スノーグローブ(英語: Snow globe)とは、球形やドーム形の透明な容器の中を水やグリセリンなどの透明な液体で満たし、人形・建物などのミニチュアと、雪に見立てたもの等を入れ、動かすことで雪が降っている風景をつくる物である。

              ーーーーー日本語版Wikipedia「スノーグローブ」より引用


第五次聖杯戦争を誰一人欠けることなく終結してからもう数日、
キャスターとして現界したメディアは平和な昼頃を暮らしていた。

しかし例え戦争が終結したとしても魔術師として自らの工房は維持し出来る限り改良をせねばならない、
そう思い物の整理を行っていた。

「うーん……、ここに棚が欲しいわね…。」

しかし魔術薬や素材に魔術道具やフィギュアやプラモ、
多くの物を整理整頓には棚や箪笥が必要。

そうして彼女は寺の住人の坊主に聞き、
使われていない棚とかが物置にあると教えてもらい取りに行ったのだ。

「ずいぶん埃っぽいわ……、ここは掃除されてないのかしら……。」

離れの物置の中は様々なものが雑然と放置され、
寺の中では珍しく掃除もあまりされていないようなところだった。

「早く棚を見つけてこんなとこ出ていきたいわね……。」

そう言いながら広めの薄暗い物置の中を探すメディア。

奥の方に少し入るとそれなりにしっかりしてまだ使える棚、
その中にひとつだけ置かれたスノーグローブがあった。

「あら……綺麗、何かしら……?。」

ガラスの中は不思議と真っ黒で
その中に白く小さい、しかしキラキラと光る粒が浮ぶ、
それはまさに満点の夜空にも近い幻想的な光景だった。

「……物置の物はいらないって言ってたわよね。」

綺麗な調度品を見つけたメディアは、
どうせこんなところにあるよりはと自分の部屋に持って帰ろうと手に取る。

「…? これはねじ……オルゴールというものかしら。」
手に取るとスノーグローブの後ろの小さな突起物が触る、
聖杯からの知識にあったオルゴールという音を奏でる物の起動する為の螺子。

なんの曲か気になったメディアはそのネジに手をかける
「んっ……!固いわねこのネジ……。」

異様に回すのに力がいるネジを一巻き二巻きするメディア、
その瞬間スノーグローブは突然魔力を共に眩しい光を放ち出す。

「魔術道具!?」
あるはずのないところにあった上、
ネジを回すまで一切魔力を感じなかったスノーグローブに驚くメディア。

回避や停止させる間もなくメディアの視界は白く染まっていった。



「なんなのよこれ……」

戻った視界、立ち尽くすメディア、自らの横で壊れた建物、足元で潰れた車。
気がつけばメディアは数百mの巨体でビル街の中心に立ち尽くしていた。

「規模が大きい箱庭……、なら脱出方法が設定されてるはず。」

この状況から瞬時に昔自らが作った事もある箱庭に近しい構造と判断し、
意識を集中させ掛けられた魔術の構造を調べる。

調べ始めてから一分程で大体の構造がわかり同時に深くため息をつく。

「誰がこんなものを作ったのかしら……。」

調べてわかったことは脱出の為の単純なルール。

脱出方法は
『この中で一定サイズまで巨大化する』事
巨大化はこの中の物や疑似生命体を破壊することで巨大化し、
魔術の行使は”一部の条件の魔術”を除いて妨害される、
そして単純なルールだからこそ改竄や不正な脱出は危険ということだった。

「やるしかないわ……」
吸い込まれる前は昼前とはいえ、
この箱庭と向こうでの時間の進み具合の差まではわからない。
最長でも夜までには脱出しなければ宗一郎様を心配させてしまう。

色々とやりたくはないが一番確実な方法で脱出するしかない、
そう決めた彼女はまず足をゆっくりと後ろに振り抜く。

「はぁっ!」

ズドンッッ!

