「レイシフト先でマスターが小さくなってしまった。直すのに少しかかるため、危なくないように誰かが保護してくれたまえ」

 ダヴィンチちゃんからのその言葉を聞いて、サーヴァントたちはこぞってマスターである俺を心配して見に来てくれた。今や手のひらサイズとなった俺を、みんなは興味深そうに見たあとに、揃って保護役に立候補したため、日替わりでくじで当たりだった順に保護されることになった。

 油断して小さくさせられて、こうしてみんなへと迷惑をかけているという状況は、俺にとって不甲斐ない、みっともない事だった。気分が落ち込み、机の上でうなだれていると、くじに当たったらしい巨大な沖田さんが元気に話しかけてくる。

「そんな暗い顔してないで!遊んだら気も紛れると思いますよ!沖田さんが一緒に遊んであげます!」

 明るい沖田さんに当たったのは、運が良かったのかもしれない。このまま落ち込んでいたって、もう過去の話で何の解決にもならない。俺は気を取り直して、サーヴァントである沖田さんとの絆を深めようと、この大きさでも出来る遊びはあるかと聞いた。

「かくれんぼなんてどうですか?小さいからこの狭い部屋の中でも隠れられると思います!」

 なるほど良い案かもしれない。俺はそのまま沖田さんに了承の意を示すと、笑顔で沖田さんは答えた。

「じゃあさっそく始めましょう!負けたら罰ゲームですからね!」
 
 今となっては広大になってしまった自室の真ん中の、床の上にポツンと立たされ、俺はどこへ隠れようかときょろきょろと辺りを見回した。ふと、俺はゴミ箱に目をつけた。あまりフチが高くないあのゴミ箱の中に隠れれば、見つかることはないだろう。俺はゴミ箱に走り寄ってよじ登りはじめた。それでもなかなかの高度だったが登り切り、慎重な動作でゴミ箱の中へと落ちていく。ティッシュなどで埋まっているそれに自分も埋もれ、これならば見つからないだろうと息を潜める。

「どこですか〜?」

 どすんどすんと地響きのような足音を立てながら、沖田さんはマスター室を歩き回っている。少し埃っぽく、ティッシュまみれのゴミ箱の中で、息をひそめたままじっと待っていた。

「あちゃ〜ゴミ箱倒しちゃいました…ってあれ?マスター!こんなとこに隠れてたんですか!」

 とてつもない衝撃と共に、一気に中のゴミと一緒になだれ落ちていく。ごろごろと床を転がった後、ゴミと共にこぼれ出た俺を見つけて、沖田さんが叱るように言う。

「ダメじゃないですか、ゴミ箱なんかに隠れたら!もう!埃まみれになっちゃって!」

 沖田さんは俺をつまみ上げると、口の前まで持っていき、息を吹きかけてくる。沖田さんからすれば、ただ埃を落とすためだけで、他に何の意図も無かっただろうその吐息は、台風のように強く、女性ならではの甘い口臭がただよってきて、少し興奮してしまった。だが、小さい俺のそんな葛藤などは、巨人である沖田さんには気付かれなかった。

「これでよし!では…」

 俺を床に置いた沖田さんは腰に手をやって堂々と言った。

「沖田さん大勝利〜!えへへ、罰ゲームですね!」

 そう言った沖田さんは俺の前にどすんと座った。その衝撃で吹っ飛びそうになるが何とか耐える。あぐらをかいた沖田さんは、トレンカを脱いで素足になった足裏をドンとマスターの両脇に置いた。

「どーん、足裏怪獣ですよ〜!」

 先ほどまでのレイシフトでずっと草履とトレンカを履いて動き回っていた沖田さんの足裏は、汗まみれで蒸れて近づくたびに鼻を塞ぎたくなるような臭いが立ち込めてくる。空調の効いているマスター室で、体温がこもり汗の湿気がまとわりついている沖田さんの足は、小さいマスターからだとはっきり見えるくらいの蒸気が立っているほどだった。あんなものに挟まれたらたまらない、俺はとりあえず沖田さんの居る方向とは真逆に動き出したが、いくら走っても足裏はずっと真横についている。指くらいの大きさしかない小人の歩幅では、動くまでもなく足を少し伸ばすだけで沖田さんは追いついてしまう。
 沖田さんの方を向くと、両足の裏をこちらに向けているため股を開いてどこか扇情的なポーズだった。だが顔を見上げて見れば、わざと一気に捕まえずに、にやにやとこちらの逃げる姿を見て笑いながらじわじわとなぶるように追いつめていた。
 
