※【ぼの】【バカ】



 『 変態アニキと妹とⅡ 』



「頼む! この通りだ!」

膝を着き手のひらを合わせ拝むように頼む俺。

「いやだっつってるでしょ!」

椅子に座り腕を組み吠えるように吐き捨てる妹。

ちなみに俺が椅子に座ってる妹に見下ろされているのは土下座をしているからではなく、俺の体が小さいからだ。
身長1.7cm。それが俺のスペック。
これは俺の前で椅子に座る妹が床に付けている素足の足の指の太さとほぼ同じ値だ。
俺からすれば妹の足は長さ22m幅8mとかなりのデカさ。
ちなみに大型バス・全長12m。
大型トレーラー・全長18m。
つまり俺の前にズンと下されているこの妹の足はバスやトレーラーなんかズシンと踏み潰してしまえる大きさなのだ。
もっとも妹が大きいのではなく俺が小さいのでそれらはすべて妄想だが。
だが今俺はそれら妄想願望欲望夢のひとつを遂に実現させるべく、こうして妹に頼み込んでいるのである。

「お前の足をペロペロさせてくれ!」
「だからいやだっての、この変態!」

願望の一つ。
「女の子のあんよできゃっきゃうふふ」
である。

「こんなこと頼めるのはお前しかいないんだよ!」
「こんなこと余所の女の人に頼んだらあっという間に踏み潰されるわよ! …いやだからって私なら良いってわけでもないけど!」

妹は顔を真っ赤にして叫ぶ。
怒りと、兄のあまりにも馬鹿げた要求の恥ずかしさのあまり。

「頼むよ! 長年の夢なんだよ!」
「そ、そんな下らないこと夢にしてたの!? もっと他にあるでしょ、色々! それにそういうのは、その、付き合ってる…人とやるとか…!」
「彼女いない歴=年齢!」
「そりゃそうよね…」

生まれてこのかた100分の1サイズ。
学校に行けば俺に気付かない女子に踏み潰されかけ、道を歩けばOLさんに踏み潰されかけ、公園に行けば小学生に踏み潰されかけ、家では母や姉に踏み潰されかけてきた俺に彼女なんかいるわけがない!
妹以外に俺に気付ける人間はいない。
というか家の外に俺の存在を知っている人間はいない。

「だから頼む!」

俺は額を床にたたきつける勢いで頭を下げた。

「う…ぐ…」

妹は歯を食いしばっている。
そしてしばし目を泳がせ…。

 ズイ

兄の方に足を差し出した。

「ちょ、ちょっとだけだからね!」
「おお! ありがとう!」

兄は跳ね起きると走り出し、目の前に居並ぶ巨大な足の指に抱きついた。

「ん…っ!」

足の指に小さな感触を感じ、それが兄が触れた感触だと再確認する妹。
兄はと言えば妹の左足の中指のさきっぽに抱きつき直径1.2mにもなるその指先にペタペタ触れていた。

「うぉーでっけー! 結構柔らかいな。あと思ってたより臭くない」
「に、匂いなんか嗅がないでよ!」

慌てて妹が足を引込めると足の指に組みついていた兄はその指が突然なくなったので前にばたっと倒れる。

「あ、ごめん…」
「いやいや大丈夫だ。それよりも続き! 続きを!!」

起き上った兄がパタパタと動く。
妹は再び顔を赤く染めながらゆっくりと兄の前に足を下した。
兄が、自分の足の指に触れて来るのを指先に感じた。小さな動きだ。丁度中指に抱きつくような格好になっているが、それは兄の体全体を使った動きを、妹が足の中指の指先だけで感じているとも言える。
恥ずかしさとくすぐったさのあまり指をもじもじと動かしたくなるが、それは指先の兄を大きく跳ね飛ばすような行為である事を妹は理解している。
だからそれらに身震いしたくなるのを、妹は必死で我慢していた。

