ㅤ自分は単独行動で隠密していた。港町ポートカプールを突如襲った爆破テロ犯を追跡していたのだ。爆弾岩による陽動から原子爆弾を起爆され壊滅的な被害を受けたであろう……少女へは契約の魔法で対策しておいた、黄金騎士は物理的には死なない、それでも無関係の人達は巻き込まれ死んだはずだ。犯人の目的は不明、所属すら本当にイェルス兵なのか怪しい。バラバラになった自分の断片が実行犯に張り付いている。情けない姿であっても関係ない。少しでも情報を持ち帰れさえすれば勝ちなのだから。死なないということに絶対の自信を持っていた。しかしそれすら対策する相手がいたことをまだ知らない。
ㅤイェルス兵の黒い外套に付着しているようなものだろうか。体は徐々に再生しつつあり断片が引き寄せ合っている。糸くずにしか見えなくても動いていたら目立つだろう。背中部分で本人には見えないのだけは幸いだった。

「いやはやオルフェ様もえげつない手段をとりますね」

ㅤ視界は回復しておらず場所や人物の把握はできないが、誰か別に男の人が複数いるようだ。イェルス兵は正気を失っていて片言でしか話せないだろう。もしくは黒い卵状の神器、混沌に操られている可能性もある。自分と同系統の能力で似ているのだ。一体化と分体化、どうして自分だけができると思ったか。相手の意志を無視して乗っ取れるのであれば上位互換だ。

「定命が気安く僕の名を呼ばないでほしい。我は混沌に連なるものぞ。私に利用されることを誇らしく思ってね」

ㅤ得体の知れない気持ちの悪さだ。オルフェと呼ばれた男は人格がぶれている。自分を見失っているかのようで、まさしく混沌そのものといえよう。諸悪の根源として黒幕だろうか。少なくとも味方になる光景が想像できなかった。姿さえ確認できるなら……もしくは何かしら探知するのに特定できる装備があるのなら所在を突き止めれる。情報を引き出すため、行動を起こすのはもう少し待とう。

「ははっ……オルフェ様。しがない怪盗風情に情け深いお言葉です。お金さえ頂けるのであれば地獄の底までご一緒しましょう」

ㅤ悪の手下として怪盗や泥棒というのはよくあるものだ。日の目を見ない影の者、下衆とも外道とも畜生とも。社会から弾かれた弱者達の成れの果てでもある。ただ、それでもやっていいことと悪いことはあるのではなかろうか。この世界そのものを憎んでいるならば……絶滅すら厭わない、他人がどうなろうと関係ない狂信者にも似ている。混沌が何かは自分も知らない。ただ、この世界の脅威とだけ金天使ヤカが語っていた。そんな奴らとつるんでいるのだからまともじゃないのは確かだ。お金の為ならば魂すら地獄に染めれるか。きっと今までにも悪どいことをしてきたのだ。因縁としてカルマは最低まで振り切れていることだろう。

「混沌ヲ……モット混沌ヲ……」

ㅤイェルス兵が意味をなさない言葉で呻く。混沌としか喋れない操り人形だ。本人の意識が消えてなくなっているのか。混沌に飲まれて死んだ者の末路にしてはあまりにも……いや、目先の同情は意味のないこと。注目がこのイェルス兵に集まったかもしれない。自分が発見されることを恐れた。動くに動けない。

「ああ……残念だがお前の役目はもう終わりだ。母なる混沌の胎内に帰ってね。大いなる膣道を通り砕かれ一体化し糧となる誉れを受けなさい。正しき信心であればまた産まれることもできよう」

ㅤ吸い込まれる。気持ち悪い何かに吸い込まれる。正体がまるで掴めない。このままだと取り返しのつかないことになると判断し動いた。慌てて自身の体を繋ぎ合わせて蘇生する。イェルス兵の最後の光景だけが見えた。金髪で足元まであるスーパーロングヘアーの裸女……いや胸やお尻といった女性特有の膨らみはあるが生えている。両性具有として男でもある神話生物のような誰かが存在を食べたのだ。混沌の卵が両性具有の股間に装備されており、そこにイェルス兵は取り込まれたかのようだった。

「おや、小虫が紛れ込んでいたようだ。一緒に食べられたいのであれば混沌を望んでね。この姿を見たからには生かして帰さん。混沌の贄となりなさい」

ㅤやばい奴だ。本格的にやばい。たぶんこいつがオルフェだ。魔改造されて濃縮された混沌を全身に漂わせているキチガイだ。動けなかった……逃げないといけないのに、体が言うことを聞かない。あまりの狂気に混乱したのだ。

