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巨大美人島漂流記 2・雄奴隷の島
笛地静恵
 娘たちは、踏み分け道の脇の椰子の実を、無造作にもぎとっていた。少し背伸びをする
だけで採れた。指先よりも高いものは、五十センチメートルの足で木をキックしていた。
たまらずに、木は降参していた。貢ぎ物を、少女の手に投げてよこしていた。そうして三
十名全員に、公平に手渡してくれた。一人に、一個以上あった。ツツジが、自分の倒した
ビッグ・ベンを介抱しているのが印象的だった。彼の口にも、指で刳り貫いた実を、入れ
てやっていたのだ。自分たちも、あっという間に十個以上を食い終わっていた。

                 *

 これは必要なことだった。少なくとも、その後の島の行軍が、一時間以上に及ぶ苛酷な
ものであったからだ。島の高い山の裾野を周り、反対側に出ていったことになる。地下水
は豊富なのだとわかった。あちこちに山から流れ下る流れがあった。山頂の休火山のクレ
ーターが、湖水になっていることを、ジョナサンが知るのは、だいぶ後になってからのこ
とである。途中には、吸血の蛭の出るような、深い沼地さえもあった。難儀をした。皮膚
に食い込んできた。蛭が捕虜の乏しい血に、真っ赤に染まっていた。半裸の彼女たちの厚
い皮膚には、歯が立たないのだろうか。ジョナサンは不思議に思っていた。蛭に歯はない
が、鋭い歯のイメージを抱いていた。それぐらいに獰猛だった。子供の掌ぐらいの、面積
のある奴までいた。少女達は、相手が小さな蚊であるかのように、指先で簡単に払い落と
していた。

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 密林の中のあちこちで、椰子の原始林が、派手に押し潰されている場所があった。爆弾
が破裂したようだった。しかし、焼け焦げたような痕がなかった。原因が不明だった。シ
ャーロック大佐も首を傾げていた。途中、山腹に岩穴が見えた。亀裂のようだった。大佐
の目が光っていた。篭城のための隠れ場所には、ジョナサンにも適当に思えた。

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 前を歩く太った少女は、暑そうにビキニの胸を半分はだけていた。巨大な肉の袋のよう
な乳房を、べろんと出していた。嫌がるジョニーに、無理遣りに口に含ませていた。拒絶
すると大きな手で、彼の相対的に細く華奢な首を絞める。折れそうになっていた。ジョニ
ーの首を捻られる鶏のような哀れな悲鳴が、ジョナサンの耳にも届いていた。窒息寸前で
解放される。従うしかなかった。大の男を、赤ちゃんのように扱っていった。乳首を吸わ
せていた。巨女が、ジャングルに轟き渡るような嬌声を上げた。どうやら、ジョニーが乳
首を噛んだらしい。噛み切ろうとしたのだろう。抵抗しているらしい。かえって、必死の
攻撃に感じているようだった。ゴムを噛んでいるようで、まったく歯が立たなかった。ジ
ョニーは後で、仲間にそう語っていた。

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 暗いジャングルの前方の視界が、不意に明るく開けた。シャーロック大佐が、細く長い
口笛を吹いていた。切り開かれた平地に、広壮な施設があったからだ。特に一つは白亜の
神殿のようだった。燦然と陽光を反射していた。これほどの施設があるという情報を、連
合軍の秘密諜報部さえも、掴んでいなかったことだろう。どうやら島の山頂の上空に常時、
漂っている噴煙の雲が、詳細な画像の空中撮影を、偵察機にも不可能にしていたようだっ
た。

                 *

 この海域で遭難する船舶が、余りにも多い。連合軍には、立入禁止地域に指定されてい
たはずだった。船による観測もできていなかった。黒点のように、連合軍にも見えていな
かった。不思議のヤフー島だった。連合軍が本拠地と考えて、上陸を計画した本島の基地
の方が、もしかするとカモフラージュに過ぎなかったのかもしれない。ジョナサンには、
そう思えた。後で大佐の同意を受けていた。青い海の湾を見下ろしていた。基地の向こう
では、岬が白い腕のように、青い南太平洋の荒波に突き出されていた。海面までは、五十
メートル以上の標高差のある場所だった。海からの風が強かった。ジョナサンの前髪がな
びいていた。

