「ねぇ幽香、外の世界で怪獣になってみない?」

「……私いつの間に貴方の頭に花を咲かせたかしら。」


幽香は自らの家に突然現れて謎の提案をした紫にコーヒーカップを片手に辛辣な返答を返した。

「いいえ?私は真面目に話してるわよ?」

「まず人の家に玄関から入らずに第一声にそれを言うことを真面目とは言わないわ。」

太陽の畑の何処かに位置する風見幽香の自宅、
それほど大きくはないがあちこちに綺麗に咲いた花が植えられた植木鉢や質素な調度品が置いてある落ち着いた光景。

その部屋の中一人で静かに昼飯後の珈琲を飲んでいた所に、
唐突にスキマから顔を出し意味不明な事を提案する。
風見幽香の機嫌を害するには十分なシチュエーションではある。

「じゃあ玄関から入り直してやり直しましょうか?」

紫は口でそう言いながら勝手に来客用の椅子に座る。

「いいわよどうせ、それよりも貴方がどうかしたかの方が興味あるわ。」

こういう時の紫は最低でも話を聞いてからじゃないと帰らない、
そう考えた風見幽香は半ば諦めながら聞く態勢に入る。

「単刀直入、貴方に巨大化して外の世界の文明を破壊してほしいのよ。」

「……情報量が変わらないわね、そんな話を私に持ちかけるなんてどういうわけかしら?」
「それに貴方にどういう徳があるのかしら、そんなことをしたら幻想郷にも影響があるんじゃ?」

「少し位相がズレた外の世界、パラレルワールドの一つが境界について研究を始めてる。」

「それがどうしたのかしら?」

「ここを見つけようとしているみたいなのよ、絶対に阻止しないといけないわ。」

「じゃあ私に頼まず貴方自身がやればいいじゃない。」

「私は億が一に備えて藍と待機に当たる必要がある、実働の方には回れない。」

ある程度質問し、
紫の提案の意味をある程度把握しながらコーヒーカップを置き返事をする。

「それでなんで私に持ち掛けるのよ、他の人に頼みなさい。」

「少なくとも貴方は適任なの。」

つれない風見幽香の返事を半ばスルーし、
強引に紫は五本の指を立て一つずつ説明しながら折っていく。

「ひとつ、貴方は妖怪としての能力ではなく純粋な妖力と力を持っている。」
「向こうの世界は科学の世界、特殊能力などではなく出来る限りシンプルな力で破壊するのが効率がいいのよ。」

「ふたつ、貴方は妖怪でありながら夢幻界の住民である事よ。」
「妖怪として恐れで強くなりながら恐れがなくても存在自体は消えない特異な存在。」

「みっつ、貴方は少なくとも馬鹿ではないわ。」
「向こうでは何があるかわからない、よって力の他に判断力と知性が求められるの。」

「よっつ、そちらの世界は発達した文明により自然はほぼ存在しない 貴方にとっては汚らわしいでしょう?」
「それに最近暇してるらしいじゃない、変わった苛めは如何かしら?」

「そして最後は…」
最後の指をゆっくりと折りながらニヤニヤとし焦らす紫に、
風見幽香は何なのかと自分の中で考えるが思いつかず質問する。

「最後は何なの……?」

その疑問に対しさっきまで焦らしていたのに今度はあっさりと指を折り答える
「いつつ」
「貴方先日の神社での宴会で山の巫女が持ち込んだ怪獣映画上映会を見てたじゃない?」
「そういうのに興味あると思ったから持ち掛けたのよ?」

「……そんな理由で?」

「ええ、河童の射影機を使って宴会の一角で上映されてたあの映画、
見てた中で貴方が適任だったのよ。」

確かに先日の宴会の一角で行われていた早苗が持ち込んだ怪獣映画のビデオの上映会を彼女は見ていた。

思い出すと他に上映を見ていたのは氷の妖精や山の緑髪巫女、
地底の八咫烏や河童など、先程紫の上げた条件を満たしてはない面子ではあった。

「別に珍しかったから見てただけよ、怪獣になりたいってわけじゃ……。」

「あら?それなりに楽しんで見ていたと思ったのだけれど。」

「だからって私に怪獣になれって言うの?」

「ええ、今回の件は軽い貸しとしてあげる、貴方は今頼める中で一番適任なの。」

選択の理由は非常に単純だが紫の顔は少なくとも真面目、
それに自らに頼みに来る程ではある。
恐らくは遠からず幻想郷の存続に関わる問題なのだろうと風見幽香は理解し、
少し冷めてしまった残ったコーヒーを飲み干して席を立つ。

