「ふふふ……やりましたよ、やりましたよーっ!!」

ここは関東近辺の都市 三咲町に住む名門「遠野家」の屋敷。

その地下に存在する謎とトンデモと神秘とぐだぐだが入り混じりあった研究所の主「琥珀」
またの名はドクターアンバーは
自らの作り上げたメイドロボ「メカ翡翠」からの報告に喜ぶ。

「安全性検査ノ方モネコアルクニヨリ完了シマシタ」

「ソフトの方の制作はどうです?メカ翡翠ちゃん。」

「ドクターノ指示シタ「遠野家乗っ取りシミュレーター」ハマダデスガ他ノソフトハホボ完成シテイマス。」

「うーん……、そうですかやはり特定人物の性格の完全再現は……。」

メカ翡翠の手には白く平らな四角い本体
そしてそれから伸びたコードにはゴテゴテのヘルメットが繋がった機械、
開発に手間取り徹夜三日目の琥珀はそれを疲れた目で見ながらメカ翡翠と会話を交わす。

「ホントに安全性検査は大丈夫です?前にマネキンに被せたら発火しちゃったけど……。」

「ハイドクター、ネコアルクハ多少犠牲ニハナリマシタガ……一切ニ問題ハナイデス ムシロプラスデス」

メカ翡翠の非常に物騒な言葉を聞き流しながら

別のメカ翡翠から受け取った資料とデータの映るモニターを見る琥珀。

「ふむ……ふむふむ、確かにこれなら……」

データを確認し彼女の目論見の一段階目が踏み出せたと知り、
微調整が終わったその機械を手にしフードの下でニヤニヤ機械を眺める。

「まぁこれであんな事やこんな事が……ふふふ……!」


…たったったったっ

「ていやーーっ!」


ドガッ

「あらーーっ!?」
含み笑いをしていた所に背後から強烈な衝撃を受け、唐突に空を舞う琥珀と手に持っていた機械。
幸い機械はメカ翡翠が危なげもなくキャッチし、
一方琥珀は研究所のモニターアームに顔面をぶつけ地面に落ちる。

「イタタタ……いきなり……!?」

顔に赤い跡をつけながらメカ翡翠になんとか助けられながら起き上がる琥珀。

「やい!また悪いことしようとしてたんだろ!」

さっきまで琥珀が立っていた所にいる体当たりをしてきた赤いチャイナ服の少女、
遠野家の分家の少女 有間都古が指を突きつけながら琥珀に言う。

「あらら……都古さん…、 いつからこの研究所に…?」
実際また自らの陰謀の為に動いていた琥珀はホコリとかを払いながら、
有間都古にどこまで聞かれたかそれとなく聞き出そうとする。

「えーとせいかくのさいげんとか……、 えーと よく分かんないけどまたお兄ちゃんとかに酷いことをしようとしてたんでしょ!!」

基本的に良い子の有間都古は質問に対し彼女たちの会話の殆どを聞いていたとあっさりと答える。

「うーん… ほぼ全部ですねぇ……これは不味い事に……」

彼女自身はともかく遠野秋葉や遠野志貴にバレたら話が面倒になり、
最悪自らの計画が動く前にまたもやご破算と化す。

即座にそのような状況の挽回と誤魔化しを考え出す琥珀。

「えーと…メカ翡翠ちゃん、さっきのリリースソフトのリストに確かあのソフトが!」

「ハイ ドクター 直チニ用意シマス」

一分も立たずこれ以上の損害や最悪の事態を回避する方法を思いついた琥珀は、
メカ翡翠に指示を出してから有間都古に敵意がないことを示しながら近づく。

「な なによ…!」

構えを解かず警戒する都古に悪印象を与えるだけのフードを脱ぎながら取引を持ちかける。

「実はあの機械は安心安全のただの最新鋭のゲーム機なんですよ。」

「…ゲーム機?」
今までの所業のせいで自らに疑いの目を向ける都古を他所に話を続ける。

「ええ シオンさんと協力して作ったダイブ型VRゲーム機です、
まるで夢を見るように色々な体験ができる、その名も…『マジカルドリームキャスト』!!」

「マジカル…ドリーム…キャスト?」

どこかで聞いたことのあるような名前のついた機械を都古は不審そうに見つめる

実際マジカルドリームキャストは
シオンとの[[rb:取引 > 新しいテントと新品の毛布]]で[[rb:協力を取り付け> 買収]]
「遠野家乗っ取り計画シミュレーター」や、
「志貴さんシミュレーター」などの自らの計画の為や趣味の為だけに開発していたVRシミュレーションシステムである。

しかしついでにメカ翡翠達にデータ制作の練習用に幾つものタイトルを作らせていたのを利用し、
琥珀は真相を隠しながら有間都古を懐柔しようとする。

「ええ、 ちょうど安全性の実証も済んでますし…都古ちゃんもやってみます?」

「でも琥珀の作ったゲームなんて……」

「カンフー映画の主人公になれるジャッキーチャレンジって言うソフトもありますよ」

琥珀がタイトルを口にした瞬間、その瞬間顔色が変わる有間都古。

小学生でありながら拳士を自称する都古、
彼女にとって非常に魅力的なタイトルを聞き心が揺らぐ。

「まぁ面白くなければメニューから途中終了もできますし、中国の町並みでカンフーアクションを体験するっていう簡単なゲームだから……。」

揺らいでる彼女に更にダメ押しをしていく琥珀に都古は目を合わせずに口を開く

「そ それならあたしも試しに……」

「いいですよ? 代わりにまだ他のソフトは開発中なので志貴様や秋葉様にはご内密に…。」

無事懐柔した都古の気持ちが変わる前にテキパキと準備を始める琥珀。

「でもどう遊べば……。」

「ここにベッドがありますからこのヘルメットをつけて寝ればバッチグーです、
操作とかは向こうの世界で念じれば説明が出ますから安心してください。」

メカ翡翠に多少無骨なベッドとソフトが入ったカゴを用意させ、
心配する都古に流れるようにヘルメットを被せてベッドに寝かせる。

「こ これでいいの……?」

「ちょっと待ってくださいね、今本体にソフト入れますから。」

機械の本体のソフト挿入蓋を開け無地にマジックで書かれただけの簡素なソフトケースを開ける。

「あら?」

中に入っていたディスクを見て即座に別のソフトケースを開ける

「あららら、 ソフトが玉突き事故です。」

メカ翡翠達がソフトを粗雑に管理していた為ソフトケースとディスクが別のに入っていたらしく、
琥珀は慌てながらいくつものソフトケースを開けては閉じてを繰り返す。

「えーとこれは闘犬乱舞…これはレンといっしょ……。」

「うーー……琥珀ーやっぱり……。」

「待ってください!待って……。」

更に心配になりだした都古を見て更に慌ててソフトを探す手を早める。

「あっ!確かこれです!これ!」
そう言いながら「ときめきロワイヤル」のソフトケースから見つけ出し、
赤い無地のディスクを嵌め込み起動させる琥珀。

「では楽しんでください!スイッチオン♪」

そして機械により睡眠状態に入った有間都古を見届け安心する琥珀
「ふーー…密告とかされたら私の計画がまたまたおじゃんになるところでした……、
まずこのソフトの入れ違いを正しく戻しましょう…。」

