冒険者の男と、森の妖精はコンビを組んで仕事をしていた。妖精は人間の10分の1くらいの大きさだったが、魔法や支援が得意で、男は剣での近接戦闘が得意と、二人は足りないところを補い合ってパーティを組んでいた。
 コンビを組み始めてしばらく経ったある日のこと、山賊討伐の依頼を受けて二人は山に入っていた。

「今回の山賊は数が多いらしい。背中は任せたぞ、また魔法でぶっ倒してくれ」

「任せてちょうだい。わたし、新しく魔法を覚えたの、とっても強いのよ!きっとあなたも驚くわ!」

 ふわふわと隣を浮いている15センチほどの妖精に、頼りにしていると男が声をかければ、妖精は自信満々といった様子で答えた。
 今まで妖精は氷の魔法などをよく使っていたが、新しく覚えた魔法とは何なのだろうか、気になって聞いてみようとしたところで、周りから草をかき分けるかさかさとした音が聞こえてきた。

「囲まれてるな…俺は前の方を倒すからお前は後ろの奴らを頼む」

「まかせて!」

 音がする方に向かって剣を振り上げる。前方には3人の山賊が潜んでいた。山賊は下っ端のようでまともな装備をしていない。まとめて斬り伏せ動けなくさせて、妖精の方へ加勢しようと振り向けば、いつも浮いている妖精は地面に足をつけており、周りには山賊一人見当たらない。囲まれていたというのは勘違いだっただろうかと近づくと、妖精は笑って声をかけてきた。

「もうちょっと待っててね、すぐ終わるわ」

 その言葉に疑問を覚え、妖精が立っている場所へ近づく。何やら足踏みをしているようだ。一体何をしているのかと覗いてみれば、妖精が足踏みしている足下には、手のひらに乗る程度のサイズの妖精よりも遥かに小さくなっていて、妖精の足から逃げ惑う山賊たちの姿があった。
 最初は見間違いかと思った。山賊たちはあまりに小さすぎたし、ここは山の中だ。虫か何かと思いたかったというのもあった。
 だが、目を凝らして見れば妖精が笑みを浮かべ、嬉々として追い立てているのは人型だった。耳をすませば恐怖が混じった絶叫が、ほんの少しだけ耳に入ってきた。

「ちょこまかとうっとうしいのよ!」

 妖精はそう言うと、足踏みから何度も逃げられていることに腹を立てたのか、ふわっと宙に浮いたかと思えば、ヒップドロップで数人の極小山賊を尻で潰してしまった。

「お待たせ、すごいでしょう?わたし、縮小魔法を覚えたの。ふふ、これでどんな敵も怖くないわ!」

 縮小魔法、文字通り生物をそのまま小さくしてしまう魔法だ。かかってしまえばおしまい、あとはまともな抵抗も出来ずに嬲り殺されるだけという、冒険者間では屈指の凶悪魔法として名を連ねている。
 この魔法の恐ろしいところは、人間は使うことが出来ないということだ。当然人間の教会では解呪、元に戻すことも出来ず、かけた者に直接戻してもらうほかない。
 基本的に魔物が使うこの魔法は、絶対に避けなければならない魔法だ。それを、妖精が使えるというのは初めて知った。
 そもそも妖精はあまり人前に出てこない。俺は偶然妖精が魔物に襲われているところを助けたため、協力してもらっているが、妖精とコンビを組んでいる冒険者というのは、俺以外聞いたこともない。

「これで依頼達成ね、さぁ、帰りましょ」

 妖精に耳元で声をかけられ、思考に浸っていた意識が現実に戻る。その妖精の顔は、いつも通りにこやかな、かわいらしい笑顔で、今まで山賊を殺していたとは思えなかった。いや、今までも魔法で山賊を殺すことはあった。縮小魔法以外の魔法で、氷で突き刺したり、火で焼き殺したり、あれも見た目は縮小魔法と同等か、それ以上に無惨な殺し方だ。
 だが、俺には妖精の縮小魔法が怖くてたまらなかった。他の魔法なら対処が出来るが、縮小魔法だけはいきなり使われたら対処が出来ないからだろうか、妖精が俺を殺すことなんてないと信じているが、俺の脳裏には先程の妖精の虐殺が頭から離れなかった。俺の前をふわふわと浮いている妖精の、ひらひらとした薄い服の尻の部分は、赤い染みが何個か見えた。

