「『璃月商典』第27章第6条第1項には、商店に損害を加えた者を損害の多寡によって刑罰を決めるとある。君たちは自分では払えないほどの損害を与えたな?ゆえに縮小刑となる」

 数人の男たちが、震えながら立っている。目の前に居るのは煙緋、璃月一の法律家である。普段の彼女に、男たちは怯えることなどない。むしろ可憐な容姿の煙緋に惹かれているくらいだった。だが、煙緋の口から出た縮小刑、これにより男たちの体は小指以下のサイズにまで小さくなってしまっていた。
 男たちは皆商売で失敗し、自分の所属していた商会に大損害を与えた者たちだった。損害を与えてなお、その損害を埋めることが出来なかった者、そしてその中でも商会に利用価値が無いと判断された者は縮小刑となる。要するに捨てられてしまった者たちだった。

「そのように小さくなり、人権が剥奪された時点で刑罰は終わりだ。あとは私の預かりになる。煮ようが焼こうが私の匙加減次第ということだ。だが基本的に甘やかすつもりはないぞ?しっかりと反省させてやる」

 建物より巨大な煙緋に凄まれ、戦々恐々といったふうにおじける男たち。麗しい容姿の仙人は、そのかわいさそのままに恐怖を掻き立てる代物になった。俺たちは一体何をされるのだろうか、あの大きな指でツンと突かれるだけでも骨が折れそうになるくらいのダメージだろう。そんな化け物がはっきりと反省させると言ったのだ。どんなことをされるか分からず、その分からないのが余計怖かった。と、そうしていると男たちの中の一人が前へ出て叫び始めた。

「煙緋さん!助けてください!お金…お金を払います!損害にちょっと足りなかっただけで、大金を持っているんだ!だから、元に戻して…!」

「ダメだ。法に則った刑罰は覆られない」

 にべもなく断られる。それだけで終わっていれば幸運だったが、そうはならなかった。

「というかむしろ…君は金を持っているのか?縮小刑にかかって小人になった者は財産没収のはずだろう?」

 顔が鼻が男につきそうなくらい急接近してきた。自分と同じかそれ以上に大きい煙緋の碧眼に睨まれ、失禁するほど恐怖する。法律を破った者に対する煙緋の冷たい声と視線は、小人の男には刺激が強すぎた。立てないほどに震え、怯える。

「隠し持っていたのか?いけない子だ…」

 煙緋のほっそりとした指につまみ上げられ、顔の前まで持ってこられる。

「法令違反には厳罰が必要だな?さて、どうしてやろうか…」

 男は必死で謝罪した。だが、法令違反をした男に、煙緋は慈悲などかけない。ただでさえ罪深い縮小刑の受刑者が、刑を受けたあとになってからまた罪が一つ見つかったのだ。煙緋は男を徹底的に仕置きすることを決意していた。

「一際キツイのをお見舞いしてやる。覚悟したまえ」

 煙緋はそのままつまんでいた男を椅子の上に落とし、落とされた衝撃でうめいてる男をそのまま尻の下敷きにした。煙緋の尻は柔らかく、男が死ぬことはない。だが、とてつもない重量だった。圧死してないということは少しは浮かしているのであろうそれでも、今まで経験してきたなのによりも重い。女性に抱く感想ではなかったが、男は煙緋の尻のあまりの重さに内臓が出てしまうかと思うほど苦しんでいた。だが、刑罰はそれだけでは終わらず、むしろここからが本番だった。
 ただ座り潰していただけの煙緋の尻が急に浮き始める。男はその間に逃げようとするが、浮いたのは一瞬で、尻の落下はまた男を轢き潰した。一気に煙緋の巨尻に潰されたことで、男は体の中の空気を吐き出してしまう。煙緋はその瞬間、尻の下の男に向かって思い切りおならをした。
 男は完全に体内から空気を出され、息を思い切り吸った瞬間に、煙緋のばかでかい尻から轟音を響かせながら発せられたおならの直撃をくらい、まずその熱で焼かれるような苦しみを味わった。煙緋の体内から飛び出たガスは、燃えるように熱かった。だが、本当の地獄はここからだった。体内の空気が完全に無くなった状態から息を吸い込んだ瞬間のおなら、煙緋の悪魔的なそれは、ダイレクトに矮小な男の鼻に届いた。ただ吸うだけというわけでなく、深呼吸のように吸い込んだそのおならは、あの麗しい煙緋が出したものとは思えなかった。卵を腐らせたような、硫黄のような、生ゴミの集積場のような、それらの形容などまるで当てはまらず、それを遥かに超えるその激臭を思い切り吸い込んだのだ。これは煙緋がわざとやったのだろう。あっはっはと笑う声と、笑ったことによる振動が、煙緋の尻を揺らし男の体をねじった。座った球の煙緋の尻の下からはおならが漏れ出ることはなく、ずっと苦しみ続けている。うめき声を上げ続け、ついに声すら出なくなった時、ようやく煙緋の尻は上がった。

