『 姫 』



★『21:乳腺潜り』  1万倍 
★『22:vs.敵国大連合』  1億倍
★『23:拷問2』  100倍
★『24:ニプレスにされた国のその後』  1000万倍
★『25:お仕置き』  10億倍
★『おまけ』  1倍



    *

    *

    *



 『21:乳腺潜り』 1万倍


 近衛 「は? メイドが戻ってこない?」

兵士の集会から戻った近衛は、苦笑する姫から聞いた言葉に唖然とした。

上半身裸でベッドに横たわった姫の乳首の上で、数十人のメイドたちが姫の乳首を洗っていたそうだ。
で、そのときうっかり乳首をピクリと動かしてしまい、その衝撃で、乳頭の上に登っていた数人のメイドが転倒し、乳管口の中に落ちてしまったとのこと。

 姫 「ね、お願い。連れ戻してきて」
 近衛 「はぁ…わかりました」
 姫 「えへへ、ありがと近衛君」

言ってベッドに横になった姫は乳頭の上に近衛をおろした。
姫は乳頭だけでも高さ100mほどもある。直径も同様。その中央には全長50mはあろう巨大なクレバスがあった。
底の方は真っ暗で何も見えない。これに転落してしまったのだとしたらとても恐ろしい思いをしていることだろう。

残りメイドたちが心配そうに見守る中、ゴクリと唾をのんだ近衛は、意を決して穴に飛び込んだ。

  *

赤い内壁が濡れてテラテラと輝く乳腺の洞窟。
姫が何かしらの魔法を使ってくれたのだろう。近衛の周囲だけはそこそこ明るかった。だが遠方は暗いままで視界は悪い。
洞窟は縦横に伸び、天井までの高さは10mはあろうか。大洞窟であった。

さてまずはどこへ向かおうかと周囲を見渡していた時、

 姫 『あー、あー、近衛君、聞こえる?』

姫の声が洞窟内反響しそこら中から聞こえてきた。
姫が喋ったのだ。姫の体の中にいるのだから、姫の声がそこら中から聞こえるのも無理ないこと。

 近衛 「はい、聞こえますよ。もう少しボリュームを絞ってください」
 姫 『おっと、ごめんね』
 近衛 「どうかしました?」
 姫 『うん、わたしからは今おっぱいの中に入った近衛君の位置は追いかけられるけど、メイドたちの場所はわからないの。だからメイドを見つけたらわたしに声をかけて。テレポートで脱出させるから』
 近衛 「わかりました」

姫の体内で独りの近衛だが、姫からのサポートはあるようだ。
多少気持ちが楽になる近衛。

  *

近衛は広大な洞窟の中を慎重に進んでいく。
空洞は広いだけでなく無数に枝分かれしているので探索は困難を極めた。
さらに内部は気温と湿度がかなり高く体力の消耗を強いられる。
そして姫の母乳の甘い香りが洞窟内に充満していて呼吸のたびに脳が揺れる。
長時間の探索は危険だった。

そして極めつけは、時折洞窟の穴からミルクが噴き出していることだ。
まるでダムの放水のようにドバドバと大量のミルクが噴き出し、洞窟の中を下方へと下っている。あの激流に巻き込まれたら浮かんでくることはできないだろう。メイドたちがあれに巻き込まれていないことを祈るのみである。
他にもミルクが地底湖のようにたまっている場所が合ったり、一定の周期で洞窟内を流れ落ちていく場所が合ったりと、姫の乳房の内部は天然の洞窟顔負けの危険度だった。

それらミルクの間欠泉の周辺は乳腺ということもあり、内壁がビグビグと脈動し満足に立っていることもできない。
跳ね飛ばされないよう這い蹲りながら前へと進んでいく。

  *

そうやって何個か目の母乳の地底湖にたどり着いたとき、その湖畔に座り込む人影が見えた。

 近衛 「…メイドか?」
 メイド 「え……? あ、近衛さん!」

近衛に気づいたメイドは慌てて立ち上がり近衛に縋りついてきた。

 近衛 「無事だったか」
 メイド 「うぅ…わたしもう一生出られないかと思いました…」

泣きじゃくるメイド。
最期を覚悟するほどに、姫の乳房内は広大で危険なのだ。

 近衛 「他に何人落ちたかわかるか?」
 メイド 「あと…4人いたと思います」
 近衛 「わかった。俺は残りのメイドを探してくるからキミは先に帰れ。姫様、できますか?」
 姫 『うん。いくよー』