 それからというもの、俺はあからさまに妖精に媚びを売るようになった。媚びを売るというと少し語弊が有るかもしれない。要するにご機嫌取りだ。俺は潜在的な縮小への恐怖心から、妖精に対して優しく、紳士的にあろうとした。

「これ、最近話題になっていた甘味なんだ。妖精サイズのを作ってもらったから、よければ食べてくれ」

「あ、ありがとう。とても嬉しいわ…!」

 プレゼントもしてみようと、妖精が好きな甘味を渡せば、妖精は戸惑いつつも嬉しそうに甘味を頬張っていた。

「妖精にいつも助けられてるな…いつもありがとう。普段はなかなか言えなかったけど、本当はとても感謝してるんだ」

「な、なに急に…照れるじゃない…」

 しっかりと感謝を示すようにすれば、妖精は頬を赤く染め、喜んでいるように見えた。
 妖精は俺を嫌っている事はなさそうだ。これからもこうして良いコンビ関係を築いていけば、感謝やプレゼントを欠かさずに、ことあるごとに褒め、気を使って接していけば縮小されることなんてない。
 最初はくだらない恐怖心からだったが、コンビを大切にするのは悪い事ではない。妖精が喜ぶのを見て、考えすぎだったよなと、自嘲気味に笑いながら俺は妖精の縮小魔法を怖がるのをやめた。

 妖精への接し方を変えてから何ヶ月か経った頃、妖精の様子が明らかに変わってきた。俺が目を向ければ、凄い勢いで顔を背けるし、距離もいつもは肩に乗るくらいの近さだったのが、ある程度離れてしまっている。顔は俺と一緒にいる時は常に真っ赤だ。
 もしや、俺が優しくし始めたのが問題だったのだろうか。今まではこんなことなんて一度も無かった。気色悪いと思われているのか、それとも馬鹿にされてると思って怒っているのか、俺は顔が真っ赤な妖精の様子から、後者だと判断した。
 この前もこういうことがあった。

「ねぇ、あなたは小さい子ってどう思う…?」

 もじもじと照れくさそうに体をよじりながら、妖精は俺にこう聞いてきた。小さい子とは幼児のことだろうか。子供は普通に好きだったので、俺はそう答えた。

「好きだよ、見てると元気が出るし」

 妖精はそれを聞くと顔をボッと赤くして背中を向けた。

「あ、あなた、そんな…!もしかしてわたしのこと…!」

 それ以降、その日は全く喋らないでずっと顔を赤くしていたため、よほど腹の立つ返答だったのかと思っていたが、やはり妖精は俺に怒っているのだろう。そう思った。

 いつか謝らなければいけないなと思いながら一人街を歩いていると、妖精に会う前に何度か冒険を共にした女剣士と偶然バッタリと出会った。妖精とコンビを組んでからも何度か3人で依頼を受けたりもしていたが、最近は会っていなかったため、女剣士から興奮した様子で声をかけられた。

