節分

 2月3日には節分という行事がある。それは、季節の変わり目に邪気が生じるとかで、それを追い払うために炒り豆
を投げ、悪霊ばらいをするらしい。
 一人で暮らしている俺にはそんなめんど臭いことはすることはないと思っていたのだが、実家から大量の炒り豆が
送られてきたのだ。大豆ではなく、既に炒った豆である。手紙には『どうせ炒る事出来ないと思うから炒っておきま
した。投げろ。母より』との事だ。
 ダンボールを開けるとびっしりと豆が引き詰められており、まぁ香ばしい訳だ。贈られてきた物だし使わざるおえ
ない。一人暮らしをして初めての豆まきだ。圧倒的に余るであろうが、まぁがんばりましょう。一応学生な訳である
からいらないプリントで小さいゴミ箱を作りそこに豆を入れる、よし準備OK。いざ、豆まきをしようと思った矢先で
ある。玄関からコンコンという音が聞こえた。


 お客がきたものだと思って玄関に向かい、扉を開くとそこには背筋のやけに高い女声が立っていた。そして、両手
を組み、こちらを見下しニヤリと顔を変えた。
「よぉ、人間。久しぶりだな?」
「・・・はい?」
 玄関に立っているお客さんと思ったもののお客さんが来るという考えが間違っていたのかもしれない。俺が住んで
いる所は人気のない一軒家に住んでいる。一軒家といっても必要最低限の大きさであり、プレハブ小屋ともしかする
といい勝負の家だ。
 何故、こんな所に住んでいるのかというと不動産で失態を起こしたからだ。何事も経験だという事で不動産で自分
の住まいを選ぶという大事な場面で不動産に行く前日に高校卒業の仲間と遭遇しそのままノリで何故か飲酒。年齢の
割には毛深いヤツとか一人は入るものだ。酒はそいつが担当して飲んでいた。もちろん、次の日は二日酔いで記憶も
なく、金もない。で、学校になるべく近い所の物件が会ったものだから、それに指を指しサインした。
 が、実際俺が指を指していたのはそこではなく、一つ下の所を指を指していた。今更、あの時酔っ払ってて間違っ
て違うところを選んじゃいましたっとでも言えば俺は未成年で飲酒をしていたという事になる。まぁ、相手もなんか
酒飲んでるなコイツはと思ったのだろう。
 結果、徒歩10分ぐらいの距離が一気に、電車で数分乗る半端な所を選んでしまったのだ。電車賃は180円ぐらいだ
からあまり大したことないだろう。別に自転車で通学という手段もあるのだが、行きはよいよい帰りは怖い。滑ら
かな下りを堪能した後、家に買えるときには地味に疲れる坂道を登らないといけないハメになる。
 話は大幅にズレた様な気がするが道に迷った以外考えられない。そして、目の前の背の高い女声の一声『よぉ、
人間。久しぶりだな?』は触れないことにしよう。それがいい。
 俺は失礼ながらそのまま扉を閉めたのであった。
 が、しかし。扉を閉めて数秒後に扉と一緒に吹っ飛ばされるとは思いもよらなかった。バタンという音の後には
ドゴォという音と共に扉が俺の方にリバース。そのまま後ろに数メートル吹っ飛ばされ彼女は俺に言うのだ。
「貴様、いい度胸をしているな?」
 ぬっと、頭を下げ家に入ってきた。一応ドアはアパートとかの鉄のドアっぽいヤツなのだが中心部辺りには拳で
おもいっきり殴りつけたような跡がくっきりと。ワァオ、怖い。
 そんな彼女は鬼の様な形相でこちらを睨みつけているのを吹っ飛ばされたドアの影に観察する俺。彼女は赤茶色
のロングヘアーにおでこからは赤い角の様なものがある。服は青色のノースリーブで縦に黒の線が入っており、下
はスカート。だいたい足首ぐらいまであるヤツ。なんとなく、姉御!っていいたくなる。いや、この時期にノース
リーブって寒いでしょ奥さん。てか、こんな事している間に、彼女は左手でドアを取り払い、無防備になった俺を
片手でそのまま持ち上げ、勢い余って天井に頭をぶつけたのだ。
「っぶぅ!」
「ふふふ、やはり人間は貧弱よのぉ?よくも鬼である私を封印してくれたものだなァ?」
「あ、それ多分僕じゃないです。ぶへぇ!」
 もう一発頭を天井にぶつけられる俺。素晴らしい怪力の様です。赤い瞳がもの凄く怖いです。ハイ。
「ごたごたうろたえるんじゃないよ!」
 そして、その後は片手で更に投げ飛ばされ台所まで吹っ飛ばされたのだ。関係ないけど、俺の家は玄関から真っ
直ぐ行くと台所です。その隣にお部屋があって、廊下にお風呂とトイレが別になっております。
「まぁいいさ。そろそろ終わらして次の人間を抹殺に向かうまでよ」
 ギシギシと軋む音。彼女、いや鬼は俺の方に向かいトドメを刺そうとしている。しかし、冗談ではなくなってき
た。大体、節分の日に限って鬼が訪問して抹殺しに来ないと行けないんだよ?節分ってこんなに生死をかける行事
でしたっけ?てか、大体なんで鬼が入るんだよ?訳わからねぇよ畜生。視線をずらせばご丁寧に炒った豆がびっし
り入っているダンボール。
「・・・はぁ?」
 思わず声がでた。いや、え?節分で、鬼で豆。なにこの状況。
「ふふふ。最後に言い残す事はあるか人間?無いならこのまま頭から踏み潰すが?」
 もはや、ラストチャンスであろう。前方の彼女、いや鬼?どうでもいいや。壁に寄り座っている俺の目の前に足
を向ける。黒のストッキング、どこ見てんだ俺は。とにかく、このまま殺されるわけにはいかない。彼女が鬼と言
うのであれば、なおさらだ。
 俺はなるべく素早く左手をダンボールの方に突っ込み、握れるだけの豆を目の前相手に投げつけた。