振り抜いた足で思いっきり目の前の雑居ビルを蹴り抜き吹き飛ばすメディア。
ビルはあっさりと砕け散り内部の物も人も吹き飛ぶ。

「無駄に精密に出来てるわね……。」

モデラーとしての感想を呟きながら瓦礫を踏みにじるメディア、
上が吹き飛んだビルの中を覗き込みながら残った壁を摘んで脆さを確認する。

「これなら魔術とか使わなくても壊せるわねっと。」

そう言いながら立ち上がったメディアは手で自分の横にあったビルを軽く平手打ちし、
また一つのビルの上部をあっさりと瓦礫に変える。

「構造を見たときはどうしようかと思ったけど……」

そう言いながら平手打ちしたビルの下の方ヘ足を振り下ろしグシャグシャに踏み潰す。

「ま、やるなら徹底的にやらなきゃ損、こういう体験したことはないですし。」

元々サド的な欲望が存在しているメディアはビルを踏み潰し逃げ惑う人々を見て、
優越感と愉悦感を感じながらも
目ざとく見つけた足元を走り抜けようとした乗用車をの後部を踏み潰し、
半分潰れた車を掴み持ち上げ覗き込む。

「軽いわねぇ……。」

まだ車の運転席に乗って恐怖に震えている人間を見つめ笑い掛ける。

「怖いかしら?残念だけど貴方は……。」

グシャッ

「潰れてもらうわ。」

手のひらに乗せた車を一気に握り潰し車を肉と鉄の塊に変える。

「ふふ……どうせ死ぬのですもの、魔女の掌に乗れるなんて貴重な体験よ。」

人と車だったものをパラパラと落として、
辺りのビルを次々と足で蹴り崩して行く。

「こんなに簡単ならあんな魔術制限を気にしなくても良かったわね。」

自分の体一つで破壊される街を見て魔術に掛けられた制限について気にせずに済むと、
少し安心しながら更に壊して行く為に歩き出し乗り捨てられた車や怪我した小人を踏み潰していくメディア。

「ふふ……逃げなさいな、早くしなきゃ……。」

ズン!!

「踏み潰しちゃうわよ?」

ゆっくりとその巨体で逃げようとして渋滞する道を踏み潰していくメディア、
気まぐれにビルの一部をもぎ取って投げたり、
建物へ蹴り入れ粉砕しながら自由に歩き破壊をして行く。

「そーれっ!」

ズガァン!ズドォン!!

パンッ パンッ!

巨大な足で次々と建築物を踏み潰していると、
小さな破裂音とドレスに包まれた体に何かが当たったような感触がする
ふと見渡すとパトカーや輸送車から警察官たちが
短機関銃や拳銃を発砲しているのが目に入った。

「そんなもので私に挑もうというのかしら?」

気がついたメディアはビルの残骸から足を引き抜き、
自らに歯向かった警官隊へと向かっていく。

「ふふふっ……。」
数歩で警官達の前まで近寄るとゆっくりとしゃがみ込み、
逃げようとしている警官達に思い切り掌を振り上げる。

「さぁ…絶望なさい!」

ズドオオオオンッ!!

振り上げた巨大な掌を地面に叩き付けて警察を一撃で叩き潰すメディア

手袋に包まれた手によって車も警官も跡形もなくひしゃげ瓦礫と一体化する。

「あらあら、弱いわね…。」

瓦礫や肉がついた掌を払いながら立ち上がり、
まだ破壊されていない所が多くある街を見回す。

「まったく一体どこまで破壊すればいいのかしら……。」

眼下に広がる街を見て呟きながら無事なところへ走って行くメディア。

「私の為に大人しく滅ぼされなさい!」

建物を次々踏み潰し少し高い建物には容赦なく拳を叩き込む、
邪魔な物も邪魔ではない物も分け隔てなくグシャグシャに破壊する。

「……見てるんじゃないわよ!」

報道ヘリに気が付いたメディアは手近に乗客を載せたまま停止していた電車を持ち
編成から一両もぎ取って投げ付け報道ヘリコプターに直撃させ撃墜する。

手元に残った数両の電車はそのままビルに叩きつけ踏み潰すと、
手近なガソリンスタンドを地下タンクまで踏み抜き爆発炎上。
油と火の付着した瓦礫を纏めて掴み投げ街の無事な区画を火の海にする。

「これじゃまるでバーサーカーね…」

自らのやっている大破壊が狂戦士みたいだとも思いながらも、
少し楽しみながら燃え盛る街を見回す。

「あんなものもあるのね…」

気になったものを見つけたメディアは燃え盛る街を横断し
その街のシンボルマークの展望台とその近くに建っている城へ向かう

「ふふっ こういうのはどうかしら?」

ズズ……ズズズ……ズボオゴオオッッツ!!

メディアは展望タワーに手をかけゆっくりと引き抜き
基礎や様々なパーツや人を振り落としながら展望タワーを持ち上げる。

「はあっ!」

ズガアアアアッン ズガガガガッ!!!