「稀代の怪盗さんにお客様なんて珍しいからお茶を入れにきたにゃー。にゃーお取り込み中だったにゃー、うにゃにゃー!?」

ㅤ誰かが部屋に乱入してきた。この場にいる人物が増えた。情報からわかっている範囲では、丁寧な口調であった稀代の怪盗、両性具有のオルフェ。そして新たに加わるのが猫っぽい女の子だ。黒猫のような耳から尻尾から瞳まで、足も手も本格的な肉球となっており獣成分が多めだった。少女ですら肉球化しているとはいえ人間の手の原型を留めているというのに……いや、そんなことはどうでもよかったか。とにかく黒猫娘はキツめのレオタードでぴっちぴちのボディーラインが視線を釘付けにする。股間からふとももにお尻やお胸までエッチだったろう。
ㅤまあ絶体絶命な中、そんな中で黒猫娘はすっ転び、すごい勢いでヘッドスライディングをかましてきた。お茶を入れた容器から何までぶちまけている。熱湯がこっちに滝のように降り注ぐ。熱い、死ぬ。天然ドジっ娘なのか……いやこっちに突っ込んでくる。やめろ、来るなと悲痛な叫び声をあげてしまった。

ㅤグニャリ……ドカバキグシャ……ブチチチチ!

ㅤうつ伏せの迫り来るおっぱいにすりおろされる。熱いお湯が潤滑油のようになる。レオタードにぴっちり浮かび上がるおっぱいが逃げ場を塞いだ。普通の服装ならばある程度ゆったりした隙間がクッションになって衝撃を和らげてくれることもあろう。だがこの場合、全身の破壊力を余すことなく叩き込んでくれた。床一面を浸した熱湯に焼かれ、上からはズリズリ削られる。何回分殺されただろうか……ほんの一瞬でおろし大根になったような気分だった。

「てへっ、びっくりして転んじゃったにゃー。それじゃにゃーはこれで帰るのにゃー」

ㅤ黒猫娘は自分を胸でミンチにしてすりおろし、レオタードへの味付けのようにしたまま帰るつもりらしい。それならそれで修羅場から抜け出すのに助かるのだが、この黒猫娘はお茶を入れに来たのではないのかとツッコミたかった。何なんだこいつ、みんな頭がおかしいんじゃないか。危ない薬でもやってるかのような奴らばっかだ。

「逃がさん貴様らだけは。我が股間のモーンブレイドで仕留めてくれようぞ。気持ちよくいっちゃっえ、死ね!」

ㅤ両性具有のオルフェは全裸で足下まである金髪をマントのように翻し決め台詞を吐いた。すると股間部分のもうひとつの神器が具現化する。ちゃんと鑑定したわけではないので神器か知らないが……とにかく意味不明で神々しかった。男根が鋭利に研ぎ澄まされ伸びてゆく、長剣の姿になったそれはモーンブレイドなのだ。個人を特定する装備に違いないと気合いで正気に戻り鑑定の魔法を発動する。

ㅤ★悶々(モーン)ブレイド

ㅤもはやモーンブレイドですらない。レプリカとしての量産品であろう。だが一応は神器だ。股間から生えていようが神器なのだ。強力な力を宿していることだろう。混沌属性の追加ダメージ、地獄属性の追加ダメージ、スタミナ吸収、二刀流の強化、装備としての目立つ効果だ。二刀流とは男でもあり女でもあるあれか……犯される、この武器で攻撃されると精神的にも肉体的にも殺られる。まるで魂そのものを破壊することを目的としているかのようで冒涜的だった。
ㅤ黒猫娘は逃げようとするも無理だった。稀代の怪盗はオルフェに加勢するようで、素早い身のこなしから足払いで動きを封じにきたのだ。直撃した一撃で体勢を崩して取り押さえられる黒猫娘、両性具有のオルフェが迫ってきていた。

「羽派閥だけでなく猫派閥まで裏切る気かにゃ!?」

ㅤ黒猫娘は取り押さえている稀代の怪盗へ叫ぶ。派閥……派閥というと黒天使も何か言っていた気がする。そうだ、盗賊ギルドだ。ここはダルフィでアジトのひとつなのかもしれない。

「転生者に加担する主神の下僕でありながら何をいまさら。盗賊ギルドは社会の闇、混沌こそが相応しいのです。我々の動きを監視していたのでしょう。転生者の身の危機に助けにきたのでしょう。放っておけば無駄死にせずにすんだものを……いや死すら生ぬるい地獄へのショータイムです」

ㅤ稀代の怪盗は黒猫娘にとぼけても無駄だぞとばかりに責め立てる。死すら生ぬるい地獄、何を始めるつもりだ。黒猫娘の胸部に張り付く形で匿われている自分では何もできないのか……蘇生して戻ったらこの情報を伝えなければ。

「おやおや、もしかして転生者さんは死んで戻ったらとか考えてるな。残念、地獄に送っちゃうからそれも無駄なんだよ。バカめ、蘇生対策をしないわけがなかろう!」

ㅤ両性具有のオルフェは蘇生すら対策しているらしい。地獄ってなんだ。そもそもいつも当たり前のように蘇っていて深く考えていなかった。自分の体の拠り所すら不明なのだからわかりようもない。考えることを放棄していたのだ。まずい、詰んだかもしれない。黒猫娘を見捨てることになるが自分だけでも逃げなくては。慌てて体を再構成する。帰還の魔法を唱えようとする。なりふり構わず最善を尽くそうとしたのだ。
ㅤ自分より速度の早い相手の行動。いつもは騎乗のような形で補っていた部分だが単独行動では致命的だ。一方的に何かをされたとしても抵抗できないのだ。霧のような何かが自分を覆い始めた。声が出ない、魔力の流れを阻害される。

ㅤそれは沈黙の霧だ!

