オフロード冒険記・3
エンパイア・シリーズ
ゲイター 作
笛地静恵 訳



 いきなり『ハムV号』の車体が、それ自体で跳ね上がっていた。巨大な蜘蛛の巣のような白い糸の牢獄の間から、振り落とされていた。液体の束縛からも、自由になっていた。ジョシュの車は、一匹の昆虫のサイズにまで、大きくなっていた。それから、もう一度激しく揺さ振られていた。今度は、マッチ箱の大きさになっていた。彼はダイナの両眼を、粘着質の油のような体液の、べったりと張りついた窓ガラス越しに、眺めることができていた。

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「あそこの内部の冒険から、生還できたのね?」

 彼女は小さな車体の内部での、どんな微細な動きも見逃さないでいようとするかのように、目を細めていた。彼はメッセージとして、ライトを必死に点滅させていた。彼は、やったのだ!本当に、本当に、この人類史上初の、未知の世界の走破という偉業を成し遂げたのだ!!!!

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 彼女も、満足そうな笑みを浮かべていた。

「私からのお礼を受け取る準備が、整ったということね?」

 からかうような笑みを見せていた。

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 再び、彼はライトを点滅させた。たいへんに恐ろしい前戯だった。しかし、彼女が、本番のための準備が出来たという証拠を、彼は身をもって体験して来たのだった。

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「いいわ、今度は、ダート・ロード(意訳すれば悪路、直訳すれば、汚れた道)の冒険に、挑戦してもらうことにするわね……」

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 彼女は、『ハムV号』を、さらに縮小していった。一回。二回。それが、また一個の塵の大きさになるまで。ポータサイザー(携帯用万能物質縮小機)の光線の照射を続けた。彼がその内部にいるはずの、自分の愛液のしたたりを、右手の中指の先につけるようにした。目の前に持ち上げた。ジュースの内部に、ちっぽけな黒い点が、液体の表面聴力のせいで、半分、浮かんでいる状態にあることを確認していた。

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 うつぶせの態勢になっていた。大きな尻を、空中に大きく突き出していた。中指の先を、不機嫌な時の唇のように周囲の肉から、ぷんと突き出た、きつい肛門に挿入していった。第二関節まで入っていた。肛門の周囲の皮膚を、緊張が溶けるようにと、他の人差し指と薬指の先で優しく愛撫していた。

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 お尻の穴の内部の直腸の襞のどこかで、彼があの勇猛で強大なマシンを駆り立てながら、生存のための命懸けの闘争を、繰り広げているはずだった。肛門から指を抜き出すだけでも、全身に電流のような快感が走り抜けていった。同じ指で、クリトリスを愛撫していた。プッシーは、もう火と燃えていた。自分の身体の一部ではない、別の生きもののように蠢いていた。

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 彼が命懸けで戦っている様子を、王族の娘にのみ備わった巫女的な力で、彼女は透視していた。幸運にも、指先で押し潰してもいないことがわかった。

「ああん、あなたって、とても勇敢なドライバーなのね!」

 からかいの言葉をかけながら、もう一回、指でクリトリスを刺激していた。軽いオーガズムを得ていた。今度は、もう一度、中指を突き出た肛門に挿入していった。

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 もうひとつ、別なアイデアが閃いていた。彼女は彼を、ヴァイヴレーターのオーガズムに伴い、大量の潮を吹いたことで、プッシーから脱出させることができていた。しかし、肛門に対しては、前と同じ方法は使えない。どうすれば良いだろうか?

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 仰向けになっていた。長い両脚を組んで、空中に遊ばせていた。暴れていた。指による肛門の刺激で、マスターベーションを続けていた。行くのと、解決策が閃いたのは、ほとんど同時だった。




 彼女は、この問題の解決のためには、さらなる「助力」が必要だという結論に達していた。

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 ベッドの枕元にある棚のドアを開いた。スナックの箱を取り出した。小さなケースは、48の小部屋に別れている。それぞれに、「お薬」が入れられるようになっている。ほとんどは、ちっぽけに縮小された状態の住人の身体で埋まっている。さっき食べた、あの生意気な香水売場のセールス・レディも、短期間だが、ここに居住していたのだ。

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 冷凍した人体の上で、どれを選ぼうかと指先をさまよわせていた。解凍のボタンに触れた。故郷の惑星から持ってきた者達の中から、相対的に、いちばん若い方の部類に入る女を選んだ。