そう言いながら整理を始めた琥珀は開けてなかったソフトケースを開けて石化した。

「こっ…これは……。」

ソフトケースの中からは黄色のディスク、
そしてそれには【ジャッキーチャレンジ】という活字の印刷。

「これは……ディスク間違え……。」

「ドクター…赤色ノソフトハ確カ……。」

振り返り眠りについている有間都古を見る琥珀とメカ翡翠

「はて、なんでしたっけ……。」




「う、うー…… 大丈夫だったのかな…?」

眠るように意識を失った有間都古は、
気が付けば自らはベッドの上ではなく硬い地面の上で横たわっていた。

さっきまでの地下には無かった風を肌に感じ、
少しの不安と、そして映画で何度も見たあのアクションを自らが行う。
その事を楽しみに目をゆっくり開ける。

「眩しい…」
さっきまで薄暗い地下にいた為に目が日光に慣れておらず、
例え仮想空間でも眩しく しかし徐々に周囲の景色が目に入ってくる。

「……あれ?」
目を開き見て、そして自らが横たわっていた場所から体を起こし見渡す、
真っ先に目に入ったのはコンクリート塀と日本語の標識。

もっと周りを見渡すと目に映る瓦屋根の民家や洋風建築の民家が入り交じる見慣れた光景、
幼い彼女にも理解できるほど中国などではない景色 どう形容してもいつも住む日本の街だった。

「……琥珀!!」
真っ先にあの琥珀に騙されたと思う都古、
例え事実が事故だとしてもその事を知らない彼女にとってはただの裏切りなのである。

少し落ち着いてから、仕方なく琥珀に説明された通り、
脳内で念じてメニューを呼び出しゲームを終了しようとする都古。

念じた瞬間に効果音とともに彼女の目の前に非常にシンプル、
悪く言えば外に見せる気がないような画面がホログラムのように出現する。

「……開発ログ?」

そこにはメニュー画面の他に非常に簡単な箇条書きのコメントがあり、
代わりに終了やログアウトなどの選択肢が見当たらない。

「……えーと ど どうすれば」
まず大きく取られたコメントウィンドウに目を通し、
一番上の文章を見た彼女は現実の琥珀達と同タイミングで固まる

[開発メモ:Ver.1.0 殆ドノ内容ハ実装済ミ ゲームオーバー 又ハ中断機能 ログアウトハ後日実装予定
(※ドクターハ 危険ナノデ退出手段ヲ用意シテリリースニスルヨウ指示ガアッタガ クリア時二自動終了スル為 満タシテルト判断 ディスクニ移行サセル)]

「これって……」
非常に簡潔に書かれた内輪の為の引き継ぎメモ、
ロボによって記されたコメントを見た彼女にすぐ現状を理解させた。

「クリアしないと出れないの……?」

数分間「琥珀を信じた自分」「自分を嵌めた琥珀」「雑な仕事をした琥珀のロボット」を恨み、
自分の中で現状を落ち着いて整理し決心する。

「くりあ…… 絶対クリアして琥珀にふくしゅーしてやる……!」

そう目標を呟きながらまず宙に浮くメニューの説明ボタンを指で恐る恐るタップする、
その瞬間表示が変わり簡単な概要と遊び方、そしてタイトルが表示される。

「……ですとろい…… ごっど……?」
表示されたタイトルを読み上げ、やはり自らが遊びたかったゲームではないと再認識した後説明に目を向ける、
その説明は非常に簡潔にまだ校正の余地があるような文章を読み上げる。

「様々なものを破壊してポイントを貯めてパワーアップ……、どんどん壊していくストレス発散ゲーム……。」

簡単すぎる説明とポイント表示の位置とパワーアップ方法のみが書かれた説明を読み、理解した都古はまた困惑する。

「一体何を壊せば……それに壊したら怒られちゃうんじゃ……」

善良な彼女はそういう事を考えるがとてもリアルな世界だがあくまで「VR」と言うことを思い出す、
しかし例え怒られないにしてもそもそも何を壊せばいいか一切説明が無い余りにも不親切なチュートリアル。

この状態になった時から徐々に溜まっていた苛つきのままにコンクリートの塀を軽く叩く。

ボコガアッ!

「えっ?」

その瞬間砕け散るコンクリートの塀、
耐震補強として入っていた鉄筋もまるでストローのように折れ曲がり
コンクリートはまるで煎餅のように崩壊する。

殴った所から大穴が空いたコンクリートの塀、
そして硬いものを殴ったはずなのに一切痛くない手を交互に見る有間都古。

「も もしかして……、えいっ!」

ズドオッ!

今度はもう片方の手で無事な部分の塀を殴り同じように吹き飛ばす都古、
むき出しになった鉄筋を指でつまみ引っ張るとあっさりと引きちぎれる。

「やっぱり……あたし強くなってる!?」

メニューを確認しデストロイポイントを確認し0から増えてる事を見た彼女は、
もう一回確認の為に路上駐車していた乗用車に近寄る。

「とおっ!」

ガギッ!

その健康的な足はあっさりと車の車体を貫通した挙句吹き飛ばし、
いくつかの標識や看板をへし折り住宅にめり込む。

そして再度メニューを閲覧し増えてるのを見た彼女は心を決める。
「みんな壊せば多分……、くりあできる!」
ゲームの攻略法がわかった彼女は走り出し 車がめり込んだ家に飛び蹴りを決める、
家の壁を貫通し簡易AIによる住民を巻き込んで反対側に吹き飛ばす。

「ごめんなさーい!」

ズガガッ!