 一瞬の事だった。俺は鬼だったら効いてくれ!節分だったら通ってくれ!という願いのもと豆を投げたのだ。
狙いは定めずとも対象を逃さないようにじっくり見ていた俺でもわかる。彼女は俺の投じたものに『っへ、こんな
もの投げてくるとはな』と完全に馬鹿にしきったような顔を一瞬した。
「ぎゃあああああああ!!」
「うゎあああああああ!!」
 ガタッと更に後退する俺だけど後ろには壁。だけどなんとなくわかるよね?彼女が大声を叫ぶものだからこっち
も反射的に大声をだしてしまう。だが、大声を出しているだけでは始まらない。一応、豆は彼女に当たったらしく
ダメージでも受けているのか後ろに後退している。
 こうしてはいられないと俺は急いで豆の入っているダンボールの方にドタドタと四つん這いで近寄り、ダンボール
片手に反撃の姿勢をみせる。
「貴様・・・何をした?」
「ま、豆を投げました!」
 いや、怖いよこの人マジで。赤い瞳で睨みつけられちゃってさ、もー怖い。膝がっくんがっくんだもんよ。190cm
ぐらいある長身で弱点、豆ってなんだよ!マジで鬼なのかこの人。
「豆ェ?なんで豆ごときに・・・」
 相手もよくわからないみたいだ。いや、鬼の弱点って豆なの?鬼とか言っている相手も疑問に思ってんぞ?えぇー
何これ。こっちもわからねぇよ。鬼じゃなかったらダイナミック殺人鬼じゃねぇか。あ、一応鬼か。
「ふふふ、まぁいい。たまたま貴様が私に対抗する手段があったとしても貴様は私に殺られるのだ」
 そういうと、だんだんよくわからなくなってきた彼女はダンっと床を蹴り、もの凄い速さで近づいてきた。ハズだ
った。床を蹴る所にたまたま豆がいい感じに落ちており、それに躓き床に思いっきり転ぶ彼女。ッハと一瞬意味がわ
からなかったけど反撃のチャンス。ジャラジャラと右手に豆を握り彼女に投げつける。もちろん、利き手で投げれば
少しは力強いものだ。
「ぎゃあああ!やめろ!」
 確かに、コマンドミスして転んだ相手に容赦なく豆を投げつけるのは酷い事をしたような気もしなくもない。しか
し、命には変えられない。豆を食らった彼女は若干ふらふらになりながら立ち上がった。
「貴様・・・何者だ!!」
「いや、お前が何者だよ!」
 この答案は間違っていないはずだ。図々しく上がりこんで殺しにかかって来ておいて何を言ってんだと思ってくる。
「フン。人間ごときに教えるものか!私が本気になれば貴様なんぞ一瞬よ?」
「じゃあ、本気だしてみろよ?豆投げてやっからよ」
「・・・ふ。後悔するなよ?」
 ニヤリと彼女は笑い、ダン!と思いっきり床を蹴り破り玄関の方に後退し一気に外に出て行った。逃げたのか?と
思う。ふぅっと一息つくと安心したのか体の至る所の緊張の糸が切れ、ダルくなる。扉は吹き飛ばされ、床に穴を開
け殺人未遂をした彼女。この場合通報した方いいんだよな?ポケットに手を突っ込むが携帯電話はあらず。そういえ
ば部屋に置きっぱなしだったな。