シュパ! メイドの姿が消え去った。
残り4人。近衛は探索を続行する。

  *

洞窟内は相変わらず危険だ。
目の前を通りかかった穴から突然母乳が噴き出し押し流されるということがもう何回もあったし、渡っていた母乳の地底湖が突如 栓が抜けたように渦を巻いて吸い込まれるのに巻き込まれたこともあった。
内壁がグモッと動いて行く先がふさがれてしまったり、逆に足元に穴が開いて落ちてしまったりもした。

姫の乳房の中は、まさしく生きている洞窟だった。

しかし収穫もあった。
地底湖の栓が抜けて流された先にはメイドが一人いたし、穴が開いて落ちた先には二人いた。

つまり残りは一人だ。
しかし広大すぎる洞窟内はどこも同じような景色だし、中には 来た道に戻るような道もあるし、メイドを見つける前に自分が力尽きそうな近衛だった。

 近衛 「はぁ…はぁ…」

息を切らしながら前に進む。

無限に続く広大な乳腺の洞窟は、たった一人を探し出すには広すぎる。
4人見つけられただけでも行幸だった。
しかしなんの手掛かりも無く洞窟の中を彷徨うのは、体力以上に精神的にキツイ。
洞窟内は姫の体の出す音が常に轟いており叫んだところで遠くまでは届かない。反応は望めないだろう。

周囲の気温がどんどん上がり、匂いもより濃密なものになっていく。
乳房の、より深いところに潜っていっているということだろう。ここがどのくらいの深さなのかはわからないが。

姫の乳房は胸板からだけでも2000m以上の標高がある。
天然の山と比べてもなんら遜色はない。
その火口から飛び込んですでに何時間たったことか。湯だった脳では時間の感覚すらつかめない。

 姫 『大丈夫? 近衛君…』
 近衛 「な、なんとか…」

心配そうな姫の声が頭の中で聞こえる。
その声の主の体こそがこの凶悪な空間だと考えると、なんとも妙なものだ。

  *

そうやって洞窟を進むと、やがてまた母乳の地底湖が現れた。
そしてその湖の中央の島に人が倒れているのを見つける。
確かに、メイドだった。

 近衛 「見つけた…!」
 姫 『ほんと!?』

近衛は母乳の湖に飛び込むとそれを泳いで渡り中央の島へとあがる。
駆け寄ってみた倒れているメイドは気を失っているらしかった。
無理もない話。
近衛の周囲は姫の魔法で照らされて明るいが、それ以外の場所は真っ暗なのだ。
しかも足場は常に脈動してうねり、周囲からはいつ母乳が噴き出して吹き飛ばされてもおかしくない空間。
熱帯雨林よりも蒸し暑い気温と湿度。そして濃密な母乳の香り。肉体も精神も脳も果てしなく疲労してしまったのだろう。

メイドを抱きかかえて立ち上がる近衛。

 近衛 「それでは姫様、私たちを脱出させてください」
 姫 『うん。ちょっと待ってt…』

  ドバアアアアアアアア!!!

姫が言い終わる前に、近衛が立っていた島の真上の空洞から母乳が降り注いできた。

 近衛 「!?」

まるで滝のような威力。いや、押し出されて噴き出している分、威力はそれ以上。
母乳の放水の直撃を受け、二人は湖の中に押し流された。
だけでなく、その放水が注がれていることと、湖の栓が抜けたであろうことで、湖の母乳が激しく渦を巻き始めた。

  ズドドドドドドドドド!!

激流の中、まるで木の葉のように翻弄される二人。
抱えたメイドの体は離さなかった近衛だが、まったく警戒していなかったために準備ができなかった。
酸素が、足りなかった。

脳内に姫の声が聞こえる。

 姫 『こ、近衛君! 大丈夫!?』
 近衛 (ぐ…! は、はやくメイドを…!)」
 姫 『う、うん! わかった!』

激流の中をグルグルと振り回される近衛。
その手の中で、抱えていたメイドの感触がフッと消え去った。
テレポートが成功したのだと悟った。

が、直後、

  ズゴォッ!!