そう言いながらも住宅街にある小さな工務店の鉄パイプを複数本一気に抱え、
棒術のように建物や車をなぎ倒す。

「ていやぁっ!」
多少ひしゃげた鉄パイプの塊を投擲し一階建ての民家を貫き、
先ほど鉄パイプでなぎ倒した軽トラを持ち上げて力のみで引きちぎる。

「ていていっ!」
真っ二つになった軽トラを2つの住宅に投げ込み爆発させ住宅街を次々破壊する。
そうしてスタート地点の住宅街を手当たり次第に蹂躙していく都古の元にサイレンが鳴り響く。

ファンファンファンファン
キキーッ

「警察だ!」「止まれ!」

普通のオープンワールドゲームであるように警察官達が、
いつの間にか通報を受けて武装しながらパトカー数台と共に現れる。
現れるのが早すぎる上的確すぎて現実的ではないが、
ゲームの敵役として一切間違ってない速さで展開しだす。

「うー……! 邪魔しないでよ!あたしはくりあしたいだけなの!」

都古は自らにVRと言い聞かせ切ってから警察に相対、
近くにあった標識を引き抜いてから投げつけパトカーの一台を破壊する。

「撃て!」「射殺しろ!」

パトカーから降りていた警察官たちは回転式拳銃を都古に向けて発砲し、
この仮想の世界を守る為に暴挙を終わらせようとする。

「うわぁ!!  ……? 痛くない?」

都古は一瞬身構え縮こまるが当たった鉛弾はほとんど感触もなく地面に落ちる、
……そもそもさっきから家に体当りして無傷で貫通してる彼女に効くわけはないのだが。

「でもそっちがやるなら……はあっ!」

ドンッ

拳銃による攻撃を受けたことによる反撃に移った都古は、
高く空を飛び上がり拳を振りかぶる
 
「当たったら……死ぬかもーーっ!!」

「うわ 「にげ
ズドオオオオン!

「あれ…?いなくなっちゃった……。」
警察と周りの建物は彼女の全力のジャンプパンチの威力で巨大なクレーターと塵になったのだが彼女は死体を見ずに済んだと安心する。
[newpage]
その後も車や民家などを住民や運転手ごと破壊しながらクリアを目指す都古、
二階建ての家を上から圧縮したところで自らが念じていないのに視界にポップアップが出現する。

「ポイントが一定数とーたつしました…?」

そのメニューには『upgrade』『保留』の2つの選択肢とともに小さなメニューが出てきた彼女は、
とりあえずupgradeの選択肢をタップする。

ズズ……

「……? …!? えっ!?なに!?なんなの!?」
その瞬間体は光り、熱を発していく。

ズズ…… ズズズズ……!!

「う…う……うああーっ!!」
その瞬間体は膨張しどんどん視点が高くなり、
怖くなり目を閉じる。
見えない足元の方では何かが当たっては崩れる感触が続く、
体温が普通に戻り光が収まってから目を開く。

「はぁ……はぁ……大きくなっちゃった……あたし……!」
落ち着いて自らの現状と周囲を見回し、
自らの肉体と服が巨大化してしまった事を理解した都古。
ポップアップには『巨大化:50倍』という表示が一時的に出てから閉じる

一瞬非現実的なことに目眩がするが、
この世界はVRの仮想世界、そして自らがしなければいけない事を思い出し思い立つ。

「これならもっと早く…!」

ズゴンッ!

そういった瞬間自らの巨大化による被害を免れた住宅を数件を一撃で踏み潰す。

「ていやぁっ!」

ズガガガガガガ!!

その足を横にスライドさせ踏み潰しの衝撃により傾いた民家やさっきの騒ぎから逃げようとしていた車達を引き潰していく。


「よし……!」

「こうなったらてってーてきに破壊してやる!!」

急な展開や理解をしても理解が追いつかない現状、
そしてその中から街を破壊しなければならないという現実、
そこから半ば自暴自棄気味に彼女は完全な怪獣となる。

「えいえいえいっ!」

ズドン!ズドン!ズドン!

虱潰しに住宅や小さな事務所などを踏み潰しながら、
時折建物を持ち上げて投げたり車を狙って蹴り飛ばしたりしながら次々と蹂躙する。

ちょうど住民たちが避難していた公民館を見つけた彼女は。
「ごめんね!どうせこの辺は全部破壊するし許してーっ!」
謝罪しながらも屋根を摘んで突き破った後に拳を振り下ろして只のクレーターに変え。

「校庭にみんな集まってるけど……仮想空間だし大丈夫だよね?」
同じように避難所になっていた小学校に対しては校庭の中で走って踏み潰して回った
後、
滑り込んで校庭も校舎も体育館も靴の押し潰した跡に書き換えた。

「……あっ あれって……?」

そうして住宅街を粗方廃墟にして渋滞の車を掴み上げて握り潰しながらふと都古は辺りを見回した時、
少し遠い所に高層ビルが立ち並ぶ都市部
そしてそこの中にある一際目立つ白い電波塔が目に入る。

「ここって…… もしかして東京?」
テレビとかでよく見たスカイツリーを目にして自らがいて、そして破壊している地域に気がつく都古。

「あれ壊したらくりあとかにならないかな……?行ってみよう……!」

スカイツリーというシンボルをゲームのクリア目標にしているかもしれないということを考え、
もはや人がいなくなり原型を留めなくなった住宅街を足音を響かせながら後にする。


ズシン……ズシン……

「これってテレビで見た怪獣映画みたいだなぁ……」


金曜の夜に放送されていた映画を思い出しながら歩いていく都古。
住宅街と都会の間の中途半端な地域を道中にある雑居ビルに足を突っ込み粉砕したり、
携帯の中継基地を引っこ抜いてへし折ったりしながらスカイツリーに向かっていく。


「とうっ!」
目の前の邪魔な雑居ビルを手刀で叩き割っていた時に、
体になにが当たったか曖昧な感触と乾いた音が聞こえだす。

パンッ パンパン
「……また警察?」
動けたSATや警察の防衛網に攻撃されてから気がついた都古。

手刀をビルから引き抜いて崩壊させてから、
不愉快そうに見つめた後足をゆっくりと持ち上げ警察の上にかざす。

「邪魔をするなああっ!」

ズドオオオッン

そして勢い良く振り下ろしその一撃の元に地盤と周辺の建物毎吹き飛ばす
「ふんっ!」
衝撃波により警察やパトカーがその場にいたとは思えない状態にしてから、スカイツリーに迫る歩みを再開する。