「おお、久しぶりじゃないか!元気にしてたか?」

 大きな声でそう言われ、そっちもなと返す。そのあと道で少し話していたが、女剣士からこう切り出された。

「こんな道端で話しているのも何だし、飲みにでも行かないかい?」

 断る理由もなく、酒場に二人で出かけることにした。妖精がいないのが気になったが、わざわざ探すこともないだろうと、そのまま向かう。

「楽しかったぁ!じゃあ、また今度機会があったら仕事しような!」

 夜もだいぶ更けて、真っ暗になった街で女剣士と別れる。さて俺も宿に帰るかと振り返ると、目の前に妖精が浮いていた。

「ど、どうした?そんな怖い顔して」

 やはり二人だけで飲みに行ったのを怒っているのだろうか、だがいつもの赤い顔ではなく、色の抜け落ちた、とても暗い瞳で俺のことを見ていた。

「わたしのこと…好きって言ってくれたのに…許せないわ…!」



 …気を失っていたようだ。ここはどこだろう。二日酔いで痛む頭を押さえながら、きょろきょろと辺りを見回した。
 周りの様子がおかしい。ここは森か、下は茶色い土の地面で、周りは木々が風に揺られる音が聞こえる。だが、音があまりにも大きく、草木は俺より大きいものばかりだった。こんな高い草木があるジャングルなんて聞いたこともない。 
 混乱しながら辺りを見回していると、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。エコーのかかった、響くような笑い声は上から降るように聞こえてきたので、俺は上を見上げてその声の主を確認した。

「うふふ、そんなに驚かなくてもいいじゃない。そんな小さな体で、そんなかわいい動きされたら興奮しちゃうわ」

 俺の手のひらに乗るくらい小さかった妖精が、今、俺の何倍もの大きさで見下ろしている。浮いているわけではない。しっかりと地に足をつけた上で、妖精の顔は遥か上空にあった。

「ど、どうして縮小魔法なんか…や、やっぱり俺のことが嫌いだったのか!?」

「何言ってるの?あなたのことは大好きに決まってるじゃない。でもあなたが浮気なんてするから…わたしと同じ大きさにするだけにしようと思ってたのに」

 あっけらかんとそう言った妖精に、俺の頭は疑問符だらけだった。浮気とは何なのか。そもそも程度の差はあれど縮小魔法は使う気だったのか、色々聞きたいことはあったが、とりあえず困惑を飲み込んで、一番気になっていることを聞くことにした。

「う、浮気って…俺はお前と付き合ってなんていないだろ…」

「……ふーん、そういうこと言うんだ。わたしに愛の告白してきたくせに、二人でいちゃいちゃとおさけなんか飲みに行って…!」

 妖精の手に掴まれ、ギリギリと締め上げられる。俺の爪くらいの大きさしかなかった妖精の手は、今や俺の体をすっぽりと埋めるくらい大きくなっていた。締め付けは強く、首から下は完全に柔らかい妖精の手に覆われている。苦しくて骨が軋むこの感覚から逃れようと、ぺちぺちと妖精の手を叩くが、何の反応もない。叩いていることにすら気づく様子はなかった。今は俺の手が妖精の爪くらいのサイズなのだ。

「まぁいいわ」

 ふっと手の拘束が解け、手のひらに乗せられる。妖精のふにふにとした手のひらの上で、げほげほと咳き込み、涙目になりながら妖精を見上げれば、妖精はどこか恍惚そうな表情を浮かべていた。その表情に恐怖を覚え固まっていると、俺の視線に気づいたのかふるふると首を振って元の表情に戻していた。

「あなたはこれからわたしのものよ。その大きさなら逃げられないわ。逆らわなければ優しくしてあげる」

 巨大な妖精に微笑まれ、俺は震えながら何度も頷いた。逆らうのが怖かったからだ。

「ふふ、いい子ね。じゃあ寝ましょ、わたしの体の上を使って…」

 ふわふわと俺をつまんで飛んだ妖精は、木の上へと移動した。そこには小さな、といっても今の俺からはとても巨大だが、ツリーハウスのようなものがあった。普段はここで暮らしていたのだろう。家に入りベッドに寝転ぶと、俺を腹の上に乗せて寝始めた。

 妖精はすぐに寝息を立て始めた。妖精の温い体温が密接している俺に伝わり、このまま寝たら汗をかいてしまいそうなほどだった。寝息を立てるたびに腹は上下し、柔らかい腹の上で心地良い揺れと共に眠ってしまいそうになる。
 だが、俺は眠ることなんて出来ないほどに恐怖がおさまらなかった。あの時の、山賊たちの死に様がフラッシュバックする。機嫌を損ねたら殺されてしまうかもしれない。冒険者の俺はいつ死んでもおかしくない。そのまま誰にも気づかずに終わってしまうだろう。
 俺は逃げることを決意した。何とか森を抜け、女剣士に会えば、妖精に戻すように言ってくれるかもしれない。この状態で妖精に直談判するのは恐ろしすぎる。人間を味方に付けて交渉するのだ。この妖精よりも小さい体では、虫ですら魔物と同じほどの強敵だろうが、魔物と戦うのは慣れていたし、小さすぎるため動物には狙われないだろうと思った。

