「ただいまー!ちゃんと良い子にしてたかな?」

 俺は、この女の子に拉致監禁されている。だが監禁といっても、縛られたり鎖に繋がれているわけでもない。じゃあ逃げればいいじゃないかと思うだろうが違うのだ。この女は、俺のことを5センチメートルほどに小さくしてこの家に連れ込んだ。理由を聞けば、

「ちっちゃくてかわいい召使いが欲しかったんだよ」

だそうだ。ふざけているが、従うしかない。最初は反発した。これは犯罪だと、暴言もいくつか吐いたと思う。それをにこにこ笑いながら聞いていた彼女は、ふっと表情を消すと俺のことを握りしめた。

「そんな乱暴な言葉使いしちゃダメでしょ?言うこと聞かない悪い子はこうしちゃうよ?」

「ぐあぁっ!」

 ギリギリと無遠慮に、首から下を握りつぶされる。手袋に包まれた手は肌が見えない分、より怖かった。内臓が飛び出そうなほど苦しいのに、抜け出すことも出来ず、だが顔は出ているため彼女の顔はよく見えた。先程まで笑っていたのに、無表情で俺が苦しむのを見ている。殺されるかもしれないと思った俺は必死で謝った。

「分かってくれたらいいんだよー、これからよろしくね」

 全身の力が抜け、まともに立てずに手のひらでへたり込んでいる俺を机に置いて彼女はこう言った。

「ぼくはロボ子さんだよ、様は付けなくていいからね」

 と、ここまで痛めつけておきながらあっけらかんと笑いながら自己紹介をしていた。それから俺は逆らおうとすら思わない。逃げようとも思わない。今度はどんなことをされるかと思うと、逆らうことを考えるだけで震えてくる。またあの無表情で、淡々と躾けられる、あんなペット以下の扱いはもうごめんだった。もうあんなことされるくらいだったら、俺はロボ子さんのペットでもいいとすら思えていた。

「つっかれたー、じゃあ今日はぼくの足揉んでもらおうかな」

「あの…タイツを脱いでください…お願いします…」

 帰ってきたばかりのロボ子さんは、履いていた黒タイツをそのままに俺の目の前にドンと勢いよく足を置いた。ブーツを履いていたため蒸れて臭いもキツくなっているであろうそれにこの小人の大きさで近づいて触れるというのはきついものがある。そもそもマッサージなのだから裸足にしてくれというのは変なお願いでもないだろう。

「んー?…へんたーいっ」

「ぐあっ」

 だがロボ子さんは足指で器用に俺にデコピンを当てた。ただちょっと親指でこづいただけなのに、俺は格闘家から思い切りボディブローを食らったくらい苦しかった。ごろごろと転がりながら悶絶していれば、ロボ子さんは俺に向かってこう言った。

「脱がないから、このままやってね。ぼくゲームやってるから」

そびえ立つ黒タイツを履いた足裏を見上げ、近づくと先ほどからただよって来ていた臭いが強くなってくる。どんなにかわいい女の子でもブーツを履いて夏に家を出ればこのような腐敗臭のような、納豆かなにかのようなひどい臭いになってしまう。俺は思わず鼻を押さえて咳き込んでしまった。それがロボ子さんを怒らせてしまうことになる。

「…なに?ぼくの足臭いって言いたいの?」

「い、いえっ!違います!く、くさくなんてないです!」

 俺は必死に否定した。この大巨人の主人の、不興を買うことなんて想像するだけでも恐ろしい。俺は臭いにむせて咳き込んでしまったことを深く後悔した。

「…へぇー、臭くないんだ、ぼくの足。今日はたくさん歩いたから蒸れてると思ったんだけどねー。…じゃあさ、ぼくの足舐めてよ」

「臭くないんでしょ?良いにおいなんだよね?」

 良いにおいとまでは言っていない、そんな反論できるはずもなく、屈辱感と共に舌を這わせる。汗のにおいとしょっぱい味に辟易しながら満足するまでやらねばと思っていたところ、

「ひゃっ!くすぐったい!もう!」

 びくんと跳ねた足が、どすんと俺を踏み潰した。理不尽なことをされても俺にはどうすることもできない。圧力にうめきながら、自分は悪くないと思いつつ許してもらうために潰されながらか細い声で謝った。変な声を出してしまったのが恥ずかしかったのか悔しかったのか、俺はそのまま足の牢獄に何分も出してもらえず、ようやく解放してもらえた時には俺の体にロボ子さんの足の臭いが染みついていて、寝る時までいじめられているような気分だった。