「うーんどんどん建物が大きくなってきた……」

スカイツリーに向けて途中の建造物を破壊し進み、ついに都市部に入って来た有間都古。
彼女は今は50倍とはいえ元々の身長は131cm、
65mの体長では都心部の建造物によっては破壊が難しい上。
雑居ビル群も歩き辛い状態になる。

「もう邪魔!!」
足元に蠢く人々や雑居ビルを蹴り飛ばして薙ぎ倒したり、
警察を足を振り下ろし衝撃波で一掃したりしながら壊しやすい所を歩いていくがついには高層ビルと相対する事になる。

「あたしと同じぐらい……」

都古とほぼ同サイズのビルが行く手を阻むが、
スカイツリーがクリア条件であれそうじゃないにしろ今は突き進むしかない彼女は怯まず両手を構え勢い良くビルに振りかぶる。

「たあああっ!」

ズドンッ!

巨大なはずの高層ビルに人類に理解できないサイズの拳が突き刺さり
窓ガラスなどを粉々にし、避難が遅れた人間を血飛沫に変え貫通する。

その拳は即座に二撃目、三撃目、が放たれビルに4つほどの穴を開けビルは一瞬で崩落寸前になり果てる。
「まだ壊れないの?」
何とか完全崩落を免れギシギシと揺れ動く高層ビルに対して都古は冷酷に足を後ろに振り抜き出す

「えーい!壊れろ!」

ズガアアアッ!

大きく振りかぶられた足は高層ビルの下部を蹴り抜き吹き飛ばす。

ビルは下の支えさえも失って都古の方に向け倒れ込み最後の抵抗を示すが、
それさえも都古は一切傷つかず噴煙の中で勝ち誇る。

「ふふん!八極拳はさいきょうなんだから!」

その後も邪魔な高層ビルを押し倒したり体当たりで吹き飛ばしたりして
大勢の人間を殺害しながらスカイツリーに歩んでいく彼女は、
その前にスカイツリーの次に巨大な塔に先に辿り着いた。

「おっきい……」
彼女が65mの巨体だがその塔は335m、
役目を終えたがそのサイズは衰えぬ塔 東京タワーを目の前に流石に心配になる都古。

「こんなの壊せるかな…… ううん!八極拳はさいきょうなんだ!てやーーっ!」
ズギャアアッ
言うが早いか正拳突きを繰り出し一撃で一角を引き千切る。

「! これなら行ける!!そりゃーーー!!」
ズガガガガガガッ!

足の一撃で土台のコンクリートを粉々に砕きバランスを崩させる、

「止めだあああああ!」

バギイイッ!
すでに崩れ落ちそうな東京タワーに渾身の掌底を叩き込む!
その瞬間、辺りに鉄骨は飛び散りゆっくりと軋み倒れる東京タワー。
彼女が来た方向とは逆のまだ殆ど無事な街に倒れ込み崩壊する。

「やったー!!あとはスカイツリーだけなんだから!」
そう喜ぶ彼女の視界にあのポップアップが現れ、
喜んであげていた手がupgradeの選択肢を選択してしまう。

「あっ……!」

すでに押されてしまったアップグレードの選択肢。

さっきのupgradeと同じように体が光り熱く、
そして巨大へとなっていく肉体。

「うっ…うっ…!」

一気に拡大していく肉体、
茶色の靴に包まれた足にすり潰されていく瓦礫や東京タワーの残骸。

ポップアップにはいくつかの段階をデストロイポイント超過によりスキップされたことが表示されるが、
彼女の目にはどんどん高くなっていく視界と巨大化するたびにすり潰される建物だけが目に映り込む。

そしてゆっくりと巨大化が終わったときには有間都古は500倍の肉体、
全長655mの巨体になっていた。

「また大きくなっちゃった……」
彼女がポップアップにようやく視線を移すと、
『巨大化:500倍』『モンスタースキル開放』という見たことのある通知と見たことのない通知の2つが表示され少ししてから閉じる。

「もんすたー……すきる?」
意味のわからない通知の方に疑問を懐きながら、
周りを見回すとさっきまでの高層ビルや雑居ビルはもはや自らの敵ではないとわかるほど小さくなっている。

「よーし!八極拳の力を見せてやる!」
そう言いながら巨大な足を振り上げては振り下ろし、振り上げては振り下ろし、
無邪気に高層ビルも雑居ビルも人々も容赦なく瓦礫と死肉に変えていく。

「ふっふーん!逃げられないよ!」

グオオォ…… ズドォーーン!!

逃げ惑う人々が目視しやすい大きな道路などは、
普通のサイズなら可愛いはずの少女の掌が叩きつけられ、
車も歩きも周りの建物も同時に叩き潰される。

「大怪獣みやこから逃げようなんて十年早いんだよー!」

どんどん自ら巨大怪獣として振る舞い楽しみながら蹂躙しだす都古、
東京タワーの周りの建物を一通り更地になるまで叩き潰した後、
このサイズでのウォーミングアップを終えたとばかりにスカイツリーに向かって一直線に歩き出す。

一直線に踏み潰しながらスカイツリーに向かい先程の苦労が嘘のような速さでスカイツリーの目前にたどり着く。

「よーーし…いっくぞーー!」

スカイツリーよりも少し高い都古は両手をスカイツリーの展望台に手を掛け覗き込む。

「ごめんね 今からこの塔はあたしの技の特訓に使わせてもらうね!」

展望台の中に取り残された人々を見ながらあっさりとした死刑宣告を行い、
数歩ほどスカイツリーから離れてから力を溜め出す。

「はあああ……!あったれーー!!」

ズドッ

その瞬間鉄山靠を放ち巨体は俊敏に背中からスカイツリーに体当りする都古、
スカイツリーはその破壊力に耐えられず一瞬にして吹き飛び、
破片は広範囲に飛び散り無事な建物や生き延びた人達に降り注ぐ。

展望台は一瞬にして衝撃波のみで血煙と化し痛みも感じず消え去り、
踏み込みのみで周囲の建物がガラガラと崩れ去り発火する。
「うんうん!これできっとクリア……」

ボンッ

「う?」
しかし都古にあったのはクリアの表示ではなく爆発音、
自らの体にスポンジが当たった程度の感触だがあたりを見回した。

「……ヘリ?」
今の爆発音は戦闘ヘリによるロケット弾が自らに当たった音、
そして周りには戦闘ヘリや戦闘機、地面もよく見れば戦車などが自らを取り囲んでいることはすぐ理解できた。

「…くりあもしないし…不意打ち……」

俯きスカイツリーの跡地でわなわなする都古、
別にどこにもスカイツリーを破壊すればクリアという情報も一切なく、
ただの彼女の思い込みだったわけだが勝手に感じた裏切られたという怒りを周りにぶつけようと顔を上げる。

「はあっ!!!」

ブゥン!! ズドドド!

