今日は会社で飲み会があります。学校を卒業して成人となって社会人になってようやく仕事にもなれてきて、お酒も
前よりは楽しく飲めるようになりました。今日はちょっとしたイベントの反省会みたいなのを兼ねてやります。私は
個人的にお酒は飲みませんけど、飲み会では飲むほうなんですけど、会社の人からは「よっちゃん強いよね~毎日飲ん
でるの?」とか言われますけど、私って強いのかな?そんなことは決してないと思うんだけどね。
 そして、いつも通りに一通り話し終わると乾杯をし、生ビールを飲む。最初の頃は、こんな苦いもの飲めるわけない
って思ってたんだけど、飲み方ってあるんだね。口という通過点を無視して喉にそのまま流しこむってのがわかれば、
ビールも美味しい飲み物だ。
「よっちゃんお疲れ~飲んでる?」
 声をかけてくれたのは私の上司の村田さんだ。ビールの口をこちらに向けられたので一口飲んで注いでもらう。
「はい。飲んでますよ。村田さんはどうですか?」
 注いでもらうと今度はそのビール瓶を奪うような形で受け取り、村田さんのコップにビールを注ぐ。
「あ~、こちらと絶好調だ。本日はお疲れさんだ」
「そうですよね~」
「ところで、聞いた話んだんだけど・・・いいかな?」
 急に真剣モードの顔になる村田さん。一体どうしたのだろうか?私は「はい」と返事をする。
「出張中の内川くんとはどういう関係なの?」
「ブッ!」
 何を言い出すかと思えばそういう話ですか!この吹き出した音で周りの視線が一気に集まる。
「吉見さん!なんの話してるんすかっ?」
「今まで見たことのない反応だね~何々?」
 嗅ぎつけてやってきた後輩の石川と先輩の吉村さん。なんでこんな話になるのかな~?別に、内川くんとは特別な
関係じゃなくて、中学の時同じクラスで同期で再開しただけの関係であって・・・。
「ちょ、ちょっと!皆していきなり何ですか!イジラないでくださいよ~」
「おーい!皆飲んでるか~?」
 何とか話をそらしたい時に、いいタイミングで三浦部長がやってきた!三浦部長は本当に頼りになる人だ。外見が
怖くて過去に金本組に誘われたり誘われなかったりという黒い話もあるけど、この会社の心臓でもある人だ。
「み、皆さん!三浦部長ですよ!ホラホラ注いでもらえるんですから飲まないと!」
「お?吉見~。元気だな!よし、飲め飲め」
「ハ、ハイ!」

 こうして、部長や先輩達からお酒を注いだり注がれたりの攻防戦を繰り返していたのだ。内川くんとの会話も次第
も時折入ってきて、気分がいいもんだから今まで内緒にしていた中学の時、同じクラスだったと打ち明けたもんだか
ら付き合ってるのか、付き合ってるのかって散々イジラれた。特別な感情があるわけじゃないけど、嫌いじゃないもん。
 そして、あっという間に飲み会終了のお時間になっていた。片付けをして、二次会へと準備をする。歩いている時に
今日は結構飲んでいるのがわかった。一応歩けるけど、ふらふらでちょっと危ないかも。



「あれ?」
 思わず声を出してしまった。ほんの一瞬だ。目の前が暗くなって思わずしゃがみ込んでしまった。あー、完全に飲み
過ぎたや。危ない危ない、迷惑を掛ける前に二次会は断ってささっと帰ろう。いつの間にか無意識に閉じていた瞳を開
ける。
「・・・あれ?」
 何かがおかしい。夜だから視界が悪いとはいえ今日のよる少々暗すぎるような気がする。いや、足元が明るすぎるん
だ。いや、これは足元が明るいんじゃない。よく見ると四角箱がぎっしりと無駄なく引き詰められている地面。チカチカ
映る小さな映像。考えがたいけど、一つの答えにたどりついた。
「ひょっとして・・・私、大きくなっちゃった?」
 無意識に短髪の髪をかいてしまう。こんな状態にいきなりつきつけられては酔いも一気に覚めてしまう。っと、思っ
たら全然残ってるや。しかし、大きくなってしまったのは仕方がない。被害が拡大するまえに早く帰ろうと立ち上がろ
うとするもの足はふらふらで、私の足は小さな小さな道路から足ははみ出し、いくつかの建物をまとめて地面に押し
潰してしまった。ズシン、ズシン、ズシンとまっすぐ立ち上がるためによろめきながら3回大きな揺れとパンプスの下
敷きになってしまった可哀想な建物達。
「う。うわ、やば。ご、ごめんなさい~~」
 私はその場から逃げるようにふらふらの足取りで考えもなしに真っ直ぐに走ったつもりだった。そう、小さな道路
を跨いでいる感じになるべく踏まないようにと走っていたつもりだったのに、私はコースが大幅にズレ残念なことに
グシャグシャグシャと無数の建物もまとめて踏み潰してしまった。
「うっ、あっあっ~~~!」
 ズドォォオオン!
 踏み外した道を訂正しようと走るものぐるぐる回るような視界でバランスを崩し倒れてしまった。ただ走っていれ
ば踏まなかった建物もまとめて私の下に潰れ、押し倒してしまった。「いたたた」と声にだそうとした瞬間、何やら
胃から込み上げてくるものを感じる。急いで右手で口を塞ぎながら四つん這いの態勢をとり辺りを見渡すと良い感じ
の容器が視界に入ってきた。


