※この作品はノリと勢いでゴリ押しします。
 また登場する女性たちが理由無く巨大化することを予めご了承ください。
 今回は軽いキャラ紹介程度で。
 この作品には多数の元ネタが存在しますが、それに気づいたとしても気にしてはいけません。


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「おはよう!」
「おはようさん」

家の前で立っていた男子高校生『雛日尾 奈緒(ひなびお なお)』。
平々凡々。手に持った本を読みながらそこに立っていた。
そこに駆け込み一番元気な挨拶をかましたのは幼馴染『早常盤 燕世(さときわ えんぜ)』。
栗色のセミロング。キラキラと瞳を輝かせ眉はキュッとつりあがりその顔は自信に満ち溢れている。
その場でくるりと回ってミニスカートを翻しにぃっとはにかむ。

「褒めてもいいのよ?」
「あほか。とっとといくぞ」
「あれ? ゆーちゃんは?」
「先に行ったよ。今日は日直なんだそうだ」
「ふーん」

てくてくと学校への道を歩いてゆく。

「んふふ、さぁ今日はどんな楽しいことがあるのかしら!」
「お前が何もしなきゃ世の中は平和だよ」


  *


校門前。
校門を通過したところで奈緒の肩がバンと叩かれる。

「おす! 奈緒」
「おはようさん」
「お前はほんといつもかわらねぇな。もっとイベント無いのか? 彼女出来たとか」
「ないよ。劇的なイベントなんて」
「おはよ、かず─…」
「もっと欲望を全面に押し出して行こうぜ。お前ならきっとイイ女釣れるって」
「いいって。もう」
「和馬! おはよー…─」
「そんな事言うなよ。なな、今日の放課後暇だろ? ちょっと駅前とか釣りにいかねぇ?」
「いや放課後は…」
「和馬!! おはよう!!」
「うぉ!?」

燕世の怒声にビビる『草薙 和馬(くさなぎ かずま)』。
奈緒と燕世の幼馴染にあたる。付き合いは結構長い。趣味:ナンパ。成功率低し。

「なんだいたのかよ燕世」
「いたのかよ、とは何よ。何度おはようって言わせるのよ!」
「悪いな。俺は女は美少女しか目に入らねぇんだ」
「だったら当然 私も目に入るはずでしょ!」
「おいおい燕世、寝言ってのは寝て言うもんだぞ。それとも鏡見たこと無いのか?」
「なぁんですってぇ!!」

  ピカ

一瞬の閃光。

「お?」

気付くと和馬の大きさが100分の1ほどにまで縮んでいた。
和馬が間の抜けた声をあげている間に、彼の上から巨大な靴が踏み降ろされた。

  ブチャ

踏み降ろされた靴の主、燕世はフンと鼻を鳴らした。

「地獄まで行って出直してくるといいわ!」
「またそんな事して」

踏みしめた靴をそのまま引っ張ると、靴のあとには赤いスジが残された。

「まぁいいや。行くぞ」
「ちょっと、待ちなさいよ」

そして二人は校舎へと入っていった。


  *
  *
  *


教室。
下駄箱で靴を履き替えたあと教室へと来た二人が部屋に入ると早速声がかけられた。

「おはようございます、雛日尾くん、早常盤さん」

二人の目の前でにっこりと笑うのはクラス委員長『美空 命(みそら みこと)』。
ショートヘアーに子どもっぽい印象を覚えるが、その実、成績優秀容姿端麗と委員長として相応しいポテンシャルを秘める。
運動は苦手との事。誰にでも優しい性格のせいかファンクラブが存在する。和馬もそのひとり。
真面目で人を信じ易い性格で、よく燕世にからかわれている。普段はのほほんとしているが、やるときはやるタイプ。

「ああ、おはよう委員長」
「おはよう! 命(タマ)!」

二人も挨拶を返す。
燕世の言うタマは委員長のあだ名。

「今日は数学の宿題が出てましたよね? ちゃんとやってきました?」
「え!? そうだっけ!?」
「まぁ一応。まだ見直してないけど…」

驚愕する燕世とその横で頭を掻く奈緒。

突然、その奈緒の腕がグイと引っ張られる。
見てみると腕の先には一人の生徒がいた。
腰まで届く銀色の長髪とその白い肌に際立つ透き通るような青い瞳。他の生徒と制服が違うのは先日転校してきたばかりだからである。
無表情の顔は相手に何を考えているのか悟らせない。その奈緒の腕をとる少女『榊原 昴(さかきばら すばる)』は無言のまま奈緒を引っ張って自分の席へと着かせる。
席に着かされた奈緒。

