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 ~ 魔王クラナ ~


  『今日もいい天気』

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雲一つ無い快晴の青空の下、活気ある街並みを縫う大通りをたくさんの人が行き交っている。
特に市場へとつながる道の人の多さは舌を巻こうというものだった。

そんな市場の一角に威勢のいい声が通る。

 店主 「へいらっしゃいらっしゃい!」

ずらりと並べられた瑞々しい野菜の前で声を張る八百屋の店主。
そこに客が訪れた。

 クラナ 「精が出るな」
 店主 「お、嬢ちゃんじゃねぇか! 久しぶりだな」
 クラナ 「うむ。リアルで1年振りくらいか」
 店主 「ははっ! メタ発言はいけねぇぜ。ところで今日は二人だけかい?」

店主がクラナの横に目を走らせれば、そこにいるのはエリーゼひとり。

 クラナ 「くく、まぁたまには二人きりにしてやらないとな」
 店主 「なんでぇ、気ぃ利かせちまったのかい?」
 クラナ 「これで子供のひとりやふたりできていれば腹の底から笑ってやるんだが」
 店主 「はっはっは! そいつぁいい!」

笑うクラナと店主。
それを横で首をかしげながら見ているエリーゼ。

そんな3人に近づいてくる集団がいた。

 ゴロツキ 「ん? なんだ、てめーらか」
 クラナ 「なんだ三下か」
 ゴロツキ 「今日はあの鬼強ぇ兄ちゃんはいねえのかい?」

ゴロツキはきょろきょろとあたりを見渡している。

 クラナ 「いなかったらなんだ? 私たちを襲うか?」

フフン、と挑発的に笑いながら言うクラナに、ゴロツキは面倒臭そうな顔になって手をひらひらと振った。

 ゴロツキ 「あーいらんいらん。おめーらみたいな化け物に手ぇ出すほど俺たちも馬鹿じゃねーよ」
 クラナ 「くくく、まぁ利口な判断だな」

かつての魔王襲撃以降、クラナたちは元の大きさのまま街を訪れることもあり、ゴロツキたちもその姿を目にしたことがある。
魔王だのなんだのと、わけのわからないものを相手にするつもりは、ただのゴロツキには毛頭無かった。

 ゴロツキ 「っつっても俺たちも暇なんだよ。茶でもしねーか? 奢るからよ」
 クラナ 「ははっ、いきなり手のひらを返したな」
 ゴロツキ 「そりゃおめーらを敵に回したくはねーからな」
 クラナ 「奢りなら付き合おう。エリーゼ、お前はどうする?」
 エリーゼ 「んー、あたしもお腹空いてきたかな」
 クラナ 「ということだ。出来れば食事のできるところを頼む」
 ゴロツキ 「あいよ」

そしてクラナとエリーゼはゴロツキたちに囲まれて道を行こうとした。
のだが、そのときである。

「やめないか君たち!」

ん?
クラナやゴロツキたちが見れば、そこには5人の男が立っていた。
見ればその出で立ちは中々のもの。
豪奢な剣を携え、脚部腕部に鉄甲を覆った、戦士のそれだ。
5人が5人、多少違いがあれど、皆がそれなりに腕が立つ者たちなのだろう。

そんな男たちが、ゴロツキたちの前に立ちふさがった。
突然強気な口調で声を投げかけられ、ゴロツキの眉がピクリと動く。

 ゴロツキ 「んだてめーら!」
 戦士 「彼女たちは嫌がっているじゃないか! 彼女たちを放してさっさと消えたまえ!」
 ゴロツキ 「あぁ!? これのどこが嫌がってんだよ! くだらねぇこと言ってっとカマすぞ!」
 戦士 「その薄汚い口を閉じて、とっとと路地裏にでも消えるがいい。さもなくばその醜い顔が更に見れぬものになるぞ!」
 ゴロツキ 「てめぇ!!」
 クラナ 「まぁ待て」

ゴロツキたちと戦士たちのやり取りを見ていたクラナはにやりと笑うとその仲裁に入った。

 ゴロツキ 「んだよ! 邪魔すん………ッ」

ゴロツキが怒り冷め止まぬ形相でクラナを振り返ったが、そのクラナの妖艶な笑みを見て言葉に詰まった。
怒りの炎と熱が一気に消し飛び寒気がした。それだけの畏怖を感じる妖しい笑みだった。