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 ダイナは、この少女の名前さえ思い出せなかった。彼女を喜ばせていた。喰うことが、より容易になるからだ。少女が、動き始めていた。解け初めていた。スナック箱の中が狭いというように、四方の壁に長い手足を伸ばしていた。元気に、つっぱっていた。

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 ダイナは、ブルネットの頭髪を摘んでいた。小さな女を「お薬」の箱から取り出していた。目の前に、ぶらさげるようにしていた。痛がっている。泣き叫んでいる。頭髪で、全体重を支えているのだ。無理もなかった。両の脚を、ばたばたと激しく振っている。抵抗していた。まあ、良い。好きにやらしていた。目が覚めるだろうから。少女の足の間から、ノーマルなサイズの世界では、一滴のしずくが、ダイナの乳首にしたたっていた。小さく縮小された女にとっては、水玉は優にフットボールの一個分の直径に、感じられたことだろう。

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 「お聞き。私の肛門には四輪駆動車が、一台、埋まっています。あそこに手を入れて、取り出して来なさい!」
 ダイナは、小さな全裸の女に、それだけを命令していた。身長は、7センチ5ミリというところだろうか。スナックとしては、ちょうど良いサイズだった。しかし、ダイナは、そっちの欲望は、しばらくの間だけ、我慢することにした。

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 彼女の体を、握り直していた。仰向けになると尻を上げた。巨大な臀部の肉の間に、移動していった。無言のままで、少女は片腕の全体を、巨大な女の肛門の内部に挿入していった。この行為を、何度も実行して慣れている様子だった。肛門の内部の襞を、手の指で探っていった。まるで、そこに付着している物体の残りを、きれいに外に掻き出そうとするような動作だった。

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 縮小された少女にとってさえ、『ハムV号』はマッチ箱程度の大きさにすぎなかった。熟練した指先の感覚で発見していた。肛門の外にまで無事に取り出していた。ダイナは、それを見て喜んでいた。

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 ジョシュは、再び巨大化されていった。ダイナの肉欲に疲れて、けだるく濡れたような瞳が、彼の動作を見下ろしていた。四駆から、ついに車外に出ていた。175センチメートルほどに思える、長身の少女の脇に並んだ。
「ハイ、君はだれなの?」
 全裸の少女は、ベッドのシーツの花柄のカヴァーの上に、まっすぐに佇んでいた。
「私は。ビヴァリー」
 少女は、不安そうな声で答えた。
「僕は、ジョシュ。よろしく……」

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 彼の言葉は、ダイナの巨大な口元が下降してきた。ダイナは、ベッドに両手をついて四つんばいの態勢になっていた。壮大な動きに、ジョシュは、動作を遮られていた。下降気流が、暴風のように吹いていた。ジョシュは、シーツの繊維の隙間に、足の指先が嵌っていた。転んでしまった。ダイナは上下の唇の間に、少女の上半身を挟んでいた。口が閉じられていた。顎の筋肉に、力が入っていた。肉と骨が切断される、凄まじい音がした。同時に、口元から垂れ下っていた二本の長い脚も、ずるずるとダイナの口の中に、吸い込まれていった。ダイナは、ビヴァリーの全身を飲み込んだのである。彼女の喉を、大きな物体が、ゆっくりと下降していく光景が眺められた。

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 「ウワア!!」
 ジョシュは、腰を抜かしていた。生涯でも、これほどの恐怖の光景を目撃したことはなかった。彼は、巨大なガスタンクのように頭上から垂れ下る、ダイナの乳房の真下にいたのだった。片方だけでも、彼の体重の何十倍もの小山のような質量のある乳肉だった。彼を押しつぶすことなど、簡単なことだったろう。ダイナは、そんな彼の動揺を無視して、長い長い腕を股間に伸ばしていた。指先で彼が遭難しかけた、巨大なプッシー峡谷を愛撫し続けていた。ぐちゅう。ぐちゅう。淫らな音を立てていた。

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 さらに、数個の「お薬」の入ったスナック・ケースの箱の、解凍ボタンに触れていた。彼の反応については、完全に無視をする状況が続いていた。

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 もうひとりの、完全に全裸の若い男が出てきた。青年と少年の中間ぐらいの年齢だった。彼が意識を取り戻す前に、ダイナは口の中に、ふくんでいた。この若者は、くちゃくちゃと噛まれていた。奥歯の間で、ぐちゃぐちゃの肉の固まりに磨り潰されていった。スナックの味を堪能していた。骨張っているが、旨味のある男だった。若い筋肉が柔らかかった。血の味も新鮮だった。

