ジャンヌが出て行ったあと、俺はドキドキと緊張で胸を押さえながら今日のサーヴァントを待った。一昨日昨日と散々な目に遭ってきたからか、もし次にまた過激なサーヴァントが選ばれたら、もう体が保たないだろうと思っていた。小さくノックの音がする。どうぞ、と声をかければゆっくりとそのサーヴァントは部屋へと入ってきた。

「ご主人、今日の世話係に任命された紅閻魔でち、今日はよろしくでち」

 ジャンヌが出ていき、入れ替わるように入ってきたのは紅閻魔だった。そのかわいらしい姿を見た瞬間、俺は安堵のため息を吐きながら崩れ落ちた。これで清姫や頼光だったりしたら、もう命を諦めていた。あまりのオーバーリアクションに、紅閻魔は慌てて俺へと駆け寄って、俺のことを両手で包む。

「ど、どうしたでちか!?何かあったんでちか!?」

 近くに来た紅閻魔を見れば、普段は俺の腰あたりまでしかない身長だったのが、さすがに昨日までの大人と比べれば小さいが、それでも俺より遥かに巨大な姿になんだか違和感が湧いてきた。自分よりあんなに小さかったはずの紅閻魔に、心配されて、両手で包まれるのは、優しげに微笑む紅閻魔の顔も含め、とても安心した。
 俺は紅閻魔に、昨日どのような目に遭っていたのかを話し、精神が疲労していたから今日の担当が紅閻魔で良かったと伝えた。

「そ、そんなことがあったんでちね……そう言ってくれると嬉しいでち」
 
 紅閻魔は小さい俺を手のひらに乗せて、決心した様子で宣言する。

「今日は小さいご主人が快適に過ごせるようお世話するでち!あちきはいじめたりしまちぇんので安心するといいでち!」

 そう言いながら手のひらに乗っている俺を、優しく包み込んだ。柔らかい肌にほのかに香る甘い匂い、それと子供特有の温かい体温に包まれて、疲れていた体と精神がゆっくりと癒やされていくのを感じた。俺は、紅閻魔に母性を感じてギュッと指へ縋りついた。

「んきゅっ」

 紅閻魔はそれを見て、少し顔を赤くしていたが、すぐにふるふると顔を振って澄ました表情に戻っていた。紅閻魔に愛おしげな表情で、自分より巨大な手で背中を撫でられる。幼い頃に戻ったような感覚だった。

「あ、朝ごはんが出来てまちゅから食事にしまちょう!」

 どこか慌てた様子で食堂へと朝ごはんを取りに行った紅閻魔を見ながら、俺はなぜかむずむずとした気持ちになっていた。だが、平和な朝は小さくなってからまだ2日とはいえ感覚的には久しぶりだったため、あまり気にせずに戻ってきた紅閻魔と共に朝食を摂った。

 朝食を食べたあとは、ゆっくりとした時間を過ごす。この小さくなっている期間は、常に忙しかったマスターへの良い休暇だとダヴィンチちゃんは言っていた。ベッドの上で、隣で微笑む紅閻魔を見ながら、ようやくしっかりと休めると安堵した。
 ふと、紅閻魔が立ち上がり、飲み物を取りに移動した。その途中で俺に近づいた紅閻魔を見て、俺は昨日までの記憶が蘇りみっともなく悲鳴をあげてしまう。

「ひっ!」

「あっ、ごめんでちご主人、怖かったでちか?」

 昨日までの出来事により、巨大な女性が軽くトラウマになっていた俺は、紅閻魔が近づくだけで少し怯えるほどになっていた。紅閻魔はそんな俺を見て、自分のお腹へと俺を乗せて手で包んだ。

「安心していいでち、あちきはご主人をいじめたりなんてしまちぇんからね…」

 大きくて柔らかい紅閻魔のお腹にもたれかかった状態で、母親が子供にやるように、ぽん、ぽん、と俺の体より大きい手で優しく叩かれる。少しの恥ずかしさと、それを凌駕する安堵感に包まれながら、恐怖は消え安らかな気持ちになっていく。
 だが、優しくされて嬉しいというのに、どこか物足りないような、むずむずと痒いような感触が残る。それが何なのかは、紅閻魔によってすぐに気付かされた。