 クラナ 「面白い。悪いが、今日はあいつらと遊ばせてもらおう。茶はまた今度誘ってくれないか」
 ゴロツキ 「お、おう…」

気圧されたまま、ゴロツキはそれだけ答えた。
戦士たちをギロリと睨んだ後、ゴロツキたちはぞろぞろと去って行った。

あとに残されたのはクラナとエリーゼ、そして5人の戦士たちである。
戦士たちがクラナに駆け寄ってきた。

 戦士 「君たち、もう大丈夫だよ。酷いことはされていないかい?」
 クラナ 「あぁ大丈夫だ。礼を言うぞ」
 戦士 「そうか…無事でよかった」
 エリーゼ 「あれ?」
 
クラナが戦士たちに礼を言うと、戦士たちも爽やかな笑顔でそれに応えた。
エリーゼはなんとなく先ほどまでと流れが違うことに首をかしげた。

 戦士 「あんな連中がうろついているとは、ここも物騒な町だな。君たちも気を付けた方がいい」
 クラナ 「ふむ、お前たちは私たちのことを知らないのか?」
 戦士 「君たちのことを? もしかして有名なのかい? すまない、僕たちは最近この町に来たばかりなんだ。でも確かに君たちみたいに美しい娘なら有名でもおかしくはないね」

戦士は笑ってそう言ったが、クラナはその笑顔の向こうを見てひそかにほくそ笑んだ。

 戦士 「ところでどうだい? ちょっと一緒に食事でも」
 クラナ 「そうだな、助けてもらった礼もあるが……だがもっといいところに行こう」
 戦士 「もっといいところ?」
 クラナ 「くくく、ああ、もっといいところだ」

首をかしげる戦士にクラナは笑って返した。

 クラナ 「いくぞエリーゼ」
 エリーゼ 「えぇ~ごはんは~?」
 クラナ 「もっと面白いことが味わえるぞ。うまくいけば気持ちよくなれるかもな」
 エリーゼ 「ほんと!? わーい!」

エリーゼはぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。
そんなエリーゼの体に、男たちの視線は釘付けだった。

 戦士 「し、しかし、大胆な恰好をしてるね…」
 クラナ 「こぼれるところでも期待してるのか?」
 戦士 「まっ、まさか! はは…」
 クラナ 「まぁいいさ。ではついて来い」

そしてクラナは5人を率いて歩き出した。


  *


着いた先は町を出た山奥だった。

 戦士 「ど、どこに行こうって言うんだい?」
 クラナ 「もうすぐだ」

そう言うクラナが足を止めたのは山の尾根を一つも二つも越えたところであった。
一応道らしい道を通ってきたが、それでも山奥に変わりはない。

 クラナ 「ふむ、この辺でいいか」
 戦士 「こんな山奥まで来て、いったい何を…」
 クラナ 「ん? 人目につかない場所がいいのは、そっちも同じだと思うが?」
 戦士 「え?」

きょとんとする戦士に、クラナは更に意味ありげな笑みを浮かべる。

 クラナ 「それで隠しているつもりだとしたら大したものだな。笑みの下に下心が丸見えだぞ」

くくく、クラナが笑う先で戦士がフッと息を吐いた。

 戦士 「あれ? ばれちゃってた?」
 クラナ 「英雄は色を好むというが、武に長ける者が色を求めるのは本当のようだな。お前たちのその実力の下に、ドロドロとした欲望が見える」
 戦士 「へぇー、男見る目あるじゃん」

戦士は髪を掻き上げ舐めるように二人の体に視線を走らせた。
残りの男たちも互いに距離を取りながら二人を囲い始めた。

 戦士 「もしかして、わかってて連れて来たの? 君たちも好きなんだね」
 クラナ 「まぁこっちも暇だった……ぐっ!」

突然クラナは地面に押し倒された。
そのクラナの上に戦士が馬乗りになる。

 戦士 「だったら当然こうされることもわかってたんだよな。むしろこうされたかったんだろ?」

戦士の手がクラナの腕を抑え込み、更にもう片方の手はクラナの胸をわしづかみにしていた。
大きな胸が力強い戦士の手を受けて変形する。
それを見たエリーゼが悲鳴を上げた。