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 ようやく、ジョシュの方に視線を向けていた。乳房の間にいる彼を、見下ろしていた。
「あなたは、何をしたいの?私は、あなたのものなのよ」
 彼女は、からかうような笑みを見せていた。仰向けの態勢に移行していった。長い長い腕を曲げて、ジョシュを空中に摘み上げた。乳首の上に導いていった。

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 彼には、大陸間弾道弾の巨大ミサイルの頭部ぐらいに感じられる、コーン形をした小山のような乳房の上に、立っていた。もうひとりの犠牲が、ジョシュの頭上で悲鳴を上げながら、ダイナの待ち受ける口の中に運ばれていった。この男は、生きたままで飲み込まれていた。そのため、彼女の胸元の内部からは、数秒間であったが、かすかに男の悲鳴が聞こえていた。ダイナが、ゲップをすると同時に、それは止んだ。ダイナは、何かいたずらをした少女のように、クスクスと笑っていた。

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 「どうして君は、こんなことをするんだ?どうして、彼らをこんな風にして殺すんだ!」
 ジョシュは、巨人の乳首の先端から、何歩か乳肉の小山を、ダイナの顔の方向に下山していた。彼の体重ぐらいでは、引き締まって固い乳の表面を凹ますことさえできなかった。このサイズになってさえ、ダイナの胸元の皮膚は美しく滑らかな肌理を保っていた。

                 *

 超巨大な美人の顔に、正面から向かい合っていた。ダイナは、ただ、もうひとりの男を、無言で口に入れただけだった。彼の目の前で、口を閉じていた。左右の頬肉が、あちら、こちらと、わずかに膨らんでいた。男が、なんとか脱出しようとして、内部で戦っている証拠だった

                 *

 いきなりだった。彼の頭部だけが、彼女の唇の間から、ぴょこんと飛び出していた。開口部から、もっと出ようとしているのだった。顔を上下左右に激しく動かしていた。苦痛に歪んだ表情だった。まるで彼の動きを、ダイナの唇の筋肉の力だけでは、押さえておけないかのように見えた。しかし、彼女の上下の歯が、彼の首をかすかに咬んだ。彼の顔が消えた。吸い込まれたのだ。全身が、待ち受けている暗黒の食道の穴に飲み込まれていく。その過程が、ジョシュには、手に取るようにわかった。



 「私は、自分がしたいことならば、なんだってできるのよ。私は、ヴァーンホルム星の王女ダイナ。あなたも、私の家来のひとりになるのよ。いつかは、私の聖なる肉体に同化する、名誉を与えてあげましょう。哀れな存在であるお前達は、私をよろこばせるためだけに生きているのですもの」
 王族の娘の威厳をこめて、ダイナは、そう断言していた。

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 もうひとりのブロンドの女を、ケースの中から取り出していた。びっしょりと濡れそぼった女を、自分の乳房の上半球の中腹立っている、彼の足元の麓の位置に置いた。

「もし、あなたが彼女たちから、十分な満足を得られたのならば、私からも、後であなたに、最高の贈り物を上げることにしましょう」

 彼女は、ちっぽけな女を爪先で、乳房の山の上の彼の方に、押し出すようにしていた。

                 *

 「これが、お前の新しい主人です。彼に仕えなさい。さもないと、お前も他のみんなと同じ運命を、辿ることになりますよ!」
 彼女は、もうひとりの女を、ケースから取り出した。首を反らすと、大きく上下の唇を開いて、ぱくりと飲み込んでいた。

                 *

 ジョシュの隣にいた女が、命乞いをしていた。
「レナ!レナ!いや、ダイナ姫!やめてください!」
 ダイナの口の中の女は、上半身と小さな漁野乳房を、巨人の唇の間から、逃れようとして、押し出すようにしていた。小さな両手が、巨大な赤い唇を押していた。
 彼女は、ジョシュの隣の女を見下ろして泣き始めた。

                 *

「ローラ!喰われるなんて、いや!助けて!」
 そして、彼女は飲み込まれていった。ダイナの喉の内部の食道を、レナという女の身体が、ゆっくりと下っていくのが、外からでも明瞭に見て取れた。ダイナの顔が、元の位置に戻っていた。彼女は舌なめずりをしていた。