ㅤ自分にとって魔法という切り札を封じられたと同時に、周囲へ助けを呼ぶこともできないだろう。叫び声すら遮断されてしまうのだ。あ……うわああああ、もうダメだ。帰還の巻物なんて持っていない。脱出の巻物もだ。読む猶予すら与えてもらえないだろうし、空間跳躍の待ち時間で何をされるかわからない。本当はテレポートの魔法をもっと早くから使えばよかったのだ。失策、欲を張りすぎた。どうせ死なないからと能力を過信していた。
ㅤ始めに手を出されたのは黒猫娘からのようだ。両性具有のオルフェが黒猫娘の唇を奪うと急に動かなくなった。混沌に支配されたのだろうか、肉体を操られるのだろうか。一体何が始まってしまうのだ。なぶられる、おかされる、言葉にできないようなことをされる。無駄だとわかっていても飛び上がって駆け出そうとする。黒猫娘の胸の上で揺れている。うまく動けず転倒した。

「さて、お楽しみの邪魔をしてはいけませんので怪盗は華麗に去るとしましょう」

ㅤ稀代の怪盗は部屋から去っていくのだろう。周囲の見張りもするはずだ。これ以上の登場人物は見込めなかった。誰かが都合良く助けに来てくれるという幻想すら打ち破られたばかりなのだから。

「僕だけが喋っているのも独り言みたいで面白みがない。せっかくだからこの黒猫娘も操って一緒に犯してあげるね。感謝せよ、美女の蹂躙ぞ」

ㅤ両性具有のオルフェは自分を見下ろす。大きさはレベル20ぐらいか。黒猫娘も同じぐらいだと思われる。女の子の胸の上で転倒していて滑稽だったろう。覆い被さるように両性具有のオルフェは動いた。巨体が天井となり垂れ落ちる裸のおっぱいがご挨拶をする。

「お前はおっぱいが好きなんだろう。戯れで座興だ、乳首に御奉仕しなさい。感じさせてね」

ㅤメテオのようなおっぱいにくっついている先っぽ。つんと上から潰すように押し付けられた。どれだけもがいてもビクともしない。相手からしたら暖簾に腕押しのようなものだ。感じられなさすぎて、段々とこねくり回すようにかき混ぜていく。むにっとぐちゃっと何度もミンチにされていく。黒猫娘のおっぱいもオルフェのおっぱいも柔らかくて強かった。肌のハリとキメがヤスリのように自分を削り取っていく。あまりにも呆気なさすぎて、おっぱいで乱暴に殴られさえする。押し付けられるふたつの球状が平らに変化する。動きが止まれば柔らかい檻となり、身動ぎで粉砕機になり、交互に繰り返し続ける。

「雑魚め、前座で果てるなよ。ほーら、ザーコザーコ。黒猫娘ちゃんも濡れてきてるって。お股でグリグリしちゃおーね」

ㅤ平面の自分では歯ごたえがなさすぎたらしい。今度は乱暴に摘みあげられ指先でクシャクシャに丸められる。1cmの球状にされた。紙屑形態でより小さくなってしまった。圧縮された分硬くはなってるだろう。だがこんな小ささで何を感じるというのだ。

「にゃー、お股がウズウズしちゃうにゃー。それに体も勝手に動くにゃー。小人さん、ごめんにゃー。エッチなお股で潰して殺しちゃうかもしれないにゃー」

ㅤ黒猫娘のレオタードのハイレグ、服越しにお股の割れ目部分に乗せられたらしい。両性具有のオルフェはニヤニヤと見下ろしている。思わず自分は睨みつける。巨大なものが自分の上に移動したのを感じる。黒猫娘の手だと気付いた。紙屑はちょうど気持ちいい部分にいる。何をされるのか一目瞭然だった。

ㅤグリグリグリグリ……コリッ、メキグシャッ!

