キャラ崩壊、制作時間37分、1発書きによるかなりの誤字脱字等みられると思います。あ、無理だわこれと思った時点でバックすることをお勧めいたします。


リーデアルドから遠く離れたとある地域、騎士たちの詰所、その入り口に頭を下げる騎士団長とそれを冷たく見下ろす治癒術師、エリザがいた。日が昇っている今、エリザの体はおよそ50倍約80mである。
エリザは何も言わずに騎士隊長を見ていた。その顔には怒りを表す青筋が浮かんでいる。

騎士団長「お願いしますエリザさん、いや、エリザ様!どうか、慈悲を!我々に情けを!」

必死に頼み込む騎士団長、傍らには多くの騎士たちが倒れていた。みな一様に青い顔をし、まるで死んでいるかのようだ。中には嘔吐しているものもいる。しかし、その状況を見てもエリザは治癒しようとするそぶりすらしなかった。
そして周りには攻城兵器として使われている投石器、の残骸が転がっていた。どれも一様に折れ曲がり、その機能を果たせる状況にはなかった。
その投石器の残骸に影がかかる。影の正体はエリザの足だ。エリザは何の苦も無くその残骸を片足で一つずつ丁寧に磨り潰していく。

バキイ!メキャメキャァ!ゴワッシャアアァァ!

轟音と地響きが辺り一帯を包み込む。ブーツの底から聞こえる投石器の断末魔は、近くの家々に住む市民に恐怖という感情を持たせるには十分だった。8つあった投石器はものの50秒で木片の集まりと鉄くずに変わってしまった。

騎士団長「お、お願いしますエリザ様!ど、どうか!どうかぁぁ!」

その光景を見ていた騎士は再び頭を下げて懇願する。
そんな光景にエリザは腹が立ち、つい大声で怒鳴りつける。

エリザ「ふざけないでください!自分たちが何をやったのか分かっているんですか!」

その声に普段のエリザから感じられるような優しさは欠片もない。単純な怒り、それだけが込められたものだった。騎士団長は震えが止まらなかった。しかし、今の彼には頼み込む以外の選択肢はなかった。

騎士団長「お、お願いだぁぁ!ヒック!たのむよぉぉ・・!たのむからぁぁ・・!」

涙でのどが詰まり、顔が涙と鼻水でくしゃくしゃになる。そこに騎士に抱くカッコいいという類のイメージは全く結びつかない。ギロチン台に首をくくりつけられた囚人のそれの方がよっぽど似ているだろう。そして彼の頭上にはギロチン、すなわちエリザのブーツがセットされていた。

エリザ「それ以上ふざけたことを言うと・・・・わかりますね?」

にっこりと笑うエリザ。だが、その目は1㎜も笑ってはいなかった。

「言葉を選ばねば、踏みつぶす。」

沈黙が、エリザのブーツの底が、そんな言葉を実に雄弁に語っていた。パラパラと時折落ちてくる投石器のなれの果てが、まるで「次はお前の番だ」そう言っているようにすら感じる。
だが、彼は引かなかった。

騎士団長「頼むエリザ様!お願いだから!」

いよいよをもって温厚なエリザが怒りの感情に支配された。騎士団長のすぐ横、1mほどに大きな足を叩きつける。

ズシイィイー――ン!

近くの森からは鳥たちが一斉に飛び立ち、家畜はみな一様に鳴き声を上げた。木々は揺れ建物を震わせた。

エリザ「そんなことを頼める立場にあると思っているんですか!」

だが彼はつづけた。騎士は引くことを知らない、ただひたすらに突き進むのみである。まるでそう体現するように・・。


騎士団長「たのむよぉぉ!バレンタインチョコくださいぃぃぃ!」


実際はモテない男の情けなさと女々しさから来るものだったようだ。
ふー、と弱くため息をつくエリザ。もはや怒りを通り越して呆れてきたのだ。
エリザはしゃがみこむと投石器の残骸を一つずつ拾い上げる。左手という器に少しずつ乗せられる残骸。時々拾い上げる動作で比較的形の残った残骸を無意識のうちに磨り潰してしまうミスもあったが、所詮は散らかったオモチャを片付けるようなもの。2分もせずにすべてのかけらが左手一つに収まった。
エリザは上空から目につくすべてのかけらを拾い終わると立ち上がり、近くにいた村長に話しかけた。