 一方、街には突然現れた巨大OLに困惑していた。顔を赤く染め、よろよろと立ち上がった。よろめきながら立ち
上がった所、結構飲んでいるようにも見える。その証拠に、バランスを撮るように彼女の脛にも満たない建物が無残
にも踏み潰されてしまった。
 そして、その場から逃げるようにふらふらと彼女は走り去ったものの平均台よりも幅の狭い道路をまっすぐ走れる
わけもなく、脛の高さの建物は容赦なく潰され膝の高さまでの建物は上の部分だけが蹴り飛ばされれ周りの建物に残骸
をばらまいていたが、大きすぎてちょっとした溝にも足をとられないと思われたパンプスは良い感じに地下鉄に続く
階段に足をとられてしまったのだ。彼女は宙に舞うと暗い夜をさらに暗闇に包み込み、推定1600mはある身体で一気
に押し潰し、彼女の身長分の落下地点から免れた建物は飛び出した長い、長い腕や手で勢い良く破壊し、直撃を免れた
建物も彼女の体重から生み出された強い揺れに耐え切れず崩壊したものから傾いてしまった建物も数軒でたそうな。
 次に彼女は、何やら口に手を当て周りを見渡した。すると、何かを見つけたかのように四つん這いで突き進み、膝
下では彼女の太ももより下の建物は押し倒されるものもあれば、そのまま無残にもすり潰されたのだった。
 彼女が立ち止まった先には白い円形の建物であり、その建物の中では野球の試合が行われていた。しかし、試合は
彼女の登場とともに一部地域の停電により照明は全滅。さらに追い打ちを書けるかのように、強い揺れによって試合
は当然ながら中断。観客は困惑し、ドーム内に取り残されていた。
 そこに、彼女が現れたのだ。暗闇に包まれていたドーム内では天井からメキメキという何かを剥がされるかのよう
な音をだし、夜の月明かりが差し出した。
 が、しかし。その月明かりは一瞬ドームを照らしたかと思えば、天井一杯に酒臭い顔の巨大な彼女の顔が覗かせた
のだった。彼女は一体、何をするのか。ドーム内ではどよめきがはしったかと思ったその瞬間。

 ウェェェエエエエエッエ

 という声と共に勢い良く流れこむ汚物、コレをゲロと呼ぶのだろう。酸味の強そうな臭いとアルコールの臭いと共
にドーム内は一気に浸水していき、ものの数秒で液体は観客席にまで到達した。一度は収まったが、息継ぎをすると
第二波、第三波と再び液体は吐き出され、観客席を完全に飲み込むと天井まで到達し、容量を超えたドームは天井か
ら溢れ、窓ガラスは割れだし、液体は外へ外へと排水を開始を始めていた。


「はぁ・・・はぁ・・・」
 大きく息継ぎを繰り返す私。お酒を飲んで初めてやらかしてしまった。後悔は不思議となく、むしろスッキリして
きた。いや、意識のあるうちに言ってしまえば、本当の自分に戻ったときには絶対後悔しているだろう。
 でも、本当に不思議だった。立ち上がる時に色々と踏んじゃったけど、その後無理とわかりながらも道路を走って
いる時、不思議とどこまで走っていけそうな気がしたけど、私がドジなのか酔いに負けたのか転んでしまった時に
やってきたアレ。勝手に込み上がってくるのね。たまたま目に入った蓋のついた洗面容器、多分なんとかドームとか
いう野球の試合とかライブとかする建物なんだろうね。
 周りに撒き散らかすよりはいいのかと思って、急いで屋根を剥がしているときには口の中まで到達してきていて、
手で塞いでいなかったら出しながら剥がしていたんじゃないかと思う。でも、なんとか間に合った。もぅゴールして
もいいよね?って感じに無意識に、されるがままに胃に溜まっていたものを全て流し出すかのように出てきた。
 止まったかと思って大きく息を吸い、吐き出すと一緒にまた一緒に流れ出す。本当に、これやばいんじゃないの?
ってぐらい出てくるけど、逆にそれがだんだん楽しくなってくる不思議な体験。
 お陰で、今は喉はガラガラに焼けている感じがする。全てを出し切ったかのような謎の達成感。そういえば、この
中に人がいたんだよね?こんな、汚い物の塊なんかだしきっちゃって。液体だけど。
 うん。こんな自分に自問自答して、自分にツッコミを入れられるぐらい余裕なら、もう何してもいいよね?理性も
一緒に流しだしちゃったかな?