                 *

 しかし、現在は帝国軍に廃棄されているようだった。ほとんど軍事目的には使用されて
いない。そんな基地であることも、明らかだった。ベトコンのあちこちに、爆撃を受けた
ような惨状があった。人間が、一人すっぽりと入りそうな、細長い大きな穴が開いていた。
ジャングルの傷跡と同じだった。滑走路としての利用は、不可能だろう。異様な白亜の神
殿の他に、三階建てのコンクリートの建物が、二棟は残っていた。基地というよりも病院
の敷地のような雰囲気があった。本当は三棟あったのだろう。一棟が廃墟になっていた。
破壊されたコンクリートの瓦礫に、熱帯の深緑の植物が、傷を癒そうとする手のように、
多いかぶさっていた。滑走路にも緑の侵略者の手が、徐々に延びていた。破棄された場所
だった。衰退の気配が漂っていた。

                 *

 巨大少女は、他に二名がいた。基地の二棟の間の中庭で待っていた。出迎えてくれたの
だろう。泳いでいたばかりのように、黒い髪が濡れていた。額や肩に、張りついていた。
熱帯の強力な直射日光でさえ、乾かせていない。つい今し方まで、海に入っていたのだろ
う。みんながお揃いの、手縫いらしい迷彩柄のビキニを来ていた。一番小さい者でも、二
メートル九十センチというところだろうか。彼女は、目付きが他の誰よりも鋭かった。険
しい表情をしていた。黒髪を、左右にポニー・テールにしていた。それも濡れて、肩に張
りついていた。彼女の隣にいた最後の一人は、身長では迎えにきた二人に負けていたが、
横幅は、一番大きかった。腹筋が割れていた。もっとも力がありそうだった。合計、四名
がいた。これで全員なのだろうか。まだ分からなかった。

                 *

 彼女たちは直立して整列してた。右から順番に自分の胸元の深い谷間を指差していた。
言葉を連呼していた。自己紹介のようだった。マリア、ミリカ、アイコ、ツツジ。それが
名前のようだった。連合軍兵士に、帝国軍の歓迎の意志を示す正式な敬礼をしていた。シ
ャーロック大佐の号令の下に、三十名の兵士もそれに答えていた。

                 *

 しかし、軍隊風の正式な出迎えの儀式は、それだけで終了だった。ジョナサンたちを、
砂浜に迎えに来たのが、アイコとツツジだった。八重歯の方が、ツツジだと分かった。ア
イコが、ジョニーをオモチャにして、悪いいたずらを始めた。彼の服を、脱がし始めたの
だ。ジョニーは抵抗したが、アイコの怪力の敵ではないのが、今までの経験から明らかだ
った。笑いながら脱がせていった。強姦されるような風景だった。ジョニーの軍服の縫い
目の糸が、悲鳴のような音を上げて切れていた。ツツジの方が、ノックダウンした状態の
ビッグ・ベンの服を、着せ替え人形のようにそっと剥いでいた。

                 *

 相対的に一番小さい少女が、自分の濡れたままのビキニのボトムを脱ぐような動作を、
何回も繰り返していた。ジョナサン達に、服を脱げと命令しているらしかった。ついに、
自分のものを脱ぎ初めていた。無視はできなかった。

                 *


 小柄なマリアが、わざと後を振り向いていた。尻を見せていた。左右に振っていた。左
右の手の指で、雄大な臀筋を広げていた。性器の割れ目の襞の奥や、肛門の穴までを、見
せびらかすようにしていた。挑発するようなポーズを取っていた。しかし、この島でのS
EXの主導権は、少女たちに握られていた。まるで、野菜や肉の品評会のようだった。男
たちの身体を食べたそうに、舌なめずりをしていた。胸や尻や太腿に触れていた。摘んで
みて、筋肉の堅さを、検査するようにもしていた。男性性器を摘んで、勃起時の硬度を点
検していた。男たちの皮膚も、汗が流れて光っていた。

                 *

 彼女たちの面前で、全裸にさせられていた。こういう時には、いつでも、そうであるよ
うに、シャーロック大佐が率先垂範をしていた。全員が、それにならっていた。抵抗が、
無意味であることを悟っていたのだ。