「…なんだ? 昴」
「……宿題の答え合わせをする。……出せ…」

ポンポンと机を叩く昴。
昴は頭がいい。理系が得意で、特に計算は機械よりも速い。逆に妙なところが恐ろしいまでに欠落していたりする。
奈緒は頭を掻いた。

「いや、やってくれるのはありがたいけどこういうのは自分で…」
「…私がやった方が確実だ。……出せ…」

ポンポン。再び机を叩く。
やれやれ…。
奈緒が苦笑しながらノートを出そうとしたときだった。

「昴、私にも答え教えなさいよ」
「…お前に教える…義理は無い」
「なぁんですってぇ!? なんで奈緒は良くて私はダメなのよ!! とっとと教えなさい!!」
「…断る。……帰れ…」
「なにをぉぉおお!?」

バチバチと火花を散らす燕世と昴。
この二人、すこぶる仲が悪い。
噛み付かんばかりの勢いの燕世と静かに相手を見つめる昴。
動と静の対決だった。

席を立ち、その様子を横から見つめる奈緒。

「また始まった…」
「放っておいていいんですか?」

横から話し掛けてきたのは命だった。

「あの二人のケンカを止められる奴なんていないよ。さて宿題の見直しでも…」
「あ、あの雛日尾くん…」
「ん?」
「よ、よければ私が答え合わせしてあげますけど…迷惑ですか?」
「いや、迷惑ってわけじゃ……まいっか、じゃあ頼める?」
「はい♪」

にっこりと笑って肯いた命にノートを預ける。

そんなもこんなも、いつもの日常だった。


  *
  *
  *


朝のHRが終わって一時間目の準備に入る。

「いやぁ酷い目に遭ったぜ」
「お、和馬。おかえり」

ドカッと椅子に腰掛け鞄を投げ出す和馬。

「一時間目ってなんだっけ?」
「数学。宿題出てただろ?」
「なに!? そうだっけ!?」
「ほとんど燕世と同じ反応だな。あいつさっきまで昴から答え訊きだそうとやっきになってたぞ。結局最後は委員長に教えてもらったみたいだけど」
「うぉおお! 俺はあいつみたいに醜態を晒すことなんかできねぇ! 頼む奈緒! 男の友情に免じて教えてくれ!」
「同じじゃん、やってること。どうせなら燕世に教えてもらえば? 忘れたもの同士、気楽に教えてくれるかもよ?」
「けっ! あいつに教えを請うなんて無様な真似ができるかよ。それくらいなら俺は宿題しないで怒られるほうを選ぶね。ほら俺って戦士だから」
「いや意味わからん」

と、その時。

  ピカ

「お」

奈緒の視界から和馬が消えた。良く見ると椅子の上に100分の1に縮んだ和馬が座り込んでいた。
状況を把握しようとキョロキョロと辺りを見ている和馬の周囲が暗くなった。
見上げてみるとそこにはミニスカートのオーロラに包まれた巨大なお尻が降りてきていた。

  ストン

燕世は椅子に座った。

「なんか凄い腹立たしいこと言われてた気がするんだけど、気のせいかしら?」
「気のせいじゃない?」

机の上に頬杖をつく燕世はフンと鼻を鳴らした。
その後、何かを感じたのかキュッと座り直すとちょっと満足そうな笑みを浮かべた。

「一時間目は欠席かな」

そんな事を思う奈緒であった。


  *
  *
  *


昼休み。
お弁当を抱えてるんたるんた走る燕世。
その後ろを歩く奈緒。
ちなみにお弁当は燕世ではなく命が作ったものだったりする。

「さ、早く屋上に行きましょう」
「教室だっていいだろ。みんないるぞ」
「屋上でお弁当ってのが定番でしょ!」
「ギャルゲーか」
「今日は奈緒の好きな卵焼きを多めに入れるよう言っておいたから期待してね」
「人に作らせた弁当でなんでそこまでえらそうにできるんだ」