展望タワー持ちながら城へ近寄りそのまま一直線に城に振り下ろす、
城を上から叩き潰しタワーはそのまま折れ曲がり崩れ落ちる。

「あはは…脆弱…!」

嘲笑った後天守閣から押し潰された城の上にタワーの残骸を投げ捨て、
そのまま瓦礫と化した城とタワーを後にするメディア。

「港もあるの……。」

次にメディアはタンカーや輸送船が停泊している港に目をつけ、
足元を気にせず港へ向かっていく。

「結構大きいわね……。」

自らの今の身長より大きなタンカーを目の前に予想以上の大きさに少し困るメディア、
手を握り込み拳を船の上から振り下ろす。

バギィグジャア!

「でも耐久力はないみたいね、残念。」

拳はあっさりと甲板を突き破り船体は軋み始める
その後も何発も叩き込まれたパンチに船は耐え切れず真ん中から折れて沈没していく。

残った輸送船やタンカーに対しても
コンテナや小さなタグボートを持ち上げ投げつけたり、
クレーンをへし折って突き刺したりして次々と沈めていく。

「しかしまだなのかしら……」

港湾倉庫に足を振り下ろし中身をかき混ぜながら呟くと、
突如体が熱を発し徐々に巨大化していく

ズズッ……ズズズズズズ…!

「っつ……ついに来たわね……!」

知識としては得ていたが巨大化していくという不思議な感覚に、
言いしれぬ感覚を得ながら身体の巨大化の速度は徐々に早くなり、
最終的にいつもの1000倍の1.7km以上になる。

「……広いわ。」

更に小さくなった足元の街を軽く動かした足ですり潰しながら、
巨大化して遠くを見渡せるようになったメディアはあたりを見渡す。

「これ全部破壊しなきゃいけないの…?」

先程まで破壊していた街の向こうにはまだまだ無事な街が広がり、
その向こうにも小さな街や建造物がちらほら見え、
この箱庭が現実と同じ広さを誇っているという事を察するメディア。

「これを肉体で破壊していくのも……やっぱり魔術を使うしか……。」

ブツブツとつぶやきながら燃える街を僅かな生存者や避難所ごと踏み潰しながら
無事な都市へ向かって歩き出すメディア、
数分もせず燃え盛る街を縦断し新しい都市の境目に立つ。

「仕方ないわ……」
さっきまで焼き払っていた港湾都市より広大な土地に広がる大都市を目の前にし、
決心がついたメディアは街に向けゆっくりと口を開け始める。

口の奥が紫色に発光しだし口の前に小さな魔法陣が発生し、
数秒間溜めていき光が強くなっていく。

「プネウマ!」

ズドッオオオオオオオンッ!!!

呪文名を唱え口の中が一層輝いた瞬間に紫色の光の奔流が放たれる。

口から吐き出された紫の閃光は街も人も焼き尽くしていく、
隣都市の惨劇から出動していた防衛軍の攻撃も撃墜され一瞬にして爆発する。

口からの極太破壊光線の数秒間にわたる照射で街は半分以上消滅し、
大都市は一瞬にして地獄絵図と化す。

「次は……。」
未だに半分ほど残った都市に対し体を向け、
今度は両腕で目を隠し魔力を溜め始める。

「ダクリュオン!」

ズビイイイイイッ!!

両腕を離した瞬間に目が光り二対の赤のビームが放たれる、
先程のよりは細いが街に対しては十分な太さの光線がビルをあっさりと打ち抜き、
顔を動かすだけで街をなぞり焼き尽くしていく。

