私は、近所の本屋で立ち読みをしている。主に風景というジャンルに的を絞って本を手当たり次第
手に取って軽く見てはすぐ元の場所に戻していた。自然の写真も見たりはするが、主に廃墟や都会の
写真が多く載せてあるものを念入りに見て、それなりに時間を潰したら私は家に帰った。

 なぜ、風景の写真をみるのか?

 それは、ある日みた夢がキッカケである。私は、日曜日の朝にやっていた戦隊ものを何となく見ていた。
正義の味方が悪者を数で圧倒し、それに逆上した悪者は巨大化。その後、悪者が押し勝ってしまうのかと
思いきや、正義の味方の方もボタン一つで楽々とどうやってそんなものを収納していたんだというものを
次々と呼び寄せた。山が割れたり、海からザパ―っと割れて正義の味方が乗る乗り物が次々と登場してき
ては、色々とすごかった。
 その後は適度にリアルファイトを繰り広げ、尺の都合が怪しくなってきた所で大技でド派手なビームを
発射して、悪者を爆殺。ソレを見て喜ぶ正義の味方達。なんか、すごかった。

 で、そんなものを何年ぶりに見たか考えては、思い出せず。特にやることもない私は自室で二度寝を
したら、私は夢の中で巨人になっていた。本当のたまたまだったのだろうが、テレビで見たような世界が
夢の中で起きたのだ。そして、目を覚ませば、なんかすごかった。という一言の感想。
 でも、なんか不思議な感覚でくっきりと頭の中に焼き付いてしまった。たまたま巨人になった夢を見た
だけなのに。でも、次は巨人になる夢なんてみないだろうと思い、再び眠りについた私は、また巨人に
なった夢をみた。
 
 それから、色々考えてこんな夢をみたいとイメージみたいなことをして寝ると、夢の中でそのイメージ
の夢を見るようになった。当然、百発百中というわけではないが、何故か私が巨人になる夢は百発百中。
意識しなくてもみる回数が断然と増えてしまったのだ。

 だから、私は開き直って更にリアルな世界を求めてしまった。本屋にいって、風景の写真がたくさん
載っている雑誌を手に立ち読みをした。
 そして、今私はベッドの上でいつでも寝れる準備が整っている。このながったるい説明をしている間に
私は家に付き、お風呂を済まし、夕飯も食べた。後は寝るだけである。時刻はまもなく9時になる所。
小学生もびっくりするぐらい早い時間帯に私は眠りにつくことにした。


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 そして、私が目覚めればそこにはミニチュアな世界が広がっていた。

 足元には小さな小さな住宅街。ちょっと、先には賑やかな街並みが見える。この夢の世界の私の服装はシャツ
一枚。もちろんパンツは履いています。すっごくラフな格好で寝ていました。私の夢の中の服装は、どうやら
私が寝ていた時の服装でそのまま夢の中に入り込むことができるようです。なので、パジャマでの出撃が
基本的には多く、極希に制服で寝てみたり。
 でも、最近暑くなってきたので太ももぐらいまで長いシャツで寝てみました。

 さて、本題です。

 今までは自身が巨人という立場で圧倒されて何もしないまま終わってしまう夢ばかりが多かったのですが、
今回は初めて行動に出してみたいと想います。本日の大きさ的に普段より1000倍ぐらい大きくなっている思う。
 私はまず、右足をあげて、適当な住宅地に足を振り下ろす。何の抵抗もなく私の素足にまとめてお家が数十件
足裏の下敷きに更に指先をググっと地面を握り締めるかのように力を入れれば、指先はアスファルトを軽々と
えぐり取り、茶色の地面が顔を表す。そのままゆっくりと足をあげれば、かつては家だった残骸を巻き落とし
ながら私の大きな足跡が姿を現した。
 たった一撃でこの威力。
 なかなかおもしろいものである。
 感覚がないのは夢の中だから仕方がないと思うか、私が大きすぎて何も感じないと考えた方が私は無敵の巨人
になったような感じがして実に清々しいものである。
 さて、長々と片足を上げているのも疲れるので再び足をさっきとは違う所に足を落とし、肩幅ぐらい足が開いた
状態からゆっくりと膝を地面に落とす。

 ズズゥン

 という妄想の音を奏でながら膝立ちの姿から今度は両手を地面につければ、私は四つん這いの姿をとる。
立ち上がっている時よりは小さく見えず、見やすくはなったが、私が大きすぎるのに問題は何一つない。私は右手で
デコピンを発射するポーズを取ると適当な家をターゲットに狙いを定める。
 そして、勢い良く親指と中指を弾くと、勢い良く人差し指は地面を抉りながら家に直撃。当然、家は瞬時に木っ端
微塵となり、弾け飛んだ残骸は近隣の家に降り注ぎ、他の家に傷跡を残したのであった。
 ふふっ、すっごくもろい。
 今度は左手で適当な部分を握りとってみる。親指、人差し指、中指、薬指、小指という五本の鉄槌を言えという家
に落とし第一関節ぐらいまで地面に食い込ませると、今度はグッと握りしめてみる。
 メキメキバキバキと電線を引きちぎり、家で家を押し潰し、やがて私の指にすり潰される光景をみていると、パー
だった手の平はいつの間にかグーへと姿を変えていた。残ったのは五本の指で抉り取った地面と手の平いっぱいの
土と小人さん家だったものが混ざっているナニカであり、手を開けば当然そこにできるのは瓦礫の山。

 あっははは。

 貧弱すぎる。
 今の私ならテレビに出てきた正義の味方ですら倒すことが出来ないだろう。四つん這いだった姿勢から一気に
うつ伏せになれば、私の巨体に押し潰される住宅地。衝撃で砂埃が舞い上がり、たぶん凄く揺れたんだと思う。
そして、私の目の前にはまだ被害がそれほどでていない住宅地が見える。
 私は、すぅっと鼻で息を吸い込み、頬を若干膨らませ口先を尖らせるなり、一気に吸い込んだ空気を吐き出して
みせれば家という家は意図も簡単に、まるで誇りが宙を舞うかのように軽々と吹き飛んでいった。
 これらは本気で大暴れてしているわけではなく、イタズラ程度に遊んでみた行為。圧倒的である。

 私が大きすぎるってのもあるかもしれない。が、この大きさの私とテレビの世界の怪獣や変形合体できるロボットは
私の手の平よりも小さいだろう。ま、せめて握りしめて頭の一個でてくるぐらい大きなものを持ってこない限り、
遊び相手には不向きであろう。

 なーんて、偉そうなことを言ってみるが、所詮はウソの世界。
 何をしようが構わないのだ。

 この夢が覚めるまでは。