 「頑張って逃げてくださいね〜、怪獣に食べられちゃいますよー?」

 沖田さんの両足が、二方向からゆっくりと近づいてくる。ついに、一気に動いた沖田さんの足はマスター捉えてトロフィーのように高々と掲げた。足指に囚われてそのまま持ち上げられた俺は、急上昇と足の臭い、それに熱気にグロッキーになっている。

「ざんねん!マスターは怪獣に食べられちゃいました!」

 ふざけた口調でそう言いながら沖田さんは俺をもみくちゃにし始めた。ただいつものようにじゃれているつもりなのだろうが、臭いがひどい。目は臭気により、まるで玉ねぎを切った時かのようにぽろぽろとしみて涙がこぼれる。吸い込むたびに沖田さんの汗の臭いが嫌でも鼻に入り込んでくる。その張本人はそんなことにも気づかず、満面の笑みでその臭いを擦り込むかのように足指で俺を揉むように挟んで遊んでいる。
 俺はそのあまりの臭いのキツさと、気付いていない能天気さに少し腹が立ち、思わず口に出してしまう。

「もう、沖田さん…ちょっと足臭うよ!せめて洗ってから…」

 言った言葉にすぐ後悔した。ついうっかり言ってしまったが、気を損ねたら困るのは自分だった。にやにやと笑っていた顔が固まり、笑っているのは変わらないが、目だけが笑っていない。不穏な空気を出しながら巨大な沖田さんは地面にぽとりと足裏の牢獄から落とされたマスターに近づいていった。

「はぁ!?乙女に向かってひどすぎないです!?ふーんだ、もう沖田さん怒っちゃいました、手加減してあげません」

 そのまま床に仰向けに倒れている俺に、沖田さんは足を踏み下ろした。潰れてしまうほどに力は込められていないがそれでも苦しい。汗の臭いは足裏でこもり、さっきよりもひどくなっている。顔も体も沖田さんの汗まみれになり咳き込んでいると、沖田さんは足で踏んだままこう言った。

「そんなにくさいって言うならマスターが舐めて綺麗にしてくださいよ!舐めるまでそこから出しませんから!」

 そんなことを言ってくる。正直沖田さんの足とはいえ、先程まで運動していて、汗にまみれて臭くなっている足を、それもこんな小さい体で舐めるのには抵抗しかなかった。躊躇していると、催促するかのように足に力が込められ、その多大な圧力にうめき声を上げる。どうやら本当に怒っているようだ。このサイズ差で、まだ今日は続くというのにこのまま怒らせるわけにもいかず、意を決して俺は沖田さんの足に舌を這わせる。しょっぱい味がするそれは、舐めるたびにビクついて、人間の足だということを再確認させられる。何ともみじめな思いをしながら舐め続ければ、急に足がフッと浮いた。

「や、やっぱりちょっと恥ずかしいですね……でも、なんか、ちっちゃなマスターに足舐められてると背徳感というか…ゾクゾクします!」 

 どうやら満足してくれたようだ。沖田さんの足汗でびちゃびちゃになった体を持ち上げられ、鼻ですんすんと匂いを嗅がれる。

「うっ、確かにちょっと臭いますね、お風呂入りましょ、体洗ってあげます」
 
 そう言いながら俺を持ったままマスター室に備え付けてあるシャワー室に入っていった。器用に片手で着物を脱ぎ始め、全裸になってしまう。慌てて目をそらすが、沖田さんはあまり照れた様子が無かった。小さすぎて男と思われていないのだろうか。

「さっきはちょっとやりすぎちゃったお詫びに…私が体を洗ってあげますね」

 そう言った沖田さんはボディソープを手にやると、そのまま俺の体を両の手のひらで包み込み、全身を撫でるように揉み洗いし始めた。
 ぬるぬるとしたシャンプーで、すべすべの沖田さんの手で洗われて、最初はただ心地良かっただけだった。しかし、全身くまなく洗う沖田さんの手は、俺の股の間もしっかりと手で擦っていく。ただでさえ全裸の沖田さんにたじたじだったのに、それに加えてローションのようなシャンプーで、手コキのように洗われたら、もう我慢は出来なかった。沖田さんは、ただ親切に、善意で俺の体を洗ってくれているというのに、俺は気付かれることなく股間を大きくしている。それがみっともなくて、一回洗うのをやめてほしいと叫ぼうとしても、泡が口に入ってまともに口を開くことさえ出来ない。そのまま何度もこすられ、揉まれ、すりこまれ、俺は射精してしまった。だが、泡と共に白い液体はまぎれていって、気付かれることはない。気付かれなくて安心なはずなのに、その事実もまた小さくされたことによる屈辱感に一役買っていた。
 気付かれずに、完全に無意識でイかされた事が惨めだった。俺が射精しても、沖田さんには泡で顔も見えていないだろう。にこにこと無邪気な笑顔で笑いながら、また俺の股間を揉み洗いしている。もう俺は快感でショート寸前で頭の中が真っ白になる。イったばかりなのにまた大きくなり、俺は息を荒げて抵抗するが、抵抗を抵抗とすら感じられていなかった。涙目になりながら快楽に溺れていると、ふと沖田さんの手が止まる。