視線に合わせ街の区画は切り裂かれ溶解するアスファルトやコンクリート、
その熱量で直撃せずともガス管や車は爆発し、逃げ惑っていた人々は自然発火する。

目と口からの二回の攻撃で都市を完全に壊滅させたメディアは
燃え盛る街の中で辛うじて形が残った建物を踏み潰しながら辺りを確認する

「威力はこのぐらいね……」

この箱庭にかけられていた魔術に対する制限は、
「目や口などを媒体とした攻撃魔術のみ」と言う物。

効率や使い勝手、見てくれも含めて普段は使うことを考えないような魔術で、
今も彼女はそんなものを使いたくはない。

しかし肉体のみではこの巨大化していく巨体を持ってしても広域を破壊するには時間がかかる。

要するに背と腹は変えられぬと考えた彼女は魔術を使う事も決心することになる。

「さぁどんどん行くわよ!」

光線の直撃を免れた足元の街を踏み潰しながら、
半ばヤケのまま移動を始めるメディア。

「ふふ……偉大な魔女のお通り、踏まれたくないなら逃げなさい。」

途中の小さな山は蹴り崩し小規模な町や村などをわざと踏み躙り、
生体反応があった瓦礫などをしゃがみ込み掌で押し潰していく。

「小煩い蝿ね…。」

さっきの光線を免れた戦闘機などを片手で掴み潰しながら
遠くの方に街が見えると口から光線を撃ち込む。

「それに……あそこにも街があるわ……、本当に虫のように……はあ……。」
「ふぅーー……プネウマッ!」

一発一発チャージせず光弾として打ち出した閃光は直撃した街の中心を吹き飛ばす。

「ふん……皆吹き飛んでしまえばいいのよ……!」

自らの挙動一つで吹き飛んでいく世界を睥睨しながら、
自らの目に入るものを全て破壊して行くメディアは
ゆっくりとだが視界全てを破壊しながら進撃していく。

幾つもの大都市は彼女の視界に入った数瞬後には、
口内から発された超高熱量の閃光により消滅。
遊園地や大型電波塔や公園などの、
彼女の目に止まるようなランドマークは、
文字通り彼女の眼光に射抜かれ周囲諸共焼き払われる。

彼女の針路にある中規模都市には
女神のように美しい彼女の脚が振り下ろされ、
衝撃波とその巨大な足の質量で掻き回され生命も物体も全てが形を残さなくなる。

「ふふっ……最後まで逃げ惑いなさい……この亡ぼされる世界で……。」

ふと立ち止まり踏み潰した都市に足踏みですり潰しながら、
怒りと破壊の快感で興奮していくメディアが呟く。

そうして魔女の手によりその地の文明は殆ど瓦礫と塵、
森や山は全て赤茶けた焦土になり果てる。

破壊しながら徐々に巨大化していく彼女は、
遠くに見える大陸へ足を進めだす。

「昔のように船に乗る必要なんてないわね、」

避難船や海軍を太ももで蹴り上げ、
靴で足で海底に押付けながら海を進んで行く。
その大陸に逃げようとしていた船を粗方藻屑に変えたメディアは
大陸と今しがた滅ぼした地との繋がりの港に辿り着く。

「さっきつい踏み潰してしまった船の代わりに私が上陸してあげるわ。」

港の端に振り下ろしコンクリートやクレーンを踏み潰した足は
踏み潰した所を海抜0を超えたマイナスにする。

「それっ!」

ズガガガガカガガ!!

踏み潰した足をそのまま横に勢い良くスライドし
辿り着いていた船や停泊していた船や倉庫などを薙ぎ払い巻き上げる!
数少ない辿り着けた避難船から降りていた避難民や、
港の職員や警察や軍隊を国籍も人種も分け隔てなく巨大な靴がすり潰して行く。

「ふふっ……、今の私にはどんな英雄の乗った船だって最早叶いはしないわ……。」

既に半壊以上した港湾地域と殆どが更に深くなった海底に沈んだ船達、
半壊しているもののまだ浮上している船 クレーンや半壊した倉庫の屋根に避難した人々に顔を向け過去の憎しみと今の力に酔いしれた彼女が口をゆっくりと開ける。

「全て燃え尽きなさい!ドラコーン・フォティア!!!」

巨大な口の奥に赤い魔法陣が現れ発光し、
瞬間白熱し竜さえも骨すら残らないような業火が口から放たれる。

竜の吐息さえも灯火程度と感じるような火炎が港を舐めるように焼き尽くし、
人も物体も海も紅く紅く包んでいく。
流出した油や壊れたガスタンクなどを燃料に、
燃え上がる港を見下しながら高笑いを始める

「あーはっはっはっ!!私を魔女と言い伝えた愚か者には良い罰ねぇ!」

世界を嘲笑いながらも口から炎を吐くのを続け、
そのまま港から港湾都市の市街地に上陸。
ミサイル弾や戦闘機は宙への火炎放射で一瞬で只の炭と化し、
その足で軍民問わずに踏みにじり獲物のある大陸の中心へと踏み潰していく。

「これが貴方達の恐れた魔女の力よ!」

都市を5000m級の巨大な足で態々狙って踏み潰しながら歩いていくメディア。
足が届かない位置にある都市群や集落も彼女の視界に一度入れば
気まぐれで放たれた目からの熱線で撃ち抜かれ焦土と化す。

「ふふ……私の為に皆滅べばいいの……」

焼き尽くされた都市群を神の視点から見回し自らの行った殺戮を再確認していく。

「しかし広いわね……」

「……この地形でこう来たのならもしかして」

「あっちへ行けば確か…!」

巨体で蹂躙破壊殺戮が繰り広げながら
見た足元からふと地形と現在地を把握したメディアは、
この箱庭が地球を模しているならと
片手間に砂漠を光線で溶解させながら次の目標を決める。

その目的地に進路を向けながらも、

「吹き飛びなさい!」

ズドオオオオオンッ……

途中の湖に光弾を放って瞬時に沸騰させ

「消え去りなさい!!」

ドゴゴゴゴゴゴッ!