と、そんな二人の会話を廊下でだべっていた上級生が聞きつけて呟いた。

「奈緒? 女みたいな名前だなパグフッ!」(殴られる)
「奈緒が男の名前で悪いか!」
「待て。なんでお前が殴る」

上級生の顔に拳をめり込ませる燕世。

「奈緒の怒りは私の怒りよ! 絶対に許さないから!」
「いや別に怒ってないし」

  ピカ

一瞬の閃光。
そして男子は縮められた。
ただし、1000分の1に。
その男子を摘みあげた燕世はどこかへと歩いていって1分もしないうちに戻ってきた。

「なにやってたんだ?」
「ふふ。さっきの生徒を女子更衣室に放り込んできたの。次は上級生がプールのために着替えに来るし、その時あいつは相対的に1000倍の大きさの女子たちに踏み潰されまいと必死に逃げ回るのよ。30人は来るはずだから……くす、逃げ切れるか見物ね」
「またいらんことを」
「さ、いきましょ」

燕世は奈緒の手を引いて走り出した。


  *
  *
  *


午後の授業も滞りなく終わりあっという間に下校の時間となった。
少ない教科書をかばんに詰め込んだ和馬がやってくる。

「奈緒、一緒に帰ろうぜ」

  ピカ  むぎゅ

「奈緒、一緒に帰るわよ」
「和馬踏んだぞ」
「あらそう? 気づかなかったわ」
「縮めといて。まぁいいや。帰るか」

と、奈緒が立ち上がったとき、

「お待ちなさい!」

教室に透き通る声が響き渡った。
見れば教室の入り口に金髪縦ロールの女子がお付きを連れて立っている。
学校の生徒会長。ついでにいいとこのお嬢様だったりする。
なんやかんや燕世をライバル視してたりする。
で、ひどい目にあったりする。

その姿を認めた燕世は詰まらなそうに言う。

「なに? 私たちもう帰るところなんだけど」
「早常盤さん、あなたまたやってくれたようですわね。生徒から苦情が来てますわよ」
「えー? たかが男子一人女子更衣室に投げ込んだだけじゃない。騒ぐほどのことじゃないでしょ。それとも誰か踏んじゃった? 早く足洗えって言っといて」
「お黙りなさい! 男子生徒は次々と降り注ぐ超巨大な足の絨毯爆撃をことごとくかわし続けましたわ! ですが最後の一回が自分の真横に踏みおろされた彼はその風圧で女生徒の下着の上に飛ばされ、女生徒はその下着を穿いてしまったのです! この責任をどうお取りになるおつもりですか!?」
「いいじゃない穿いたって! 私だって奈緒が許可したら一日中下着の中に入れておきたいのよ!」
「殺す気か。絶対不許可」
「あなたの希望なんてどうでもよろしいの! さぁ謝りなさい! 謝罪なさい!」
「ふん! なによさっきから聞いてればえらそうに! 私がなにしたって言うのよ!」
「したんだろ。色々」
「だいたいあんたが私に勝てると思ってるの? 実力以上に思い上がる奴は自滅するわよ」
「あら? まるで私が劣っているかのような物言いですわね」
「今まで何度も敗北の苦渋を飲み干してきたか忘れたの?」
「あれが私の本気だと思っているのなら、あなたは私には勝てませんわ」
「そのセリフは聞き飽きたわ。具体的には97回目くらいから飽きてきた」
「ふん。さぁ、決着をつけましょう!」
「望むところよ! 私が最強だと証明してやるわ!」

二人の身体が閃光を放った瞬間。

  ドカァァァアアアアアアアアアアアアン!