 私は立ち上がり、辺りを見渡すと一部では停電が起きているようで明かりがない。しかし、一部では予備電力でも
あるのか明かりが付いているのもちらほらと。さらに奥には停電から免れた一帯が明かりがキラキラと光まるで宝石
箱の中身みたいな感じ。私の後ろは、大きな足跡と私の倒れた傷跡しか残っておらず、足元にはさっきまで自分の
体内に滞在していたもの。
 どうしてここまで大きくなったのか?考えるだけ無駄か。今は良いに任せて好き勝手暴れて日頃のストレスを発散
するのも面白そうかもしれない。ちょっとぐらいいいよね?駄目なら止めてくれるよね?よし。
「さーって、次行くかー。コレ、ちゃんと処分してね。よろしく~」
 ズシン、ズシンとドームの隣で片足で二回地面を叩きながら忠告する。悪いのは完全に私なんだけどね。

 とりあえず、自宅のあるであろう方角に進んでいく私。一応、道路を歩いているつもりなんだけど、やっぱり幅が
せまくて、片足もはみ出してしまう。ヨロヨロ歩きに平均台を歩かせるのか!と思って今では普通に邪魔するものは
踏んづけて歩いています。靴越しだとなんとも思わない。あーぁ、ふんじゃったやー。という程度。靴を脱いで踏ん
でみたら痛いのかな?ビルとかの角とか痛そう。だって、大きくなる前だったら画鋲を踏んづけて平気な人なんてい
る?踏んだこと無いけど、あれとおんなじ感じに痛いよ?だって、棘だって指とかに刺さると痛いじゃん?
 でも、ものは試しだからやってみたいかも。どうだろ?踏んで後悔するか、踏まずに自分の考えを貫くか。地味に
悩むかも。でも、一回試しに踏んでみて駄目だと判断したら辞めればいいか!そーっとやれば、痛いというのもあま
りこないよね?よし。やってみよう。

 よろけながらも片足を上げてパンストを脱ぎ、黒のストッキングをゆっくり地面に下ろす。夜のひんやりとした
地面と小さいぷちぷちが潰れる感触が気持ちいい。膝と脛の間ぐらいの高層ビルに狙いを定めるとゆっくり足を下ろ
す。黒のストッキングは屋上に到着するなり、抵抗もなくそのまま下のフロアへとバキャバキャと音を立てながら
崩壊していき、ズンという地面についた音と共にかつてあったはずの高層ビルは何も無い平地へと姿を変えた。
「ゆっくりだと大丈夫なのかな?」
 思わず口にだした言葉。思ったっていたより全然平気だった。確認の為にパンストとストッキングで踏み比べをし
てみるものの特に問題はなさそうだ。
「ふ~ん。なるほどね。次は蹴ってみようか!」
 ちょっと楽しくなってきた。私は踏みつぶした所から2,3歩あるけば、膝下ぐらいのちょっと高めの高層ビルを
発見。近づいてみると、やっぱり3歩ぐらいで到着。建物をサッカーボールを蹴る感じにストッキングで思いっきり
ではなく、少し手加減して蹴ってみる。若干遠慮したスピードで繰り出された足は建物を下から上えと抉り出すかの
ようにフロアを突き破りながら上層部が下の方へと崩れ落ちたのであった。
 全くというほど痛いという感触はなかった。確認の為、残骸を踏み固めるともう一度さっきと同じぐらいの高さの
高層ビルをターゲットにすると、今度は思いっきり蹴ってみる。さっきより高めの座標で建物を蹴り、いい感じに足
の甲に乗った建物はどこか遠くまで飛ばされ落下していった。暗くてよく見えなかったけど、明かりの会った部分が
いきなり消えたってことはあそこらへんまで飛んでいったのかな?
「な~んだ!全然、大丈夫じゃん!」
 酔いもある中、真剣に考えていた自分が馬鹿だったようだ。酔っ払ってるんだし、思いっきりやってもいいじゃな
いかと思えてくる。履いているパンストも両手に持って、突き進んでいく。小さな建物のでこぼこしている感じが
またいい。
 膝下に近い建物には蹴りをプレゼントをする。出入り口からストッキングが侵入し、そのまま一気に屋上目がけて
急上昇させると、建物の中にあった原型をなんとか残している机や棚が宙を舞う。ストッキングが会社の中に入って
きてありとあらゆる物を押し出していくのを想像すると楽しくて仕方がない。それを自分でやっているのだ。中に誰
かカメラで録画してよ!って言いたくてもそれは無理だよね。
 