                 *


 「彼女は、あなたの妹では、ありませんでしたか?ああ、思い出しました。レナとローラでしたね。あなたたちは、王宮で私に仕えていた、最後の女官達であったのですよね?私の新しい王宮に、なんてぴったりなんでしょう。この男好きの淫売どもめが!お前たちが、私の父のハレムを腐敗させた原因であったことは、分かっていたのですよ」

                 *


 ダイナは、ジョシュの足元にいる、ちっぽけな濡れたブロンドを告発していた。乳房の小山は全体が、ダイナが爆笑するにつれて、大地震のように、ゆっさゆっさと激しく揺れていた。

                 *

「ローラ。言われた通りになさい。あなたは、彼に快感を与えてやるのです、眺めていることにしましょう。そして、もし、彼を満足させられなかったならば……」
 ダイナは、思わせ振りに、舌舐めずりをしていた。

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 箱から、もうひとりの女を取り出していた。荒々しく爪先で背中を弾かれていた。強打されたようなものだった。鞭打ちの痕のような、赤黒い痣が生じていた。ダイナの口に、真横の態勢で啣えられていた。両足と頭部が、唇の両端からはみ出ていた。

                 *

 女は、恐怖のあまり、息を飲んでいた。両手は、巨人の唇の束縛から逃れようとしていた。ダイナの上唇を殴っていた。いきなり、上下の歯が音を立てて、ガチンと噛み合わされていた。同時に、女の一切の抵抗が止んだ。脚の一本が切断されて落下していた。ダイナの胸元に着地して弾んでいた。残りは、彼女の唇の中に吸い込まれていた。がつがつ。音を立てて喰われていった。

                 *

 「いい子で、私の言うことを聞きなさい。さもないと、ここにまで持ち上げられて……。あなたにも、もうわかっているでしょ?」
 ダイナは、あんぐりと赤い洞窟のような口腔を開いて、内部を指差していた。血臭のする生臭い風が吹いてきた。暗黒の喉の穴が、奥まで見えた。

                 *

 ジョシュの脇の、痩せぎすのローラというブロンドの年増の女を、冷たく見下ろしていた。ローラは、ダイナの胸元を駆け下りていった。皮膚の広大な台地の上を、ちょこちょこと走っていった。片方だけでも、巨大な貯水塔のサイズのある乳房の、谷間に立っていた。ダイナの口に、切断された脚を拾うと、投げ付けていた。彼女は、ダイナのほうっと吸い込む息の風に、巻き込まれていた。彼女の口の中に、簡単に吸い込まれていった。くちゃくちゃ。小人の女の身体を、長いこ、口の中で味わうようにして玩んでいた。また、ぺっと吐き出していた。大量の唾液に濡れそぼっていた。このすべてにダイナは、手も使わなかった。圧倒的な力の差を誇示したのだった。

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「さあ、ファックする必要があるってことが、これでわかったでしょ?私が、見ていてあげます!今宵の賓客に、最高の快感を与えてさしあげなさい!」

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 彼女は、もうひとりの少女を、スナック・ケースから取り出した。濡れて背中に張りついた、色褪せたような艶のない頭髪の、小さな赤毛の女だった。彼女は、そこがベッドの上の、ダイナという女の巨大な乳房の上であるいうことに気が付く前に、立ち上がろうとしていた。しかし、そのままの態勢で、肉の小山に倒れてしまった。ローラとジョシュは、二人とも、一瞬だけは混乱していた。が、ローラが、すぐに赤毛の彼女の顔を舐めて、キスをしていった。

                 *

 「急いでください、彼女が、私たちを食べてしまう前に……」
 ローラは、ジョシュに懇願していた。ジョシュは、息を喘がせていた。両膝をついて注視していた。
「二人だけで、するんじゃないのよ!彼の相手をしてあげるの!この馬鹿女!」
 ダイナは女達を、スケートボードのサイズのある指爪で、押し出すようにしていた。

                 *

 彼女たちは二人とも、身体が弱っているようではあった。けれども、ジョシュの身体に、全身の体重を乗せるようにして押し倒していった。ダイナの乳房の山のような傾斜の側面だった。彼は突然に、二人が自分の衣服を、脱がそうとしていることに気が付いていた。

                 *

 すぐに、彼はローラに挿入して、セックスを楽しんでいた。もうひとりの赤毛の方は、背後から睾丸を口に含んでいた。彼は、最初の二人のあまりに淫らな行為を、押し止めようとはしていたのだった。しかし、彼女たちは、あまりにもセックスの技術に熟練していた。膣でも口でも、最高の技量を示した。