「そこまで言うならわかったわ、花が無い世界というのも気に食わないしね。」
「感謝するわ、じゃあ行ってらっしゃい〜。」

「えっ? 待ちなさ……」

許諾した瞬間足元にスキマが開き不意を突かれた幽香は中に落ちていく

「向こうに付いたら巨大化してるわ、ある程度破壊して満足したら言ってちょうだいねー。」

ゆっくり閉じていく隙間の向こうで扇子を振りながら見送る紫を見ながら、
(帰ったら早速貸しを使って殴ろう)
そう思いながら風見幽香は深いスキマの中を落ちていった。



その星の名は地球。
名前は地球、住んでいるのも人類、
しかし国も大陸も島も現実の地球とは違う。
3つの大大陸と小さな諸島から構成され、
高い科学力で幻想も神秘も数値に変え、
高度な宇宙進出や果ては空間間移動の研究により資源問題を解決しようとする、
広く知られた地球より技術も、そして環境破壊も高いレベルになっている惑星。

その地球の大陸にある国の一都市、
景色自体は変わらずビルが建ち並び相変わらずガソリン駆動の車両が走る、
人間達は自らの仕事や趣味のために暮らすそんなありふれた都市の光景は。

ズズウゥゥゥーン!

宙のスキマから現れた巨人によって踏み潰された。


一分もせずにスキマでの自由落下は終わり地面に着地した風見幽香は立ち上がり周りを見回す。

「ようやくついたのかしら……」

周りには映画で見たような灰色の高層建築、
アスファルトに舗装された道が張り巡らされた機械的な色と灰色の世界。
足元では呆然としてる者や逃げ出す者でパニックが起きていた。

自然の淡い緑が見当たらず苛ついた幽香は踏み潰したビルの破片を細かく踏みにじる
「確かにこれは……、虐めがいがそれなりにありそうね。」
自らの普段の百倍になった肉体を軽く動かしてから呟く。

「さて……、自己紹介させてもらうわね、
私は怪獣幽香、貴方達が邪険にした草木に変わって貴方達を蹂躙させてもらうわ。」

実は映画を内心楽しんでみていた風見幽香は怪獣と自らを呼称し破壊を始める。

「まずは貴方。」

ズゴォォン!

故意的な一撃目として自らの着地で多少傾き掛けていた目の前のビルに振り被った拳を叩き込む。
巨大化した肉体と妖怪としての筋力が合わさった怪力は一撃でビルを粉砕し跡形もなく瓦礫を吹き飛ばす。

「歯ごたえはないけどこれぐらいのも手軽でいいわ。」

ビルの手応えと人の命、そして市民に恐れを感じ快感を得る風見幽香。

「貴方達の作ったモノは私にとって壊すしか価値がない、その役目を果たせ!」

ズガッッッ!!

ビルに叩き込んだ拳をそのまま裏拳にして横のビルと後ろのビルを薙ぎ払う。

ビルを何件も中階層から薙ぎ払い衝撃波で上下のフロアの人々を挽肉にし、
自らの拳に直撃したものは人も物も細かな破片に変える。

「足元でうろちょろするな害虫共!」
足に突っ込み爆発した車のせいで足元に目をやると、
そこには野次馬やビルから逃げ出そうとしていた人々や武装した治安組織。

人類ではなく植物を滅ぼした害虫として風見幽香は赤いロングスカートと赤い靴に包まれた足を振り上げ集団に叩き向ける。
直撃した人々は赤い靴の色の構成物を増やし、
妖怪の巨大化した脚力は衝撃波で直撃してない存在も破壊した。

「ひたすらにただ恐れを集めるのも気持ちいいわね、弱い者虐めも最近はやってなかったし。」

人々の命や恐れを妖力として取り込みながら何度も足踏みをしてみる幽香。

風見幽香は強者との戦いも好むが弱い者いじめも好きな性分、
発展してきた文明という存在を弱者として蹂躙するのを楽しんでいた。

「紫は文明を破壊しろと言っていた、つまりあなた達は鏖ね。」

交通事故や瓦礫によって動けなくなった車に向けゆっくりと拳を握り、
その拳を地面に叩き付け地割れを発生させて瓦礫も人も飲み込む。

「さぁどんどんこの灰色の地を壊していくわよ。」

先程までは着地地点からは殆ど移動はしてなかったが、
地割れなどで破壊してしまった為に巨大な足で小さいものを踏み潰しながら移動を始める。

車や雑居ビルを踏み潰しながら歩いていた幽香はビルの屋上に閉じ込められた男たちを見つけ笑みを浮かべながら近寄る。

「逃げないでそんなところでどうしたの?もしかしてこの胸が欲しかったかしら?」

ずどおおーーん!!