「よし…」

 ゆっくりと妖精の腹の上から抜け出して、気づかれないようにツリーハウスを抜け出した。塔のように高い木を時間をかけてゆっくりとおりて、地面に着地する。あとは街へ向かうだけだ。方角はアルティと分かっている。走り出そうとしたその瞬間、俺はとてつもない衝撃に襲われて地面に潰された。

「逆らわなければ、優しくしてあげるって言ったわよね…?浮気も許してあげたのに、まだ懲りないなんて…とっても悪い子ね…」

 ぐりぐりと地面に押しつけられる。これはおそらく足だろう。俺の倍以上の大きさの足で踏まれているのだ。柔らかい足とはいえ、この大きさだと文字通り骨が折れるほど苦しかった。

「ゆ、ゆるして…」

 足に思い切り圧迫され、ひしゃげた顔ではまともに発音なんて出来やしない。俺の声は届かず、むしろ声を出したことによってくすぐったかったのか、妖精を足をよじり、俺は潰れる一歩手前ほど圧迫された。

「ぐええっ!」

 内臓がひしゃげるほどの圧力を受けてうめき声をあげる。柔らかい足裏も力がこめられている今、硬く重たい拷問器具となっていた。臭いもきつい、花のように甘い香りが常にしていた妖精も汗をかくようで、むわっとした汗の臭いと、いつもの妖精の花の香りが混ざり、それは女性的なフェロモンとして俺を苦しめた。臭いはずなのに、甘くどこか興奮する臭いを嗅いでいると、踏み躙られて苦しいはずなのに、奥から沸き立つ情欲のようなものがあるのに、俺は驚いていた。

「…わたし、心を鬼にするわ。お仕置きして体に教えてあげないと」

 そう言った妖精は足を浮かせ、足裏全体で踏み躙るのをやめた。そして親指だけで俺の体を踏み潰し始める。足裏よりも硬い親指での圧迫に激痛が走る。親指は俺の首から下をぐりぐりとねじ込むように踏み躙ってくる。どうにかそれをどかそうと頑張るが、俺の糸のような細さの腕では妖精の足の指にすら敵わなかった。普段のサイズなら見えもしないほど小さな妖精の指が、俺の体よりも大きく、そして強かった。

「妖精より小さな体で森に出たら危ないでしょ!こら!痛くても我慢なさい!」

 子供に叱りつけるようにそう言われ、その声の大きさに萎縮する。ささやくようなかわいらしい声が、轟く雷鳴のようになっていて、いつになく語気を強められ、恐怖がさらに増していく。
 何よりさきほどの足裏での圧迫と違って一点に力が集中しているため、妖精の指の位置が少しずれるたびに、俺の股間に当たるようになった。グッと潰され息を吐き出させられ、吸い込んだ息は全て妖精の足の臭い。妖精の臭いが肺を満たし、股間で指を無意識に責め立てられる。先程からむずむずとは来ていたが、もう我慢の限界だった。どうしようもなく興奮してしまい、苦しくて臭いのに俺のモノは勃起してしまった。そして、それは指で俺の体を潰している妖精が気づかないはずがない。

「あら…?大きくしているの?痛くしているのに…」

 すぐに俺の欲情は妖精に気づかれる。妖精からすれば不思議でならないだろう。痛めつけていたら男が勃起しているなんて、マゾか何かかという話だ。だがそんな性癖のことなんて妖精は知らないだろう。そもそも俺はマゾなんかではない。誤魔化そうと口を開こうとした瞬間、妖精の方が先に口を開いた。