 ゴゴゴゴゴゴ

 突如の地震。携帯電話を取りに行こうと立ち上がった途端に地震は起きた。しかし、この地震はなんとなくだが止
む気配がしない。それどころかさっきの言葉『後悔するなよ?』というのが引っかかる。どことなく嫌な予感がする。
とりあえず、豆の入ったダンボールを片手に持ちながら外に向かう。
 すると彼女はさきほどとは比べ物にならないぐらい大きくなっており、両手を腰におきこちらを見下している。大
きくなったといってもざっと100倍ぐらい大きくなったんじゃねぇか?というぐらい大きい。顔をそのまま真上に見
上げて見ている。しかし、下からみると彼女の胸は大きいんだなと思う。おっぱいで顔が少し隠れるなんてローアン
グルの魅力の一つだなと思われる。
「来たか人間。まさか私が力を使うとは思わなかったが、これ以上邪魔されては少々頭に来る。だから一思いに家
ごと踏みつぶしてあげるわ」
 そう言うと、彼女は右足を持ち上げ頭上の真上にかざす。今から踏み潰されるというのに俺は上を見つめて今度
こそ終わるのかっと思っている矢先、あれ?ガーターストッキングだったの?と思わず新たな発見をしてしまった。
「さらばだ。人間」
 その発言と共に足が落ちてくる。いや、冗談ではない。
「うわあああああああちくしょおおおお!」
 と半場ヤケクソになりながら25mプールぐらいあると思われる巨大な足に手に持っている豆を足目がけて投げつける。
投げたところであんなに大きい体に効くのか?今まで本気じゃなかった相手にさっきの手段が効くのか?しかし、俺
に残されたのは豆しかねぇんだよ!ただ殺されるぐらいだったら投げてやるよ。そんなに肩が強い訳でもない。足が
落ちてくるときにも風がすげー拭くんだよ。
 あぁ、死んだな。視界が真っ暗闇になる時思わず。心の中で思った。
「痛い!痛い!痛い!痛い!」
 ブワッと風が巻き起こり真っ暗闇から夜へと戻った。助かったのだ。そして、彼女は190mはある巨体が両手で踏も
うとした足を持ち、左足でぴょんぴょんと跳ねている。が、普通のサイズならいいけど今の彼女はセンチメートルか
らメートルと大きくなっている。まぁ、そんなに大きい娘がぴょんぴょん跳ねてみなさいな?俺の家周辺ではドゴォ
ンドゴォンと凄い爆発音がしていてめちゃくちゃ揺れるんですよ。同時に地面のメキメキメキという悲鳴も聞こえる。
そんな中でまともに立てるわけがないから、俺も倒れますよ。豆を守りながら。
 すると画鋲でも踏んづけてぴょんぴょん跳ねている彼女はバランスを崩し、そのまま後ろに倒れこみ、尻、肩、頭
と次々と数百トンあると思われる彼女のパーツが地面に降り注ぎ、最後に両足が踵落としをするかのように地面に落
ちてきた。
 ここは戦場か!というぐらいの揺れと音。奇跡的に俺は潰されず、地割れに飲み込まれなかった。彼女は両足を開
らきながら倒れたのだろう。左右を見渡すと巨大ストッキングの壁。こんなに大きい相手が大の字で倒れているんだ。
足首まである長いスカートからも隙間から彼女のパンツを見ることはできるが、残念ながら今夜中。よくわからん。