湾を薙ぎ払うように口からの光線で吹き飛ばす
そうして道中も破壊の限りを尽し
その破壊によりゆっくりと巨大化しながら目的地の国まで辿り着く

「あの時の復讐に来たわよ……」

自らを弄んだ神の住まっていた国まで歩いてやって来たメディアは
小さな街を踏み潰しながら気にせずにゆっくりとしゃがみこむ

「あらあら、ちっぽけな山ねぇ、まるで砂利のよう……。」

その体はゆっくりと言えど既に50kmを超える巨大化しており、
広大な山脈を地に足をつけながらもはるか天空から覗き込むメディア。

周辺国軍の榴弾砲やミサイルなどを胸や顔に受けながらも気が付かず
そして気にせずに手をゆっくりと握り振り上げていく。

「今度は私が貴方達を無茶苦茶にしてあげる番……!」

ズドゴオオオッン!!

メディアは振り上げた両手を振り下ろし
神の住むとされた山に遥か天空より超巨大な拳を叩き込まれる
長手袋に包まれた繊細でしなやかな手の
その一撃で山脈は跡形も無く押し砕かれ一瞬で消滅したが
勢いのついたその両手は交互に叩き込まれ山とその周りを次々と叩き潰していく

「くらっ!いなっ!!さいっ!!」

ズドォッン!!ズドォッン!!

何発ものパンチは山も国土も拳の形をしたクレーターに変える
人も街も何もかもを跡形もなく叩き潰していく

「これで済ませない……!全て灰に!」

キュイイイイイイッン

「《破壊の吐息》……プネウマァアア!!!」

過去の憎しみをこの際晴らそうとしているメディアは
既に自分の拳跡が複数付いた荒れ地と化した国に向け
駄目押しの全力の破壊光線を口腔から撃ち出す

ズドドドドドドドッドドドドドドッ!!

極太の紫色の閃光は
山のあった跡地にまず直撃し一瞬にして岩盤は打ち砕かれ宙に舞い
撃ち込まれたところは真っ赤に赤熱し融解させ何一つとして形状を残さないマグマとそこに浮かぶ地盤の破片に変える。

そのままメディアの口から滝の様に放たれる閃光は
角度を変え国中をグシャグシャに砕きドロドロに溶かし、
勢いのままに国境を超え近隣国も次々と焼き尽くされる。

ゆっくりと立ち上がりながら照射可能な位置を広げながらも
何も残さぬように地域に満遍なく死の光が降り注ぐ、
川も湾も街も森も全てが同じようにメディアの光線に呑まれて消える。