ㅤ20倍差オナニーだ。黒猫娘は指先で紙屑を潰しながら押し付けている。感じているのかにゃんにゃん喘ぎながら行為に及んでいる。助けにきたはずの子だった。それがどうしてか助けようとした相手を気持ちいいことに使っている……どうかしている。両性具有のオルフェに操られ混沌の玩具になっていたのだ。許せざる悪だった、キチガイ過ぎる。こんな危険な奴を野放しにできるだろうか。もし自分の仲間達にまで手出しをしようものなら……ありとあらゆる苦痛を与えて始末してやる。殺意だけで踏みとどまっていた。一体化の真髄である乗っ取りはどれだけ恐ろしいか目の当たりにしていた。

「女の子のオナニーで死んじゃうザコには何もできないにゃー。助けようとしてたのにおっぱいですりおろされててうけるにゃー。逆らっても無駄だからお股で気持ちよく死んじゃえ!」

ㅤ黒猫娘はレオタードのお股部分を少し引き上げてずらした。顕になる女の子の神聖でエッチな谷、こんな時でなければ小人にとって拝みたくなる景色。だが乱暴に犯されている紙屑に自由などない。入れられる、食われる。この世界が止まってほしかった。心を許した少女だから女の子の洞窟を受け入れられたのだ。それを無理やり挿入されて耐えれるはずがない。やめてくれ……懇願しようが声すらでなかった。

「フィナーレはまだ早いよ。転生者には今までどの世界でも邪魔をされてきたわ。今回は神々の力が素晴らしく増してるもんね。混沌の具現化が早かったですの。脅威の芽は潰せるときに潰すでござる。憂さ晴らしだ、徹底的に破壊し尽くしてやる」

ㅤ両性具有のオルフェは股間のモーンブレイドを構えた。自らの手で何度もしごき力を貯めている。チャージでダメージを跳ね上がらせるのだ。黒猫娘のヒクヒクする門前に置かれた紙屑の自分。処刑される前のやり取りを露骨に見せられる。戦闘力と共に膨れ上がる両性具有のオルフェの股間、自分よりも遥かに大きな男根に犯されることを誰が想像できよう。それも性行為の真っ只中に添え物のように置かれてだ。イヤだ……よりにもよって男の巨大な部分なんて見たくもない。優しくて可愛い女の子が見たいんだ。心からの叫び、煩悩に染まっているが性的なら性的で望まない趣向を強制されるのはもはや精神へのレイプだ。吐き気がした。目眩がした。頭が痛い。何が起こるかなんて考えたくもない。視界を閉ざすことだけが精一杯の抵抗だった。

ㅤシコシコシコシコシコシコシコシコ……

ㅤ卑猥な擦れる音が脳を壊す。混乱し朦朧し理性ごと無理やり破壊しにくる。音が一瞬止んだ。終わったのだと解放されたのだと無理やり解釈した。目を開けた、助かったのだきっと。
ㅤ亀頭さんとこんにちわ。ハロー邪神の下僕です。ゆっくり狂っていってね、死ね。挿入、押し込み、強制連行。黒猫娘の地獄の膣と両性具有の混沌の男根が合体する。哀れな紙屑を引き潰しながら何度も往復して気持ちよくなる。

ㅤズドン……ズドン……ビュルルル!

ㅤ感覚が壊されていく。ピストン運動と腟内暴力と愛液の酸と精液の酸で調理されていく。生きている圧力鍋ですりおろした小人を愛液汁に精液汁を加えて食べている。混沌の力で魂を取り込まれるのが先か、地獄の力であの世に引きずられるのが先か。蘇生対策というのは相手の意識や意志、とにかく精神に類するものを侵食することだったのだ。もっと根源にある魂を標的とした攻撃であって、仮の体などいくら壊しても無駄だとわかっていたのかもしれない。
ㅤ今度ばかりは死んだ。肉体ではない精神が死んだのだ。ちっちゃくなって女の子とイチャイチャしようなんてやましいことばかり考えていたのが悪いのかな。せっかくの特殊能力だって、思えば少女と遊ぶことの大半に使っていた。誰かを救うために使っていなかった。何が転生者だ、何が世界への重要な因子だ。後悔ばかりが浮かび上がる。もう少女に会えないのかな……黒天使にも、黄金騎士にも。嫌だと抗っても心が折れている。魂単位で汚染された。大切な何かすらどんどんと薄れていって忘れていく。
ㅤ強すぎる衝撃というのはそれ以外を弾き飛ばすらしい。対抗するにはもっと強い衝撃を与えなければならない。これ以上のインパクトを誰が与えるというのか。闇の中、もはや何も見えない。触れるものを感じる体も失われた。蘇生できなくなったのだろう。後は混沌か地獄かのどちらかに取り込まれるだけだ。

『死にたくないかい?ㅤいや、君には死んでも死なれては困るんだ。これから具現化する邪神の手綱を握ってもらうんだから……混沌の下僕程度に手こずっていては話にならない』

ㅤ誰だ。こんな場所にまで語りかける奴は。聞き覚えのある声に口調、自分はこいつを知っている。

『ガイドがガイドたる所以をお見せしようじゃないか。さぁ目を開けてごらん。君の本当の体と居場所があるよ』

ㅤガイド妖精のノルンだ。担当する案内は表世界ではなく裏世界だったのかもしれない。誰かの声を確認できて安心したからだろうか。目を開けれるようになった。闇より這い出でし再びの場所。ここは物語の始めに訪れた場所。