 ロボ子さんは配信というものをしているらしく、いつも画面に向かって喋っている。その時俺に向かって色々と命令してくるが、こんなサイズのためまともに仕事できることなどない。わざと無理難題を押し付けて楽しんでいるだけだ。

「ちょっと水持ってきて〜…ん?あぁいや違うよ、ペット飼い始めたんだー、躾が大変でね〜」

 屈辱的な台詞を好き勝手に吐いている。そもそも冷蔵庫の中ではなく、わざわざ水の入ったコップを少し離した場所に置いてあるのだ。俺に持って来させるために。普通のサイズなら数歩の距離でも、今の俺にとっては結構な距離があり、水の入ったコップは重く、こぼさないように運ぶのは重労働だった。そうこうしているうちにカウントダウンが終わってしまう。

「もうっ、おそいよ!これはお仕置きだね〜」

「配信終わるまでキミはそこで反省しててね」

 立ち上がって水を受け取ったロボ子さんは、俺のことをつまみ上げ、今まで自分が座っていた椅子の上に俺を落とした。椅子の上は長い時間ずっと座り続けていたロボ子さんのお尻により、クレーターのようにへこんでいる場所は、密閉空間でもないのにサウナのような熱がこもっていた。熱だけでなく、ずっと座っていたことにより蒸れて体臭が残っている。女性の淫靡な香りと熱で、サウナなど目じゃないほどに頭をクラクラさせられながら、俺はニヤニヤと俺のことを見ているロボ子さんに向かって謝罪の言葉を叫んだ。ビルのように遥か上に位置するロボ子さんの顔に届けるために、喉が裂けて血が出そうなほど許して欲しいと懇願する。

「ごめんなさい!次はもっとはやく持ってきます!それだけは!おねがっ、許してください!許して!」

 言葉は返ってこず、視界がロボ子さんのお尻で埋まる。蒸れに蒸れていたロボ子さんの真っ黒なタイツに包まれた尻によって作られた椅子の上という地獄は、それだけではお仕置きじゃなかった。今でさえ頭がおかしくなりそうなほどつらいのに、上から真っ黒い、蒸れ蒸れの巨尻が隕石のように落ちてくる。ゆっくりと焦らすように腰を降ろしているのは俺を小馬鹿にするためか怯えさせて楽しんでいるのか、そうだとすればそれは成功していた。

「どすーん!」

 楽しげな声と共に、ゆっくりと降りてきていた尻が一気に俺に向かって落ちてきた。とてつもない衝撃と共に今までに感じたことのないほどの重量が全身に襲いかかる。すべすべとしたタイツに包まれていて、柔らかくて、そんなお尻のはずなのに、普通のサイズだったら小ぶりでかわいらしく、揉んだら気持ち良さそうな、そんな尻だというのに俺はそれによって死にかけていた。柔らかいことは柔らかい、だがそれはこの巨尻による拷問のファクターの一つになっていた。柔らかいせいで俺の体をぐにゅりと形を変えて包み込む。隙間なく全身を覆い込み、圧力をかけ、タイツに包まれた中の体温でじっくりと蒸らすのだ。元々蒸れていた尻は汗でしっとりとしていて、俺の体はその湿気だけでふやけそうなくらいだった。臭いも肌もロボ子さんに支配されているような、そんな気分にさせられた。

 気絶しそうなほどの責め苦に耐えていると、フッとその重さがなくなった。今まで俺を押しつぶしていた尻が宙に浮く。配信とやらが終わったのか、これで俺は許されるのかと期待するが、上がった尻はまた勢いをつけて俺を押しつぶした。希望が絶望へと一気に変わり、予期していない尻の圧苦にみっともなく呻き声をあげる。すると、ロボ子さんの体が震えて尻を通じて俺の体を揺らした。笑っているのだろう。ただ座り直しただけで随分な騒ぎようだと笑っているのだ。くすくすと、小馬鹿にするように。
 最初はただ座り直しただけだったロボ子さんは、わざと何度も座り直すようになった。一度尻を浮かして俺を勢いをつけて潰すのが楽しくなったらしい。たまったものじゃなかった。ただでさえ、ただ座られているだけでもきつかったのに、こんな仕打ち、あんまりだ。ぼろぼろと涙が出てくる。自分より小さいはずの女の子に、座り潰されていじめられて泣いているのだ。小学生の頃に戻ったかのような恥ずかしさだった。