 エリーゼ 「く、クラナちゃん!! あっ!」

が、横から別の男が掴みかかり、エリーゼも地面に押し倒される。
ただの少女と変わらない今の二人が、屈強な5人の男に押さえつけられたら、逃れることなど不可能だ。

 クラナ 「痛……くく、なかなかの手際の良さだな。やはりこういうことは初めてではないだろう?」
 戦士 「ふふ、ああ、爽やかな青年の振りは得意でね。ちょっと笑いかけてやれば大抵の女はイチコロさ。今日みたいにゴロツキ連中を相手にすればそれだけでみんな信用してくれるからね」
 クラナ 「なるほど。笑みの仮面で女をだますわけだ。ろくでなしと言うことだな」
 戦士 「ま、君たちには見破られちゃったみたいだけど。でもそれで付き合ってくれるんだからうれしいな。すぐに気持ちよくしてあげるからね」

戦士の手がそれを破らんとクラナの服の胸元に伸ばされる。
だがクラナは、笑ったままだ。

 クラナ 「思った通りの畜生だったか。確かめられたならそれでよし、だ。エリーゼ」

押し倒されたままクラナはエリーゼを呼んだ。
そのエリーゼも、男たちに押し倒され脱出のできない男の牢獄に囚われていた。
男の一人の手が、今まさにエリーゼの纏う少ない布をはぎ取ろうとしていた。

 エリーゼ 「なぁに?」
 クラナ 「もう十分だ。元の大きさに戻るぞ」
 エリーゼ 「? はぁい」

男たちの手が二人の服に掛けられた、その時である。

  ピカッ ボンッ

閃光と煙があたりに広がった。
それは一瞬で周囲を包み込み、それらが収まった時、そこには本来の大きさの二人が横になっていた。
押し倒された格好のまま、山中に大の字になっていたのである。

 クラナ 「ふぅ、こんなところか」

クラナは体を起こした。
同じようにエリーゼもむくりと起き上っていた。
そしてそんな二人の体には、あの男たちがぶら下がっていた。
クラナの胸元に掴みかかっていた戦士は今も同じようにそこに手をかけたまま、ただし高さは先ほどまでと比べ物にならない高みに取り残されていた。
座っているとはいえ、クラナの胸元は高さ数十mである。
男は服の胸元の裂け目、その向かって左手にぶら下がっていた。片手でなんとか、服を掴んでいた。
自分が今どこにいるのか、なぜこんなことになっているのかわからない、と言った顔だ。

戦士と同じように、エリーゼの胸の布にも別の男がぶら下がっていた。もう一人はぱんつに。残る二人は、投げ出された長さ数十mにもなるエリーゼの脚の間、その股間の前で腰を抜かしていた。

 クラナ 「大丈夫かエリーゼ?」
 エリーゼ 「うん、なんともないよ」
 クラナ 「そうか」
 エリーゼ 「でもどうするの? この人間たち」
 クラナ 「くく、そうだな…」

クラナはにやりと笑って自分の服の胸元にぶら下がる人間を見下ろした。
状況が理解できていないのだろう。必死にそこにしがみつくその様は実に滑稽だった。
たとえば今ここで、胸を少しでも揺らそうものなら、この戦士は簡単に放り出されて落ちて行ってしまうだろう。
ダインとは違う、ただの人間なのだから。
さて、どうやっていじめてやろうか。

 クラナ 「そろそろ自分が置かれてる状況がわかってきたか?」
 戦士 「な、な、な、なんなんだよいったい…!」
 クラナ 「剣を携える者が見知らぬ土地に来たのなら、まずは人の噂に耳を立てるべきだな。知っていれば、お前もこんな軽はずみな行動には出なかったであろうに。女ばかり見てるからそういう目に遭うのだ」

言いながらクラナは胸にぶら下がっていた戦士を摘まみ上げると手のひらに乗せた。
そこに乗せられた戦士はただ口をぱくぱくと動かすばかり。腰が抜けたようだ。

 クラナ 「ふん、情けない。ダインは出会った直後に斬りかかってきたものだが。…さて、エリーゼ、こいつらは悪党だ。一匹も逃すなよ」
 エリーゼ 「あ、うん。わかった」