即座に手を払い近くにいる戦闘ヘリたちを掌で払い潰し、
そのまま踏み込んだ足で戦車を数台踏み潰す…。

「あたしにいきなり攻撃するなんてもう怒ったからね!」

今まで自分がしてきた暴虐を棚に上げ軍隊に向け宣戦布告し、
踏み潰した戦車を踏み躙った後に一番近い物に標的を定め殲滅に動き出す。

「逃さない!!」

ズドン!

自らの後ろに回り込んだ戦闘ヘリを瞬時に振り向き拳と正面衝突させ。

ガシッ!

「ぶっ潰れろ!!」

逃げ遅れた戦車を摘み上げて握り潰し、
残骸を少し高いところにいる戦闘ヘリに思い切り叩き付ける。

ぐちゃっ

「潰れちゃえ!」

一部の歩兵部隊を見つけた瞬間指を振り下ろして磨り潰す。

数分も立たず、
手が届き機動力が低い戦車や戦闘ヘリをほとんど殲滅され、
都古は残った手の届かないところに逃げ出した残った戦闘機達を見上げる。

「うーー…これじゃあ攻撃が届かない……。」

そんな間も戦闘機はミサイルや爆弾を投下という、
都古は手の届かぬ所から鬱陶しい行為ばかりされ続ける。

幾度かジャンプしてみたものの当たらず、
周りの建物が押しつぶされるだけ。

戦闘機相手に完全に膠着状態になってまたもわストレスが溜まりだす都古。


「遠隔攻撃……遠隔攻撃が出来ればなあ……。」

「例えばあの映画みたいの怪獣みたいに……。」

最近見た怪獣映画を思い出し、その怪獣がやっていた事をふと思い出し呟く都古。

「……! モンスタースキルってもしかして!」

その事から先程のポップアップをふと思い出した都古、
試しに自ら口に力を貯めるように意識してみる。

その瞬間都古の口の中がほんのりと暖かくなり何か力が溜まる感覚が発生する。

「やっぱり…!」

口の中はどんどん暖かくなり唇や歯の隙間から淡い赤い光が漏れ出す、
都古はゆっくりと息を吸い戦闘機の飛び回る空に顔を向け口を開ける。

「すうぅぅ… 波ーーーーっ!」

ギュボム!

瞬間、都古の口から空に極太の赤い閃光が放たれ直線上の戦闘機を一機を即座に消し去る。

そのまま顔の角度を変えながら他の戦闘機を数機撃墜し一旦は途切れる。

「ふふん…!大怪獣みやこから……!」

「逃げられないんだからっ!」

ギュボッ!

その瞬間またもや口から極太の光線が放たれ戦闘機達をまるで虫を潰すかのような勢いで撃墜し消し飛ばしていく。

数刻もせず空は閃光により歪な形に引き回された雲と戦闘機の塵のみが浮かぶようになり、
たとえ誰が見てもさっきまで人々を守ろうとしていた戦闘機が全滅したと分かる悲惨な光景に成り果てた。


「街も燃えちゃえ!」

ズドドドドドドド

そのまま戦闘機を焼き尽くし興奮した都古は口を街に向け遠くの建物や踏み潰しから逃れた小さな建物などを閃光で焼き払い始める。

「ガオーー!あははは!」

ギュボム!ギュボム!

閃光の副作用として興奮と高揚した都古は残虐な怪獣としてゆっくりと歩きながら橋や光線で生き延びた人々を焼き尽くす。

小さなビルにわざわざ近寄ってから丸々消し飛ばし瓦礫も残さず消滅させ、
目についた公園などの池を蒸発させたり、テレビ局の球体展望室などの印象的なランドマークを撃ち抜くなどの暴虐を尽くしていく。


浅草を閃光で一直線で焼き払った後、視界にはまだ走ることができる線路と、
大勢の人間を乗せて逃げようとしている電車を見つける。

ズシーン……! ズシーン……!

「うふふ……、待てー……待てー……!」

ゆっくりと線路を踏みつぶしながら電車を追い詰めていき、
あと一歩で列車を踏みつぶせるところまで追いつく。

「ふふ…あたしより遅いから罰ゲーム!」
ギュボム!

しかしその足で電車を踏みつぶすのではなく、
口を開き閃光で線路ごと一直線に蒸発させるようになぞり消し飛ばす。



電車とそれ以外の電車と先にあった駅を焼き尽くした後、
わざわざひとつだけ閃光から外した事で無事だった最後尾の車両を掴みあげて中身を覗き込む、

「よく怪獣映画だと電車って……、食べてたよね……。」

映画で見た怪獣の真似事として電車の腹に噛み付く、
人間と車体を食い千切り、少し咀嚼してから地面に吐き捨て残骸も投げ捨てる。

「んー……、やっぱりおいしくないかー……。」

ひしゃげ千切れた車両を投げ捨ててとどめに踏み躙る。

興味があった電車を破壊し終えて都古は、
再度建造物や人々を焼き払い叩き潰していく進撃を再開していった。


高層ビルを蹴り潰し、建物を踏み壊しながら玩具を探しに移動していると、
遠くから見てもわかるほど人が多くいる場所を見つける。

それは病院、中には避難者やこの災害での怪我人が大勢おり、
軽傷の怪我人は大病院の外にまで溢れかえっていた。

その病院を見つけ都古は口元に笑みを浮かべ病院の近くに行き人々を見下ろす。

「ごめんね、痛い…?苦しい?楽にしてあげる!」

ギュボム!