「んっ…あれ、泣いてるの?ごめんね、いじめすぎちゃったかな」

 優しく微笑みながら立ち上がり、俺のことを机の上へと寝かせてくれるロボ子さんは、まるで女神のようだった。それまでの地獄は全てロボ子さんによるものであるし、ずっとしゃべっていなかったということは、とっくに配信が終わっているということで、嘘をついて俺へのいじめを楽しんでいたというのも、その時の俺は忘れていた。ただ泣くほど苦しいところから救い出してくれた女神のようにしか見えないほど追い詰められていたのだ。その日の命令はそれで終わり、あとは休ませてもらった。 

 次の日のことだった。水着を着ているロボ子さんに風呂場に連れられた。何をさせられるのだろうと考えていると、手のひらに乗せた俺にボディーソープをかけもみくちゃにした。丹念に手指で揉み込まれ、ローション代わりになったボディーソープで全身ぬるぬると愛撫されているような気分になり、少し勃ってきたところで、パッとそれは終わった。

「じゃあ今日はボクの背中洗ってもらおうかな、キミの体がスポンジね」

 ぽとりと背中に落とされて、立ち上がればまた圧倒されるような光景だった。背中だけで体育館のコートのような広さがあるのだ。今までない時点で少しビビってしまったが、兎にも角にも早いところ始めなければ、また折檻が待っている。俺は体全てを使うようにしてロボ子さんの背中に自分の身体についているボディーソープを塗りたくるようにまわった。だが昨日のお仕置きの恐怖が残っていて、早くしなければいけないと思ったのか、俺は足を滑らせて、その昨日の恐怖の元である尻のところまで滑り落ちてしまう。昨日泣くまで尻に虐められたのを思い出し、震えて動けなくなっていると、下から大地を揺るがしながら声が聞こえた。

「んー?お尻が怖いの?前にやられたから?じゃあぼくがトラウマ解消してあげるね!」

 そう言うと背中と尻の間で立ち往生した俺を引っ掴み、ぐりぐりとお尻に俺の体を突っ込んで俺ごと揉み始めた。ぬるぬるとローションのように動きを滑らかにするソープと、ロボ子さんのぷるんとした尻に全身擦り付けられ、何度も股間のモノも刺激される。両手で押さえようとするも意味はなく、勃起が止まらなくなっていく。抵抗なく擦り付けて遊んでいたロボ子さんは、出っ張りを感じて俺を目の前に持ってくると、ニヤニヤと笑いながらこう言った。

「あれ、興奮しちゃってるの?…じゃあぼくが主人としてどうにかしてあげようかな」

 俺の体を水で洗い流し、風呂から出るとロボ子さんは俺のことを割り箸に輪ゴムで縛りつけた。手は後ろに回され、足は完全に固定されている。輪ゴムごときに俺の自由は完全に奪われた。
 ロボ子さんはその俺付きの割り箸に向かって唇を近づけてくる。そわそわと何かを期待するような目で俺がロボ子さんを見てしまうと、からかうような口調でロボ子さんは言った。

「え〜?まさかキスしてもらえると思ってたの?ふふ、触れてあげないよー、キミは息だけでも充分でしょ?」

 近づけられた唇は窄められ、突風がそこから巻き起こった。

「ふう〜、あはは、息だけでびくびくしちゃってる、そんなに良いにおい?ぼくの息」

 甘い息だった。とろけるようなお菓子とも違うこの臭いと、どうしても隠しきれない口臭とが混ざり合った息をかけられ、どうしようにも興奮してしまう。それに必死で耐えている俺を見て、ロボ子さんは追いうちをした。

「はあ〜」

 今度は口をすぼめて吹きかけるのではなく、大きく口を開けてため息のような息を吐きかけてきた。もわっと熱気と湿気を含んだ息が、霧のように俺の体にまとわりつく。甘い口臭に身悶えし、馬鹿にしたような目で見られ興奮して、でもギンギンに勃ったモノは、両手が縛られてて触れることも出来ない。そんな状態でもう一度たっぷりと息を吐きかけられれば、俺は触られてもいないのに射精をしてしまった。その瞬間、ロボ子さんは大声で笑い出す。

「あはははは!やっぱり息だけでイっちゃったね!みっともなー!」

 そんな罵倒でも興奮してしまう。今まで奴隷のようにこき使われて、馬鹿にされて、虐められて、そんな事をされるたびに、俺はこんな、ひどいことをされているのに興奮するようになってしまった。俺はこれからも、言うことを聞いて、必死で媚びを売って、捨てられないように努力しながら、またあの仄暗い興奮に身を委ねるのだ。