エリザ「村長さん、頼まれた投石器の処分終わりましたよ」
村長「すいませんなぁ、騎士たちが酔っぱらって壊しちまった投石器の処分なんぞ頼んでしもうて。破片はこちらで処分しますのであちらの広場に置いといていただけますかな」
エリザ「わかりました。じゃあここにっと」

ざらざらとエリザの手の上を滑る破片たちは、村の中心から少し外れた空き地に落とされていった。最期にエリザがぱんぱんと手を払う。それは処分の終わりを意味する。

村長「いやはや、申し訳ありませんなぁ。」

そういいながら腰の曲がった村長はさらに腰を曲げて頭を下げる。それを見つめるエリザの顔は実に柔和で優しいものだった。先ほどまで騎士たちを見つめていた時の顔とは雲泥の差である。

エリザ「いえいえそんな。皆さんも大変だったんでしょう?悪いのは、彼らなんですから!」

つい口調が強いものになってしまうエリザ。しかしそれは昨日から今朝までの時間を知れば理解できるものだろう。



二日前、エリザはグランゼルから書簡を届けてはもらえないかと頼まれていた。
書簡の内容は明かしてもらえなかったが早急に、かつ絶対届ける必要があるとのこと。しかし、現状この書簡を届けるだけの人員は確保できないこと。そこで盗賊や獣などの危険なものが近寄ろうとすらしないエリザの巨躯が適任であることを告げられた。

こう言われてしまっては反論できるだけの余地はなかった。現にいまグランゼルは領主邸3階のバルコニーからしゃべりかけているのに対し、エリザの顔はいまだその上に存在しているのだ。それも、エリザは座り込んだ状態であるにもかかわらずだ。ここでいくらふさわしくないと申し立てても、無駄になるのは言うまでも無かった。

こうしてエリザは書簡を運送する役割を仰せつかったのだった。そして昨日、体が大きくなれる条件である朝日を以て出発した。道中一切の危険もなく、かつ、町一番の早馬をあっさりと追い抜く速さでエリザは目的地である村へと到着した。

村にはエリザの事情を知るものも多くいたため、騒ぎになるようなこともなくすんなりと受け入れられた。書簡を村長に渡し終える任務もあっさりと終ってしまった。しかし、ここでちょっとした問題が出た。
エリザは書簡を渡した時点で帰るつもりだったが、それを止める存在がいたのだ。
村の子供たちである。

珍しい物好きな子供たちにとってエリザの体は興味を引くには十分すぎた。遊びの的、というよりは動く遊び場だ。すぐにエリザの足元を子供たちが囲んだ。
こうなってしまっては身動きが取れないエリザ。まして、ここで帰るからといったところで、彼らはすんなりと道を開けてはくれないだろう。
それどころか泣き出すかもしれない。いくら体が大きいエリザでも、この小さな生き物には歯向かえなかった。結果、エリザは一日子供の話し相手兼滑り台やら物見やぐらとして行動することになってしまったのだった。

そして時間は進み夕暮れ時。そろそろ普通の人間サイズになることを子供たちに告げる。
何人かの子供はまだ遊び足りないと不満顔だったが、親たちに引っ張られエリザの体から離れていった。
そして夜のとばりが少しずつ空を覆う頃、エリザは普通の人間サイズになっていった。
こうなれば子供たちも強く興味をひかれることはなくなるが、反面問題もある。

エリザ「帰られなくなってしまいました・・。」

そもそも危険である可能性があるから体を大きくできるエリザを送ったのだ。それが今では普通の女性並。まして夜であるならば、その危険性は数倍にも膨れる。
多少魔力や体力があろうとも、次の朝日までの間はとても安全とは言えないのだ。