優しい言葉をかけ人々が一瞬助かるかと思った瞬間。

今まで閃光の連発により興奮と破壊衝動が暴走した子供特有の残虐性を発揮した大怪獣都古は
病院に向け口を大きく開け執拗に病院に破壊光線を吐き出し一撃で消滅させ、
そのあとも病院の跡に数発撃ちこみ、
ついでと言わんばかりに病院の周りの建物も逃げ出した人々毎狙い撃つ。


映画の怪獣よりも凶悪で強力な都古は目に入るものを破壊して回っていき、
ついに国の中枢の省庁や議会の元まで進撃する。

「この国は今日からあたしのおーこくにしてあげる!」
議会を両足の間に収めそう宣言して、
議場と配備されていた防衛隊と共に一撃で踏み潰してから破壊光線を撃ち込み焼き払う。


国の象徴だった議場を自らの力のみで破壊した都古は、
完全に崩壊した一部は融解している議場の瓦礫を手でどけ始める。

瓦礫や土を剥がして言ってあらわになった議場地下に対して執拗に光線を撃ち込み地下にいた人々を抹殺、

都古は最後のとどめに議場地下に足を叩きつけかき混ぜてぐじゃぐじゃにして顔を上げる、
興奮した顔をしながら都古は
議場や省庁の周りにまだいた車、ヘリコプターや飛行機などで逃げようとした政府関係者を見つけ、
明らかに必要のない熱量の閃光を吐き出して辺りもろとも全員消滅させる。

そうして口から放たれる破壊光線とその巨体で首都の九割を焼き尽くし破壊し尽くした都古は一旦、
瓦礫もグズグズに溶けた平らな土地に腰を下ろす。

「このゲームはこのゲームで楽しいかも……。」

はぁはぁと息を荒くしながら自らが生み出した地獄絵図を見ながら呟く。

座った尻で瓦礫をすり潰し手を置いて深く座り込んでいき、
その時に瓦礫の隙間にいた幸運な一人の生き残りを手で押し潰される。

ぴろんっ
『ポイント数が一定値に到達しました』

その押し潰した人間で丁度規定に到達したらしく再度あのポップアップが出現する。


「アップグレード!」

そんなことを知らず、そして興味がない都古は半ば興奮した状態で立ち上がり、
アップグレードをタッチする。

ヒーローものっぽい決めポーズを取って巨大化に備える都古、
ちょうどそのポーズが決まったその瞬間に身体がまたゆっくりと巨大化を始める。

「ふふふ…クリアするまでみんな破壊してあげる…!」

ヒーローのポーズをとりながら破壊者としての言葉をつぶやく都古は
そのまま廃墟になった首都を足の下に収めながら巨大化していく。

巨大化は一分ほどで完了し、
止まった瞬間に表示されたポップアップは『巨大化:百万倍』を表示する、

それが示す通りに有間都古は百万倍の体、1300km以上の巨体で日本列島の中央にそびえ立っていた。



「わぁー……」

普通はならば絶対に肉眼で見ることのない世界。

そしてこの高さに視点があるのに自らの足は地面を踏みしめ、
その足の下に人類の全てがあるという事実に優越感と無敵感に更に加虐心が湧き上がる。

そうしてあたりを見回し自らの強大さを際認識した都古、
少し意地悪そうな笑顔を浮かべ一旦息を吸い込み大声で世界に宣戦布告した。

「すぅー… あたしは有間都古!今からこの世界を破壊しつくします!」

ズズズズ…

ズン!

そう殺人的な声量で殺人的な宣告を言い切った都古は巨大な足を振り上げ、
一撃を手近な都市に振り下ろす。

その衝撃波で現実では自らが住んでいるはずの三咲町もゴミのように舞い上げ、
そのまま地割れに飲み込んだが都古は気が付きもせず足を再度振り上げては振り下ろしていく。

そうして何度も足の届く範囲の都市や山脈の上に足をかざし、
少しだけ猶予と溜めを入れて一撃で押し潰していく。

「あたしは手加減してるんだよ?」

ズン!
ズゴン!!

震脚でもなくただ軽く振り上げて下ろすだけで街が茶色い自分の足跡に変わる優越感に極小な人類と世界を挑発を口にしながら次々と振り下ろす。

本州を何度も何度も足を振り下ろし潰すを繰り返してる最中に、
背後から感触はないが何かを感じ振り返る。

何があるのかと後ろ側の海に目を凝らした所、目ざとく都古は大艦隊が抵抗をしているのを見つけ出す。

「攻撃されたらあたしは受けて立つ!」

自らにはかない抵抗をしていた存在達に威勢の良い死刑宣告を放つ、

そして艦隊のいる方に近づいて見据えて構えをとる、
少し体に力を溜めるような動きをした後、口を勢いよく開き極小艦隊に向けて破壊光線を撃ち下す。
放たれた光線に直撃した艦隊を一撃で周囲の海ごと蒸発させる。

「えーーいっ!!」

ギュボボボボボッ

都古はそのまま一瞬で終わった艦隊殲滅のついでとばかりに、
余ったエネルギーで南日本を日本の横幅の半分もある極太の閃光で一閃し焼き払う。

余ったエネルギーの一撃の元に南日本をほぼ全滅させ死の土地にした都古は、
そのまま自分自身は都市を踏み潰しながら日本を北上していく。
青森の海底トンネルを足で踏み抜き浸水させてから北海道に上陸し北海道の中心に向かう。

札幌などを入念に踏み躙ってみたいしながら北海道の中心にたどり着いた都古は北海道の中心に対し、
久々に全力の力を溜め始め震脚を構える。

「八極拳は……」
ヒュッ

ズドン!
「二の打ちいらず!」


その足の一撃は地球全土を揺らし、北海道を一撃で崩壊、クレーター、土塊、に変え海水を流れ込ませる。

おそらく今この世界で最も強い八極拳、そしてそれを事も無げに行う自分、
海水が流れ込む北海道だった物を見るたびに幼い心の破壊衝動は次々と肥大していく。

都古は小さく浮いてる岩片を掴み上げては粉砕しながら見回しめぼしい玩具がなくなった日本を後にし、次は外国を狙いを定める事に決める。

「八極拳の本場であたしの八極拳を認めさせる!」

新しいターゲットを決めた都古はもはや浅く気にすることもない海を歩いて渡り、
阻止しようとした軍艦や避難民の船を海底に沈めながら朝鮮半島に上陸する。

「頼もー!」

ボカン……ボカン……

「……邪魔。」



自らが朝鮮半島に上陸したという事実を無視し、
中国に向かおうとしてる自分への韓国や北朝鮮の抵抗に不快感を示した都古。

「邪魔って言ってるんだから!!」
ギュボム!