言うとエリーゼは自分の脚の間に手を伸ばした。
そこにいた二人は、自分たちめがけて巨大な手が下りてくる様に悲鳴を上げ、反対に向かって走り出したのだが、家さえもわしづかみにできる手から逃れられるはずもなかった。
エリーゼは二人をまとめてむんずと捕まえるとそれを手に乗せた。残る二人もそれぞれ摘まんで同じように乗せる。
先ほどまで二人を凌辱しようとしていた5人は、あっという間に二人の手に落ちた。

 エリーゼ 「でも捕まえてどうするの?」
 クラナ 「最後は警察隊にでも突き出してやればいいが、せっかくだからお前が気持ちよくなるための特訓に使わせてもらおう」

クラナは自分の手に乗っていた戦士を胸の谷間に押し込むと、エリーゼの胸を覆っていた布をぐいと押し下げた。
エリーゼの、今は名実ともに巨大な胸がぶるんと躍り出た。
手に乗せられた4人の男たちの前でそれは盛大に揺れ弾む。
そしてクラナは、その4人の中から2人摘まむと、それぞれ左右の乳首の上に一人ずつ下した。

 エリーゼ 「ほえ?」
 クラナ 「先ほどまでお前たちが望んで止まなかった女の胸だ。そこに乗せられても文句は無かろう。堪能させてやるからこちらの要求にも付き合ってもらうぞ」

男たちはがたがた震えていた。
背後から山のように巨大な女が話しかけてくる。だがそれ以前に、今自分たちが跨がされへばりついているのも、同じように巨大な女の胸なのだ。
眼下を見る勇気はなかった。肌に感じる風が、ここがかなりの高所である証だったからだ。

 クラナ 「どうだエリーゼ?」
 エリーゼ 「? なにが~?」
 クラナ 「気持ちよくなる……というか何か感じないか? 胸がツンとするとか」
 エリーゼ 「へ? 人間が乗ってるのは感じるけど、でも別に気持ちよくはないよ。ちょっとくすぐったいくらい」

エリーゼはまるで確かめるように、自分の胸を両手で持ち上げ始めた。
上下に動き始めた胸の上、男たちは悲鳴を上げた。
更にエリーゼの左手に乗せられていた残り二人の男は、エリーゼの左の乳房とそれを持ち上げる手の間に挟まれていた。
途方もない重量が彼らにのしかかった。

クラナはため息をついた。

 クラナ 「ま、お前らしいと言えばお前らしいが、せめてその存在くらいは認知させてやりたいものだな。いつまでもこのままというわけにもいかんだろうし…」

クラナは指を伸ばすとエリーゼの右の乳房にへばりついている男の背中をぐいと押した。
男がへばりついている乳首ごとわずかに乳房にめり込む。
ただその弾力は、本来彼がいくら力を入れてもここまでへこませることのできないほどに重厚なものであるが、それがこうも容易く柔らかくへこむということは、相応の力がかかっているということである。
つまりは指と乳房に挟まれる男はとんでもない圧力を感じているはずだ。
実際男は、断末魔のような悲鳴を上げていた。

 エリーゼ 「なんかこの人間騒いでるよ」
 クラナ 「自分が求めたことだろうに。それよか快楽に繋がるものはまだ何もわからないのか?」
 エリーゼ 「ぜんぜ~ん。あ、でもなんか人間がおっぱいをペチペチ叩いてて楽しいの。これのことなのかな」
 クラナ 「全然違うな」

ふぅ…クラナは息を吐いて指を引いた。
これによって男は圧力から解放されたが、またすぐ今度はエリーゼが指で押さえつけてきたことで再び胸の中にめり込んでいった。
しかも今度は、先ほどよりもはるかに強く。
その小さな体が完全に埋没するほどに。

  ぎゅぅぅぅううううううう  メリメリメリメリ…

 男 「ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああ」

正真正銘の断末魔であった。

 エリーゼ 「あはは、また叫んじゃってる~」

強く押し込めば人間は激しく動く。ペチペチパンパン乳首をたたいてくる。それがあまりにもかわいらしくて楽しかった。
ぐりぐりと円を描くように押し付けて行った。

 クラナ 「こらこらやりすぎだ。乳首で押し潰すつもりか。ダインとの約束を破ることになるぞ」
 エリーゼ 「あ、そっか」

エリーゼは指を離した。
すると乳房はぽよんと元の形に戻り、乳首に乗っていた男はあまりの疲労に意識も途絶えかけており、乳房が元に戻った反動で放り出されてしまった。
地面に落ちてゆく過程で、危うくエリーゼがパシッとキャッチした。