 街中で軽い運動をしているみたいで体が熱い。スーツのボタンを外そうかと思ったら最近できた超弩級のビルがあ
るではないか。近づいてみると、確かに今まで相手にしてきた建物なんか目じゃないぐらい大きい。でも、私の股下
ぐらいの高させ全然私の方が大きい。全長700mのビルも私にとってはどうってことなく跨げるのだ。倒さないように
身長にしゃがんでみても私の方がやっぱり頭1個ぐらい大きい。
 この街で一番高い建物の隣でしゃがんでも大きい女の子がいるんだよ?誰かー!記念写真とってよぉー!と辺りを
見渡してもフラッシュの一発も飛んでこない。これでは、面白くない。
「イェーイ!会社の皆-!みてるぅ~?」
 両手にパンストを落とさないように持ちながらどこにカメラがあるかもわからず腕をつきだしてダブルピースをし
てみる。とても、さっき戻したとは思えないぐらいどんどん元気になっていくのがわかる。もう一軒飲みに行きま
しょうと誘われれば行けそうな気がする。あ、でも私はこんなに大きいんだから店の食べ物全部食べちゃうね。なく
なったら店員さん・・・いや、店ごと食べちゃえそう。
 まぁ、そんなことはどうでもいいや。

 私は立ち上がると、700mある超高層ビルを跨いでみる。
「私が座ったらどうなると思う?」
 と、聞くまででもないことをわざとらしく聞いてみる。まず、お尻が屋上からはみ出すんだしてるんだもんね。
逃げる猶予も与えずにゆっくり腰を降ろし座ってみる。けど、やっぱりわかっていたよ。何の抵抗もなく私の体重を
支えるどころか勢いを増しながらグイグイ下へと落ちて行く感じ。
 そして、最後はドスーンという重々しい音が辺りに響き渡り周りの建物の窓が割れたり、傾いたりと影響を与える。
「ふぅ。ま、がんばったほうじゃない?」
 と、言い残し立ち上がりスカートを払う。さて、次はどこへ行ってみようかな?





「ゐぇ?」
 パチっと目が覚めた。ボーっとする視界とコーヒーカップの中でぐるぐる回っているかのような世界。見覚えのあ
る天井。ちょっと腕を伸ばせば届くんじゃないかと思われう携帯電話は朝のアラームが鳴っている。
「あ、あれ?夢・・・だったの?」
 口は喋れる。上半身を起こそうとした時、それはそれは鉛のように重い体で動くのが非常に辛い。目が回る。気持
ち悪い。横になってればいつも通りな感じなのに。
 携帯電話はいつの間にか、アラームから会社の人から電話が着ていた。相手は村田さんだ。
「もしもし・・・」
『もしもし?吉見くん?大丈夫かい?』
「あーぃ。だいじょぶですよ?ただ・・・」
『ただ?』
「私、昨晩巨大化してませんよね?記憶がないんです」
 一瞬の沈黙。夢じゃなかったら私はどうなるのだろうか?変に長く感じる沈黙。どうでもいいやという気分もあれ
ば、真実を知りたいところもある。
『ぶっ、はははは。きょ、巨大化~?相当飲んだみたいだね。おかしなことを急に言わないでくれ。はははは!』
 電話越しに大爆笑の村田さん。村田さんってこんなに笑えるんだ。
「そ、そんなにわら・・・あー、頭痛い・・・」
『あ?あぁ。ごめんごめん。結構飲んでたからさ。心配の電話だよ。この休日中にしっかり体調をよくしてくれ』
「はーい」
『あと、家まで送ってくれた佐々木くんにも後で電話してやれよ?一番心配してたからな?』
「はーい」
『じゃ、そゆことで』
 プツン。プー、プー、プーっという音だけが携帯電話から聞こえる。
 とりあえず、佐々木さんに電話をしないといけないようだ。佐々木さんは本当に優しい人だ。危なくなったり面倒
ごとは全部彼に任せればなんとかなるって会社の人の間でも有名だ。それだけ面倒見がいい人なんだね。
 プップップップップ。プルルルル、ガチャ
『もしもし、佐々木です?』
「あ、佐々木さんですか?吉見です。昨日はどうもご迷惑をおかけしました」
『いやいや、なんてことないよ。それより、吉見くんは・・・大丈夫?』
「大丈夫じゃないですよー」
『えぇ!?』
「あのー、私、記憶がないんでちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
『あ、うん。大丈夫だよ?』
「えーっとですね。私、昨日の夜、巨大化しましたか?」

 また同じ事を聞いて見ることにしたが、結果はおんなじだった。
 この日は、ぐるぐる回る世界の中で、一日中寝てましたとさ。

 めでたし、めでたし。