 
 大騒動だった。とりあえず、命はある。目の前の彼女は大の字のまま動かない、できれば動かないで欲しいとか思
っていると彼女の体が徐々に縮小していった。なんというか『しゅるしゅるしゅる』という音をだしながら縮んてい
き、彼女が自ら作った大きな溝に吸い込まれていった。このままほっといて撤退してもよかったのだが、俺は彼女に
近づくと弾丸絶壁!というわけでもなく曲線状の崖があり、その奥に人間サイズの彼女が倒れていた。この曲線は尻
の部分で凹んだのかな?とか思いながら崖を下り、彼女のもとに近寄る。
 彼女は目を瞑って動かない。いや、気を失っているんだろう。
「・・・・・・・・・」
 無言のまま彼女を見下す俺。やっぱりほっとけない、のかな?一応、彼女は俺を殺しにかかった。本来なら問答無
用で警察に付き出してもよろし。でも、何故か警察に突き出す気にもなれず、ほっとく事も出来ない。なぜだろう?
豆で倒せたからか?そもそも豆が無かったら死んでたな俺。そう考えると、うん。ありがとうお袋。
 しかし、そんな現実逃避をした所でなにもならない。
「仕方がない。運ぶか・・・」
 あー、しかたねーなー。と思いながら彼女の横にたった時、また考えてしまう。
 え?これってお姫様抱っこで運んだ方がいいのかな?肩と膝の裏を手で持ち上げてって・・・うわー、マジかよ。
持ち上げられねぇ・・・。まず、そうやって持つって考えるだけでどっきどきなのに残念ながらお客様の筋力ポイン
トでは持ち上げられませんって、つくづく自分の非力差を恨む。
 理想のお姫様抱っこが出来ませんでしたら違う方法で挑むまでだ!っと思い次の運送方法を考える。両腕で胸元に
腕を通して運ぶ。なんか、死体を運ぶ犯人みたいだな。てか、胸元は駄目だろ!じゃ、じゃあ肩に腕を通して引張れ
ばいい。まぁ、さっきのと同じだわな。まぁ、持ち上げられないならこうするしか無いな、よし実行。
 両手で彼女腕をちょいどかし腕を通すと、むにゅんというマシュマロのような感覚を服越しで感じる俺の前神経。
『隊長!ミッション失敗です!』『駄目じゃねぇか!』などと赤面の中脳内会議、いや変態か俺は。そして、再び
元の形に戻す俺。あぁ、いっそのこと起きてくれないかなこの人。ダメだ俺、ヘタレだわ。
「・・・あー、もう。どうしてこうなった」
 関係ないが子供の頃見ていた戦隊シリーズは敵と戦い、敵を爆殺するのはいいがその後巨大化する敵は必ず生存し
ていない。それに限りなく近い経験を今したのだが、爆殺していないから彼女はここにいるんだよな。豆が爆発した
ら誰も食えねもんな。実はあたりのモノは爆発するとか、はっはー馬鹿か俺は。
「はっくしゅん!」
 なんちゃって長時間外にいるもんだからくしゃみの一つもでてしまった。どうでもいいような事をべらべら言って
ないでさっさとなんとかしないとな。おんぶだろう。こうなれば。
 彼女の背中に腕を通し、上半身を起こして開いた足の方にしゃがみこむ。その後、彼女の腕を俺の方の方に預けさ
せ彼女の体重が俺の方に預けられる。むにゅんっと先ほど経験したやわらかな感覚にまた、ッハ!っと赤くなった瞬
間、俺の左耳の隣を細くて長い角がブォっと現れ、瞬時に感情はゾッとしたのだった。最後に彼女の膝の裏に腕を通
して「ぬぉおおん」と訳のわからん唸り声を出して俺、大地に立つ。
 さて、家におぶって行くかと思いながら歩いて行く時に重要な事に気づく。そう、行きはよいよい帰りは怖い。あ
れ?下りの後は上りがあるわけで今から、おぶりながら登れと言うんですね。
 あぁん、もう!すっかり忘れてたぜ。