湖の底、栓の抜けた穴への引きずり込まれた。

 姫 『え…、近衛君……どこ……い……』

脳内に聞こえていた姫の声が聞こえなくなった。
激流で一気に押し流されてしまったために、姫の感知から外れてしまったのだ。
こうなってはもう会話も、周囲を照らされることも、そして脱出も不可能である。

 近衛 「ゴボ……ッ!」

足りない酸素。激流による身の軋み。意識が急速に遠のいていく。

死ぬ。
姫の乳房の中で母乳で溺れて死ぬ。
それは流石の近衛も予想していなかった最期だった。


激流は広い乳腺の洞窟を奥へ奥へとまっしぐらに凄まじい勢いで流れていく。

が直後、その激流が逆に向きを変えたのを感じた。
これまで流れてきた道を戻っていく。それも、来るときの激流よりも更に激しい勢いで。

凄まじい速度で流れていく母乳とその中で翻弄される近衛。
そして、

  ドパアアアアアア!!

一気に放出された。
激流から放り出された近衛は、周囲に光が満ちていることに気づいた。

流れの緩くなった母乳の中に浮かぶ近衛は飲んでいた大量の母乳を吐き出した。

 近衛 「ゲホッゲホッ…! いったい何が…」

と朦朧とした意識でつぶやいたところで、周囲が陰る。

 姫 「大丈夫!? 近衛君!」

頭上から姫の巨大な顔が覗き込んできていた。

 姫 「よかった…」
 近衛 「姫様……自分はいったい…」
 姫 「ん、近衛君が感知できなくなって、ミルクに流されたんだってわかったから、乳房を絞ってミルクごと近衛君を放出したの」

見れば確かに、自分の浮かぶ母乳の海が、未だミルクを放出し続けている姫の乳房と繋がっていた。

 近衛 「ふぅ…危ないところでしたな…」
 姫 「ごめんね近衛君…」

しょんぼりする巨大な姫の顔。

ふと、母乳に浮かぶ近衛に、テーブルの端に控えていたメイドたちが泳いで近づいてきた。
メイドたちは近衛の体を引っ張って岸まで運ぶと、彼を介抱した。そのメイドたちの中には、先ほど近衛が助けたメイドの顔もあった。

 姫 「近衛君には随分と苦労させちゃったね。みんなで解放するからね」
 近衛 「え?」

姫の言葉にメイドたちがうんうんと頷く。

その後、姫は近衛とメイドたちを連れて風呂場へと向かった。
姫の手のひらにたまった湯の中、数十人のメイドに世話される近衛だった。



  *
  *  ******************************************************
  *



 『22:vs.敵国大連合』 1億倍


姫の国に対して不満を持つ国々が同盟を組んで宣戦を布告した。
が、

 姫 「ふーん。別にいいんだけど…」

姫は腰に手を当て、それらの国を見下ろした。

姫は1億倍だった。
身長16万km。サンダルに乗せられた足の長さは2万4千km。幅9千km。
巨大すぎる姫は、最早 大陸すら踏み潰せる大きさだった。無限平面世界。

海に立つ姫。その敵国たちは姫の立っている海を取り囲むように大陸の上にあるのだが。

 姫 「勝てると思ってるの?」

誰も思っていなかった。
宣戦布告を後悔する国ばかりだった。

しかしもうあとには引けず、姫に攻撃する国たち。
だがその攻撃のほとんどが、1千kmあるサンダルの厚みを超えることもできず、その上に鎮座する直径1500kmの足指たちに届いたものはほんの一握りだった。

 姫 「まぁみなさんがその気なら、こっちも相手してあげるけどね」

しゃがみこんだ姫は足元の国に手を伸ばした。
その国の大陸は直径5千kmほどの大きさだったが、上空から降臨してきた手は、大陸よりもはるかに巨大だった。
指の太さだけで1500km。長さは7000kmほど。
指を開いた手のひらは、大陸全土の空を覆うことができた。