容赦なく自らの不快感を生み出した存在に対し
いくつもの地を焦土にした破壊光線を即座に放ち両国の都市どころか国土全て、
流れ閃光が飛んで行ったロシアの沿岸部も含めて全て焼き尽くす。

「ようやく中国…ここが八極拳の本場……」

口から閃光を吐き出した余韻の煙を漂わせながら仁王立ちになり、
焼けた土と化した中北国境地帯から防衛網と中国を見下ろす都古。

「じゃあ……、ここを滅ぼしたらあたしが真の拳士!」

その一言を合図に1300km以上の巨体は走り出し容易に防衛網を踏み躙る。

「コンフーを積んだあたしに勝てるかぁ!」

そう言いながら防衛線の真ん中でしゃがみ回転蹴りを放ち航空機も戦車も都市も歩兵も磨り潰す

「ふうう… はあああああっ!」
ギュボム!

その勢いのまま少女の可愛らしい口は勢い良く解放し、超熱量の殺戮光線が口から一直線に放たれ直撃した山脈も消し飛ばし 近くに着弾しただけでも都市を蒸発させる。

「おりゃーーっ!!本気でいくよ!」

そのまま破壊光線を垂れ流しながら巨大拳を手当たり次第に大地に叩き付け、
そのまま踊り込んだ北京を巨体の尻で押し潰し吹き飛ばす。

「はああああーっ!吹き飛べーっ!」

その絶滅行為の途中で開放された要素「スーパーマンスキル」の試し撃ちも始め、
手からエネルギー弾を撃ち出し東南アジアをクレーターに変え、
叩きつけた拳からの衝撃波で山々を消滅させる。

数分ごとに中国の人口の数十%を消し飛ばす都古は一切手加減せず、
破壊衝動のままに焼き尽くし最後に国土の真ん中で力を開放、閃光を全方位に撃ち放ち一人残らず殺戮する。

「これで……これであたしこそが真の拳士!!」

最後の勝鬨の声の衝撃だけで一応生命活動を停止していなかった0.5%を破裂させた都古は、
またもやお馴染みとなった目の前に出現したポップアップを即座にタップする。

「来た…来た来た!!」

都古は巨大化に対し身構えるが今までの速度とは比べ物にならない勢いで巨大化していき、
途中で宇宙に浮きながらも巨大化していき 最終的に地球の目の前で巨大化が停止する。

「YAHHHHH!!」

自らの目の前にある「巨大化:千万倍」を見にもくれず雄たけびを上げ、
破壊神の挨拶代わりとも言わんばかりにロシアに向けて拳を振り下ろす。

「くらええーっ!」

少女の可愛らしい声から放たれる巨大隕石並みの拳、
普通ならば柔らかく可愛らしい手はロシアを一撃の元の吹き飛ばし。

その惨事は人類の絶滅までのリミットと都古の破壊衝動を加速させていく、

ロシアの周辺国にも拳を何回か叩きつけた後、
叩き付けめり込んだ拳を唐突に開きだす。

「えへへ…あたしのこの指から逃げられるかなぁ?」

そう加虐的なセリフを言いながらアジア圏には超巨大な五本の指を突き刺しぐしゃぐしゃにかき乱し、
最後にはパーを押しつけ地球上に巨大な手形を押し付ける



「あっ 忘れてた忘れてた!」
アジア圏を全てそう呟きながら、ゆっくりと日本側に体を向けなおす。

「仲間はずれにしちゃいけないもんね!」
日本の崩壊しかかった本州に幸運にも一応残っていた富士山、
その富士山に向け手のひらを直撃させて手の陥没跡に変え満足げにうなずく。

「よーし!これで日本はコンプリートだね!」

満足げにほぼ消滅した日本の後に海水が流れ込む跡を見ながら、
その巨体を動かし直接的な被害がなかったアメリカ大陸側に迫っていく。

「じゃあ今度はこっち!」
そう笑顔のまま死刑宣告をし口の中に眩い光を生み出し始める

「助かると思ってた? 残念!いくぞーっ!」
ギ ュ ボ

自らに迫っていた核ミサイルなどを気付くことなく全て飲み込みながら放たれた閃光は、
着弾した瞬間アメリカ大陸にある全ての物を核兵器と比べられない熱量で蒸発させ、
ポイントと言う名の無機質な彼女の糧へと変化させられていく。

ゆっくりと天から撃ち落とされる神の光によりアメリカ大陸を瞬時に歴史から消し去られる。

アメリカ大陸の国が消滅した後も彼女の気分のみで執拗に破壊光線は照射され続け、
そのまま都古がちょっと気を取られたときに顔を動かしただけで地球の海を薙ぎ払い、
広大な宇宙空間に照射されいくつもの小惑星も粉砕していく。

「えーっと後は…」

アメリカを完全に赤茶色と煮え滾った地に変えて気が済んだ都古は、
アメリカ大陸の跡と丁度あったアフリカ大陸を蹴り付け無意識のアフリカの滅亡引き起こしながら、
ヨーロッパ側へ移動し腕を組み見下す。

「後はお前たちだけだ……!!」

ズズズズズズ……

そう言いながらゆっくりと片手をあげて手刀の形を作る。

「うーん……、ここ最後にしたの失敗だったかなぁ……」

自らの巨体と比べてのヨーロッパの狭さに、
蹂躙の順番を間違えたかと不満をつぶやきそのまま手刀を振り下ろす。

「さてと…みやこドーザー!」
無邪気に子供的なネーミングをつけ、
その振り下ろされた人類史上最大の殺戮兵器の手でヨーロッパ全土を薙ぎ払い削り取りだす。

「えーい、ずどどどー!!」

その巨大な掌が通った後は海も陸も町も茶色の土に変わり、人の居たという形跡を一切残さず消し去る。

「さてとトドメに……」
目ぼしい存在と人類の9割を殲滅した破壊神の都古は、
いまだ目立った損害がないまま地球の周囲を浮遊していた月を両手で掴み取る。

「せぇーーの…」

ぐぉぉぉぉお…

「てりゃあああああ!!」

ずどおおおおおおおおん!!!!

