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"Grant"
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「「かんぱ~~い」」
久しぶりに友人の家で宅飲み女子会だ。パジャマスウェットに着替えて、二人カーペットの上でくつろいでいる。
「いや~、いまどき大手で働けるって良いご身分じゃないですか~」
瓶入りのカクテル片手に彼女は冗談っぽく言った。
就活をしていた時に彼女がアドバイスしてくれた。どういう学生を企業が欲しいのか、どういうことを言うと喜ばれるのか、そのおかげで内定をゲットできたと思ってる。
「いや~、言ってもグループ会社だよ~。親会社の人はもっともらってるって聞くしもっと欲しいな~」
ガラステーブルに広げたポテチをつまみながら答える。彼女の前だといつも素直に話せる。
「お金?私、良い方法知ってるよ?」

彼女はニコッとして、ソファから立ち上がった。ソファの反対側にある引き戸を引いた。
この引き戸の先もリビングと同じぐらい広い部屋らしい。中は明かりがついていた。
ソファで座っている私は、顔を後ろに向けて引き戸の先をのぞき見た。昔遊んでいた動物のお人形さんがいそうなドールハウスがいくつも置かれているのが見えた。

「やっほ~今日はお友達が来てるの~」
彼女がそう言うと、あぐらをかいて座った。
彼女の足元でゴソゴソと何か動いているのが見えた。

ハムスター?と思ったけど、なんと彼女の足首ほどの背丈の人間だった。
言葉が出なかった。10㎝ぐらいの人間!?

「どう?」
彼女は笑いながら言った。突然のことにびっくりして何も言えなかった。夢?

私が口を開けたままぽかんとしているので彼女が話し続けた。
「小人さんを飼うの。私、これで生活してるのよ」
「え、なんて?コビトさん?」
「小人さん一人飼うと4万円もらえるのよ」
聞きなれない単語で、思わず言い返した。コビトさん?飼う?4万円?

こっちにおいでよ、そう声をかけられたので私はビールとポテチをテーブルに置いてドールハウスの部屋に移動した。
隣の部屋はこの小人さんたちの居住スペースらしい。
6畳ほどの部屋の中には合計10棟のドールハウスがあった。
彼女の言ってることがつかめてきた。つまり彼女は10人の小人さんを飼ってるから毎月40万円ももらっている!
額面でも私の月収よりずっと多い。私の就活のアドバイスの時もそうだったけど、彼女は世の中を見る目がすごい。

私は四つん這いになってそれぞれの家を見ていた。
どれも2階建ての一軒家で高さは40㎝ないぐらいだろうか。両膝をついてる私よりずっと小さかった。
小人さん一人一棟割り当てられているようだった。
各家にはコンセントと水回りのポンプが繋がれており、インフラも整っているらしかった。
ある家からは肉じゃがを作っているらしく、換気口から懐かしい料理の匂がただよっていた。
よその家の2階の窓をのぞき込むとテレビを見ていたらしくこちらと目が合ってびっくりしていた。驚かしてゴメン。
他の家も見ようとひざをつきながら四つん這いのまま動きだそうとした。

「足元ちゃんとみて!小人さんいるよ!」
「へ?」
彼女が大きな声を出すので、足元を覗くと小人さんが丸くなって屈みこんでいた。
「あ、ごめんなさいごめんなさい!」
動き出そうとしていた膝の目の前だったのであと少しで蹴とばしてしまうとこだった。
そのままだと危ないと思って、丸くなっている小人さんを両手で拾い上げて顔の前までもっていった。
突然掬われてびっくりしたのか両手を頭にかかえて丸まっていた。本当にハムスターようだ。
「かわいい……いえ、その、ごめんなさい」
眉を八の字にして謝った。
「あ…こちらも小さいですから、うっかり足元にいてすみません」
その人は手をおろしてこちらを向いて話しかけてくれた。小さいけれど見た目は私と同じ歳ぐらいに見えた。
手のひらに人を乗せて会話しているのは不思議な感覚だ。

「飼いたくなった?向こうで話してきなよ。私はこの部屋で遊んでるからさ~」
彼女からそう言われて、飼ってもいいのかなという気持ちになっていた。よく見るとかっこいいし。
返事を返そうと彼女のほうを振り向いた。びっくりした。
彼女は上着をたすき上げて小人さんの一人をおっぱいに押し付けていた。もう一人は片方の指で愛撫していた。
「何してるの!?」思わず声が出るわたし。よくよく見るともう一人は腋ではさんでモニュモニュと動かしていた。
「なにって、スキンシップだよ~この子達、こうすると嬉しそうなのよ」当たり前のように答える彼女。

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ガラステーブルの上のポテチやビールを片付けたスペースに小人さんを降ろした。
「私ってどうですか?その、、私に飼われても良いですか?」
単刀直入に聞いてみた。お酒で少し勢いづいていたかもしれない。
「僕から言うのも変なんですけど…ぜひ飼ってほしいです。すごく可愛いと思います。魅力的です!」
こんなにすんなりと成立すると思わなかった。
その後も会話を続けた。先月からここで生活しているらしかった。

「私おっぱいの大きさには自信があるんですよ」
なんの話でこうなったのかは正直覚えていなかったけど、この目の前の小人さんがかわいくて遊びたくなってしまった。
昔付き合っていた彼氏がことごとくおっぱい星人と化してしまうため、元カレ達や女子の間で「おっぱいの悪魔」と陰で呼ばれていた。そんなことある?

ガラステーブルの上に小人さんがいる。
私は腕をクロスにして上着の下をつかんでそのまま脱いだ。
お気に入りのゆったりしたスウェットだけど私のおっぱいには少々窮屈だったようで下乳に引っかかってブルンと弾んだ。
私はおっぱいをもって彼の上におろした。
小さな感触が伝わる。手かな。でも私のおっぱいは重かったみたいでそのまま大の字で押しつぶされてしまったみたいだ。
ガラスのひんやりした感触が気持ちいい。こびとさんの体温もちょうどいい刺激だ。

彼が窒息しないように適宜おっぱいを持ち上げてあげた。
一生懸命抵抗する彼が愛おしかった。
手で壁を作って彼に向かってくるおっぱいから逃げられなくしたり、小さなおちんちんをフェラをしたり色々して遊んだ。
彼が疲れ果てて大の字になっているところにキスをしてあげた。

明日、彼の家を探しにホームセンターに行こう。そう決心した私だった。

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この国には生活保障法がある。憲法で定める生存権を実現するための法律だ。
生活保障受給者と認定された者は毎月約10万円が支給される。

しかしながら、生活保障を受ける人が増え続け、国の財政を圧迫し始めた。
解決策として、生活保障から抜け出す見込みがない人で飼われても良いと希望する者を対象に縮小化させることとした。
縮小者の飼育者には補助金として一人につき月4万円を支給する法律を可決させ首都圏で実験導入され始めた。

人権侵害ではないかと声が上がっているが、縮小化した人を対象とした追跡調査では大多数が大変満足と答えているという。
人権団体や一部議員は貧困ビジネスの温床になるとの懸念から引き続き動向を注視すると発表した。