学校が爆発した。
正確には内側で急激に膨れ上がった何かを内包しきれずに吹っ飛んだと言うが。
爆発の砂煙が止んだ後、そこには1000倍に巨大化した燕世と生徒会長が仁王立ちしていた。
何故か二人ともビキニに換装してる。燕世青。生徒会長赤。結構イイ身体してた。
二人はそれぞれ学校周辺の住宅街を踏みしめ、足の周囲では住民が悲鳴を上げながら逃げ出している。いつもの光景。
生徒会長は顔の周辺を漂っていた雲を払いのけドリルをふわりと揺らしながら口元に手を当て高らかに笑い出した。

「オ〜ッホッホッホ! あなたにできることを、私にできないと思いまして?」

その笑い声のせいで周辺の家々のガラスが粉々に砕け散った。
家の壁面にひびが入ったり酷いものは倒壊。アスファルトはひび割れてめくりあがり、逃げ惑う人々は衝撃波で吹っ飛ばされる。
そんな生徒会長を睨みながら燕世はにやりと笑った。

「ええそうよ、あなたにはできないわ。でも、私にはできる」

言うと燕世は踵を返してどこかに向かって歩き出した。
燕世の長さ240m幅90mの足が踏み下ろされるたびにそこにあった無数の住宅がその下に消える。
逃げる人々も一緒に。
そんなことはまるで気にしない燕世は、数歩進んだ後 怪訝な顔をしていた生徒会長を振り返った。

「これが何かわかるでしょ?」
「?」

生徒会長は燕世の指差す足元を見下ろした。
実に見覚えのある大きな家、屋敷が一軒。
それがなんであるか悟り顔が青ざめる。
燕世はふふんと笑うと片足をその屋敷の上に持ち上げた。
生徒会長が悲鳴を上げる。

「や、やめてー! そこにはパパとママとお兄様とお姉さまと執事のセバスチャンとメイドのマリーと犬のポチがー!」

  ズズゥゥン!!

足が踏み下ろされ、屋敷はくしゃっと潰れ去った。
砂煙舞う敷地の中、屋敷だった瓦礫を踏みしめる燕世の足。

「で、次はー…」

再び歩き出した燕世は住宅街の先、ちょっと都心に近い部分へと歩いていき、目当ての建物の前へと立った。
足元のそれは10階建てで周囲には広大な敷地を設けているそれは大学施設。
片足はグラウンドに踏み下ろされそこで活動していた生徒たちを踏み潰しもう片足は研究施設を踏みしめた。

「ここにあなたの憧れの先輩が通っているのよね」

燕世はグラウンドを踏んでいた足を持ち上げて後ろに振りかぶり…、

「え、ちょ! やめ…っ!」

  ドゴォォオオオオオン!

思い切り蹴り飛ばした。
大学校舎は粉々に砕かれ都心に向かって降り注いだ。
あ…ああ…。茫然自失といった感じの生徒会長はよろよろと後ずさりまた新たな住宅を踏み潰していた。

「で、最後はー…」

数歩歩いた先、交差点の角にあったファンシーな店を指でつまみあげた。
指先ほどの大きさの小さなお菓子屋さんだった。

「あなたが毎日通うお菓子屋よね」
「お、おやめなさい! そのお店が無くなったら私は生きていけませんわ!」

手を突き出し「やめて!」をアピールする生徒会長に燕世はにやりと笑ってみせ…、

「あ〜ん」

お菓子屋を丸ごと口の中に放り込んだ。

  ぱく

もぐもぐと口を動かす燕世を見て会長の顔から血の気が引いてゆく。
やがてそれをゴクンと呑みこんだ燕世。

「小さくてよくわかんなかったけど、まぁおいしかったと思うわ。でもこれでもうあなたの好きなお菓子屋はなくなっちゃったわね」
「…」

くらっと空を仰いだ生徒会長はそのまま後ろに向かって倒れこんでしまった。

  ズズゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウンン!!!

今まででもっとも広い範囲が生徒会長の身体の下で潰された。
その様を見下ろして、燕世は腰に手を当てながら笑った。

「ふふ、私に逆らうからそういう目に遭うのよ! 私こそが宇宙最強なのよ! かなう者なんて居はしないわ!」

夕日をバックに笑う燕世。
瓦礫と化した住宅街の上の巨大なシルエットを見つめるのは、学校の瓦礫から這い出し、そこの瓦礫に腰掛ける奈緒だった。
その奈緒に和馬が話しかけてくる。

「…で、どうする?」
「とりあえず、帰るか」

いつもどおりの光景だった。