「え?もしかして…」

 俺の状況にようやく気づいてくれたようで、ようやく揉み洗いをやめて、沖田さんは俺をまじまじと見つめている。

「あ、あれですよね、マスターも男の子ですから!わかってますよ!私、マスターよりお姉さんですから!」

 沖田さんは顔を真っ赤にしながら、食い入るように俺の股間を見つめ続ける。

「それって苦しいんですよね、わ、私がしょ、処理してあげますね!」

 勘違いだ、もう何度もイったあとなんだと叫ぼうとしても、もう遅かった。沖田さんは顔を真っ赤にしたまま俺を胸の谷間へと落とす。沖田さんの控えめな胸でも、今の俺にとっては体全てを包み込んでもなお余るほどの大きさになっていた。さっきまで散々全身をシャンプーまみれにされていたため、ローションのようになっている。そんな状態で柔らかくて、美人なお姉さんである沖田さんの胸に挟まれ、もみくちゃにされるのは、もうとてつもない快感だった。何度も射精しすぎで、もうちんこは痛くて仕方がないのに、また胸にこすれて、大きくなって、沖田さんの胸へと吐き出してしまう。

「気持ちいいですか…?あは、とろんとした顔、かわいいですよ、マスター…」

 胸で挟むのをやめ、間を開けて上から観察される。その顔はまるで慈愛に満ちた聖母のようで、快楽責めにされているというのに安心感のようなものがあった。辛抱たまらなくなり沖田さんの胸へと抱きつくと、それを見た沖田さんも感極まったように胸ごと抱き寄せた。巨大な胸に、相当な力で両側から押し付けられたため苦しかったが、
何故か少しだけ心地良かった。

「じゃあそろそろ寝ましょうか、危ないから私と一緒に寝ましょうね」

 風呂から上がってしばらくしてから、沖田さんはそう言って俺を枕の上へと落とした。その横にぼふんと沖田さんの顔が落ちてくる。びっくりしてのけぞってしまい、超至近距離からそれを見ていた沖田さんはけらけらとその様を見て笑った。

「あはは、ごめんなさい、危なかったですね」

 謝っているのに謝っている気が無さそうな謝罪を受けながら、枕の上へと寝転んだ。沖田さんはそれを見たあと、布団を枕まで届くように深く被り、寝始めた。

「沖田さん!寝返りはうたないでね!潰れちゃうから!」

 そう叫んだが寝付きのいい沖田さんはすでにすうすうと寝息を立ててしまっている。沖田さんとすぐ近くで、布団というドームに囲まれて、沖田さんの甘い体臭が密封されて俺に届いた。その匂いを嗅ぐたびに、さっきまでの快楽責めを思い出し、ムラムラが止まらなくなる。思春期の男にとっては辛すぎる、濃すぎるフェロモンに侵され、クラクラしていると、横にあった沖田さんの顔がゆっくりとこちらに倒れ込んできた。

「だから言ったのに!」

 そのまま沖田さんの顔はうつ伏せになるように枕へと顔を押し付ける。俺はそれに巻き込まれ、枕と沖田さんの唇との間に完全に挟み込まれてしまった。寝ぼけているのか沖田さんは枕を抱え込み、枕ごと俺を押しつけるようにキスをしてきた。ぷにぷにの沖田さんの唇に押さえつけられ、沖田さんの匂いでおかしくなっていたところに全身キスをされれば、我慢できるわけもなく、また射精してしまう。また風呂場での出来事と同じように、気付かれていないどころか寝てしまっているため、何度も何度もキスをされた。唇の間から舌が出て、にちゃ、ぬちゅ、と水音を鳴らしながら俺を舐める。甘い口臭とちょっと臭い唾の臭いに、刷り込まれるようにそれらを一度に喰らい、おかしくなりそうだった。
 結局夜明けまで何度イッたか分からない。眠ることも許されず、寝ている沖田さんに性的に蹂躙され続けた。それも口だけで。起きた沖田さんは寝ぼけ眼をこすりながら、そんなことをしていたという自覚もなく、笑顔でおはようございますと言ってくる。

 もう何も言う気力が無く、うなだれているとノックの音が聞こえてきた。どうやら今日の俺の世話係に決まったサーヴァントが、部屋を訪ねて来たようだ…