「そういえば痛くされるのが好きな人もいるって聞いたことがあるわ…」
 
 誰だそんなことを教えたのは。俺だ。酒に酔っていた時にそんな話をしたような気がする。今の俺にとってはやばい勘違いだ。過去に戻って俺を殴りたい。これは非常にまずい。どれだけ怒っていても、根が優しい妖精はそこまでひどいことをしてこないはずだと思っていた。だが、サイズの差から手加減が上手くいっておらず、おそらく妖精が想像している以上の強さでお仕置きをされている。
 それなのに、今でさえ泣きたくなるほどきついのに、それが嬉しいんだと勘違いされてしまったら、俺はどんな目に遭わされるのか。
 もう妖精が俺のことを憎からず思っているということは理解した。これで逃げ出したらお仕置きというだけだったのが、俺を喜ばせるためと常にこんなことをしてくるのではないかと危惧した。俺は誤解を解こうと必死で叫ぶ。

「ち、ちがう!本当に苦しいのは嫌なんだ!」

「それも聞いたことがあるわ、嫌よ嫌よも好きのうちってやつね!だからわざわざすぐに見つかるように逃げたりしたのね、わたしの気を引くために…なんてかわいいの!」

「話を聞いてくれ!頼むから!」

 こうなった妖精はもうまともに話を聞いてくれない。とろんとした目でこっちを見ているその目は、何か好きでたまらないものを見る目だ。前に俺がプレゼントした甘味を見る時にもあの目をしていた。
 要するに俺は、妖精の大好物と認定され、今から頂かれてしまうということだ。
 今まで適当に俺を嬲っていた指の動きが変わる。体や足にも潰してきた妖精の親指は、完全に俺の股間の部分だけを狙ってきた。
 弾けるような快感だった。ずっと妖精臭いを嗅がされ、微妙に触られるだけで溜まっていたフラストレーションが一気に解放されるような、そんな快感だった。あまりの快感に、臭いはずの親指に両手で抱きついてしまう。それを見た妖精は気を良くしたのか股間を擦る動きをもっと速く、強くした。ちんこが潰れてしまうくらいの圧力をかけられ、高速で動かされ、もはやそんな責めに耐えることは出来なかった。俺はビクンと快感に跳ねて射精する。妖精の足指にイかされてしまった。
 だが、それでも妖精は止まらなかった。まだ俺がイってないと思っているのだろうか。小さい俺が射精しても何も感じないという格差にも屈辱を覚えたが、それどころではなかった。イったばかりで敏感になっているアレを、もっと強く、もっと速く擦られる。もう頭はショート寸前だった。

「ねぇっ!待って!もう、もうイッたから!」

 みっともない声を、恥を偲んで張り上げても全く届かない。妖精は全くの遠慮なしに行為を続け、何度も俺はイッてしまう。涙目になり、あまりの快感に口から涎がこぼれ、体が痙攣し始めた頃、俺はようやく解放された。

「気持ち良くなってくれたみたいね!これからはわたしに愛されたいからって逃げたりしちゃダメよ?危ないもの。そんなことしなくても毎日してあげるわ。だから、ね?」

 横たわりピクピクと痙攣しながら白い液体を撒き散らす俺に向かって、妖精はそんなことを嘯いた。これを、俺が何をしなくとも毎日…?逃げ出したお仕置きというならばまだ救いはあったのに、俺の堪え性が無いせいで、これから毎日この責めを受けることになる。加減を知らない妖精の無理な搾精と乱暴な責めが毎日続いた。

「今日は指を使ってイかせようと思うわ。指しか使わないから、我慢出来るといいわね」

 ある日は指で搾られた。無遠慮に締め付ける指は滑らかでぷにっと柔らかく、そんな代物で思い切りひねるように陰険をつまむのだ。妖精からすれば爪より小さいそれを、的確に、潰れてしまうギリギリまで何度も緩めたり強めたりを繰り返す。快感に喘いで助けてと叫べば、その開けた口に指を突っ込まれた。