「まだこれで終わりじゃないぞ、君はまだ私のお尻で反省していろ」

 煙緋はそう言うと、椅子の上でぼろぼろになっている男をつまみ上げ、服を引っ張って作った空間に押し込んだ。パチンと服を戻せば外からは何もいないように見える。だが、男は煙緋の尻にへばりついてただ蒸され苦しめられているのだ。
 その一連の様子を見せられ、死にかけのゴミとなった男を見ていた他の小人たちは、怯えて震えながら煙緋を見上げた。その小人たちを見て、煙緋は少し笑ったあとこう言った。

「安心していい、君たちにはここまではやらんさ。だが罪の重さの分は相応の罰があるがね」

 あまりの惨状に、恐怖を押し殺して一人の男がこう叫んだ。

「ふ、ふざけんな!お前がやってることの方が犯罪じゃないのか!?」

 煙緋はその言葉にキョトンとした顔を向けたあと、何を言っているのかといった表情で話し始める。

「うん、人間にやったら法令違反だ。だか先ほども言っただろう?君たちは法的にはもう人間では無いんだ。例えるなら虫と同じだ。虫を踏み潰したからといって犯罪にはならないだろう?」

 虫と同じ、煙緋にそう言われてショックを受ける男たち。もう俺たちには人権などないんだと、サイズも、本質も、法的に見ても、俺たちはこんな女の子の容姿をした仙人に手で潰される程度の存在ということを、はっきりと言われて、男たちは泣きそうになっていた。ただ少しミスをしただけなのに、こんなのは死刑よりも辛い。どうせ待っているのが死であるのに、その過程にとてつもない屈辱と苦しみを味わうことになると思うと、絶望せずにはいられなかった。

 煙緋は夜になって、小人たちに寝床を提供した。

「今日は冷えるからな、ここで寝るといい」

 そう言って男たちの前に出したのはブーツだった。煙緋がいつも履いている、かわいらしいファーが中でもこもことしているブーツ、それに入れと促している。冗談ではなかった。

「ファーもついていて、私がさっきまで履いていたから暖かいぞ?感謝したまえ」
 
 近づいただけで目がやられそうな臭気だった。暑くて重くて、そしてとても臭いその空気は横に倒されたふわふわのブーツからじっとりと漏れ出ている。ブーツの周りの空気は重く、小人の体を簡単に侵食した。もうこれ以上近づきたくない。あんなところで眠るなんて無理に決まっている。そう思ったが、振り返れば煙緋は冷たい目をして見下ろしている。
 わかっている。これは罰なのだ。わざと親切にしているように煙緋は言っているが、自分のブーツが蒸れていて、とんでもなく臭いことも、それが数センチの縮められた体には何十倍にもなって苦しみが襲いかかってくることも分かっていて、自分から入らせようとしている。煙緋は入らない小人たちを見て、足踏みを始める。タン、タンと普通ならば小さい音が、小人たちにはドン!ドン!と何か大きいものを落としたかのような轟音だ。苛立っている様子を見せつけられ、その威圧感で恐怖はさらに増していく。前には悪臭漂うブーツという名の牢獄。後ろには乗せただけで簡単に虫のようにぷちっと殺せてしまう煙緋の足。これ以上尻込みしていては、またさっきのやつのように、とんでもないお仕置きが待っているかもしれない。小人たちは意を決してブーツに入り込んだ。
 そこはまるで洞窟のように深く、暗かった。女のブーツが洞窟のように感じられている今の状況に屈辱を覚える、が、それ以上に、そんなことを考えることが出来ないほどに臭かった。忙しい煙緋が日中常に走り回って仕事をし、相応にかいた汗が染み込んだ、ただでさえ蒸れやすそうなブーツ、その中に入った瞬間、覚悟はしていたものの一瞬卒倒しそうになるほどの悪臭だった。夏の下着のような、それを何倍にも凝縮したような濃い汗の臭いと、老廃物による腐敗臭、蒸れていることにより蒸し風呂のような熱気と湿気をともない、俺の鼻を強襲した。足元はふかふかとしている。臭いさえなければ触れるだけで心地良いと思えるようなブーツのファーだった。だが臭すぎた。それを堪能する事も出来ないほどに臭かった。仙人はあまり体を洗わないのだろうか、そんな失礼なことを思ってしまうほどだった。
 ゴゴゴと大きいものが動いた音がすれば、煙緋の手によってブーツの口が折り曲げられた。逃げ出さないためか、小人たちをもっと苦しめるためかその両方か、光が遮られ真っ暗になる。視覚が遮断され、嗅覚が強調される。そして何より完全な密閉空間になってしまった。先ほどまでは外気と換気が出来ていたのに、煙緋のブーツの中の臭気と熱気は逃げ場をなくしてブーツの中に渦巻いている。目から涙を流して、咳き込んで、お願い許してと叫んだ。だがブーツの外の煙緋には届かない。煙緋は何も手を出さずとも、小人たちを屈服させた。まともに眠る事も出来ずに、ただ涙と汗と、体液を垂れ流してうずくまる。吸う息は熱く、臭い。煙緋はタイツや靴下を履かず、素足履きであるということも影響しているのかもしれない、頭がおかしくなりそうなほどの例える事の出来ないような凝縮された腐敗臭を嗅ぎ続け、嗅覚が麻痺し始め、頭の中が燃えるように熱くなった頃、小人たちは気絶してしまった。
 