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 再度、全員が直立不動の姿勢になっていた。横一列に並ばされていた。それから、彼女
たちは順番に、誇り高い連合軍兵士を選んでいった。マリアが一番先だった。彼女は、シ
ャーロック大佐を選んだ。たいした眼力だった。この四人のリーダー格なのだろう。彼女
は一目見ただけで、だれが敵軍の兵士たちの長であるかを見抜いたのだった。ビキニのボ
トムを脱いでいた。シャーロックの剛猛の茶色の髪の毛を、鷲掴みにしていた。薄い金色
に透けるような茶色の三角の陰毛に、押し当てていた。要求は鮮明だった。舐めろという
ことだった。ぴちゃぴちゃ。シャーロックの舌の音がした。塩味のするだろう黒い海藻を
食べていた。連合軍の兵士に、敗北を宣告する音だった。彼らの最後に残った自尊心を、
打ち砕いていた。

                 *

 他の巨大少女たちも、全員がビキニのボトムを脱いで、下半身を剥出しにしていた。風
のある戸外なのに、空気が濃密に女臭くなっていた。彼女たちが、興奮しているのは、目
で見ても明白な事実だった。白い内腿に、汗でない粘着質の液体が流れていた。股間が濡
れて光っていた。毛で言えば、四名はそれぞれに異なる形態の持ち主だった。ミリカが、
もっとも濃密に繁茂していた。臍まで伸び上がるような長円形だった。次がアイコで、爆
発するような黒い楕円形だった。短くて縮れていた。ツツジは、普通の逆三角形のピラミ
ッド型だった。黒くて直毛だった。色はアイコと比較して、やや薄い茶色がかっていた。
細くて、ややカールしていた。

                 *

 ミリカが、この即席の隊で、もっとも美形のプレイボーイだという噂のある男を選んだ。
迷うことなくツツジがビッグ・ベンを、アイコがジョニーを選んだ。最初から、目を付け
ていたのだろう。

                 *

 その後の評価の基準が、どこにあるのかは、彼女たちの視線と指の動きで、明瞭だった。
美形ということかもしれない。ジョナサンは、最初はそう思っていた。しかし、違った。
それもあるが、第一の条件ではない。キャアキャアッ。耳障りな大音声。笑いさざめく様
子から、明らかだった。あれの大きさなのだ。形や色も、あるのかもしれない。おそらく、
大きいとか小さいとか、品定めが、かまびすしかった。捕虜生活で、禁欲を強いられてい
た若い兵士たちには、眼前の少女たちの半裸の姿は、強烈に過ぎる刺激だった。彼女たち
が全身から発散している濃厚な女臭も、男を奮い立たせるフェロモンに満ちてきていた。
身体の一部を変化させているものは、何名もいた。

                 *


 彼女たちは最初に選んだ男を、小判鮫の雄であるかのように、自分の股間にへばりつか
せたままにしていた。一倍半という平均的な身長差は、その目的のためには、実に適正な
位置に、男の顔面を位置させていた。長い両脚の間に、少し膝を曲げれば、簡単に潜り込
めた。愛液を顔面に雨のように受けながら、奉仕作業をしていた。その状態で、巨女たち
の奴隷市場が続いていた。人格は無視されていた。男性性器の大きさのみが問題だった。
これからの自分たちの運命が、ジョナサンにも、はっきりと想像できた。彼女たちのSE
Xのオモチャにされる運命だったのだ。彼は、肩幅の広い四角い顔の娘に、三番目に選ば
れていた。意外だった。さえない自分は、最後まで売れ残るのだろう。そう思えたからだ
った。男としての容貌にも、SEXにも自信がなかった。


                 *

 ミリカという体格の良い筋肉質の少女が、ジョナサンを二番目に選んでくれたのだ。意
外だった。「かわいいわね」というように、彼の金色の髪を巨大な手で撫でてくれた。丸い
眼鏡を指先でつついていた。微笑しながら、優しい顔で見下ろしていた。白い歯が光って
いた。こんな場合なのに、ジョナサンは妙に嬉しかった。ジョナサンは、彼女たちが、捕
虜の選択の有力な評価基準としている、「大きい」方ではなかったから。