そのまま両手で抑えた月を持ち上げて振り下ろし、
力任せにダンクシュートのように地球に叩きつけ、
そのまま月と地球を真っ二つにする。

「ふぅ……、 どーーだっ!!」

一応脳内残ってはいるクリアして脱出すると言う目的を流石にこれで達成しただろうと、
システムに対して勝ち誇った瞬間にポップアップが出現する。

「やったー!!クリア……、じゃない?」

今まで聞き続けたポップアップの出現音、
クリアのポップアップだと思って喜んだ彼女の目に映ったのは
いつもどおりのアップグレードの選択肢だった

「ううー……どこまで壊せば……」

地球を真っ二つにして流石に多少飽きても来た都古は、
そう言いながら手がついアップグレードを押してしまう。



その瞬間今までの時の巨大化とは違う感覚が体を支配し、
まるで起動した時のように意識が一瞬途絶え、しかしすぐ戻るという奇妙な感覚に陥る。

「こ ここは……?」
再び目を開けた時に周りに広がる光景、
目の前は暗く辺りには白い点が多く見える。

体の周りには小さなチリのようなものが浮遊し浮いているこの光景、
そう 小学校で見たプラネタリウムのような状態……。

もしかして

これは

チリのようなもの以外にあるものは、
都古の胸辺りにある赤いピンポン玉。

そしてその周りにあるゴマ粒やビー玉のような物たち。

「これって太陽系……」

ピンポン玉とその周りの物は教科書で見たような太陽系。
大きさと地球と月が存在していない以外には殆どそのままだった。

「そっかぁ……、 ふふ……、これを壊せばいいんだね……!」

全てを理解した都古はゆっくりと口元に笑みを浮かべ巨大な手をゆっくりと動かす。

ズズズズズズ……

「きゅーきょく……」

都古は両手で太陽系を包み込みそのまま両手はゆっくりと閉じ始め……

ズズズズズズ…

「おうぎ!!」
パンっ

太陽とその周りの衛星達を一瞬で勢い良く挟み潰し太陽系は一撃にて砕け散った。

そしてその瞬間。

『ゲームクリア!!』

今まで行われていた惨劇とは比べ物にならない軽い合成音声。
安っぽいゲームの効果音とともに、ブラックアウトする視界。

『当ゲームはフィクションです、現実では人も物も大事にしましょう。』

『二週目に『もっとチートモード』が開放されました!』

ブラックアウトした世界の中でとってつけたかのように浮かぶ注意文とメッセージを見ながら、
都古の意識は起動した時のように意識が遠のいていった……。



「みや…」


「都古ちゃ…」


「都古ちゃん!大丈夫ですか!?」

ヘルメットを着けたまま目を覚ました都古の耳に、
何かあったら秋葉に仕置きされるという多少の自己保身、そして殆どの純粋な心配心の入り混じった琥珀の声が響く。

「琥珀…… だいじょーぶ…」
ぼーっとした感じでヘルメットを外し少し足元がおぼつかないものの立ち上がる都古。

「本当にすみません!!ソフトの制作をメカ翡翠ちゃんたちに丸投げしてて…外部から切る機能とかじゃ…つけ忘れてまして!」

珍しく慌てて謝罪と言い訳、心配をする琥珀に対してまだぼーっとした口調で質問する都古。

「こはく… 始めてから何分ぐらいたったの……?」

「……へ? えーと二十分くらいですけど……。」

研究所内のデジタル時計に目をやり、VR内での時間より遥かに短い実時間を言う琥珀。

布団と新しいテントで売られたとは言えアトラス院の技術力で成された成果なのか、
外見は旧世代のゲーム機ながら神秘を秘めたスペックを時間でも示していた。

内部ではあれだけ時間がかかったのに現実では二十分しか経っていなかったという返答を聞き少し考える都古。

「えーと…と言うわけで本当に出来たら秋葉様とか志貴さんには内緒になんですけど…」

「やい琥珀!!」

「はい!?」

「黙ってる代わりにいしゃりょーとしてこのゲーム機とカンフーソフトを頂戴!」

「へっ?」

琥珀の脳内で都古の唐突な提案について色々と巡る、
もう既に設計図があり高価な素材はそんなに使っていないので多少時間がかかるにしてもこの機械自体はもう一台作れます。

逆に渡さないで秋葉様や志貴さんに報告されたが最後、
分家で小学生の都古ちゃんを巻き込んだ事も含めて、お仕置きもあるし高確率で没収……。

それに一応翡翠ちゃんが使うときも考えて廃人対策の安全装置などは十分ある上、
オシリスが踏んでも壊れない耐久性に給電は家庭用コンセント。

停電や足を引っかけて抜けたとしても対策用に大容量非常用電源も搭載済み、
半日は動いてバッテリーが切れるときには安全強制停止するラストセーフティもあります。

(それのせいで今回止めることができなかったんですけど……)

きっと都古ちゃんに渡したとて危険なことにはなることないでしょうし……。

「……ええ!ええ!いいですよ交渉設立です!メカ翡翠ちゃん持ってきてください!」

琥珀はメカ翡翠が差し出した正しいケースに入ったジャッキーチャレンジを片手に
一応神秘が使われた機械である事から大事な念を押す。

「…くれぐれも友達には見せないで自分だけで使ってくださいね☆」

大事なことを伝え、
都古がうなずいたのを確認してから都古にジャッキーチャレンジが入ったケースを差し出す。

「えーとじゃあなんか持ち運ぶ箱を……。」

ぐいっ!


「じゃあね!もう悪いことしちゃだめだからね!!琥珀!」

「あーれっ!」クルクルクルクルッ


有間都古は差し出されたジャッキーチャレンジのソフトを半ば琥珀から奪い取るように手にし、
むき出しの「マジカルドリームキャスト」と一緒に持って出口へと走り去って帰っていく。

そうして琥珀とメカ翡翠と都古のみだけが知っている、
よくあるソフトの入れ違いから起こった「ドリキャス事件」は終わりを迎えたのだった……。








走り去っていった都古を見送った後
ソフトをもぎ取られたときに回転していた琥珀はふらふらしながらメカ翡翠に話しかける。


「ふう……やっぱりちゃんと整理はいつもしてないといけませんね……。」


「……ドクター、 先程ノ間違ッタディスクハ?」


「あれ? もしかしてあのハードの中ですかね……?」


「98%ノ確率デ 一号ハードノ読ミ込ミ部分内ニ残ッテマス。」


「……まぁ都古ちゃんはちゃんとディスク入れ替えるでしょう。」



「で結局何のソフトいれたんでしたっけ?」


「……不明デス。」