ㅤアーカーシャの回廊。

「収穫のクミロミ様も永遠のネヘルタード様も訳あってお取り込み中だ。代わりにボクがあの世とこの世の中継地点を案内してあげようじゃないか」

ㅤ妖精のノルンが話しかけてくるものの、言葉の圧というのか音が波となって押し寄せてくるかのようだった。本当に妖精なのだろうか。見上げてみると巨大過ぎる顔があった。小さいはずの妖精が巨人になっている。倍率でどれくらいか換算できなかった。神々の単位で数百レベルはあるのだろうか。自分が1レベルでここにきたのなら200倍の格差はあるだろう。思わず怯えて悲鳴をあげてしまう。また男だ。犯されるのはもう嫌だと泣き叫ぶ。

「いや……ボクにはそんな趣味はないからね。弱い者いじめをする側でもないし、むしろされる側だというのに。やれやれ、あんまり暴れると力加減を間違えて潰しちゃうから大人しく動かないで」

ㅤ不機嫌そうな妖精のノルンが巨大な手を降らしてきた。捕まったら何をされるかわからないとパニックに陥る。摘もうと挟み込む指先を右往左往しながら回避していく。潰さないよう手加減をしていたためか動きが鈍いのかもしれない。イライラする時間、手間取らされていくせいで手加減がなくなっていく。ドンッと手で地面を叩きつけたようだ。衝撃波で転がり全身を強打させられる。死ぬ、殺される。惨めな小虫みたいにすり潰される。いやだ、助けて誰か……ここで死んだらもう蘇れない予感がした。命の軽さに慣れすぎていたのだ。まるで天罰かのような一撃だった。

「言い忘れたけど、君は魂がボロボロな状態だから瀬戸際でここに来たわけ。ここで死んでも蘇生できるなんて甘く思わないでよね。まったく……面倒なことばっかりだ」

ㅤ潰されずにすんだ。妖精のノルンの手の上に乗せられた。助かった、生きてる、死んでない。体の骨が衝撃波だけで砕かれて何本か折れている。動けなくて虫の息だった。

「あんまり乱暴したら可哀想にゃー。ノルンじゃなくてにゃーが持ってあげるにゃー。おいでおいでにゃん」

ㅤ猫口調は黒猫娘か。初対面からろくにどんな相手か知り合う機会はなかったのだが、やはり縮尺がおかしい。妖精のノルンと同程度に神々の体格差、数百レベルの大巨人達ばかりだ。

「定命が脆くて儚いってことは知ってるよね。君みたいなドジっ娘に触れさせたらあっさり殺しちゃうからダメだ。神々が定命から離れていった理由すら忘れたのかい?」

ㅤ妖精のノルンが何気なく言う。あっさり殺される。ドジっ娘にあっさり殺される。頭の中で反響していく。これ以上死ねない状況で殺されたくない。ギュッとノルンの手にしがみついた。震えが止まらない、死にたくない。可愛い女の子であってもプチッと命を消されては本当に終わりになる。発狂して叫んでいたかもしれない。もう死にたくないと。

「猫とネズミは……いや、巨人と蟻では仲良くできないからかにゃ。定命を護るために永遠の盟約に組み込まれたはずだったにゃー。物知りなにゃーは偉いにゃん」

ㅤまた永遠の盟約か。神々に対する誓約だろうか。まあ巨人と蟻が仲良くできないのは当然だ。触れるだけで命を奪ってしまう。命がそれこそ無限になければ話にならない。蘇生できるという利点を奪われて今、巨人に生殺与奪を握られているという意味は重い。ほんの気まぐれでもこの世界から消されるし、意図しなくてもうっかりで消される。消滅……もともと転生しなければそうなっていた。元に戻るだけかもしれないがまだ志半ばだ。受け入れたくない。

「話が脱線したけど、ここは混沌や地獄に対する魂の最終防衛ラインみたいなものさ。転生者候補を拾ってくるのにうってつけな世界の繋ぎ目でもある。ちょっとばかし不安定になっていて別世界からの混ざりものさえ訪れるくらいにね。小難しい話だけど本来君が難破で死に続けて消えるという世界から、可能性としてこちらの世界へ転移し物語を綴っているともいえよう。それだけ次元間が……」

ㅤ妖精のノルンが何を言っているのか理解できなかった。混沌や地獄への対策として魂を留めている場所がここなのだろう。転生の儀を行った場所でもあり死者や魂の処理を行う仕事場なのかもしれない。ただ別世界からの混ざりものとなると混乱する。本来、通常の死ではここを訪れないと仮定する。ならばどこか別の世界で魂に致命傷を負い流れてきた。そうなると自分の存在は魂として重複するのではないか……下手をすると精神だけでなく肉体すら不具合を起こしかねない。
ㅤ可能性の世界へ引き寄せたのは誰だ。それこそ世界そのものを取り込んだかのようで、全ての神々の力を合わせたかのような超常的な奇跡になる。これから具現化する邪神、その手網を……考えたくなかった。思考を停止する。そうだ、物語ならご都合主義なんだ。そういう設定なんだ。神様は偉大だから何でもできるんだ。そうに違いない。そんなことよりもっと大事なことがあるじゃないか。