                 *

 四名で、三十名を選ぶ。七名ずつの割合となる。二名があまった。アイコとツツジが、
その二人を、神殿の中につれていった。それ以来、二度と二人に会うことはなかった。S
EXよりも、さらに恐怖の運命が、彼らを待っていたのだ。それが分かるのは、もっと後
になってのことである。

                 *

 ジョナサンたちの宿舎は、旧帝国軍にとっての、廃棄された野戦病院のような、三階建
てのコンクリートの建物の二階と三階だった、一回部分はジャングルの侵略によって、緑
に占拠されていた。窓の場所はあったが、ガラスはほとんどなかった。すべて割れていた。
北棟(ノース・ウィング)と呼ばれていた。

                 *

 待望の食事の時間となった。主食は芋だった。大きな鉄の黒い鍋があった。人間さえも
茹でられるような大きさがあった。ジョナサンは、不吉な感じがした。雨の少ない島では、
中庭で調理する習慣のようだった。屋外に、天然ガスを使用した調理場があった。建築資
材の一部を組み立てて作られていた。これもミリカの手製だという。器用で工夫の才能が
ある少女だった。ぐつぐつ。中身の煮える匂いが、たまらなかった。肉の焼ける匂いが空
気中に漂っていた。食欲をそそっていた。

                 *

 二十八名全員が、椰子の実を刳り貫いた椀を支給されていた。連合軍兵士には、黒い鍋
一個で、百人分以上の分量があっただろう。色とりどりの熱帯魚が、ぶつ切りで入ってい
た。紺色という、ジョナサンには、とても食欲のわかないような色の魚もあった。食べて
みると、意外な美味に驚かされた。椰子のような実もあった。味付けは、塩だけだったが、
美味なものだった。何か、細かく切った赤い干し肉のようなものが入っていた。これが、
隠し味になっていた。風味を高めていた。ジョナサンも、何杯もお変わりをしていた。空
腹には、質よりも量が、ありがたかった。たっぷりとあった。最初は、いくら食べても減
らないような気がした。

                 *

 連合軍兵士の精鋭を圧倒したのは、彼女たちが、四人で黒い鍋一個を前にして、木を削
って作ったシャベルのようなスプーンを突っ込みながら、物凄い勢いで、きれいに平らげ
ていったことである。三十人の空腹の男が、よってたかって貪りながら、なお残してしま
ったよりも中身があっただろう。「あなたたち、残すのならば、私にちょうだいね」そんな
ことを、いったらしい。アイコは、黒い鍋を、両手でひょいと口元に持ち上げていた。底
にこびりついた分まで、長い舌で。ぺろぺろと舐めていた。太っても、当然に思える食欲
だった。
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 西棟(ウエスト・ウイング)は、ほとんど資材置場か物置と化していた。

                 *

 最初の日の食事の準備はマリア達が、行なっていた。だんだん彼ら捕虜たちが、交替で
実行するようになる。シャーロック大佐は、料理人としての腕を奮って、少女たちの信頼
を得ていた。しかし、一方では、毒を混ぜるチャンスがあると考えていた。黒い鍋は、長
い年月、生き物の脂を大量に吸い込んでいた。洗っても洗っても、何かを必死に訴えでも
するかのように、ぎとぎとと捕虜たちの手のひらに、吸い付いてくるのだった。

                 *

 きれいで清潔なベッドと、水道とトイレのある個室を与えられていた。トイレの前には、
衝立てで仕切られていた。日常生活のための備品は、なかなか充実していた。シーツなど
には、大量の備蓄があった。天然の高温高圧の水蒸気で洗浄がなされる、ラウンドリーが
使用できた。清潔が確保されていた。トイレは、簡易だが水洗だった。共同浴室では、シ
ャワーも使用できた。これも島に算出する天然ガスで、ガスのタービンを回して電力を得
ていた。屋上のタンクにまで、モーターで地下水を汲み上げていた。それなりに、文化的
な生活だったことに驚いていた。より原始に近い本島の部隊の生活よりも、ましかもしれ
なかった。

