ歩いた。この森を抜けるとすぐに海がある場所があり、
過去にもしも見つかった場合のために子船を隠していた場所に向かって歩いた。

 だいたいお昼を過ぎた辺りから急に鳥達が騒ぎ出した。気味が悪いなと思っていると
サラが鳥の声を聞いたらしく。
「お父さん、誰かが私たちの後をつけてきてるみたいだよ?」
「そうか。じゃあ、少しいそごっか。割り込みされたり、
抜かされるとお船に乗れなくなっちゃうからね」
「あ、それ困るぅ。早く行こう!サラがんばるから!ね!」
「そうだね。じゃあ、少しいそごっか」
 そういうと、歩きから小走りになって、疲れたら歩くなどして
海のある方角に向かった。

 海辺に着く頃には夕方になっていた。ランドルは木々の間に被せた布やら
葉っぱを取り、小船をそこからだした。小船の大きさはだいたい、川や池などに
よくおいてありそうな小船である。船を海の上に浮かせ、近くの取っ手にロープで
結んで流れないようにする。そこに、サラと荷物を置くとランドルの入るような
スペースはなかった。
「お父さんの場所は・・・?」
 サラが不安そうに聞く、説明をしようとすると後ろのほうでガサガサと音がした。
ランドルはポケットから針が青いコンパスをサラに渡し、コンパスに指を指す。
サラはそのコンパスをじっと見るのを確認してから、コンパスについて説明をする。
「サラ、これをよく見るんだ。今からお父さん達が行こうとしているのは
この青い針の向こうに行くんだ」
「・・・お父さんの分は?」
「お父さんは、こっちの針が赤いヤツでいくよ。船はもう1つあるから、
ソレを借りてきてからサラの後を追いかけるよ」
「なんで、サラは赤じゃないの?」
 何か納得のいかないかのような顔をする。ランドルは、
ふぅと一息ついてから説明をする。
「サラの髪の毛は赤いだろ?お父さんも赤色が欲しいから、
こっちのコンパスを使うんだ」
 と説明するとサラは理解したかのように「うん。わかった」と
ニコニコしながら言った。最後にサラの頭をなでる。
これが最後になるともったいない。ランドルは思わず涙を浮かべた。
「いたぞ!」
 と後ろから声が聞こえる。後ろを振り返れば、3人組の男性が立っていた。
その3人組の中に灰色の髪をした男性がいた。灰色の髪の人が前に出てランドルを
見て話してきた。
「探しましたよ、シュー・マ・ランドルさん」
「人違いじゃありませんか?」
「コノ絵の人物はあなたじゃないですか?」
 処分したと思っていたが、残っていたのか。とランドルは思いながらナイフで
船をつないでいたロープをブチっと切る。小船がゆっくりと波に乗っていく。
「船が進んだぞ」
 と1人の男性が言った。
「お父さん?」
 急に動きだした船に驚きサラは顔をひょことだした。サラの存在に気づき、
1人が拳銃をサラに向けた。
「銃を下ろせ」
「それはできない、ランドル」
「サラマンダーの血が流れているからか?」
 その一言に意表を突かれたかのように思えた。
「どこで知ったかはわからないが、サラマンダーの血が流れている子を
生かしているわけにはいかない。例え、命の恩人の人だとしてもな」
「なら、僕が死のう。昨日言分からに、僕は死なれては困るのだろう?」
 そういいながら、ランドルは自ら拳銃を顎に突き出した。
「わかった、わかった。銃を下ろせ。じゃあ聞かせろ、彼女はどこに行くんだ?」
「霧島だ。特殊なコンパスしかあの場所へはささないよ」
 霧島とは、島に着く前にあたりは霧に囲まれており島にたどり着くことはない島で
ある。その島に行くコンパスをどうしてランドルが持っているのかは知らない。
が、霧島に行った人は帰ってきたことがないという伝説がある。無事帰ってきたのは
そのコンパスを作った人だけである。
「わかった。その子は撃たない。だから、銃を下ろせ」
「じゃあ、君達は銃を海に捨ててくれ」
 男達は顔を合わせると、銃を海に投げた。銃を投げたんを確認すると、
ランドルも銃を海に捨てた。
「お父さん、お父さんは来れるの?早くきてよ」
 サラは船からランドルに向かって叫んだ。ランドルもサラに向かって叫んだ。
「お父さんは、ちょっとおじさん達と話があるから先にいってなさい。
すぐには着かないと思うけど、寂しくなって戻ってきたくなったら——」
 一旦、息を整えてそれからランドルはサラに向かって叫んだ。
「寂しくなって戻ってくる時は、背を伸ばして、胸を膨らませて、
女性として一人前になったら帰ってくるんだぞ」
 自分でもおかしな発言をしていることに顔を赤くしながらもサラに手を振った。
「オイ。貴様今なんていった?」
「我が子をココに帰ってこいといったんだ」
 ランドルは平然と答えた。3人組のうちの1人がランドルに
殴りかかろうとしたが、灰色の髪の男がランドルの発言のつけたすかのように答えた。
「馬鹿野郎。殴ったて意味ないだろ。だいたい霧島にたどり着く前に
6歳のガキに航海なんざ無理だ。奇跡的にたどり着いても飢え死にするだけだ」
 その一言で男は冷静を取り戻したらしく拳を下に下ろした。
サラはランドルがさっきから何かを話しているみたいだが、
声がよく聞こえなかったのかサラは再びランドルに聞く。
「先に行って待ってるよ!お父さん。待ってるからね!」
 ソレがランドルが6歳ぐらいになったサラから聞いた最後の言葉になった。