 気絶していた小人たちは、ブーツという名の牢獄が開かれ、光が差したことにより目を覚ました。もはや体に染み込んで洗っても落ちないほどに煙緋の体臭が染み込んだ体を起こせば、折り曲げられていたブーツの口が煙緋の手によって戻され、外気が入り込んでくる。もはや鼻がまともに効かないほどに苦しめられていた密閉空間での悪臭が、外の空気が入ってきたことにより緩和された。臭いことに変わりはないが、それでも喜んでいたところに煙緋の顔がブーツの口から見える。何ともみじめな構図だったが、もはやそんなことで屈辱など覚えないほどにみじめな思いをさせられ続けてきていた。

「おはよう、よく眠れたかな?」

 鈴の鳴るような美しい声でそう言われる。普段ならば、小人たちがまだ商人だった頃ならば煙緋に声をかけられたことに喜ぶだろう。だが今の男たちにとっては、そのにこやかな笑顔の裏に違う感情が宿っていることを知っている。よく眠れるわけがない環境に追いやったているということを自覚しながらからかっているのだ。だが食ってかかるわけにもいかない。そもそも男たちはブーツの中で、煙緋はそれを覗き込んでいるだけだ。腹が立って殴ろうにも、届くわけがない距離、そもそも当たったとしても蚊に刺された程度も感じないであろうサイズ差、それが顕著に表れていた。

「実はね、今日はなかなか忙しく君たちにかかりきりというわけにはいかなくなってしまったんだ」

 その言葉に男たちは歓喜した。あの法令違反で厳罰を受け、今も尻で罰を受け続けているあいつのように、虐められることはない。
 何度目か分からないが、これもぬか喜びだった。煙緋は続けたこう言ったのだ。