                 *

 ただ一つ、ジョナサンが落ち着かない気分にさせられたのは、二階の窓から巨大な少女
たちの顔が、覗くことだった。直立した彼女たちの、ちょうど顔の高さに窓があった。そ
こから、コレクションした人形の部屋を覗くような感覚で、ぬっと巨大な顔があらわれる。
ミリカは、自分で「七人の小人たち」と読んでいた男たちの部屋を、毎朝、順番に見てい
くのを好んでいた。汚していると叱られていた。救いは、鉄格子があるために、彼女たち
であろうとも、無遠慮に手を差し込んでくることが、できないということだった。逆に言
えば、窓からの逃亡は、不可能である。ただの宿舎ではなくて、牢獄や舎房という印象が
あった。

                 *

 基地では東棟(イースト・ウィング)という、海に一番近い建物の被害が、大きかった。
壊滅したようだった。何か巨大な爆発があったらしい。全体が、一度に吹き飛ばされたよ
うな惨状を止めていた。建物は、コンクリートの基礎の部分だけが、かろうじて残ってい
た。何かの実験に、失敗したというような光景だった。ここは、巨大少女たちにとってさ
えも、何か忌まわしい場所だったようである。東棟のあったあたりの地面には、普段はあ
えて立ち入ろうともしなかった。迂回して歩いていた。

                 *

 椰子のジャングルの木々が、海の方向にむかって、広い範囲に渡って、衝撃で押し倒さ
れていた。熱帯の自然の力をもってしても、ようやくに回復の兆しがあるぐらいだった。
傷跡は、生々しかった。崖の先端の一部が、海に向かって崩落していた。弾劾絶壁に海に
下りるための、便利な坂道を作っていた。巨大な重量が、五十メートル下の海に、なだれ
落ちていったようだった。捕虜たちは、この坂道を使用して、下のビーチで休憩の時間を
水浴を楽しんでいた。彼女たちも、そこに全裸や半裸の肉体を並べていた。が、その際に
も、この近道を使用しようとはしなかった。かなり迂回した別の道順を通って往来してい
た。

                 *

 ジョナサンは、俯せになったミリカの広大な背中に、小麦色に日焼けするための椰子油
を塗りながら、なぜ自分を選んでくれたのかと聞いていた。雄大な臀部の筋肉の球体に塗
りたくっていた。頂上を陽光に光らせていた。もう両脚の部分は、完了していた。もっと
も高い筋肉の稜線の部分に、太陽の光がまばゆく滑っていた。ミリカは、笑っていた。彼
女が好きだった、ネズミのキャラクターのぬいぐるみに顔が似ていたから。可愛いかった
から。そんな返事を、即座にもらった。そうだったのか。彼は子供の頃に、同じ種類のあ
だ名を悪友たちからも、もらっていたことがある。からかわれたこともある。

                 *

 ミリカは、左肘で頬杖をついた姿勢で海にむかっている。左の脇を下にしている。巨大
な女性の身体が、ジョナサンと海の間で壁になっている。白い渚に青い波が寄せている。
今日の湾は穏やかだった。腰の細いくびれと対照的に大きな尻が、きれいな三角形を作っ
ている。そこから太腿から足首まで、美しい三角形ができていた。

                 *


 女性の身体が、三角形と球体でできていることに、ジョナサンが気が付いたのは、また
若いママと海水浴にいった時だった。自分は六歳になっていただろうか。それよりも、前
のことかもしれない。あの時にジョナサンは、初めて女性の身体の形の奇妙さに気が付く
と同時に、海水パンツの中で幼いペニスを固くさせていたのだ。オシッコをしたいような
奇妙な感覚があった。トイレに行きたいというと、ママは「海でしてきてちょうだい」と
彼の小さなお尻を、片手で押し出したのだった。こんなことを思い出すのは、今の彼とミ
リカの体格比が、ちょうどあの頃の自分とママぐらいの相違があるからなのだろう。

                 *

 回想していて手が滑った。また俯せの姿勢に戻っていたミリカの熱い割れ目に入り込ん
でいた。「いやあ〜ん!」彼女が、妙な猫なで声をだしていた。「あっ、ご、ごめんなさい!」
ジョナサンは、手を引こうとした。しかし、ミリカが臀部の万力のような筋肉に力を入れ
ていた。間に手が挟まれていた。抜くことができなかった。汗が溜まった熱い谷間だった。