 長くて険しい道のりを終え、倒壊寸前の我が家に帰宅。今の俺は燃え滾るように体も熱く、息も荒い。寒いはずの
風が心地良く感じるのだ。それにしてもよく壊れなかったなこの家とか思いながら家に上がると、そこはダイレクト
に台風でも直撃したかのように荒らされていた。扉は今おぶってる彼女が破壊してくれたものだから開ける必要もな
くなってしまったのだ。地震が起きたときはなるべく扉は開けないと外に出れなくなるっとは聞くから、まぁいいか。
とりあえず、土足であがりましょう。ヘタに玄関で靴を脱いで部屋に入っていくほうが逆に危ないよな。
 そこで、初めて気づくことがあった。本当にどうでもいいようなことなのだが、玄関に革靴が一足あった。泥棒?
いや、逆にさっきの地震の中盗れる物の無いところに靴を脱いで泥棒にくる輩がいるものか、これは恐らく彼女が来
た時に、扉をぶっ飛ばしご丁寧に靴を脱いでいたのだろう。そして、そのまま外で巨大化をしたと。
 まぁ、いいやと思いながら自室へと向かうもののやはり悲惨な状態だ。台所につけば電灯は落ち、食器も全滅で窓
硝子木っ端微塵に床に落ち、冷蔵庫なんて逆立ちしてましたよ。横に自分の寝る部屋があるのだがお布団と机は本棚
の下敷き、窓は台所と同じだな。天井もめくれて大丈夫というか・・・今から片付けだよな。
とりあえず足で壁際に落ちているものを払い、そこに彼女を下ろす。壁に寄り添い、未だ意識不明の彼女。本当に
大丈夫か?と心配になるがじっとしていも仕方がない。とりあえず台所にいって、電気をつけたり消したりとボタン
を押すが反応はなし。蛇口をひねれば水は出ず。どうやら電気、水道は死んでいるようだ。
 真っ暗闇の中、明かりが恋しくなり寒さもまして来る。ましてやこの時期で全力換気をしているかのように風通し
が非常によろしい。確か、この辺にあったと思うストーブを瓦礫の中から発掘すると、一応動けそうだ。電気ストー
ブは電気代かかるじゃんと思い買わなかったのはまさかここで役に立つとは、と思いながらストーブ近辺のものをど
かしながらマッチを探すこと数十分、とりあえず寒さ対策はできた。
 次にどこから手を付けたらいいかわからないぐらいごちゃごちゃしているマイホーム。ストーブは倒れない様にし
たが次の日でいいかなーとか思いながら彼女の方に視線を送る。
「!」
 いつの間にか彼女はこちらをじーっと見つめていたのだった。あ、やべぇとか思っていると彼女は両手を?マーク
にして俺の方に飛んできた。怒声に限りなく近い声を発しながら。
「貴様ーッ!」
「何すんだ馬鹿野朗!」
「馬鹿野郎?貴様に言われる筋合いはないのじゃ!」
 じゃ!ってなんだよと思いながら両手で彼女の肩の付け根を平手で押し、コテっと後ろに倒す俺。まったく、目覚
め早々に元気すぎるわ。あーぁ、またちらかったよ。
「貴様は・・・貴様は一体なにものだ!」
 座りながらこちらに指を刺す彼女。目は本気のようです。回答次第ではえらいこっちゃは確実です。
「それはこっちの台詞だ!名を名乗れ!!」
「なっ、くぅ~~~。わ、私はだな・・・」
 オラどうした!と心の中で叫ぶ俺。謎の形成逆転。彼女は徐々に赤面していき仕舞いには目を瞑りながら大声を出
すのだ。
「名前などない!」
「はぁ?」
 しーん、とあらゆる音がかき消された感じがした。そして、何故か涙目の彼女。これはまいったとしか言えない。
「き、貴様の名はなんだ!」
 若干空回りしていた口が俺の方に解いてくる。恥ずかしかったのか?
「あ、あー、俺は、高坂護涙。『まもるい』じゃなくて『まもる』な?で、お前は?」
「だ、だから・・・」
 その後、彼女はずーっと俺を睨みながら淡々と説明してくれた。