「今日は君たちをブーツに入れたまま履いて仕事をしようと思う。今日は仕事で璃月中を周るから頑張ってくれ」

 ブーツの中から逃げようとすることも出来ず、煙緋の足がブーツの口を塞いだ。煙緋のすべすべとしていて真っ白な素足が侵入してくるのを見て、出ようとしていた男たちは真逆に走り出した。ブーツのつま先の方に早く行かなければあの侵入してくる足に轢き潰されてしまう。男たちは20センチちょっとしかないはずのブーツを全力疾走で何秒もかけてたどり着いた。だが、指の隙間から潰される事はなかったが、走ったことにより息が切れたのと、臭いが強くなるつま先側に来てしまった事で、昨晩苦しめられたブーツの臭いよりもっときつい責めを、煙緋は無意識に行っていた。昨日は、煙緋の意思で俺たちを苦しめていた。だが、今回は煙緋が意図していた責めはむしろこれからの仕事中だっただろう。だがすでに虫の息となっている男たちは、その事実に屈辱を感じずにはいられなかった。
 煙緋の仕事が始まった。ブーツの中では何を喋っているかは聞こえないが、慌ただしく動き始めた煙緋に男たちは翻弄される。この広い港でさまざまな依頼人を訪ねて、証拠を見つけて、調停を行う。キリッとした表情で行うそれは、はたから見れば頼れる法律家としてしか映らないだろう。だがその煙緋が歩くたび、走るたびに、煙緋のブーツの中ではかき回され、しっちゃかめっちゃかにブーツや足にぶつかりまくり、蒸れた素足履きのブーツ内の灼熱地獄に苦しめられる。そんな地獄絵図が広がっているのを、煙緋は素知らぬ顔で、周りの人間もみんな気づいていない。誰か気づいて、助けてと叫んでも体力を無駄に浪費するだけだ。そもそも助けてくれるわけがない。縮小刑を受けた俺たち小人は、人間様からすればただのサンドバッグと同じだ。ストレス発散の道具でしかない。煙緋はまだ優しい方だろう。往生堂堂主のように調教したり、玉衝、刻晴のように苛烈に痛めつけられることがないのだから。

 夜になり、ようやく煙緋の足が止まる。もはやほとんどが気絶している中、一人だけはまだ耐え切っていた。煙緋はずるりと汗まみれの素足をブーツから出して中を確認すれば、ほとんどが倒れている中、座り込んではいるがまだしっかりと意識がある男が一人いた。
 
 煙緋は少し気になってそいつをつまみ上げると、顔の前に持ってきてじっくりと眺めた。

「君は…旅人に似ているな…」

 旅人とは、あの英雄のことだろうか、金髪と聞いていたが、たしかに俺は金髪だなと男は思う。

「じゃあ…私の腋を舐めろ。私に奉仕するんだ」

 先ほどまでとは違い、虐めるベクトルが変わっているように感じた。だが男は指につままれ腋に押し付けられ、今までの重い空気のような臭いとは別の、ツンとした汗の刺激臭に顔を顰めてしまう。煙緋のぱっかりと空いた服の腋部分に押し付けられ、舐めたくなかったため顔を背けて抵抗する。だが煙緋はそれを許さなかった。

「ちゃんと舐めるんだ。潰してしまうぞ?」

 煙緋の少し不機嫌なような声はとても怖かった。だが一日中仕事をして蒸れて汗まみれの腋なんて舐めたくなかった。普通のサイズでもきついものがあるのに、今の小ささではもはや生物兵器だ。

「私を馬鹿にしているのか?もういい」

 だがそんなわがままは煙緋はいつまでも許してくれない。思いきり腋に男を押し込むと、べちんと腕を下ろし腋を閉じてしまう。柔らかい腋肉にぎゅうぎゅうと絞められ、ぬるぬるとした煙緋の腋汗にまみれ、臭いを無理矢理嗅がせられる。たった数秒でも凄まじい苦痛だった。男はプライドを捨て、煙緋の腋を絞められたまま舐めはじめた。煙緋の巨大な柔らかい壁のような腋に懸命に舌を這わせれば、煙緋はびくんと跳ねるように震えた。

「なんだ、やれば出来るじゃないか。気持ち良いぞ」

 息も出来ないほどにかかっていた圧力がフッと消え、そのまま下へと落ちていく。柔らかいものに着地したと思えば、周りを見ると煙緋の手のひらの上だった。どうやら満足してくれたらしい。

「ご褒美だ」

 煙緋はつまみ上げた男を、舌に跨らせるようにして股間を舐めた。男の陰茎はそのしっとりと濡れた肉厚の舌に舐めとられ、突かれ、ぐりぐりと刺激を加えられる。舌が纏っている唾液は天然のローションとなり、煙緋が舐めるたびに鳴るくちゅくちゅといったいやらしい水音と、

「ン…れろ、はぁ、んむ…」

 至近距離で聞こえる煙緋のいやらしい舐めるたびに出る声に耳を侵され、そんな快感に我慢できるはずがなく、男は射精してしまう。煙緋の舌に出してしまい、怒られるかとビクッと震えたが、舌をしまって男を手のひらに乗せた煙緋は微笑んでいた。

「また明日も…私を悦ばせてもらうぞ」

 男は一つだけ運が良いことがあった。煙緋が好ましく思っている璃月の英雄と、容姿が似ていたということだ。