そう言いながら自らの胸をビルの屋上に勢い良く押し乗せる、
小さくはない胸は一瞬にしてビルの屋上と人を叩き潰しビルの基盤まで響く衝撃を走らせた。

「あらあら、貴方達には勿体なかったかも。」

自らの胸に耐えきれずゆっくりとボロボロ崩れていくビルを見ながら笑う幽香、
胸についた瓦礫を払いながら次の獲物を探す。

「なんか盛り上がってきたわ、恐れのせいかしら。」
破壊と殺戮を進めるたびに怪獣としてこの世界の恐れを一身に受ける風見幽香、
それの影響で体がほてり冷静な彼女には珍しく興奮していく。

「さて、どんどんいきましょう。」

普通に歩いて通り道にあるビルを一撃で蹴り崩したり、
怪獣みたいに手を前にして一つ一つ踏み潰しながら歩いてみたり。
小さな街で面白いものを見つける為に歩き回る幽香。

そんな中、羽虫のような音に気がついた幽香は、
少し離れた位置で自らのことを撮影している報道ヘリを発見する。

自らが引っこ抜いていた鉄塔を膝蹴りでへし折った幽香は、
報道ヘリに笑顔で手を振る。

「わざわざ私のところに来るなんてあなたは度胸があるわ。」

そうやって笑顔を向けながら距離を図った風見幽香、
高い科学力で作られたカメラは長い距離からでも撮影ができる為、
自らの手やモノを投げても当たらないと思った幽香は別の方法を使うことを考える。

「貴方にはこの地で初めてのマスタースパークを味あわせてあげる…!」

傘が無い幽香は自らが見た映画を想像しどこから放つか決め、
口を開き妖力を溜め始める。

口の中に虹色の光が集まり景色が歪み、
いつもはしない口元への集中からか目も赤く光りだす。

「ふうっ!!」

ヴィーーーンッ

風見幽香の口が一気に開き吐き出した息と共に
瞬時に口からいつもよりは細めのマスタースパークが放たれ、
遠くの報道ヘリを呑み込み蒸発させる。

「さて、どうかしら?」

既に消えたヘリに話しかけながらせせら笑う幽香、
この行動が後々あの事態に繋がるとは思わない彼女は
口からのマスタースパークの不思議な感触と快感に喜びを感じる。

「あれに人はどれだけ乗ってたのかしら、なんか妖力が多いわね。」

報道を見た人々から流れてきた妖力に徐々に風見幽香の思考が
人々が思う閃光を放つ女性型の怪獣という存在に引き寄せられていく。

「まぁ文明を滅ぼさなきゃいけないの、どんどん壊していきましょう。」

ゆっくりと歩きながら未だ無事な建物を足の下に消していく、

「細々したのが鬱陶しい……」

文明が発達した都市の規模は想像以上に大きく、
辺り一面には雑居ビルや高層ビルや商業施設などが広がっている。

「もう少し本気を出してあげてもいいかも。」

そう呟きながら力強く足を踏み締め、
今度は目に妖力を集中させて解き放つ

「死ね!」

ズヴビィッ!!
2つの眼から放たれた閃光は見渡した周囲を切り裂き瞬時に爆発させ破壊する

「ああ!恐れが!命が!!体にぃ!」

瞬時に流れ込む桁違いの恐れと命が彼女を絶頂させ
そのたびに目の先にあるものを撃ち抜き焼き尽くしていく。

直撃を受けた物質は融解し、
幻想郷の弾幕ごっこでは出せない破壊の為の光線がビル群を次々と火に包んでいく。

目からビームを放ちながら燃え盛る街で興奮し力の制御がうまく行かなくなっていく風見幽香、
燃え盛る街をゆっくりと歩きながら生命を感じた方向に目を向けては焼き尽くしていく。