「うぐっ」

 ほんの少しだけ、紅閻魔の手の力が強くなり、俺は柔らかいお腹に押しつけられた。

「おっと、強くしすぎたでちか?力加減が難しいでちね…」

 申し訳なさそうにしている紅閻魔を見て、俺はようやく先程から感じていた衝動の正体を知った。怖いと思っていた巨大な女性に惹かれているのだ。今みたいに、なんとなくの動作で無意識に、ほんの少し力がこもってしまったというだけで、一切抵抗出来ず抑え込まれる感覚に興奮していた。
 そういう願望が元からあって、昨日までで開花させられたのか、それともそういう趣味に無理やりされてしまったのかは分からないが、もう自覚してしまうとダメだった。紅閻魔の挙動一つ一つに反応してしまい、いじめられたいという衝動が湧いてきてしまう。俺がもじもじとそんなことを考えていれば、様子がおかしい俺を心配した紅閻魔が声をかけてくる。

「どうしたんでちか?ご主人、そわそわして」

 俺は意を決して紅閻魔へと頼んだ。優しい紅閻魔にこんなお願いをするのは気がひけたが、優しい紅閻魔だからこそ、俺のお願いを聞いてくれると思った。

「紅閻魔…俺のことを踏んでほしいんだ」

「ちゅっ!?ご、ご主人、そういう趣味だったでちか!?……ご主人が望むなら…やぶさかではないでちが…」

 床に小さな俺を置いたあと、緊張と羞恥でもじもじとしながら、紅閻魔は仰向けに寝ている俺の体を跨いで立った。パンツが見えているが全く気にしていない。そんなところも、自分の矮小さを感じて興奮してしまう。

「い、いくでちよ…」

 顔を羞恥で赤くしながら、紅閻魔は遠慮がちに、ゆっくりと俺の体を踏みつけた。全く力を込めている様子はなく、俺を慮りながら踏んでいるにも関わらず、紅閻魔の足のあまりの質量に声も出ないほどの圧力を感じる。紅閻魔の様子と、今自分が受けている圧力とのギャップにも、興奮してしまう。柔らかくて、ほんのり汗の臭いがする足にすがりつき、陰茎も体ごと押し潰され、声も出ないほどの快感に、ただただ紅閻魔の足に抱きついて堪えることしか出来なかった。

「こ、これでいいんでちか…?くさくないでち?」

 そう言いながら俺の上から足を退ける。俺はもう返事も出来ないほどに快楽に溺れて、浅い呼吸を繰り返していた。顔は真っ赤に染まり目は虚ろで、だらしなく垂れている。そんな俺の蕩けた顔を見た紅閻魔は、少し嬉しそうな顔をした。

「んちゅっ、き、気持ちよくなれたようで何よりでち」

 紅閻魔の手のひらに乗せられて、間近で顔を見られる。さっきまでとは違い、どこか興奮した様子の紅閻魔が気になった。

「ご主人……他にして欲しいことはありまちぇんか?」

 紅閻魔は、自分の足でそんな風になるまで気持ちよくなっているご主人を見て、どこか熱い感情が胸の奥から芽生えてきたのを感じていた。
 俺は、ジャンヌに昨日されたことを思い出しながら、羞恥心を捨てて頼んだ。

「あの…腋でいじめてほしいです…」

 あまりに巨大で、優しい女神のような紅閻魔に、自然と敬語になってしまう。小さくなるまではこちらの方が紅閻魔のことを小さくてかわいいサーヴァントとして扱っていたのに、今ではそれは逆転し、俺の方が小さくてかわいい、そして何よりかよわい人間として扱われていた。優しい紅閻魔の上からの奉仕は、肉体的な快楽だけでなく、精神的な屈辱も含めぞくぞくとした快感だった。 
 紅閻魔はそれを聞いて、また少し恥ずかしそうな顔をして俺を腋へと近づけた。ジャンヌのように閉じ込めるのではなく。開いた腋に俺の股間を擦り付けるように動かした。体はたった指2本で掴まれているというのに動ける気がしなかった。自分でコントロールすることも出来ない自慰行為は、完全に快感の自由すらも奪われたような、紅閻魔に支配されたような気分だった。紅閻魔は擦り付ける速度を早める。柔らかい腋の肉に、隠しきれない汗の臭いに包まれて、優しい紅閻魔にこんなことを頼んでいるという背徳感も混ざって、数分とたたずに射精してしまう。それを見た紅閻魔は、子供に似合わぬ妖艶な笑みをしながら言う。