 エリーゼ 「ふ~あぶないあぶない」

男をキャッチし握ったその手で額をぬぐう仕草をするエリーゼ。

 クラナ 「気をつけろ、こいつらはダインと違って脆いんだぞ。こんな高さからでも落としたら死ぬ可能性がある」
 エリーゼ 「そうだっけ。ダインとしか遊んだことないからよくわからないや。でもクラナちゃん、こうやって人間で遊んで後でダインに怒られないかな?」
 クラナ 「大丈夫だ、こいつらはこれまで何人もの女をだまして泣かしてきた連中だからな。むしろ、そういう連中を捕まえたと伝えれば褒めてくれるぞ」
 エリーゼ 「そうなの? わぁい!」

エリーゼは両手を上げて喜んだ。
そのせいでまた胸が大きく弾み、まだ左の乳首に乗っていた男も空へと放り出されていた。
それもエリーゼによって慌ててキャッチされたが。

 エリーゼ 「でもすぐに落ちちゃうねー。もっと頑張ってほしいな~」

両手に捕まえた二人の男を再び乳首の上に戻した。
男たちはまたエリーゼの乳首にまたがりその乳輪にへばりつく格好になり、その姿勢のままさめざめ泣いた。
今まで自分たちが犯してきた罪の報いなんだ。こうやって女の乳首に乗せられて弄ばれるのは自業自得なんだ。
そうやって自分たちの業に、震えながら泣いている男たちの耳にはエリーゼの笑い声が轟いていた。

 エリーゼ 「こうやって見ると人間もかわいいよね。ちっちゃくてピクピクしてる」

笑いながらエリーゼは指で自分の乳首に乗っている男の頭をそっと撫でた。
男からすれば自分の身長ほどもある巨大な指が迫ってきて自分に触れるのだからその恐怖は半端ではない。
ただ縮こまり震えながら、一刻も早くその指が離れてくれるのを祈るばかりだった。

そうやって無邪気に人間で遊ぶエリーゼを見ていたクラナ。

 クラナ 「ふむ、かわらんな。お前に性欲の存在を教えるにはどうしたらいいんだ」
 エリーゼ 「せーよく?」
 クラナ 「異性を求めることだ。お前とて女なんだから一応その位の認識はしておかねば心身の成長に障るぞ」
 エリーゼ 「いせー?」
 クラナ 「男のことだ。つまりお前はダインが好きか?」
 エリーゼ 「うん! 大好き!」
 クラナ 「じゃあダインと性行に及びたいか?」
 エリーゼ 「へ? う~ん……一緒に遊びたいな~って思うけど、他にはないよ」
 クラナ 「お前にはそれが限界か……」

クラナは三度目のため息をついた。
こいつに恋愛からその先にあるものを教えるのは無理だな。
異性を意識させる前に、女であることを自覚させるのがまず無理だ。
自分の胸で男を弄ぶその行為に、なんの感情も芽生えないのか。

 クラナ 「お前はこどもだな」
 エリーゼ 「そうかな?」
 クラナ 「その返事がこどもの証拠だ。…さて、お前に色を教えるのは失敗したが、こいつらの仕置きは続けねば、な」

クラナが見下ろした先で、エリーゼの手の中にいた残された二人の男が抱き合って震えた。
そんな男たちを一摘まみしたクラナは、エリーゼのぱんつを前にぐいと引っ張ると、

 エリーゼ 「どうしたの?」
 クラナ 「まぁ見てろ」

その中に男のひとりを落とした。
男は悲鳴を上げながらぱんつとエリーゼの体の間に消えていき、クラナの指が外されると、ぱんつはパチンと元に戻った。
エリーゼの背後に回ったクラナは今度は後ろからぱんつを引っ張ると同じようにそこに男を落とした。