                 *


 やがて、ミリカは仰向けになっていた。周囲の目を、気にすることもなかった。ジョナ
サンを、巨大な胸の谷間に抱いていた。そこにも熱い汗が、沼のように溜まっていた。彼
の口で、乳房を愛撫させていた。ジョナサンは乳児になったように、砂を払って固くなっ
た乳首を啜っていた。こういう時のミリカはやさしい。何でも話してくれる。ジョナサン
の情報収集の機会になっていた。彼女が、このハラオ諸島に近い、ロタ島の出身だという
ことも知った。

                 *

 しかし、肝腎の東棟爆発の原因については、何度聞いても、ミリカは真相を明らかにし
てくれなかった。明らかに重要な軍事機密に、関連しているような感触があった。秘密の
武器でも、開発していたのだろうか。シャーロック大佐からも、ミリカを介して少女たち
との通訳係をしているジョナサンに、引き続き調査をするようにという、スパイ並みの命
令を受けていた。しかし、ジョナサンがあまりにも執拗だと、ミリカから「口の上に座ら
れたいの?」と、皮肉な口調で脅迫される。彼女の実力は、身体で思い知らされていた。
沈黙するしかなかった。任務を越えて、何事にも知的な好奇心の固まりのようなジョナサ
ンには、かなり辛い試練だった。

                 *

 隣のツツジは、ビッグ・ベンを相手に、プロレスのような激しい愛撫をさせていた。さ
っきから、少女は悲鳴とも、哄笑とも取れるような異様な嬌声を、砂浜の背後の崖に反響
させていた。筋肉質の黒人の身体全部を使わせて、椰子油を塗らせていた。ビッグ・ベン
の勃起したペニスの固さが、肌にくすぐったいらしかった。少女は巨大な手に、ぬるぬる
する椰子油をたっぷりと付けて、ビッグ・ベンの性器を、上下にマッサージしていた。「出
しちゃダメよ!どこまで我慢できるか、がんばりましょうね」そんなことを言われていた。
黒人の険しい視線が、宙を泳いでいた。彼の目の前で、少女の大きくても美しい乳房が激
しく揺れていた。

                 *

 マリアが悶絶していた。五本の指が、砂に杭のように食い込んでいる。両脚が空へ透明
なサッカーボールを何度も高く蹴り上げていた。しなやかな全身が、海老ぞりになってい
た。ジョナサンの視点からでは、股間に潜り込んでいるシャーロック大佐の姿は、ほとん
ど見ることもできなかった。カーマスートラの奥義で感じさせているのだという。隊長の
知識は底無しだった。巨大な少女をどうやったら、あんなに燃えさせることができるんで
すか?質問した。簡単さ、子宮を舐めてやるんだ。大佐は、舌で自分の鼻の頭をべろんと
舐めた。真似ができないと思った。

                 *

 ジョニーは、完全にツツジの下になっていた。彼女が、帝国風の便所の上に跨がって、
座っているような姿勢をしている。あの下に、ジョニーがいるのだ。舌で奉仕しているの
だろう。あの謹厳実直な、聖書の文句しか引用しないような、男の舌が、今ではあらゆる
言葉を封印されて、ただ一つの目的のために奉仕しているのだった。言葉は分からなくて
も、口調から叱られているのはわかった。「グズねえ!」「もっと動きなさいよ!」完全に、
ずしりと騎乗されていた。彼の身体が、白い砂の中に、半分以上も埋葬されていた。

                 *

 西洋文明の男性の理性の敗北や、悪魔の背徳の風景というような、いかにもジョニーが
形容しそうな文句は、ジョナサンの脳裏に浮かんでいなかった。むしろ何か楽園のような
爽快な気分が、ジョナサンにはあった。人間は、神の創造した楽園から追放されてしまっ
たが、もしも悪魔が作った楽園がありえるとしたら、ヤフー島がそうではないかと彼は思
っていた。

                 *

 少女たちの饗宴は炎天下でも、何を恥じることもなく、傍若無人に演じられていた。巨
大な肉体の体力が許すかぎり、延々と長時間に及んだ。
巨大美人島漂流記 2・雄奴隷の島 了