 彼女は今まで長らく眠っていたらしく、目を覚ましたところ待ちかねていたのは光ではなく、闇。まぁ、この闇と
いうのは夜だよな。よく寒空の中寝ていられたものだと思いながら話を聞いていると、闇の中に光があったと。
 彼女自信、体内には強靭な力が秘められているという感覚があり、この強靭な力を恐れられ封印されたと思ってい
たそうだ。どこからそんな自信が沸いて出てくるのは詳しく聞きたいところだったがあえてスルー。話が長くなる。
光というのは俺の家から出ていた明かりのことで、鉄製の扉。
 開かれた扉にいた先には人間。まぁ俺なんだけど。そこで、俺を扉の番人だと思ったのだろう。何も言わずに扉を
閉めたものだから殺られる前に殺れというスイッチが落とされそのまま扉をぶち破ったそうだ。まぁ、ここから先は
先ほど起きた事なわけだ。 
 最後に彼女は自分で分析した結果、強靭な力を恐れた人間は彼女を永遠の闇へと封印。万が一封印された場合は
人類には勝ち目がなく、記憶を抜き去ったと。よって、彼女は自分の過去を全く覚えていない。だったら、ここまで
やらなくていいだろっと思ったのだが、そこは自分のカンで動いたと述べている。
 まったくもって迷惑極まりない行為である。彼女自信、まさか豆に翻弄されるとは思いもよらなかっただろう。
「―――っという事だ。わかった人間」
 いつの間にか彼女は俺に近づいていたらしく正座で人差し指を上に向けながら説明していた。
「あぁ。しかし敵であるかもしれない俺によくここまで喋ってくれたな。案外フレンドリーなヤツだな。お前」
「・・・っな!貴様にお前なぞ言われる筋合いは・・・」
「じゃあ、なんて呼べば言いんだよ」
 そう言うと彼女はしゅんっと困ったような顔をする。言っとくが俺の方が被害者だからな?とりあえず、話を変え
よう。
「で、封印されていたお嬢ちゃんは人間なのか?」
「貴様、舐めているのか?」
「じゃあ、なんて言えばいいんだよ」
「私は、鬼じゃ。貴様にはこの角が見えんのかぁ?」
 自慢気に自分の角を撫でる彼女。見えないわけがなかろう、耳の隣に鋭利な角が飛び出てきたときはびっくりした
んだからな。
「あぁ、一角獣みたいだな」
「な・ん・だ・と?」
「うわあああ、立つな立つな!座れ!座れぇい!投げんぞコレ!」
 一角獣という言葉に頭にきたのかぬっと立ち上がる彼女。こうなると流石に危ないのですかさずダンボールの中の
豆を握りしめる。すると、彼女は苦手なものをみるかのように後ろずさみ、おとなしく再び座り込んだ。確かに彼女
が鬼であるのであれば豆は天敵である。彼女の顔も悔しさでいっぱいのようだ。空気を変えよう。
「貴様にソレがなければ瞬殺なものの・・・」
「話変わるがいいか?本当に鬼なんだよ?」
「あぁ、そうだが?」
「俺の知っている鬼は虎柄の腰巻を巻いていたりするんだが、実際の鬼ってのは皆虎柄の下着なのか?」
「変態か?貴様は」
 やっぱり聞くんじゃなかった。そうだよな。相手は女なんだから、下着は虎柄ですか?何てきいたら今日のパンツ
は何色ですか?って聞いているようなものだよな。
「まぁ、今はどういう風に捕らえられているかは知らんが、虎柄を愛用するものもいたな」
「姉御は?」
「わ、私はあんな派手な物は来たりはしない!は、恥ずかしい」
 記憶がないのに恥ずかしいと答えるのも不思議な感じがする。が、記憶がないということは性格も今と同じではな
いと考えれば記憶の無くなる前の彼女は身につけていたのかっと考えればと自分で考えて見れば恥ずかしいのだろう。
確かに、虎柄の服装だったら今より活発的なイメージがあるな。
「でさ」
「なんだ?」
「わ、私の名前はなんなのじゃ?」
「・・・はい?」
「私には記憶がないのだ!さっき、貴様が言っただろう!『じゃあ、なんて言えばいいんだよ』って。なら貴様が私
の名前を決めろ!適当な名前を付けたらぶっ飛ばすからな!」
 今度は名前を決めろですかい。どうしてまた俺が彼女の名前を命名しないといけないんだよ。じゃあ、名前決めて
やろうか?
「鬼島・・・喜姫?」
「キジマ、キキ?やけにキが多いな、手抜きか?」
「えーっとだな。まずその握り拳を解いてくれ。いいか、俺の知っている鬼には『鬼ヶ島』って島があるんだよ。だ
から苗字は鬼ヶ島から取って鬼島にした。名前の方は自分を喜ぶようなことをしないとわがままを言って暴れそうな
姫様だなコイツはと思ってそう名付けた」
「っふ。貴様に頼んだのが間違いだったなやはり殺るしかないな」
 何やらドス黒いオーラをまといながらゆっくりと立ち上がる彼女。実際は出ていないんだけど、そんな感じがする
ってやつ。ダンっと足を地面でけるとドドドドドドという音をだしながら彼女の体は膨張していく。
「貴様なんぞこの家もろもろ瓦礫の下にでも埋もれていろ」
 ひっくい声で俺に言い放つ。
「豆、巻いときますね」
 大きくなっていく彼女にポイ、ポイ、ポイと豆を投げる。大きくなれば当たり判定も大きくなるからな。てか、
完全に俺が豆持っていたの忘れていたんだろうな。
「痛い、痛い。ちょっと、痛いからやめてってば!痛ァ!」
 若干大きくなった彼女は再びゴロンと倒れた。なんか、お約束という感じになってきたな。今回は気を失っては
おらず、仰向けで息を荒々しく吐いたり吸ったりしている。可哀想にという顔をしてしまったのか彼女は俺のその
顔を見てシュッタ!と立ち上がり、ガンを飛ばしてくる。
「貴様には付き合いきれん。帰る」
 一体どこに帰るんだよとツッコミを入れたくなる。彼女はそのまま玄関まで向かい革靴を履き、外に出る。しか
し、彼女はすぐに足を止めてしまう。
 何があったんだと思い、俺も外に出て見ると状況はすぐに理解できた。今年はあまり雪がなかったと思っていた
が静寂の夜はいつしか猛吹雪の夜と姿を変えていた。ちらりと目線を横にむけると「あわわわわ」という言葉を発
しそうな顔でフリーズしている彼女。ハァっと吐くため息も白い息へと姿を変えた。
「・・・泊まってけよ」


