GTS要素少な目m(__)m
主人公が縮小するまでを書きました。
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"welfare" Ep.0
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俺の人生、失敗だらけだった。
周りのやつらがリクルートスーツに身を包みはじめた頃にパチンコで遊んでいた。これが最初の失敗だったと思う。
なんとか内定がとれた。広告でもよく見ていた有名な会社だった。しかしこれも失敗だった。

「努力が足りない、気合が足りない、工夫が足りない、笑顔が足りない、、、」
目の前で顔を真っ赤にして怒声を上げている上司、今日で何度目か分からない失敗。

帰り道、ネオンに照らされた繁華街も、無数の他人がいるのに、まるでこの世界に参加できていない拒絶感。
動悸がする心を、コンビニで缶チューハイを買って一気飲みして誤魔化す。
家に帰ったときには、酒が回って高揚していた。
「クソ」とか「バカ」とか口にしながら自然と涙がこぼれてきた。
「何しているんだろう。」と口にこぼしても、一人暮らしのワンルームでは誰も話を聞いてくれない。
「なんなんだよ本当にヨぉ!」と口に出したと同時に、窓を開けてベランダから飛び降りた。

目が覚めると、どうやらそこは病院だった。寝たきりだった。
看護師から足から飛び降りたから一命は取り留めた、そういうことを言われた。
歩けるようにこれからリハビリ頑張りましょうねと言われたときに、事の重大さを知った。

その後、会社の代理人だと名乗る弁護士が来て、今日付けで退職ということを告げられた。
もうあの嫌な組織から抜け出せると思うと安堵した。目の前に広げられた書類にただ言われるがままにサインした。

正社員だったけど、給料は安かったしストレスで散財してたから貯金はまったくなかった。
なんとか歩けるようになったので退院した。精算したら現金はほとんど残っていなかった。
借りていたアパートの管理会社から金が振り込まれていないと連絡が来ていた。しかし金が尽きている。

小銭でおにぎりを買って駅前のベンチで食べた。退院後初めての食事だがこれからの金のことが気になって味がしなかった。
一人の女性が俺に声をかけてきた。
「ウチ家賃タダだけど助けてあげましょうか」

視線を彼女のほうに向けるとニコッとはにかんだ。年齢は俺と一緒くらいだろうか
どこかの支援団体だろうか、俺が貧乏に見えるのか随分はっきり言われた。
でも先のことを考えると金銭面に不安なのは確かだ。金がないから今の賃貸は追われるだろう。
そのことを彼女に伝えると、「問題ないわ!私についてきて」と言われて食べかけのおにぎりを一気に頬張って彼女の後をついていった。

聞くと、ここ半年ぐらいで10人ぐらいを支援してきたらしい。
支援に詳しそうに知識を話していた。内容はよくわからなかったがこの人なら安心だとなんだか思えた。

彼女に言われるがまま一緒に役所の福祉課に行った。また、なにやらまた難しい契約の話になった。
俺はもう難しい話をしたくなかったから、ただただサインをした。
福祉課の担当に奥の部屋を案内されて小部屋の中で座っていると、真っ暗になって機械音がシューシューと音を立てた。

扉が開けられたときに、巨大な彼女につかまれて持ち上げられた。
すべてのものが巨大化していることに気づいた。いや、俺は縮小されてしまったのだ。

「これからよろしくね」
目の前に彼女の巨大な笑顔が映る。こんなに綺麗な女性の笑顔を近くで見たことがなくてドキッとした。

俺を鞄に放り込むと、鞄の口を閉めた。
人の話を聞かずにサインするのは失敗だった。縮小した自分はこれからどうなるんだと絶望した。

鞄の中、自分の目の前には女性もののハンカチがあった。折りたたまれていても自分を包むには十分な布団ぐらいの大きさがあった。
振り返れば俺は女性とは程遠い生活を送っていた。
ハンカチについた柔軟剤とか女性がつけるような香水のような匂い、体臭もあるだろうか、男一人暮らしでは嗅ぐことのない匂いが空間を漂っている。
これからどうなるかも分からないのに、女性的なモノを前に自分の股間が固くなっていた。