「あーはっはっはっ!!」

一撃一撃の重量級の足踏みは地下街や地下トンネルを踏み崩し、
空いた穴にはビームを打ち込み内から爆破して内部を殲滅する。

燃え盛る街に出遅れた防衛軍の空軍や陸軍が出動するも、
人々の恐れで強大化していく風見幽香にとっては只の玩具としてしか見られなかった。

見つけた戦車隊に走り寄ってその勢いのまま巨大な拳を戦車に叩き付け、
地盤ごと叩き潰しそのまま屈んだ状態で上空の戦闘機をビームで貫き撃墜する。

大衆の思い描く怪獣として暴走を始めた風見幽香はただ破壊を求め、
歩兵隊を鷲掴み握り潰しその拳で乗り捨てられた電車を叩き潰す。

戦闘ヘリが接近してでのロケット連射を図ったところを、
ハイキックに巻き込み数台撃墜しそのまま足を勢い良く地面に振り下ろし、
都市で原型を保っていた建物を衝撃波だけで崩落させる。

「u…Ugaaaaaa!!」

その瞬間じわじわと巨大化していた肉体が堰を切ったように巨大化していく、
肉体は一気に膨れ上がり、逃げ切れなかった戦闘機や戦闘ヘリが体にあたり爆発四散する。

「ふぅー……ふぅー……」

百倍の肉体から万倍に巨大化した風見幽香、
人々の恐れや恐怖により自らの存在が軽く引き寄せられ、
目は常に赤く発光し口からは蒸気が漏れるという大怪獣然とした姿になる風見幽香。

「焼き尽くして……あげるわ……。」
意識も破壊の化身と化した幽香は焼き尽くされた街からゆっくりと、
しかし一歩一歩文明を踏み潰しながらまだ人が多い地域への進撃を開始する。

巨大化した赤い靴は小さな住宅街や別の町へと通じた道を踏み砕き、
逃げようとする人間は地上では踏みつぶされ
航空機はロングスカートや胸に衝突して破壊される。

大都市と大都市の間にある小規模な都市や街に対しては自ら向かうこともなく一瞥し。

「……あの程度の街は眼中にない!」

ズドオオオオン!
ズドオオオオオン!
口からのマスタースパークの一撃で地盤毎瞬時に吹き飛ばして消し去っていく。

街を消し飛ばし踏み潰しす
そしてその光景を見る人類が増えるたびに怪獣へと成っていく風見幽香。

「ふふ……。」

山や街を踏み潰しながら目当ての次の大都市についた途端、
容赦せず防衛隊もビルも避難民も纏めて拳を振り下ろし粉砕する。

ズゴオオオオンッ!ズドオオオオッン!

「不愉快なの!!」

街を一撃ごとに揺らし、
そのまま見開いた赤く光る目から閃光を再度放ち地平線まで焼き尽くしていく、
そのような破壊に耐えうる文明はなく間もなく只の焼け焦げひび割れた荒れ地と化す。

「もっと虐めてあげる……」

しかし怪獣としての破壊欲と加虐心に取り憑かれた風見幽香は手加減もせず、
見つけた生命体をひとり残らず血祭りに上げながら大陸を虱潰しに破壊していく。

見つけた高層タワーをつまみ上げすり潰し、
管理され奴隷の様に画一化された植物たちを一息に焼き払い、
目に入った物体を平らに均すように踏み潰していく。

「あはは…!」

見境なく存在を破壊していきながらゆっくりと巨大化していく風見幽香は
100万倍の肉体で崩壊しきった大陸にトドメの踏み潰しを行ってから。
水溜りのような海を渡って別の大陸を目指していく。

今まで辛うじて無事だった海軍を足で海底に叩きつけ、
小さな島や列島は口と目から交互に放たれる光線により蒸発させられていく。
もはや幻想郷に害するような文明は崩壊し必要もない殺戮が世界で繰り広げられていく。

「ふふ……、虐め甲斐がありそう……。」
新しい大陸に上陸し沿岸都市を足で薙ぎ払った風見幽香は、
ただ人類の殲滅という目的にすり替わった破壊を遂行する為。
目から光線を垂れ流し、遙か上から街街を撃ち抜いていく。

ズドドドドドドド!