「ちっちゃい定命ちゃんにいっぱい語っても混乱しちゃうにゃー。にゃーほど賢くないから当然にゃん。どうして大きさが違うのかとか、さっき死んでなかったとかもっと疑問もあるはずにゃー」

ㅤ黒猫娘が憐れむように自分を見下ろしてくる。体格差から視線にすら圧倒される。そうだ、たぶんダルフィの盗賊ギルドで黒猫娘と一緒に犯され殺されたのだ。両性具有のオルフェにことごとくやられた痛みはおぞましかった。まあ、終わった話は忘れよう。思い出したくもない。
ㅤ妖精のノルンと黒猫娘は少し言い争っているようだ。当事者なのと、後から根掘り葉掘り聞かれても面倒だから今説明しておくというノルンの弁。ちっちゃい定命は頭もちっちゃいからどうせすぐに忘れるし難しいことはわからないという黒猫娘の弁。ドジっ娘のくせに200倍体格差のせいで逆らえない。ここでも小虫だとわからされてしまうのが悔しかった。でも命は惜しいので黙っておく。

「じゃ長話もあれだから要件だけ手短に済まそう。早く復活して表世界に戻ってもらわないとね」

ㅤ妖精のノルンは話を巻いた。大きさが違うのはそもそもこれが元の大きさらしい。あくまで分身を下界に飛ばしていたような扱いだ。金天使ヤカが分身だったのなら他の者がどうして本体だと思い込んでいた。慢心と錯覚だ。黒猫娘が死んでたのにここにいるのも魂のセーフティーネットに引っかかったのだろう。
ㅤさてここでどうしても気になることがひとつ。本体という概念だ。分身を生み出し過ぎている自分が言うのもなんだが、とある仮説がある。魂という養分を複数ある体に枝葉の如く配分することで分身は機能しているとする。意識を飛ばした先がとりわけ比率を占めている。ただあくまで樹木の幹が本体の扱いで根っこ部分が魂と連動しているようなものだろうか。魂にダメージを負ってもその分身単位でしか食らわないのではないか。そう思いたいのだが、実際には違った。意識は一体化している少女の元か黄金騎士の元へ復活する見込みだったのだ。それがこんなところにまで追いやられる羽目になったのが一旦。連鎖して根っこまで深く攻撃を受ける場合もある。今回のケースが初めてだったが混沌属性と地獄属性は魂への干渉が強い属性で注意が必要だろう。

「さて真のフィート解放の儀を行おうじゃないか」

ㅤ妖精のノルンは企むような笑顔を浮かべていた。それに便乗するかのように黒猫娘も小悪魔的に微笑む。自分はどこかに連れられているようだ。大きな桜の木、血に染まっている幹に誰かが磔にされていた。

「世界を騙し法を食らうは暴食の罪!」

「世界を誑かし個を食らうは色欲の罪にゃ!」

ㅤレベルが足りていないという疑問はあった。レベル10で一般フィート、レベル20で固有フィートの条件だ。それを満たすだけのものは自分にはない。そのはずだったのだが……転生前の自分の体がレベル20相当で血染めの桜に磔られていた。これが真の体だ。そうか、本体はここにあったのか。経験値はマイナスにオーバーフローしていたのではない。注ぎ込まれる先が違ったのだ。

ㅤ多重分身フィート。あなたはレベル依存で分身を生み出せる。
ㅤレベル偽装フィート。あなたは世界を騙しレベル処理で不正をする。

ㅤ世界を騙すための仕組みと分身、ヤカテクトに一杯食わされた。自分の体が最初から複数あったのかもしれない。もしくは死んで消えるぞという脅しすら裏を取らなかった自分が悪いのかもしれない。仮初の体を自分だと最初から思い込まされていたのだ。すり替えられていたと誰が気づけたか。あまりの衝撃の事実でさらなるインパクトとなった。

「本体への紐付けは終わったから君はある意味不滅さ。この血染めの桜さえ無事ならね。試しに黒猫娘に殺されてみるかい?」

ㅤ言い終えるまでもなく妖精のノルンは自分を黒猫娘に向かって放り投げた。乱暴に宙を舞う。黒猫娘が慌てて掴もうとしているのだけはわかった。大きな黒い猫の手が肉球が迫ってくる。両手で挟むようにしてキャッチするつもりらしい。200倍単位での体格差だ。しかもドジっ娘にそんな精密な動作なんてできようものか。

ㅤパシン!