「じゃあペロペロ行きます!」
「う……いい…けど…ちょっとだけだからね! 私まだ学校から帰ってきてお風呂入ってないし…」
「いいっていいって! 全然汚くないし」

言うと兄は妹の足の指の指先をぺろっと舐めた。
その感触がまた小さく微細で新鮮で、妹は妙な気分になった。
自分の兄が、指先サイズの兄が、私の足の指の指先を舐めている。
それを私は、椅子に座って上から見下ろしている。
私はこの楽な体勢から兄に足を舐めさせているのだ。
何だろう…変な気分になってくる…。
知っちゃいけないような…目覚めちゃいけないような何かが…私の中にこみ上げてくる気がする…。
どうしよう…止めなきゃ…。
でも…だんだん気持ちよく………。

  コンコン

「おーい、入るよー」
「ッ!?」

突然、ドアがノックされ、ドアノブが捻らたガチャッという音がした。
瞬間、妹は兄が舐めていた足を持ち上げ、つま先の前にいた兄の上にズシンと踏み下ろした。
兄の姿は妹の足の下に隠れてしまい完全に見えなくなった。

直後ドアが開いて姉が入ってきた。

「ん? どした? 顔が赤いよ」
「な、なんでもない!」

きょとんとした顔で首を捻る姉に、妹は声を裏返しながら答えていた。

「んーまぁなんでもないならいいんだけど。ウチの小人くん知らない? 久しぶりに体洗わせてやろーかと思ったんだけど」
「し、知らない! 部屋じゃないの!?」

妹は自分の足の土踏まずの下でジタバタと動く兄の感触を足の裏に感じながら言う妹。
気を付けはしたけど、突然の事だったからうまく加減できなかった。
ちょっと心配だった。

「部屋ん中にはいなかったよ。よく見えなかったけど。またどっかで踏み潰しちゃったかね」

ポリポリと頭を掻きながら言った姉の言葉に、妹はドキッとして震え上がった。
まさか兄のこの動きは潰れてしまったことの痛みを訴えるものではないかと。

「まぁ知らないならいいや。勉強中? 邪魔して悪かったね」

言うと姉は妹の部屋を出て行った。
とりあえず、兄との行為がばれなかったことに安堵した妹はすぐに兄の上に乗せていた足を持ち上げた。

「アニキ! 大丈夫!?」

足をどけるとそこには小さな兄が大の字になって倒れているのが見えた。

「あービックリした。潰されるかと思った」
「ご、ごめん…突然姉貴が来たから…」
「ああ。また俺に体を洗わせるとか。うそつけ、そうやって俺をおもちゃにして遊ぶつもりなんだぜ」

あーやだやだといった感じに肩をすくめる兄を見下ろす妹は、兄が無事だったことに安堵し、同時に、先ほどまでとは違う妙な感じになっていた。

「まーいいや。さ、続き続き! 俺の長年の夢の続きを!」
「……やっぱりダメ。もう終わりにしよ」
「えぇ!? なんで!?」

小さな兄が驚愕の表情を浮かべるのが見えていた。

「ん…なんか……なんかヤだ…」

妹は兄の視線から逃げるように顔を背けた。
先ほどこみ上げてきた感情は、兄を兄では無くしてしまう気がして、それに背徳感を覚えるのだ。

「そんなに嫌だったのか。仕方ない、やっぱ別の人に頼むよ。ネットとかで応募すれば結構集まるかも…」
「あ、それもダメ!」

妹が兄に顔を戻して少し大きな声で言ったので、兄は首をかしげた。
妹はまた目を逸らし、顔を赤らめながら言う。

「あ、足を舐めるの以外だったらなんでもやってあげるから…他の女の人には頼まないで」
「へ? なんでも? いいのか!?」
「……うん」

先ほどとは別の意味で驚愕する兄に、妹は目を逸らしたまま小さくコクンと頷いた。

「ありがとう我が妹よ!」

兄は駆け出し、妹の足の指先に抱きつくとそこに頬ずりをした。
兄がつま先に頬ずりする感触を、妹は顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに受け止めていた。



※ストーリー性皆無!