指を大陸の周囲の海に突き刺した姫は、その大陸をほとんどプレートごと摘まみ上げた。
そのまま顔の前まで持ってくる

指先にチョイと摘まんだ大陸はあまりにもちっぽけだった。
超感覚で視てみれば、その大陸の国の人口は20億人くらいいるみたい。皆が姫を見上げ泣き叫んでいる。

その大陸を手のひらに乗せ、ギュッと握って開いてみると、もうそこには粉々の土しか残っていなかった。
パンパンと手をはたく。これでまずひとつ、敵国が片付いた。

  *

次の国の上には、手のひらをバンと叩きつけた。
手をどけてみればそこには巨大な手形がくっきりと残った。
その国は丸ごと押し潰し、周辺の敵国も、衝撃波で消し飛んだ。
40億人は犠牲となっただろう。

  *

立ち上がった姫は周辺を歩き回り始めた。
一歩ごとに二つ以上の国が踏み潰され、そのたびに20億人あまりの敵国民が巻き込まれた。

  *

姫は耳の穴が上に来るように頭を傾け、その耳の穴の上で摘まんでいた大陸を傾けた。
大陸丸ごと傾いた国からは10億以上の国民が零れ落ち、大陸の真下に開く、巨大な耳の穴に注ぎ込まれていった。
直径数百kmの穴。それは国民を一人残らず呑み込んでもまるで余裕だった。

 姫 「直接耳に入れてあげれば声も聞こえるかと思ったけど、全然かー」

トン トンと頭を叩いて、耳の途中で引っかかっているかもしれない国民たちも全員穴の奥に落とした。
今頃みんな鼓膜の上に乗っているのだろうか。

 姫 「ま、別にいいんだけど」

姫は次のターゲットへと向かっていった・

  *

そうやって持ち上げられた国は、今度は姫の鼻元へと持っていかれた。
そして、

 姫 「すぅぅぅ」

姫は鼻で息を吸い込んだ。

  ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

凄まじい爆風は一瞬で五億人からなる全国民を吸い込んだ。車や家、町や山なども大地から引っぺがされて丸ごと吸い込まれていった。
国の上にあったあらゆるものが、姫の鼻の穴の中に消えていった。

 姫 「ん。なんの臭いも無し」

ふぅ。姫は吸い込んだ鼻息を吐き出した。

  ブゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

先ほどはあらゆるものを吸い尽くした鼻息が、今度はあらゆるものを消し飛ばす破壊力で噴き出してきた。
先の吸い込みでまっさらになっていた国は、今度はその鼻息を受けて粉々にされてしまった。
姫の指の間でグシャッと粉砕され落下していく大陸。

  *

次の国は大陸ごと口の中にポイと放り込まれた。
大陸は巨大な歯によってグッシャグッシャと咀嚼され、海のような唾液と共に飲み干された。

 姫 「あんまりおいしくないね」

2億の人口を擁した国を食した姫の感想だった。
かれらは栄養にすらなれないだろう。

  *

姫は上を向いた顔の上で国をひっくり返した。
7億人が悲鳴を上げながら、真下にある姫の目に向かって落下していく。
彼らは眼球を覆う粘膜の上に落下した。その粘膜の下には、直径1000kmにもなる恐ろしく巨大な青い瞳があった。
そして姫の超視力は、眼球の上に漂う、姫から見て1億分の1サイズの彼らの表情すら見分けることができる。

 姫 「泣いたってダメだから」

パチ 姫は瞬きをした。それだけで、眼球の上にいた7億人は消滅していた。

  *

姫が何かをするたびに国がいくつか消え、数千万、数億、数十億の単位で人が消失した。
姫の足の面積はユーラシア大陸の4倍にもなる。小さな国の密集する地帯に踏み下ろせば、100を超える国をまとめて踏み潰すことができるだろう。
姫からすれば日本ですら長さ3cm。足の指の長さにも満たない。親指を乗せれば大半を押し潰すことができるし、そのままグリグリと動かせばそれだけで消滅させられる。