ㅤ真っ赤なお星様にされて肉球を彩るミンチになった。

「やっぱり定命はよわっちすぎるにゃー。ちょっと掴んだだけなのに死んじゃったにゃー。可哀想に今度はもっと丈夫に生まれてくるにゃー」

ㅤ黒猫娘はまるで蚊でも潰したかのように肉球を両手で擦り合わせ痕跡すら消し去るのだった。潰された小虫にまだ意識と感覚が残っていたことを知る由もない。
ㅤ濡れているお股で赤い液体を拭う。愛液と混ざりあった自分はやはりこの女の子のオナニーに巻き込まれる定めなのだろうか。恐怖は今日だけで過剰に供給された。死にたくないと強く願ったのが裏目に出たようだ。

ㅤあなたは液体化してしまった。

ㅤ平面化により潰れ耐性を得て変形できるようになり、さらにミンチになっても液体判定として死ににくくなったようだ。間が悪い……女の子の股間でお持ち帰りされてしまう。少女の元へ帰りたいのに何ということだ。

「黒猫娘もそろそろ下界に戻るべきじゃないかい?」

ㅤ妖精のノルンも気付いてくれない。

「ちょびっとお楽しみをしてから戻るにゃー」

ㅤ黒猫娘が地響きを立ててどこかに歩いていくようだ。もしかすると自分の存在に気付いてくれるかもしれない。どうにかして話しかけなければ、帰りたくても帰れない。
ㅤ200倍格差の世界に液体として放り込まれるなんて誰が想像できたか。ようやくお望みの可愛い女の子と触れ合えるとはいえ、気付いてもらえないのはまずい。神々の住人の生活を知りうる好機かもしれないが深追いは禁物だと反省している。まあこうなった以上成り行きに身を任せるしかないのか。
ㅤ色々と考えていると空間が跳躍したようだ。神々の世界においての黒猫娘の部屋だろうか。股間に染み込んだ体じゃ床とふとももしか見えない。床はふかふかの絨毯が敷かれているようで良い部屋なのだろう。

「定命ちゃんはもう死んじゃったかにゃ。もし生きててどこかに張り付いてるなら返事をするにゃー。返事をしなかったらオナニーを始めちゃうかもしれないにゃー」

ㅤ定命ちゃんは自分のことだろうか。黒猫娘が確認するように股間をさすっている。黙っていたらオナニーに巻き込むという脅迫付きだ。20倍で巻き込まれた際ですらえげつなかった。200倍だと液体化してるとはいえどうなるのだろう。愛液に混じり食われてしまうのか。ろくな目に会いそうにない。
ㅤ気付いてくれと叫んだ。よわっちぃ定命だから大事にしてくれと懇願した。死にたくないから殺さないでと泣き喚いた。声が届いてくれと祈った。

「にゃん、良い声で鳴いてくれて嬉しいにゃー。これから分身の子とはいえ黒猫娘のにゃーはお世話になると思うのにゃ。だから自己紹介ぐらいしときたかったにゃ」

ㅤ愛おしそうに黒猫娘は女の子座りをし股間を撫でていた。魔力の流れを感じる。復活の魔法を使ってくれたようだ。しかも平面化した体ではなく久々の生身の厚みのある肉体で蘇った。

「んー、肉球の指先部分より小さすぎて掴むと潰れちゃうにゃ。お座りした女の子のふとももの影で隠れちゃうなんて弱すぎるにゃー。もしかして可愛い子に殺される趣味なのかにゃ?」

ㅤ今までの経歴を心の中から読まれたかのようだった。断じてそんなことはないと否定できない日頃の行い。黒猫娘も可愛い子に分類されていて、死ぬリスクがないなら遊びたいなと思わないでもない。
ㅤ黒猫娘も可愛いよと口説いていた。少女がいながらまたもや浮気だ。ご機嫌取りのために黒猫娘と円満な関係になるためであってやましいことなどない。

「定命のくせに、すぐ死んじゃうくせに可愛いって女の子を褒めるだなんて生意気にゃー。でもありがたく受け取っといてやるにゃ、撫でてつかわすにゃん」

ㅤあ……と驚く暇すら与えられず、上から撫でたつもりで降ってきた肉球にミンチにされた。ふとももの間に手を挟んで女の子っぽい仕草だったのだろう。それなのに手加減がまるで出来ていないドジっ娘だ。
ㅤ返事や手応えが急になくなったのを察してミンチの液体に復活の魔法を連打していた様子。死んでも死なせてくれない。なにそれこわい、悪意なく行われる途方もない悪意だった。