「へんたいさんでちね…」
 
 耳元で罵倒を囁かれ、また大きくしてしまう。それを見た紅閻魔はまた喜びながら俺の小さい小さいちんこを腋でしごき始める。勢いが増したそれに、もう声も出せずにただ身を捩り快楽に堪える。紅閻魔は俺を気遣って、優しくしているというのに、それでも俺では受け止めきれないほどのサイズの差があった。
 それを繰り返しているうちに、俺はもう紅閻魔の体に自分から縋り、ぺろりと舐めた。俺の爪より小さな舌でも感触はあったようで、それにピクリと震えた紅閻魔は俺のことをつまみ上げた。
 
「……」

 俺のことをつまみ上げた紅閻魔はそのまま俺の体を突っ込むように唇へ押し込んだ。かわいらしく小さいはずの紅閻魔の唇は、俺の体を優に飲み込み、何度も何度もキスをする。さっきまでの気を遣ってくれていた責めとはまるで違うキス責めに俺の頭は混乱した。
 鳥の性感帯は、くちばしだと聞いたことがある。この尋常ではない紅閻魔の様子はそれなのではないか、そう考えていると紅閻魔は思考を中断させるかのように、先ほどまでの触れるようなキスではなく、むさぼるように俺の体をついばんだ。紅閻魔の甘いとろとろした唾液にまみれ、呼吸も充分にできず、ただただ紅閻魔快楽のための道具として使われる。抵抗なんて出来やしない。だが、するつもりもないくらい、俺にとっても快感だった。
 俺が酸欠でくらくらしながら紅閻魔の唇を受け止めていれば、ふとピタリとその動きが止まる。紅閻魔は唇から俺を離して、慌てた様子で言った。

「ご、ごめんでち!ご主人、我を失っていたでち…!」

 謝りながらキス責めをやめた紅閻魔の手のひらで、俺はずっと頭の中に紅閻魔の柔らかくみずみずしい唇の感覚が巡っていた。謝りながら、正気に戻った様子の紅閻魔の顔が、なぜか発情している時と変わらず真っ赤だったのが気になった。

 もう寝ましょうかという紅閻魔の提案を聞き、二人でベッドの上に寝転がる。雀の紅閻魔は寝付きが良く、すぐにすやすやと眠り始めた。俺は横で大きな寝息と紅閻魔の鼓動を聞きながら、こっそりと紅閻魔の足に引き寄せられるように歩き始めた。こんなことするのは最低だと分かっていたが、我慢出来なくなった俺は衝動に任せて紅閻魔のすべすべとした足に股間を擦りつける。だが、そんなことをしてバレないはずがなかった。

「ご主人…?女の子が寝ている間に性の捌け口に使うだなんて、許されないことでちよ?」

 すぐに目覚めた紅閻魔は咎めるような口調でそう言いながら俺のことをつまみ上げた。だが、様子がおかしかった。怒っているというより、顔がキスをしていた時と同じで発情しているかのような顔だった。

「自分一人だけ気持ちよくなるなんてずるいでち……あんなに我慢したのに、ご主人のせいでちからね」

 枷を解いてしまったのは俺だったようだ。ずっと顔を真っ赤にしながら、キスだけで済ませていた紅閻魔はもう宣言通り我慢の限界だったのだろう、常軌を逸した様子で俺をぐいっと引き寄せた。

「んっ、ちっちゃいご主人を、こんな、ごめんなさいでち…!でも、気持ち良くてっ、止まらないんでち…!」

 くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、紅閻魔は俺を秘所へと出し入れする。俺の体が紅閻魔の睦に当たるたび、生臭い液体は溢れ紅閻魔の巨大な体は跳ねるように震えた。苦しかったが、紅閻魔へお礼出来ていると思ったら悪い気はしなかった。
 だが、紅閻魔の俺を使っての行為はは収まることを知らなかった。元雀だからだろうか。そのために人間とはまるで性欲が違うのか、紅閻魔の行為は段々とエスカレートしていった。紅閻魔は俺を出し入れするのをやめて、ベッドの上に座っている俺の前に膝立ちする。そのまま女の子座りをするように、自分の秘所で俺のことを押しつぶした。一度だけではなく何度も腰を浮かせて俺を股間で押し潰す紅閻魔の顔はもう正気ではなく、ただひたすら快楽を求めていた。あまりの勢いに、俺は体が潰れるかのような錯覚に陥った頃、達したのか俺の体の上で潮を吹く。

 紅閻魔の何度目かの絶頂ののち、ずるりと中から出した俺の体を紅閻魔はぺろりと舐める。

「もし体が戻っても…そういう気持ちになったらあちきに言ってくださいね…?」