                 *

 すぐに、彼は精液を、濡れそぼったブロンドの身体の上に発射していた。赤毛は、彼の巨根に唇をあてがっていた。精液を口に含んでいた。彼が、そこから引き出す前に、彼女は、彼のすべてを飲み干してくれていた。ミリメーターの単位で肉棒についた、すべての精液を舐め取っていたのである。

                 *

 彼は、この行為に集中していた。そのために、ダイナの恐怖の口が、彼等に巨大な顔を倒して接近していたことに、気が付かなかった。絶叫していた。空気が、丸く開いた口腔の内部に吸い込まれていく。ダイナが、自分の胸の上で深呼吸をしているのだった。彼の身体も、浮きそうになっていた。ジョシュはケルンのような固い乳首に、しがみついていた。ダイナは、二人の女性を一度に、口の中に飲み込んでいた。くちゃくちゃ。音を立てて噛み始めた。物を食べる時の、口の不愉快な音。大量の涎が口の端から滴れていた。赤い血の混じった巨大な唾液の玉。ぼたぼた。胸元の白い皮膚に滴り落ちる。凄惨な光景だった。

                 *

 ダイナは喉を反らせていた。首を長く長く、白い大蛇のように伸ばしていた。口の中の物を、ごくりと音を立てて飲み込んでいった。口の中に残った柔らかな固まりを、さらにまだいくらかは、噛み続けてもいた。

                 *

 「心配しないでちょうだい。私には、まだいくらでも、予備があるんだから」
 それが、ダイナがジュシュに言ったことのすべてだった。

                 *

 いきなり、彼は指の間で摘み上げられていた。黒いスナック・ケースの、彼にとっては、高い壁をめぐらしたプラスティックの独房のような場所に、入れられていた。

                 *

 「ヘイ!何をする?!!」
 ドアが閉じられた。巨大な爪先が、ケースの脇にあるレバーを押し下げるのを眺めていた。冷凍庫の冷気の襲来を、全身で受け止めていた。瞬間に冷凍されていた。

                 *

 ダイナは、まだ上下の舌を舐めていた。ケースを閉めた。ポータサイザー(万能物質縮小機)さえ知らない、未開の惑星での自由な生活を、本当に楽しんでいた。輸入禁制品だが、そんなものは税関の職員にワイロを掴ませれば何でもない。どこの世界でも、民衆というものは腐敗しているものだ。シャワーを浴びようと決めた。しなやかな、年ごろの娘の若い肉体が、ベッドから滑るようにして起き上がっていた。

                 *


 少しだけ考えていた。血の染みで汚れた花柄のシーツを、巨乳の胸元にくるくると丸めていた。ホールを下りていった。ちっぽけな『ハムV号』は、それと気が付かれることもなく、左足の親指の下で砕けていった。鼠の毛一本程の、吹けば飛ぶようなサイズのペニスが、唇の端からこぼれていた。ペニスの持ち主であった若い男にとっては、80階建てのビルディングに匹敵する、巨大な女体を滑り落ちていた。ペニスは、遥か眼下のカーペットまで、どこまでも虚空を落下していった。
オフロード冒険記・3 了

【訳者後記】

 エンパイア・シリーズの『オフローディング』の、新しい超訳をお届けします。前作から、ずいぶん時間が経ってしまいました。お詫び申し上げます。

 昨年の十二月に、笛地の隣の家から火が出ました。拙宅の庭の六畳のプレハブが全焼しました。書斎にしていた場所です。段ボール三箱分に書き貯めていたGTS小説と、大学ノート50冊分の翻訳が灰になりました。アメリカで買い求めたGTS小説のコピーと、楽しいコンピレーションのビデオも、同じ運命をたどりました。偶然に、自宅に非難していた、ワープロとフロッピーの中身のみが無事でした。さすがに、少しへこんでいたのです。

 オフローディングとは、オフロードのレースのことです。

 しかし、題名には、ロード(道)からオフ(外れる)という元の意味から考えて、ジョシュの道ならぬ道での苦闘。人の道から外れた、ダイナの背徳的な行動。宮廷から離れた、旅行先での王女様の奇行等々。多様な意味が掛けてあるでしょう。

 冒頭の女の謎めいた行動。プッシー峡谷での大冒険。喰いの暴力の爆発。読んでいて飽きることのない、ゲイター氏の力作です。特に「ダート・コース」での大冒険が書いていない工夫が、逆に読み手の想像力を刺激してくれます。

 お楽しみください。
(笛地静恵)