「浮遊大陸に珍しい定命が来ていて嬉しくてはしゃいじゃったにゃ。ごめんにゃん、でも命ぐらいすぐ復活させてあげるから許すにゃー」

ㅤ浮遊大陸は確か黒天使が元いた場所でもある。神々の世界への繋がり、アーカーシャの回廊がたぶんそこにあること、なにより住人が200レベルが標準そうな気配。情報そのものは今日だけであまりにも増えて整理がつかなそうなぐらいだ。
ㅤいっそ深いこと考えず気持ちいいことしたい。あまりに疲れたから可愛い子に優しく気持ちいいことしてもらいたい。体格差で殺されるだろうけど、女の子の柔らかい部分が好きだから死ぬほど包み込んでほしい。世界が優しくしてくれないんだ。女の子ぐらい甘くてもいいだろう。

「ん……定命ちゃんはいっぱいいっぱい辛い思いをしてきたんだにゃ。いい子いい子してあげたいけど、さっきみたいにミンチにしちゃうしにゃ。挨拶代わりに何かしてほしいことはあるかにゃ?」

ㅤ仲間になってほしい旨を伝える。なんだろう……味方になってほしかった。地上なら少女や黄金騎士、黒天使が信用できるだろう。ただ再び浮遊大陸に何らかの理由で移動することがないとも限らない。心細いのだ、見知らぬ土地でさらなる巨人達に囲まれるのは。

「地上にいる分身じゃなくて本体のにゃーに頼むなんて身の程知らずの定命にゃ。でも連れの少女の子の顔に免じて許してやらないこともないにゃー。やっぱり大きい娘の方が好きとかいう変態に違いないにゃ!」

ㅤ照れ隠しだったのだろうか。小虫である定命がふとももの間にいるというのに黒猫娘はモジモジし始めた。自分は相対的に1cmぐらいしかないのだ。女の子座りのふとももが、ぺたんと床についているお尻やお股が、震源となり天変地異を起こす。上下に揺れで跳ね上がったかと思うとモジモジするふとももに左右から叩きつけられてバウンドする。助けてという叫びは股下に消えた、黒猫娘は僅かに前へ動いたのだ。

ㅤズリッ……グシャリ!ㅤペッタン、ムニュウウ……

「へんたい、へんたい、モジモジする女の子に殺されてるにゃ。お股にも勝てないくせに仲間になんてなれるのかにゃ?ㅤせめて気持ちいいことで満足させてくれるなら一体化してやらないでもないにゃん、さあ早く能力を使えにゃ!」

ㅤもはや命令だった。女の子っぽさが小虫を殺す暴力となる。よく見ると黒猫娘は三つ編みのおさげの黒髪の子であり、そこにドジっ娘が組み合わさって同じ大きさだったならと惜しい子でもある。大きさが違うなら体を共有してもらうしかない。好意に甘えて一体化の儀を行ってもらう。誓約は……出会ったばかりだがどこまで譲ってくれるのだろう。

「どうせ定命の小ささだと何もできないからサービスで体ごと共有してやるにゃ。代わりに気持ちいいことをいっぱいさせるにゃん。あと寂しい時は一緒に添い寝して側にいるにゃ。それからそれから……少女を含めて猫を大事にするにゃー」

ㅤ同化部位は体。定命はレオタード装備になる。誓約は気持ちいいこと、寂しさの共有、猫を大事に。

「ときどきこっちに呼び出して召喚してやるから覚悟することにゃー。いっぱいミンチになってもすぐ復活させてやるから怖がらなくていいにゃん。可愛い定命ちゃん、小虫みたいなのに……小虫みたいなのに……」

ㅤ黒猫娘に無理やり一体化の儀をさせられたような気がする。女の子らしさに謀られた小虫だ。赤面した様子で見下ろされている。そんなに自分は珍しかったのだろうか。弱っちいくせに可愛いと口説いたことで一目惚れでもされたのだろうか。

「その心の中に抱えているエッチな気持ちが美味しすぎるのが悪いにゃん。この変態小虫、どうしても叶えてあげたいって思っちゃうにゃーも甘々にゃん」

ㅤ特定の感情が信仰になり神力になる。エヘカトルの裏の権能は性欲なのだろう。どうして少女が自分に甘々だったり気持ちいいこと中毒だったのかがわかったような気がする。エッチな捕食対象としてロックオンされた。逃げ場も一体化の儀で塞がれた。可愛らしい女の子の監獄がまた少し堅牢になりつつある。
ㅤこのーこのーとばかりに黒猫娘の三つ編みおさげにペチペチ潰されては復活するを繰り返す。これが望んでいた女の子の甘い日常なのか、残酷な無限蘇生なのかはよくわからなかった。髪の毛の香りですら小虫は魅了される。それが血に染まりつつあったとしても、お互いに狂った笑いを浮かべ続けていたようだ。猟奇的だけど優しい黒猫娘のことを好きになった。それが結末でいいだろう。
ㅤ地上への帰り道、本格的に殺して貰って蘇生先を選ぶ段階。ぐにゅっと膣の中に入れてもらう。全身への急激な圧力、意識が弾けたかと思うと扉が見えた。溢れる神水で扉へと押し流される。潮のようなそれで下界へと自分は落ちるのだった。