 クラナ 「これでいい」
 エリーゼ 「なんかもぞもぞする~。くすぐったいよ」

いいながらもぞもぞと腰を動かすエリーゼ。
その股間を覆うぱんつの向こうから「ぎゃああ」という悲鳴が聞こえてきた。
ぱんつとエリーゼの間に挟まれ締め上げられたのだろう。

 クラナ 「潰れてはいないようだな。では…」

そしてクラナはエリーゼの胸の布を手に取ると、エリーゼの乳首に男たちを乗せたまま、それをピシャリと元に戻した。
布が戻った時の反動で胸がわずかに弾んだ。

 クラナ 「ところでこの布はゴム製なのか? それとも背中で結んでいるただの布なのか?」
 エリーゼ 「わかんな~い。設定考えてないから」
 クラナ 「まぁどっちでもいいんだがな」

言ってクラナはエリーゼを見た。
足を広げながら前に投げ出し、きょとんとした顔で森の上にズンと座るエリーゼ。
そのどこにも、男が隠れている様子など見られなかった。
すべてが、エリーゼの胸覆いとぱんつに隠れてしまっていた。

 クラナ 「ふん、こうなるとどこにいるかもわからんな。お前たちのような薄汚い男など、女の体の前にはその程度だということだ」
 エリーゼ 「でもここに入れてどうするの? 前にダインで遊んだように胸を反らしたりするの?」
 クラナ 「そんなことをすれば一瞬で弾けるぞ。そいつらはお前の乳首より弱い存在だと忘れるな。ま、どうせ暇つぶしの途中だったのだ。そのまま少しその辺を散歩でもするか」
 エリーゼ 「そうだね」

二人は立ち上がり、てきとーにその辺りをぶらつき始めた。
平野を歩き、山を跨ぎ、湖の水でのどを潤して、気を引くものを探した。
と言ってもこの辺りは何度も来たことがあるし、ただの山中にそれほど気を引くものがあるわけでもない。
やはり実態は散歩。歩く感触と風のざわめきを感じるのが主だった。
それでも、十分に楽しめるのだ。
ただやはり、エリーゼが一歩歩くたびに、そのせいで胸が揺れるたびに、その両胸に囚われた男たちは悲鳴を上げた。
胸覆いはただでさえぴっちりと乳房を覆っているので、そこに囚われた男たちは乳首にめり込むほど押し付けられる格好だ。
その状態で胸が揺れれば、布はギシギシと彼らを締め上げてくる。
歩行の規則的な揺れに酔いそうになりながら男たちは人肌の拷問に処されていた。
それは股間の二人の男も同じである。
股間前部の男は歩行に際し左右にあるエリーゼの太ももが動くたびに左右と前後から締め上げられていた。
深くまで落ちてしまっていた彼はエリーゼの股間にのしかかられるような格好になっていたのだ。
重く、非常に窮屈な空間であるのに、更には体に絡みついてくる無数のそれが彼の心を痛めつける。
どれだけ強く引っ張ろうとも千切ることのできないそれは、いつしか彼の体中に巻きついてその自由を拘束していた。
雁字搦めにされ身動きの全く取れなくなった彼にエリーゼの股間がのしかかる。
全身をそこに押し付けられる彼の悲鳴は非常にくぐもったものだった。
しかしもっとも辛いのはエリーゼのお尻に放り込まれた男だろう。
彼は今、二つの小山からなるエリーゼのお尻の間にみっちりと挟み込まれていた。
そしてその肉の山はエリーゼが歩くために脚を動かすたびに左右へと揺り動き、更にはその為に漲る筋肉と言う強健な肉が、そこに挟まった彼の体を潰さんばかりに挟み込む。
お尻の間、エリーゼが歩くためにわずかに脚に力を込めるそれだけで、彼は全身の酸素と血液を絞り出されそうなほどの圧力に襲われるのだ。
だが、それに抗い暴れようとしようものなら、それを感じ取ったエリーゼがくすぐったさを覚え、お尻をきゅっと締めるのだ。
それだけで、彼のすべての抵抗はぴたりとおさめられてしまう。
そんな苦行を強制されている彼が、助けを求めどんなに叫ぼうとも、その頼みの綱である声は、エリーゼのお尻の肉に吸収されて、外までは届かなかった。
エリーゼとしては、胸と股間に感じる小さな感触を笑いながら楽しんでいた。