「もう、あんまりうるさくしたらダメじゃない。わたしの指をしゃぶって落ち着きなさい」
 
 顎が外れそうになりながら、指を引き抜こうとするも、びくともしない。自分の体ごと後ろへ逃げて抜こうとしても、妖精の指はそれを許さなかった。くりくりと口の中を太い指でかき回され、えずいて涙目になりながら、声も出さないため、妖精に目で助けを求めても、なぜか恍惚とした表情をして俺を弄る。

「やっぱり…虐めてるときの顔が1番かわいいわ…!わたし、そういう趣味だったのかしら」

 そう言った妖精は指をようやく俺の口から引き抜いて、その指をぺろりと舐めた。その一連の仕草が、俺からはとても淫靡に見えてしまった。

 またある日は口だった。まるで赤ん坊が乳を吸うように、妖精は俺のモノを咥えて吸った。途轍もない快感に喘ぐことすら出来ず。ヒュッヒュッと小刻みな呼吸しか出来なくなる。柔らかい唇に、肉肉しくしっとりとした舌に挟まれ、舐められ、吸われる。唾液は天然のローションとなり、もはや涙を流しながら何度もイッた。手や足の時と違って、もう何度もイッているのはわかっているはずなのに、全くやめてくれる気配がない。快感に耐えきれなくなり、俺が壊れた人形のようにカクカクと痙攣した時、ようやく俺は口の中から出された。唾液は糸を引き、俺と妖精の口を繋いでいた。

「な、泣き顔もかわいいっ…!わたしにイかされてへにゃへにゃになっちゃって…逃げられなくて怖かったのね…?こんなに大きいお姉さんに好きにされたら泣いちゃうわよね、頑張ったね…あぁ、かわいい…」

 …俺は彼女をSに目覚めさせてしまったのかもしれない、そう思った。妖精は涙でぐしゃぐしゃの俺の顔をれろぉと舐めた。それだけの行為でもまた勃ってきた俺も、大概Mに矯正させられているのかもしれない。


 そんな日々にも転機が訪れた。街へ出かける用事があったが俺を家に一人置いていくのは不安なため、街へ連れて行くというのだ。正直、妖精との生活はそこまで嫌じゃなかったが、やはりせめて同じサイズに戻して欲しかった。
 だが、前にそれを言ったら今のままでいい。そっちの方が絶対にかわいいと取り合ってもらえず、またそのまま行為にシフトして有耶無耶にされてしまった。街で女剣士と会って取りなしてもらえば、希望がまだあるかもしれない。そう思った。

 妖精のポケットに入れられて、揺られながら街の喧騒を聞く。妖精よりも遥かに巨大な人間の声は、やはり少し恐ろしく、もしポケットから落ちてしまえば歩く人々に気づかれもせずに踏まれてしまうだろう、それくらい今の俺は小さかった。妖精とずっと一緒にいたため麻痺していたようだ。怖くなった俺はポケットから顔すら出さずに機会を待つ。妖精は珍しい。女剣士ならば絶対に知り合いの妖精に会えば声をかけてくるはずだ。そう確信していた。

 しばらくすると、俺の予想が当たっていたことが分かった。女剣士が妖精に声をかけてきたのだ。

「よう、久しぶりだな、妖精ちゃん!あいつはどうした?最近見ないけど」

「久しぶりね、元気にしてたかしら」

 俺はポケットから顔を出して、あまりの驚きに声が出せなくなった。妖精の手よりもずっと小さい今の俺が見た、妖精が手のひらに収まる普通の人間は、王都で見た城よりデカかった。動いて、喋っているのが不思議なほどの、自然の何かだと言われた方が納得できるほどに大きかった。

「彼は故郷に戻ったわ!親に一度顔を見せに帰ったのですって!」

 ひるんでいる俺を気にせず、適当な嘘をついている妖精の声でハッと我に帰る。こんな城のような大きさの女剣士に届くか分からないが、ポケットから顔を出して、俺の全力を込めて叫んだ。
 だが妖精はお見通しだったらしい。指で顔を塞がれ、声が遮断される。そうこうしているうちに会話は終わり、足音が遠ざかっていく。唯一のチャンスを失い、妖精の怒りを買ってしまった。
 