 姫 「ふぅ~」

しゃがみこんだ姫が足元に息を吹き付けると、まるで砂でも散らすように国が散らされていく。

ズン! 大陸の横に突き刺した手を持ち上げれば、大陸をプレートごと持ち上げてペリッと裏返すこともできる。

指を突き立てれば、それだけで国ひとつを押し潰すことも可能だ。

 姫 「ホント、大人しくしてればいいのに」

指先に付いた国の成れの果てを、フッと吹き飛ばしながら言う姫。

そのとき、

 姫 「あ」

それを感じた。

 姫 「んー…少し恥ずかしいけど、仕方ないよね」

姫は割り切った。

  ブゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

瞬間、ドレスとパンツに包まれた尻から、とてつもない威力のおならが放たれた。
それは直下にあった大陸と海を消し飛ばすだけでなく、そこに直径5万kmほどの大穴を作り出した。

おならは地表にぶつかり周囲に拡散する。その勢いは大陸を消滅させるほどのものであり、おならが広がる=範囲内のものが消し飛ぶということである。
姫のおならは秒速30万kmの速さで放たれ拡散した。ぶつかってくるおならは最早 凄まじい質量の壁みたいなもの。それがぶつかってくれば、消滅もやむを得ない。

やわらかな地表は姫のおならを受けて5万kmのクレーターを穿たれたが、地表にぶつかったあと、おならは音速の800倍以上の速さで広がったということだ。
そんなおならは、クレーターから更に幅10万km以上も広がった。つまりは姫を中心とした半径20万km超の範囲の地表から、すべてのものが消し飛んだという事だ。

それだけで数百億の人間が犠牲になった。しかし彼らはそのおならがあまりに破滅的な威力であったために即死できたことは幸運だっただろう。
消滅した範囲外。姫からの半径20万km範囲外にいた人々は、姫のおならで壊滅的な被害ではあったものの、生き残れる人もいた。
しかしそんな人々は、勢いが衰えたとはいえ、姫のおならの中に取り残されていた。
凶悪な悪臭が、大気を埋め尽くしていた。吸い込んだだけで絶命するほどの恐ろしいガスが、空気に変わって世界を支配していた。
わずかながら生き残っていた人々は、みなガスに塗れたその世界の中であまりの苦痛に苦悶の表情を浮かべながら息絶えていく。
あらゆる生物が、姫の周囲から絶滅していく。

生物が絶滅すれば次は無生物だった。
あらゆる植物が枯れ果て、大地はどす黒く変色し、水は腐り果てた。
死の世界に変わったのだ。
姫の巨大な体の毒素を集め排泄されたガスは、世界を破滅させてしまうほどに危険なものだった。

姫を中心とした半径20万km超の範囲はおならの爆風で消滅し、その範囲外は悪臭で壊滅した。
結果として数千億人が死滅したことだろう。しかも放たれたおならは速度を緩めながらも広がり続けているので、その数はまだまだ増え続けている。

そんな死の世界の中心にしゃがみ込む姫は、

 姫 「ふぅ、すっきりした」

よいしょ、と立ち上がると壊滅した周辺の世界を見下ろした。

 姫 「これで敵の連合国は全滅かな。帰ろ」

全長2万4千kmの足を乗せたサンダルを海や大陸の上に踏み降ろしながら、姫は城へと帰っていった。



  *
  *  ******************************************************
  *



 『23:拷問2』 100倍


 近衛 「…ということのようです」
 姫 「ふーん」

椅子に座りながら姫は自分の足元を見下ろした。
サンダルの先に覗く自分の足の指には、敵国のスパイが挟まっていた。

 姫 「前にもやったよね?」
 近衛 「はい。それが効果的だったのでバリエーションを増やしたいそうです」
 姫 「ふふ、そうなんだ。でも今日は公務もあるよね? 確か」
 近衛 「ええ。なので仕事をしながら、ということになってしまいますが」
 姫 「そっか。まぁでも大丈夫だよ」


  *


公務に勤しむ姫。
その姫の足の指の間に挟まれるスパイたち。
一つの指の股に3人。片足で12人。両足で24人。24人が姫と行動をともにしていた。
しかもただ挟まれているわけではなく、魔法でその場に固定されているので、落としたりしてしまう心配も無い。
前回同様コーティングもされているので傷ついたり死んでしまう心配も無い。ただし、やはり苦痛は無限大。