 *

夕刻。
ようやく帰ってきたクラナとエリーゼは、男4人を警察隊に引き渡し、謝礼と感謝の言葉を受け取って家路へとついていた。
その前方から、自分たちと同じように大地を揺るがす足音を響かせながら、周囲の山々にも引けを取らない巨人が夕日に照らされシルエットとなって歩いてくるのが見えた。

 クラナ 「なんだ、迎えに来たのか」
 エリーゼ 「あ、マウちゃ~ん!」

エリーゼが大きく手を振ると、それに気づいたシルエットも小走りになって近づいてきた。
振動はより強力にそして早くなった。
シルエットの正体は、エリーゼの言うとおりマウである。

 マウ 「お二人の帰りが遅いので迎えに来ちゃいました」
 ダイン 「珍しく二人で散歩に出たと思ったらなかなか帰ってこないし。何やってんのかと思ったよ」
 クラナ 「ダインも来たのか。なに、ただの慈善活動さ」
 ダイン 「へ?」
 エリーゼ 「えへへ~。悪い人を捕まえてね、おまわりさんに渡してきたの」
 ダイン 「本当か。そりゃあすごい」
 エリーゼ 「褒めてくれる?」
 ダイン 「ああ、偉いぞ。よくやったな」
 エリーゼ 「わぁい!」

嬉しさのあまりぴょんぴょんと飛び跳ねるエリーゼ。
そのせいで周囲にはまた強烈な地震が発生し、近くの山では土砂崩れが発生した。

 ダイン 「さて、もう日が暮れるし、とっとと帰るか」
 クラナ 「そうだな。久しぶりに歩き回って、腹が減った」
 エリーゼ 「あたしもお腹ペコペコ~。そういえばお昼食べてないもんね~」
 ダイン 「何やってたんだよ…」
 エリーゼ 「マウちゃん、ごはん大盛にしてね」
 マウ 「ふふ、わかりました」

そして3人(と その肩に乗る1人)は城に向かって歩き出した。
少し前を行くエリーゼとその隣のマウの背中を見ながら、クラナは、今自分の持っている確かな幸せを実感していた。
最早かつての孤独はそこには無い。あるのはただ賑やかな仲間たちだけだ。
自分を戒めの鎖に繋ぐ必要は無くなった。
心の底から笑える今が、何よりも愛おしく思える。

そう考え、知らず内に笑顔になっていたクラナを、マウの肩に乗っていたダインが振り返る。

 ダイン 「どうした? クラナ」
 クラナ 「ん? いや なんでもない。ただこうしてあることが嬉しかっただけだ」
 ダイン 「散歩の迎えに来させることがか? 心配したマウの身にもなってやれよ」

まったく、と苦笑しながらダインは前へと向き直った。
そのあとも、クラナの視線はその背中を見つめていたが。

幸せの最大の源がそこにある。
その背中こそ、自分が求めていた至高のものだ。
それと一緒にいられることが、天にも昇らんばかりに幸せだった。


そうやって二人のあとを歩いていたクラナだが、突然ハッと何かに思い当たったかのような顔になると、あわてて胸の谷間に手を突っ込んだ。
指先に何かが触れる。
クラナはそれを引っ張り出した。

それはあの戦士だった。
ぺちゃんこになって気絶している。
こいつの存在をすっかり忘れていた。

 クラナ 「うぅむ……」

どうするか。
今から町に取って返すのは面倒だし、男がどこから出てきたのか知ればダインがうるさいだろう。
かといって放り出していくのは流石に気が咎める。

 クラナ 「……ま、明日 町に持っていけばいいか」

思案にケリをつけたクラナは戦士をまた谷間の奥にしまいこんだ。
今まで大丈夫だったのだから今更潰れたりはしないだろう。
戦士を押し込んだ後、クラナは胸を寄せなおした。
するとそこにダインの声がかかる。

 ダイン 「おーい、どうしたー?」
 クラナ 「ああ、今いく」

戦士が外から完全に見えなくなったのを確認したクラナは3人を追いかけて駆け出した。
赤く燃ゆる夕焼けが、大地に3つの巨大な影を伸ばしていた。



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 ~ 魔王クラナ ~


『今日もいい天気』 FIN

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