 船にユラリユラリと揺らされながら船は進む。サラはじっとコンパスの針を見る。
船が針よりずれていたら、手でじゃばじゃばと向きを変える。
 そして、サラは気づいた頃には寝てしまい。目を開けたときには船は砂浜に
乗り上げられていた。
「お父さん、ココでいいのぉ?」
 サラは砂浜を歩きながらそういう。今まで見たことのないところ。
サラは不安で一杯だった。ザク、ザクと砂の音が聞こえる。いつも頼りに
していたランドルはいない。すると、ふと声が聞こえた。
誰が話しかけてきたかはわからない。だが、聞こえた声はとても不安だが安心した。

——ようこそ、霧島へ——

「お父さん、私待ってるよ。早く来なかったら迎えに行くよ。
そのときは、背もぐーんと伸びて、大人のお姉さんみたいになって、
迎えに行くからね!」
 サラは海に向かって叫んだ。もちろん返事は返ってこない。
赤色の長い髪の彼女は海を見た。赤い瞳も海を見た。

 そこで、彼女は父が迎えに来るのを待った。迎えに来なかったら
逆に迎えにいけるようにいい女性になろうとサラは思いココで暮らした。
一方ランドルはサラが霧島に着いた頃に牢屋に入っていた。


 そして、月日は流れた。ランドルは国から取り締まりを受け、
牢屋でのんびり過ごしている。国はランドルを殺せない事情が
できてしまったからだ。有能な医者がランドルぐらいしかいないからだ。
サラは霧島で健やかに育ち、サラはグングン成長した。そんなある日に
サラは海を見つめながら考え事をしていた。
「むぅ〜・・・。お父さん。私わからないよぅ」
 体育座りをしながら海をただぼーっと見ていた。父と別れて
約4年ぐらいたっただろう。サラはだいたい10歳ぐらいになっていた。
 そして、父親が最後に言った言葉を思い出しながら最近は海を見ながら言ってる。
「お父さんは、背が高くなって、胸に丸みができて・・・
イチニンマエになったらって言ってたけど・・・」
 さらは、ランドルの言った“イチニンマエ”がわからなかった。
どこからどこまでが“イチニンマエ”なのかがわからなかった。
海を見ても霧がかかっていて遠くが見えない。
「っんしょ」
 といいながらサラは立ち上がった。グングンあがる視線。
下を見れば砂。少し視線をずらせば緑のフサフサがたくさん
膝よりしたにたくさんある。大きな岩はサラの顎より下にある。
「背の大きさはいいとして・・・」
 そう言うが、次の言葉には自信なさそうにしていた。
胸は幼い頃よりは若干胸が若干できているが、綺麗な丸みではなく、
つるぺたな胸であった。
「で、でも。前よりは胸は丸いから・・・大丈夫・・・たぶん」
 サラは自分の胸に手をペタペタと叩く。少し、考える。
だが、4年間もランドルに会っていない。そろそろ父親の顔が見たい。
「よし、お父さんに会って聞いてみよう。うん。
あと、着る服がないから作ってもらおう」
 霧島に来てサラは急に成長した。背中からはちょこんと羽が生えてきて
お尻りにもちっちゃな尻尾も生えてきている。前は生えていなかった、
生えるときはすごく痛かった。だが、その痛みに耐え抜いて、
尻尾と羽が生えた。痛みに耐えたからイチニンマエ?と分からないが、
何でも知っているお父さんなら知っていると信じ、島を出ようとした。
 足元にはココに来たときの船。もう、足の親指ぐらいの大きさもない。
船の上に載せた小さなコンパスに目をやる。コンパスの青い針と逆の方向に
行けば無事にたどり着けると信じ、彼女は霧島から出る決意をした
「お父さん、今迎えにいくからね!」
 そう言いながら、サラは霧島を出て行った。



(続くかな?)