会議室に移動して会議に出席する。
部屋は姫サイズでテーブルも姫サイズだが、会議する人たちは姫サイズではないので、彼らはそのテーブルの上に集まる。
数百人の偉い人が集まり難しい話をする様を、席について見下ろす姫は退屈そうに欠伸をした。
姫は会議が苦手だった。

そんな退屈を紛らわすように無意識の内に動かされる足の指の間で、スパイたちは苦痛に苛まれていた。
全長4mもある指たちが互いにこすり合うのだ。まるで4mの怪物たちがじゃれ合うように。
しかしそれは間に挟まれる彼らの体を締め上げるに等しい。指の間が閉じると、彼らの体は大木に挟まれたかのような圧力を感じた。
体がメリメリと音をたてる。中のものが絞り出されそうなほどの圧力が、姫の退屈さのさじ加減に比例して無限に続く。

彼らがなんとか絞り出した苦悶の声は、100mほども離れる姫の耳には届かなかった。
どころか、巨大な指の締め付けはより強まるばかりだ。

スパイたちは力を合わせ、締め上げてくる指を押し返そうとした。
手足を踏ん張らせ、肌色の巨塔を押し返そうとした。
だがそれは、姫の足の指の股をくすぐる、という結果にしかならなかった。

 姫 「ん…っ」

くすぐったさに、足の指を握る姫。
スパイ全員が一気に締め上げられた。

机の下を覗き込んだ姫は小声で言う。

 姫 「もう…! おとなしくしてて…!」

力いっぱい足の指を握った。
ぎゅ~とたっぷり数秒間。
それで彼らの動きは完璧に封殺できた。指を開いてみても、まったく動かなかった。
しかし魔法のおかげで死んでしまうことはないので、今の彼らはただぐったりしているのだろうということはわかった。

と、姫がそうやって机の下を覗き込んでいると、

 家臣 「如何なさいましたかな? 姫」
 姫 「え? ううん、なんでもないよ」

慌てて会議場へと向き直る姫だった。
会議中によそ見をしていたことを咎められ、シュンとする姫。

その後 会議が終わるまでの間、姫は余所見をする原因を作った足の指の間の彼らをなぶり続けた。


  *


退屈な会議も終わって部屋へと戻る姫。
その途中の移動は、やはり囚われのスパイたちには苦痛である。

彼らを幽閉する足がズズンと床を踏みしめるたびに生じる衝撃を、彼らは最も間近なところで受け止めている。
首がガックンガックン暴れるほどの衝撃。
そして地に着いた足が体を前へと押し出す際には指も踏ん張り、そのせいでサンダルに押し付けられ横に広がる指は間に彼らをギュムッと圧迫する。

それが一歩ごと左右の足で交互に発生する。
姫が足を踏み降ろすたびに彼らはカエルが潰れたようなうめき声を出し、一方、その間に前へと移動していくもう片方の足では、振り回される彼らの声がドップラー効果で間延びしながら移動していく。


  *


姫が部屋に戻ってみると小包(建物サイズ)が届いていた。

 姫 「どうしたの? コレ」
 近衛 「隣姫様からのお届け物のようです」
 姫 「隣から?」

梱包をビリビリ破って開けてみると、箱の中から一足のブーツが出てきた。
同封されていたカードによると、隣姫が自分のブーツを作ったので、ついでに姫の分も。ということらしい。

 姫 「んー…わたしはサンダルの方が好きなんだけどなぁ」
 近衛 「きっと隣姫様も姫様がサンダルばかり履いているとわかって送ってきたのでしょう。たまには違う靴を履いてみるのもよいのではありませんか?」
 姫 「そうかな。ふふ、まぁせっかく送ってくれたんだしね」

言うと姫はいそいそとサンダルを脱いでいった。
そしてブーツを手に取ると、足を差し込んでいく。

イコールそれは、つま先に捕らえているスパイたちも一緒にブーツの中につっこむということ。
ブーツの口に掲げられた足の先に囚われたスパイたちは、目線の先に巨大なブーツが口を開けているのを見た。
しかし彼らが悲鳴を上げ体を動かし抵抗の意思表示をする前に、足はブーツに突っ込まれていた。
彼らは一瞬で暗黒の世界に閉じ込められた。真新しい革のニオイが充満した世界だ。

