(1)
 最近運動不足なので、ジムにでも入会しようかと思う。
 というのを、筋トレが趣味の同僚に話したら

 「それはいいね!だったら君にぜひとも紹介したいジムがあるんだよ!」

 と、連れて来られたのがこの『Giantess GYM』だ。

 謳い文句は『当ジム専属の女性インストラクターが全身と全霊であなたを鍛えます』
 なぜ全身全霊ではなく、全身『と』全霊なのかは不思議だがそれは体験すれば分かるよ、と同僚は意味深に笑う。


 同僚付き添いのもと、ジムの受付の人に体験トレーニングであることを告げエレベーターに乗る。
 どうやらトレーニング場は地下にあるタイプのようだ。
 
 ブゥンという機械音とともにエレベーターが降りる。
 高速エレベーター特有のわずかな浮遊感のなか、10秒20秒と時が過ぎていく。
 ……かなり地下深いようだ。

 およそ1分ほど経った頃だろうか、ポーンという機械音の後エレベーターの扉が開いた。

 扉から出た瞬間、思わず息をのむ。
 目の前に広がるのは学校の体育館を何百倍にも拡大したような空間、天井はいったい何百メートルの高さがあるのだろう?照明が星のようにきらめいている。
 面積は何平方キロメートルあるのか想像もつかない?端の方などぼやけてよく見えない。


 ふと、近くに一人の女性が立っているのに気が付く。
 小麦色に焼けた肌を包むスポーツブラとスパッツ、そこから伸びる手足は程よく筋肉がつき引き締まっている。
 うっすらと割れた腹筋が悩ましい。

 「ああ、彼女はナナミさんだね。ここのインストラクターの一人だよ」
 
 同僚が教えてくれる。
 と、彼女の方もこちらに気付いたようで、少しあどけない印象の笑顔でこちらに走ってくる。


 ドシン、ドシンッ


 ――彼女が近づくにつれ、自分が大きな勘違いしていたことに気が付く


 ドシン、ドシンッ

 
 すぐ近く、数メートル先にいると思っていた彼女だが実は数百メートル先にいたのだ。


 ドシン、ズゥンン


 目の前に(と言っても十数メートルは離れているが)一軒家程もある大きさのトレーニングシューズが踏み下ろされる。

 『こんにちは!体験トレーニングの方ですね?』

 遥か頭上から降り響く声を見上げながら、なるほどと思う。

 Giantess=女巨人

 ここは巨人族の女性がインストラクターをしているジムなのだ。



(2)
 案内された更衣室でトレーニングウェアに着替えていると、壁に本日担当のインストラクターの写真が貼ってあるのに気が付いた。

 本日のインストラクターは4名。
 どの人もかなり美人で若い、というかどう見ても少女としか言えない子もいる。

 左から一番目の写真は先程案内してくれたナナミさん。
 スポーティーで笑顔が可愛らしい。外見的には大学生ぐらいだろうか。
  
 2番目の写真の巨人はレイナさんというらしい。
 20代半ばくらいで、とてもスタイルのいいセクシーな女性だ。
 写真だと分からないが、実際はこの胸ひとつが何十メートルの大きさなのだから凄まじいとしか言いようがない。

 あまりインストラクターっぽくない3番目の巨人はミレイさん。
 人ではまず見かけない銀髪の、高校生ぐらいの女の子だ。なんだか妙に眠そうな顔をしているのが気になる。

 最後、4番目の巨人はカリンさん。
 ツインテールが似合う、小中学生のような外見の子だ。
 人間なら労働基準法とか青少年保護育成条例とかに接触しそうだが、巨人に人間の法律は適用されない(というか適用させられない)ので問題ないのだろう。