まだ無事な大陸からICBMが飛んできたりもしたが核弾頭を拳で撃墜し、
反撃として辺りへ全力のマスタースパークを口から放ち周辺を無数のクレーターに変える。

破壊し殺戮すればするほど巨大化していった風見幽香は、
一撃一撃で星さえも悲鳴を上げるような腕力と光線を惜しげもなく使い。
文明の残滓さえも残らず叩き潰し焼き払っていく。

しゃがみ込み世界一の高さを誇る大山脈を片手で薙ぎ払い、
大陸湾の人工島を巨大な脚から放つ蹴りで破片を成層圏まで飛ばす。
都市を踏み潰しながら口からのマスタースパークを連発する。
そうして2つめの大陸をマグマと焼け野原にした風見幽香は
溜まり切った恐れにより急激な巨大化を始めた

「はぁ……はぁ……はあっ!!」

自らの中の声に従い地球の大地を蹴り宇宙空間に飛び出す幽香

ズズズズズ…ズガアアアアアン!!

その瞬間に体は一気に巨大化し、
通常の億倍、まさしく天から使わされたような破壊の化身の巨体となる。

「fufufu……」

もはや言語として認識できない唸り声を上げ、
真っ赤に発光する巨大な口から白い大気を吐く巨人幽香。

高ぶる破壊欲のまま巨大な拳で人工衛星や衛星をぐしゃぐしゃと握り潰し、
一桁の生存者が残っていた2つめの大陸の上に隕石として降り注がせる。

生存者がゼロ桁になったと感じた彼女はゆっくりと最後の大陸の方向へ体を移動させていく、
無事だった人工衛星や宇宙ステーション、試験建造されていたコロニーなどを体だけで粉砕し
無事な大陸の方を巨大な目で見下す、
既に他の大陸の破壊などで天変地異のようになり、
正常な状態じゃない大陸を見て獲物を見つけた加虐的な笑みを浮かべ
その瞬間氷河期を迎えた隕石よりも巨大な拳を一気に乱打した!!

ズドドドドドドオ!!

普通の等身大時でも普通の妖怪程度を片付けられるその乱打は
一撃で星の人類を絶滅させ星をひしゃげさせて行く。

「死になさああああああい!!!!」

巨大な拳を数十発打たれた地球はほとんど潰れたボールのようになり最終的には細かい破片として砕け散る。

「あはははははは!!あはははははは!!」

笑いながら暴走した幽香はその場から本能のみで口からの閃光で
既に遠く宇宙に散らばった遠く離れた惑星間の移動をしようとしていた宇宙船や調査機を
薙ぎ払い撃ち抜いていく。

「あはははははは!!あはははははは!!」





『まさかこうなっちゃうとはね……』




「……うーん あれ?紫」

「あら、」

目を覚ますとそこは自宅のベッド、
机の方では来客用の椅子で勝手にコーヒーを飲んでいる八雲紫がいた。

「気がついたかしら?」

「……たしか私は文明を……それで……」

「ええそうよ、少し想定外なことになっちゃってごめんなさいね。」

「うーん……よく覚えてないわ……」

ぼんやりとした頭
まるで夢幻館の酒樽全て飲んだかのようなだるさと疲労が風見幽香に残っている

「まさかあそこまでイメージと恐れが溜まるとは思わなかったのよ。」
少し悪そうに振る舞いながらも風見幽香のコーヒーを飲む紫。

「とりあえず……今日はだるいから一人にさせてちょうだい」

最初は終わったら殴るつもりだったが、
稀に見る体のだるさから殴るのはいつでも出来る。
次の宴会の時ノコノコやってきたら殴ろうと考えていた。


紫はコーヒーカップを置き椅子から立ちスカートのホコリを払った

「ええ、わたしもそろそろ帰ってあの映像を編集しなきゃだもの。」

「……編集?」

「ただ食べもせず滅ぼすのは人間に失礼でしょう?一応映像を撮っていたのよ。」

「……」

「貴方楽しそうだったし迫力満点だったわぁ、意外とマニアとかに売れるのよ。」

「……るわ。」

「じゃ、お大事にね〜。」

「やっぱり今殴るわ!!!!!」

布団を跳ね除け紫に飛びかかるも紫は既にスキマに消え、
「処理料」と「出演料」と書かれた封筒がひらひらと舞っていた。

空振りした拳により真っ二つに割れた来客用の椅子と握り締めた封筒、
後で椅子は直す、それよりもとりあえず紫をシバいてあの映像を消去する。

だるさを怒りで抑え風見幽香は家を飛び出していったのであった……