 放心状態の彼女の手を引きながら室内へと誘導する俺。しかし、猛吹雪となると家に入ればとりあえず寒さから
は身を守れるっと思ってもいられない。なぜならちょっとばかし風通しがよろしいからだ。幸いにも今夜ぐらいな
らストーブも持つであろう。となると、穴を塞いで布団を出すのが先決なんだがどうやって穴を塞ごうか。
「わ、私は帰るんだ。何手を引いているんだ。貴様は!」
 やっと意識が戻ったようです。
「いいから泊まってけ!遭難するぞ」
 とは言ったものの場合によってはこの状況がまさに遭難しているようなものである。
「布団は1つだけなのか?・・・まさか貴様と一緒に寝ろっというのか?」
「んなわけあるか!ちゃんと押入れにあるわ!」
 穴塞ぎより布団を先にだす事になった。そう、布団といっても夏用なんだが大丈夫であろう。とりあえず、ひん
曲がった押入れを引いてはみるがうんともすんともいわない。あぁ、これズレてるは。
「?何をしているんだ貴様は」
 彼女は、腕を組んでこっちらをおかしくみている。仕舞いには「どいてろ」と言われ、肩を捕まれそのまま床に
突き落とされた。

 ビィタァン!

 と爽快な音を立てながら押入れの扉は開かれた。流石は鉄製の扉を拳でぶち破る実力の持ち主である。彼女は振り
向き「こんな扉もあけられんのか?」とも言われた。一応、押入れの中は大丈夫そうだった。上の棚にはちゃんと布
団があったし。俺はそれを取り出そうとすると、腕を前にだされた。
「わ、私はここで寝る」
「いや、流石に狭いだろう。出してやっからどけって」
「う、うるさい!私はこの中でいつ貴様に豆とかいうものを投げられてもいいように身を潜めるのだ。っふん。見た
ところだと?貴様には開けられそうにないようだからな。貴様となんぞ寝てられるか!」
 くそ、別に豆を投げる気はさらさらなかったがそんな事を言われると本当に投げてやろうかと思う。しかし、そん
なこと思っているうちに彼女は押入れの中に入り、ビタァン!と閉めてしまった。考え方によってはそっちの方寒く
ないような気もしなくもない。
 
 彼女が押入れの中に入ってから数分間。俺は身近なもので穴を塞ぐ作業をしていたのだが、最終的に残ったのが
毛布1枚だけという。しかし、ストーブがなかったら詰んでいたと思いながらストーブの近くで毛布を被り丸くなる。
これで寝れんのかとか思っていると思っていると押入れの方から声が聞こえてくる。
「おーい、起きてるかーい?」
 押入れには狸型ロボットなんていれた覚えはない、ということはおいといて何故か寂しそうな声が押入れから聞
こえてくる。返事ぐらい返すか。
「なんだ?」
「・・・貴様、起きていたのか」
 そして、普段どおりの声である。
「俺は寝るぞー」
「・・・寒くないのか?」
「寒いよ?ストーブの前にいても」
「・・・・」
 一瞬の沈黙。一体何が知たいんだ?
「い、一緒に寝ない?」
 今度は、あえて黙ってみる。何いってんだ?さっきまで一緒に寝てたまるか!とか行っていた輩が何を言ってい
るんだと体はストーブに向け、顔は押入れの方を向けて話を聞きながら様子を見る。
「ほ、ほらさぁ~。お互い寒いんじゃ辛いでしょ?だから、お互いのためにも・・・ね?・・・あれ?まさか寝ち
ゃった?お、おーい。寝たのかよ~い?」
「何いってんだ~?馬鹿か?」

 スッパァン!

 勢い良く押入れが開く。押入れの暗闇から赤い点が2つ見える気がするのは俺だけかな?そして、貞子押入れ
バージョンで身を乗り出す彼女。何これホラー?
 押入れから出てくるなり、スタスタと俺の方にちかより片手でひょいっと持ち上げて押入れに入れられた。え?
なにこれ。悪いことしたからしまわれちゃったのか?いやいやいや、そんなばっかなー。

 スパァン!

 そして再び押入れは閉められた。え?俺自力であけられないんですけどやべぇだろこれ。あ、やべぇ彼女に殺さ
れる。突然の出来事にお守りのお豆先生を持ってきていないよ!とか思っていると暗闇の中から俺の体はぎゅっと
何かに絞めつけられ、顔には柔らかい何かが当たっている。じたばたしたくて体の身動きが取れない。
「ふっふっふっふ。貴様、嬉しく思えよ?本意ではないが、寒さからしのぐ為にも仕方がないのだ」
 と彼女が言い切る前に再び締め付ける強さが上がる。
「なに・・・してんだ・・・お前・・・」
「貴様の生意気な態度に頭に来たんでな。少々私の布団の一部となれ。後だな、変なことは考えるなよ?変なことを
した瞬間に貴様を絞め殺すまでだからな?」
 と、精一杯の声で問いてみると解答は態度次第では絞め殺すという内容。暗闇の中、よくわからないが俺は恐らく
抱き枕の代役にうって出てるんだろう。てゆうか、ストーブ消させろ!倒れて火事になったりなんかしたらどうすん
だよ!あー、暗いよ狭いよよくわからんよー!
 時間が経つに連れて目は暗闇に慣れてきます。目の前は胸。本来なら嬉しいはずなのだが腕に足に挟まれて身動き
が取れないんです。上を見上げれば彼女の寝顔。寝てんのか?いや、こっちから声をかけたら状況が不利になるのは
こっちだけだ。
「ぐー」
 寝やがったこの女!あぁ、もういいや。俺も寝よう。寒さから逃れるために支払った代価は大きすぎるような気も
する。体中が痛い。ある意味長い夜になりそうだ。