そこで村長は村に迎え入れる準備をするのだが、この村には宿と呼べる施設が存在しなかった。かなり辺鄙な村であり、観光名所のようなポイントもない。来てもせいぜいほかの町への中継地点であるなどで宿を作る必要がなかったのだ。

そこでこの村で一番大きな施設である騎士詰所を紹介された。彼ら騎士たちはエリザを好意的に迎える。多少の汗臭さはあったものの、普段から騎士たちと接することが多いエリザは気にしなかった。むしろ、彼らの屈託のない笑顔に安らぎさえ感じていたほどだ。そしてふるまわれる多くの食事。さながら宴会のように飛び交うお酒と肉料理に、エリザは心の底から笑っていた。だが、それもエリザの軽い一言から終わりを告げる。

エリザ「明日ってバレンタインですけど、皆さん奥様とか恋人の所に行かなくていいのですか?」

その一言が出た瞬間、まるで通夜を思わせる沈黙が辺りを支配した。皆一斉にグラスを置き、目を伏せる。え?え?と戸惑うエリザに騎士団長が話しかける。

騎士団長「おれ達騎士団に人質となるようなそんな存在は作れないんだ!」

その言葉に、一瞬騎士団の心が見えた気がするエリザ。だが、それは嘘だとすぐにわかってしまった。みんな泣いているからだ。

エリザ「あ、あの?本当は女性とお付き合いしたいんじゃ?」
騎士団長「うるへー!そうだよ!もう3●歳なのに未だ童貞だよ!女の子とキャッキャウフフとかしたいよ!モテないんだよおお!」

そこからはひどかった。みんなが村に女性が少ないこと、騎士団は比較的持てない職業であることなどを口々に愚痴りだす。そこから、もてない男たちの行動はどんどんエスカレートする。この村が悪いんだと叫びながら酒瓶片手に徘徊を始めるもの。騎士団が悪いんだと言いながら、この騎士団を象徴する投石器に攻撃を始めるもの。終いには騎士団長すらもその行動に乗っかり始める始末。幸いエリザや村の女性に襲いかかる屑まではいなかったが、結果は上記のとおりである。

総ての隊員が酔いつぶれるまでの間、エリザはただ待っていることしかできなかった。

そして時間は進み、朝。最初に目覚めた騎士団長は、まぶしい朝日を遮るエリザの鬼のような形相を目にする。

しばらくは彼の反省の弁とエリザのお説教で時間が流れる。途中村長から壊れた投石器の処分の依頼も出たが、昨晩に比べればなんと平和な時間だろうか。

謝罪も終わり、エリザの高度75mの手のひらという牢獄から解放される騎士団長。仲間の騎士たちに、起きて村の掃除をするようにと声をかける。やっと騎士の本分が出たかと安心するエリザ。だが、騎士団長が日めくりカレンダーをめくった瞬間、その本分は消えてなくなった。

今日はバレンタインだよ!女の子はドキドキ、男の子もドキドキしちゃうね!

大きく、それも赤字で書かれた言葉は彼にまた暴走のきっかけを作ってしまった。



エリザ「投石器を壊したり!酔っぱらってみんなに迷惑をかけたり!それでもまだ言うんですか!」
騎士団長「うええぇぇん!チョコ欲しいぃぃぃ!」

昨日の子供だってまだこんなに泣かなかったのに、そんなにチョコがほしいのかと訝しがるエリザ。そこで彼女は彼らにチョコを渡す決意をする。
但し、普通の方法ではないが。

エリザ「わかりました。チョコお渡しします。但し準備があるのでもう少し先になると思いますが」

その言葉に救われたと言わんばかりの騎士団長。

騎士団長「わかった、ありがとう!」
エリザ「そうですね、準備は三日もあれば済むと思います。恥ずかしいから場所も指定していいですか?」
騎士団長「もちろんだ!何でも言ってくれ!」
エリザ「じゃあここから少し行った場所にある無人島に来てください。皆さんにチョコをお渡ししますよ」

ありがとうと答える騎士団長を見て、エリザは笑っていた。
涙でいっぱいの騎士団長は気が付かなかった。エリザの笑顔が少し歪んでいることに。