両足にブーツを履くと、もうそこにスパイたちが囚われていたことなどまったくわからない。

 姫 「へへ、似合う?」
 近衛 「よくお似合いです」
 姫 「んふふ、ありがと。ちょっと歩いてきていい?」
 近衛 「はい。後のことはお任せください」

姫は城を飛び出した。


  *


 姫 「ふんふ~ん♪」

鼻歌を歌いながら平野をゆく姫。
ブーツに包まれた足が軽やかなステップを踏むたびに周囲がズズンと揺れる。

おニューのブーツは丁度よいサイズで、靴ずれなどが起きる心配もなさそうだ。
隣姫がその辺をしっかりと整えたのだろう。

 姫 「靴の圧迫感てあまり好きじゃないんだけど、たまにはいいかもね」

自分の足元を見下ろし、ブーツに包まれた自分の足を確認する。

と、姫が新しいブーツを堪能しながら歩いていたときだった。

 町民 「姫様、お助けください」
 姫 「ん?」

通りかかった町から声をかけられた。
その町の横にしゃがみ込む姫。

 姫 「どうしたの?」
 町民 「最近、隣町へと続く道の途中で野盗が出るのです。そのせいで隣町と行き来ができなくなり困っていまして…」
 姫 「なんだ、そんなことか。うん、すぐに退治してくるよ」
 町民 「ありがとうございます」

立ち上がった姫は隣町に向かう街道沿いに歩き始めた。


 *


ズシンズシンと歩いていく姫。
その途中、森に差し掛かる。
そして姫の超感覚は、その中に身を潜めるいくつもの人影を捉えていた。

 姫 「ふふ、それで隠れてるつもりかな?」

パチンと指を鳴らす。
すると姫の足元に十数人の人影が出現した。
野盗である。
森に身を潜めていたはずが、気づいたら平野にいるという状況にキョロキョロと慌てふためいている。
そして、横にそびえ立つ姫の姿を見つけた。

 姫 「残念でした。君たち全員捕まえるからね」

腰に手を当て、にっこりと笑いながら言った。

すると野盗たちはみなバラバラに走り出した。
逃げ出したのだ。
一人でも多く逃げられれば、自分だけでも逃げられれば。
蜘蛛の子を散らすようにバラけていく。

 姫 「そんなことしても無駄なのに」

おもむろに、一歩踏み出した。
ズシン! 大地が揺れた。
それだけで、逃げ出した全員が足を取られその場にすっころんだ。

姫は、そんな野盗たちの一番近いところにいる者の上に足を掲げた。
転んで、腰を抜かして動けなくなっているその野盗は、真上に掲げられた巨大なブーツの底を見た。
広大な靴底はやや土に汚れていたが全体的にキレイな感じだった。真新しさが感じられた。キズらしいキズはどこにもない。

 姫 「えい」

ズシン!!
ブーツは踏み降ろされた。
野盗の姿は、ブーツに遮られ見えなくなった。

その光景を見ていた残りの野盗たちの表情が凍りつく。
地響きをも引き起こすその一歩は、石造りの家でさえ容易く踏み潰せる破壊力があるのは明らかだった。
それが人間なら、骨の欠片すら残らないのでは…。
なら今は踏み潰されたアイツは…。

野盗たちは、ブーツを見つめたまま動けなかった。

姫は、十数の視線を集めるそのブーツを履いた足を持ち上げた。
地面には巨大な靴跡が地面にくっきりと残されており、その中に、あの野盗が転がっていた。
他の野盗たちの目が点になる。

そんな野盗たちの様を見て、姫はクスクスと笑った。

 姫 「ふふ、驚いた? 潰れちゃったかと思ったでしょ」

巨大な靴跡は、2つに別れていた。
つま先部分が踏みしめた跡と、ヒールが踏みしめた跡。
野盗は、その間に転がっていたのだ。
ヒールがやや高いブーツだったからこその事。
これが底の平たいスニーカーなどなら微塵の奇跡も起きること無く踏み潰されていただろう。
そしてそれは、姫がその気になればこのブーツでも今からでも可能なのだ。