 用事とやらを済ませ、家に帰り、乱暴にベッドに投げ出された。あぐらをかいて座っている妖精の顔を見上げると、明らかに不機嫌な顔をしている。

「悪い子ね…まだわたしよりあの娘の方が好きなのかしら?あんなにしてあげたのに……絶対に許さないわ、あなたはわたしのものよ」

 女剣士にそういう感情などかけらも抱いていなかった。だがムキになって否定すれば、必死なのが証拠と言わんばかりに怒られるかもしれない。どう言えばいいのか迷っていれば、妖精がまた口を開いた。

「またお仕置きが必要ね、でもあなたは喜んでしまうから意味がないかしら」

 喜んでなどいなかったが、お仕置きをやめてもらえると言うなら願ってもない。妖精のお仕置きは、俺の心と体をおかしくする。苦しいのに興奮してしまい、臭いがきつい足を嗅いで発情する。それも今までは自分より遥かに小さい相手の足指にすがってだ。今まで守っていたかわいくて小さい女の子の足で射精してしまう、あんなみじめな思いはもう嫌だった。

「決めたわ…もうちょっと後にしようかと思っていたけれど、あなたが悪いのよ…!」

「やっぱり少し恥ずかしかったから…今までは直接ヤらなかったけど…」

 妖精は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、もぞもぞとワンピースを脱ぎ出した。股を開き、誘惑してくる遊女のように、小人の俺へ迫る。

「これで誰にも盗られない、わたしだけのものに…」

 妖精も興奮しているのか、あそこはぐしょぐしょに濡れて、ぽたぽたと愛液が垂れ落ちてきている。まるで前に戦った食人植物のようだった。恐ろしくて後退ると、背中に柔らかいものが触れた。妖精の手のひらだ。ガシッと掴まれて少しずつ、ゆっくりと秘所へ俺を握った手を近づけていく。

「それだけは、それだけはやめて!死んじゃうよ!死んじゃうから!」

 妖精は俺の命乞いも無視して、そのまま近づける。俺は必死の抵抗で抜け出そうとするも、ギュッと一際強く握られすぐに抵抗出来なくなる。ついに俺は妖精の秘所へと入れられてしまった。
 肉の洞窟のようなそれは、ひくひくとヒダがうごめいていて、いるだけで恐ろしく、生臭いような嫌な臭いが漂っている。逃げようにももう後ろを見れば穴は閉じられてしまった。満足させるまでは戻してくれないだろう。俺は真っ暗闇の中をゆっくりと歩いた。歩いて足を踏み出すたびに、とてつもない揺れと嬌声が聞こえる。

「ンッ!アッ…!」

 小さい俺の体が、少し動くだけでも快感なのか、歩いただけでビクビクと体ごと震えてしまっている。地震のような揺れが続き、奥の玉のような部分にかじりついた。

「ンアアッ!」

 一際すごい揺れだった。ジャンプしたかと思うくらい縦に飛び上がり、奥から愛液が溢れ出している。それと共に脱出したら終わりかと思えば。指が入り込んできて俺の体をかっさらった。ずるんと出され、妖精の顔を見れば、目が虚ろで口からは涎が垂れている。いつも妖精に責め立てられている時の俺の顔のようなアヘ顔だった。
 妖精は俺の両足をつまむと、また思い切り秘所へと俺を突き刺した。奥までぐっと押し込んだあと、外壁をこするように抜いた。それを荒い呼吸音と共に何度も繰り返す。ついに俺はディルド扱い、妖精の性玩具に成り果てた。こすられるたびに俺の股間のモノも当たり、二人で快感に喘いでいる。二度目に妖精がイッた時、同時に俺も射精してしまう。俺はぐしょぐしょにふやけた体で、妖精に微笑んだ。もう大きさは戻されなくていいから一緒にいたいと思えた。ヤッたからか、やはり男とは単純なものだ。
 妖精はそんな俺に顔より巨大な唇でキスをした。