いつもどおり登校したいつもの学校。
いつもどおり授業を終えいつもどおり昼食へ。
教室でクラスメイト数人が集まりわいわいと食事をしていた。

 女子 「へ〜、じゃあ早常盤さんと雛日尾くんは幼馴染なんだ」

女子の質問にふふんと胸を張りながら答えるのは常に無駄に自信満々な少女・『早常盤 燕世』。

 燕世 「そうよ。もう幼稚園に入る前からね。幼稚園も小学校も中学校もみんな同じクラスだったわよ」
 女子 「きゃ〜もしかして運命!? 離れられない関係なの〜!?」

きゃ〜きゃ〜と騒ぐ女子たち。
その横で雛日尾くんこと『雛日尾 奈緒』がポツリと呟く。

 奈緒 「近くで見てないといつ暴走するかわからないからな」
 和馬 「まったくだ。世界が平和なのはお前が身を犠牲にして守ってくれてたおかげだよ」

ポンと奈緒の肩を叩く幼馴染2・『草薙 和馬』。

 和馬 「こいつの能力のせいで昔は散々死にかけたよな」
 奈緒 「お前は今ではしっかりトドメまでさされてるけどな」
 命 「そう言えば早常盤さんっていつから大きくなったり小さくなったりできるようになったの?」

首をかしげて問うのはクラス委員長・『美空 命』。
ショートヘアーがさらりと揺れた。

 燕世 「そうね…物心つく頃にはもうできてたと思うわ。ただ昔はコントロールできなくて、よく周りに迷惑かけてたわねー…」

遠くを見るように窓の外を見た燕世の横で和馬がうんうんと頷いた。

 和馬 「確かに何度死に掛けたかわからないな。おままごとの途中で巨大化されては足の下に下敷きにされ、幼稚園の徒競走の途中で巨大化されては踏みつけられ、給食の途中で巨大化されてはご飯と一緒に食べられ、海に遊びに行って巨大化されては発生した大渦でおぼれ、泊まりで一緒に寝て巨大化されては寝返りですり潰されたもんな。あ、そうそう、巨大化した状態で小さい方の用を足したときそれに巻き込まれて流されたことも」

  ピカ  ぐちゃ

縮んだ和馬の上に燕世の上履きが踏み降ろされた。

 燕世 「食事中よ! 言葉に気をつけなさい!」
 奈緒 「お前も食事中に人をミンチにするな」
 命 「こうやって見ると、やっぱり皆さん仲が良いんですね」
 燕世 「私と奈緒だけね。和馬は違うわ」
 奈緒 「ま、腐れ縁だな」
 燕世 「んふふ、奈緒は昔っから私の事を思ってくれてたのよ。幼稚園で、この能力のせいで怪獣だの化け物だの言われて虐められてた私をいつも庇ってくれてたんだから」
 女子 「じゃあ雛日尾くんは早常盤さんのナイトなんだ!」
 燕世 「そうよ。か弱くて震える私を守ってくれたの」

再びキラキラと輝かせる女子たちと胸を張る燕世。
横から今まで一言もしゃべらなかった生徒が奈緒に話しかけてきた。

 昴 「…信じられん…。…雛日尾…、本当にこの早常盤が…そんなに弱かったのか…?」
 奈緒 「ん? ああ、本当だ。いつも他の園児に石や泥団子投げつけられて泣いてたよ。よく間に割って入った」
 昴 「…こいつにも…そんなときがあったのか…。…世の中…わからないことが多い…」

無表情の中に、驚きを露にする少女・『榊原 昴』。

 和馬 「でも確か次の日全員に報復してたよな。いじめっ子のリーダーの奴は東京タワーの天辺に置き去りにしたんだったか?」
 女子 「…」

燕世は燕世。ロマンス粉砕。

 燕世 「まぁそれはいいのよ。今は能力もコントロールできるし奈緒もいるしね」
 奈緒 「おかげでいろいろな組織に命を狙われてるけどな」
 燕世 「そんな連中はみんな私が始末してあげるわよ。こんな風に」

  ピカ

瞬間、校庭に1000倍の燕世が立っていた。
そこにいた生徒たちは慌てて逃げ出してゆく。
そしておもむろに足を振り上げた燕世は、学校の外の住宅地に上履きを履いたそれを振り下ろした。

  ズズゥゥゥンン!

周辺の家々が踏み潰される。
踏まれるのを逃れた家も振動と爆風でバラバラと吹き飛んだ。
砂煙が立ち込める。

  ピカ

教室に戻ってきた燕世。

 燕世 「また変な連中が私のこと見てたわ。気づいてないとでも思ってるのかしら」
 奈緒 「だとしても、普通は周囲の民家もろとも攻撃されるとは思わないよ」
 
いつもどおりの出来事。
いつもどおりのやりとり。
今日も世界は平和である。