 朝、ダァーン!という豪快な音を立てながら押入れから突き飛ばされる俺。浅い睡眠を何回も何回もしながら寝て
いた俺に彼女は『貴様は何をしている!!』と何故かそのまま突き飛ばされたのだ。だんだん理不尽対応能力が上が
ってきたんじゃないかと思う。それにしても、最悪の目覚めだ。反論の一言でも行ってやろうかと思ったが、めんど
くさいからいいや。
 はぁっとため息を一つ。とりあえず、これからどうするかだ。この廃墟寸前のこの家は。弁償になるのかなっと
現実に対面する。保険とか降りるのかなー降りねぇかなー。ハハハ、どうしようこれから。
「おい。貴様」
 はいはいなんですかい?俺は今若干がっかりきてますよ?睡眠不足とかその他もろもろあってですね。渋々彼女の
方を見ると彼女は片手でポケットサイズの黒い箱を持っている。
「これはなんだ?」
 はい。それは携帯用のラジオですね。今の時代ラジオとか聞く人とかいるのかねぇ?俺の場合、テレビがないから
一応手頃なラジオを買ってきただけなんだが、なんで今更ラジオなんてでてくるんだよ。
「・・・あ」
「貴様、朝を迎えたのだからシャキッとでき・・・あぁ、勝手に取るな!」
 彼女の話している途中に、持っているラジオを強制的に取り上げる俺。そう、こういう時に役に立つのがラジオじゃ
ないかと思いながらスイッチを入れる。
「うぉ、鳴った?なんで鳴った?」
 ザザーッザーという砂嵐の様な音がラジオから聞こえてくる。彼女はラジオというものを知らないらしく偉く驚い
ている。ザザーと音が鳴っている中ダイヤルを右やら左にやらぐるぐる回しようやくまともな音が聞こえた。

 昨晩の出来事はどうやら冗談では済まないぐらいの被害がでたようだ。謎の地震だそうです。内容は、震源地近辺
は謎の人型のようなクレーターが発生しているとかどうのこうのと。
「おい、貴様。なんか凄い地震が会ったそうだな?」
 ここは突っ込んだほうがいいんだろうか?疲れて突っ込む気にもなれないんだがどうしようか?地震なら災害にふ
くまれないかな。まぁ、詳しくは不動産さんに聞かないとわからな。
「さぁーってどうしたものかな」
 ゴロンと倒れる俺。床はごちゃごちゃしてて寝っ転んだ時になんか刺さってるような気がした。うん。失敗だ。
視線の先には腕を組んでいる彼女がいる。
「あー、お前はどうすんだ?」
「貴様、私はお前ではないぞ」
「・・・喜姫?」
「キキでいい」
 どこの魔女の名前だとか心の中でつっこんでおこう。て言うか、気に入ったのか?
「ふーん。キキはどうしたいんだ?」
「私はだな、人間に復讐をするのが目的だし・・・うーん」
「俺はここを離れるけど?」
「・・・え?離れるの?」
「あぁ」と返すと彼女は困った様な顔をする。え?なんで離れるの?という感じな顔だ。復讐するんだったら勝手
にしてろよとか思いながら彼女を見つめる。
「俺は一応実家に帰るけど・・・お前はどうする?」
「・・・え?ここがお前の家じゃないのか?」
「俺は親もとを離れて過ごしているだけだよ」
「じゃあなにか?人間は巣立つ生き物になったのか?」
「そういう人種もいるってことだ」
 よいっしょっと体を起こし立ち上がる俺。財布だけはここに置くというポイントで財布の中身を確認すると、まぁ
帰れるぐらいの金はある。あとは、ダウンジャケットを来て駅を目指すまでだ。チラッと彼女の方を見れば状況をよ
く理解していないようにも見える。
「じゃあな」
「お、おい貴様」
「なんだよ?」
「わ、私もついて行っていいか?ほら、人間の生活とか見てみたいし・・・さ」
「じゃあ、一つだけ約束してくれ。人間には暴力をふらないでくれ、それだけだ」
「わ、わかった。しばらくの間だけ人間への復讐は・・・やめておく」
「んじゃあ、行くか」
 こうして、俺と彼女、キキは俺の実家の方へ向かうことにした。荒れ果てた大地はすっかり銀世界へと姿を変えて
いた。うっかりクレーターに落ちないように気をつけて先へいこうじゃないか。しかし、最後にコレばかりは言って
置かないといけないな。
「後だな、俺は貴様ではなく護涙って名前があるんだぞ?」
「ふふん。貴様の指図はうけん」
 心なしか上機嫌のキキ。本当に約束を守ってくれるのか?と不安になるがまぁ、なんとかなるような気がする。
豆もあるし。しっかし、雪道を二人横になりながら歩くのだが一応身長170cmはあるんだがキキの身長は190cmあるわ
けで改めて背が高いなと思える。俺の身長もキキと比べると首下な訳で、大きな胸の位置に顔がある。

 節分の夜に鬼がやってきて、そのまま一晩を過ごすなんて常識じゃ考えられないよな。そして、すぐ暴れだしそう
で怖いキキだがこうしてみると可愛いヤツだとも思う。しかし、なんでこのタイミングで封印とやらが解けるんだろ
うな。何かよからぬことで起きたり・・・いや、既に起きたか。俺の身に。
 うん。まぁ、とりあえず。駅まで何事も無くいければいいな。と思いながら俺達は駅に向かうのであった。




 おしまい