「ふふ……ふふ……なんてみっともない……」

既にマグマと溶けていく岩片のみになった国を
まるで泥水溜りのように足でぐじゅぐじゅ掻き回すメディア

すると心臓が突然鼓動が早くなり先程の急激な巨大化の衝動に襲われる
「まだ巨大化するの……?」

しかし今回は先程の巨大化と違い
全身が発光し意思に反して体がゆっくりと宙に浮かんでいく。

「来るなら来なさい……!」

覚悟を決め先程も体に走った巨大化の感覚に身を任せる、
すると吸い込まれたときのような目が眩む光に包まれた…。


気がつけば漆黒の闇
煌めく満天の星。

目の前にある青い惑星とその衛星を除けばそれはあのスノーグローブと同じ、

「あれは宇宙を模した箱庭……。」
あのサイズにその規模の存在を封じ込めた魔術道具、
確かに自分でも作るのは一筋縄では行かないような代物だったのか。

そう目の前に回る一部分が赤黒く溶けている地球を眺めながら、
神代の魔術師としてふと冷静に考える。

「ふふ……、文字通り指先一つで仕留めてあげましょう……!」

まだ脱出できないということは破壊が足りないという事
そう思い直し考えるのをやめ、目の前にある地球にゆっくりと手を伸ばす

地球を両手で覆い尽くせるような巨大なメディアの美しい指は、
地球の大地に向け圧縮断熱で赤く熱されながら振り下ろされる。

ずどぉおおん……

一撃で大陸には何物にも超えられぬ破壊力も美しさも女神として形容する他ない指が突き刺さり周辺の存在を全て押し潰し一拍置いた衝撃波で辺りを薙ぎ払う

「まだまだ、魔女の指はあるわよ?」

ずどぉおおっ……ずどぉおんっ……

しかし彼女には衝撃波で思っている範囲以上が壊滅しているとも分からず
執拗に何回も地球上に指が振り下ろされていく

「えいっ…♪えいっ……♪ってね」

何回もの指が大陸も島も関係なく押し潰していく指と
その腕は人工衛星や宇宙ステーションなどを当たっていることも気にせず
回転する地球に合わせて次々と女神の指を振り下ろしていく。

そうして楽しみながら生命を虐殺していたメディアだったが
ふと羽虫にまとわりつかれているような不快感を感じる

「鬱陶しいわね……」

腕の周りや地球の周りを浮遊する月が視界にチラチラ入ることを
甲虫が自らの視界を飛び回るような感覚を覚え始めた

「とっとと運命を共にしなさい…!」

自らの蹂躙に水を指す月の鬱陶しさに耐えかねたメディアは
自らの仕える女神の司るとされる月に対して塵虫へ向けるような視線を向け
目を赤く発光させ魔力を貯めていく。

「……ダクリュオンッ!」

ズビュッウウウゥ!!

その瞬間目からは赤い閃光が放たれ月を一瞬にして打ち抜き爆発させる!

「欠片も残さないわ……」
目から放たれ続ける閃光は月の破片も次々と貫き、
そのレーザービームは火星や土星 水星も貫き貫通し跡を残していく。

そうして月を塵になるまで凝視しているとついつい地球の表面も掠ったり撃ち抜かれる。

地球は海は沸騰、若しくは蒸発し既に生命の殆ども余波で死に絶えてしまった。

「ついやっちゃったわね……もう終いにしましょ。」

すでに光線が貫通し半壊した地球はもう楽しめないと判断したメディアは、
ゆっくりと両手を伸ばし地球にまるで水晶に手をかざす様にする。

「……破戒すべき全ての星っ!」

巨大な手を自らの宝具に擬えたような掛け声と共に一気に閉じ、
地球を圧縮粉砕していく。

長く黒い手袋に包まれた靭やかな手は地球をまるで何の障害もないように次々と押し砕く、
大した力が使われずに両手が閉じられた時にはそこには砕け溶解した地球だった物がただ浮いていた。


「……んっ」

地球を砕き滅ぼした数瞬後、
急速な巨大化の時のような外観と共に突然巨大化していくメディア。
加速度的に拡大する体は太陽系のあらゆる惑星を体で粉砕太陽を胸で消滅させ
銀河系まで磨り潰し……、
そこで一瞬意識が途絶えた。



気がつけばメディアは床に置かれたスノーグローブの横で寝転んでいた

「うーん……、脱出できたみたいね……。」

ゆっくりと埃を払ってスノーグローブを拾い上げながら立ち上がる。

「……!! 時間は!?」

一息ついたところで果たしてどれだけ時間が経過しているかわからないと、
慌てて物置を出て一番近い部屋の襖を開け壁掛け時計を確認する。

「よかった……」

時間はまだ昼、
正確に分までは覚えていなかったが恐らく数十分ぐらい経過したぐらいか。

「あの中の時間の進みはとても遅いみたいね……」

あの中では数時間ほど暴れていたのでこの現実での時間経過に一安心する。

「そういえば……棚はいい感じのがあったから部屋の前まで運んでもらいましょう。」

安心して思い出した最初の目的の棚は
自分一人では運び出すのが難しいような奥にあったので(※魔術を使えば可能だが)
寺の坊主達にでも頼んで運び出してもらおうと決めて、
片手に持っていたスノーグローブを目をやる。

「……廃棄するのも危険ですし、ネジに魔術でロック掛ければ大丈夫ね。」

「普通に見れば綺麗ですもの、それに……まぁいろいろ調べたいですしね。」

そう自分に軽い言い訳を呟くと再度時間を確認するために時計を見る

「そういえばこの時間なら……、七分二十五秒クッキングに間に合うじゃない!」

時計を見てさっき迄は夜までは出れればいいと考えていなかった、
簡単料理番組の放送がもう少しということに気がついたメディアは
慌ててテレビのある自室へと走っていったのだった……。