圧倒的な姫を前に、野盗たちは屈服した。

 姫 「そうそう、それでいいんだよ」

姫が指をクイと動かすと野盗たち全員の体がふわりと浮かび上がった。
そのまま姫の顔の高さくらいにまで連れて行かれる。

 姫 「でも町の人達に迷惑かけたんだから、お仕置き」

姫がそう言うと、姫がピンと立てた人差し指の上で、彼らは円を描いて飛び始めた。
十数人いる野盗たちの一人ひとりを見分けることも出来ないほどの速さ。
直径30mほどの円を描いて、時速数百kmの速さで飛行している。
全員の悲鳴が折り重なって一つの悲鳴になっていた。

その状態の野盗を連れたまま町へと戻った姫は彼らを町の警備に引き渡した。
そのときには、野盗は全員失神していた。


  *


次に通りかかった町でも声をかけられた姫。
内容はやっぱり野盗の退治。

ただし今度の野盗は馬を利用していた。


彼らの根城があると思わしき荒野へと向かうと、十頭ほどの馬が走り去っていくのが見えた。
その背には1人から2人の人影が乗っている。

つまりは姫の接近に気づいて逃亡したのだ。

走り去っていく野盗たちを、苦笑しながら見送る姫。

 姫 「ふふ、まったく。逃げるなら最初から野盗になんかならなきゃいいのに」

そうこうしているうちに野盗の乗る馬たちは随分と遠くまで行ってしまった。

しかし姫は焦ってはいなかった。
馬の足の速さは時速40km強。これは、自動車などの機械技術が発達していない姫の国ではかなり早い方に入る。
が、姫の歩く速さは時速400km。馬の10倍の速さ。
つまり姫はただ歩くだけで全速力で走っている馬であってもやすやすと追い越すことができるのである。
故にどれだけ離されても追いつける自信はあった。

それに加えて、

 姫 「ちょっと試してみたかったんだ」

姫はブーツのつま先をトントンと地面に打ち付けた。

今 履いているブーツは普段履いているサンダルに比べて走りやすい。
だからその辺も確かめておきたかった。

もともと距離が離れていたために、すでに野盗たちは1km以上も離れたところに行ってしまっている。
そんな遠くの野盗たちを見据え、グ…ッと足に力を込めた姫は、一気に駆け出した。

姫の走る速度は時速2000kmにもなる。
面倒な条件は省くが、もしも走り出した瞬間にその速さに達することができるなら、姫は野盗たちに2秒で追いつくことができる計算になる。

姫から遠ざかるべく馬に鞭を打ち走る野盗たち。
だが、ある程度距離を取ることができたと思った次の瞬間には、姫は前へと回り込んでいた。

 姫 「っと、こんなものかな」

右足のブーツでズシンと地面を慣らしてキュッとブレーキをかけ止まる姫。

その一歩は、凄まじい速度と質量を受け止めて停止させたものとしてはあまりに静かな揺れしか発生させなかった。
姫が魔法で衝撃を抑えたのだ。でなくばこの巨体が時速2000kmもの速さで走る衝撃で彼らの体は宙へと巻き上げられていただろうし、巨足に揺るがされた地面は、馬たちを激しく転倒させていただろう。
そうなれば野盗の彼らはもちろん、馬たちも再起不能の大けがを負ってしまう。
だから姫は、姫の感覚では羽根のようにふわりと降りて極力衝撃を押さえたつもりだった。

 野盗 「な……っ」

野盗たちは馬を止めざるを得なかった。
たった今まで1kmも彼方の後方にいたはずなのに、眼前に立つ巨大な姫。
彼らの理解の範疇を超えた出来事だったからだ。

 姫 「うん、やっぱり走りやすい。さてと、もう一回逃げてみる?」

腰に片手を当てクスクスと笑いながら野盗を見下ろしながら右足のつま先をトントンと鳴らした。
野盗たちの眼前で、茶色の塔のように巨大なブーツがズドンズドンと地面に打ち付けられている。
その衝撃もさることながら、先ほどの瞬間移動のような凄まじい走駆が、姫自身にとっては何ということでもないということを思い知らされた。

逃げられようはずもない。
野盗たちは降伏した。


  *


野盗と馬を町へと預けた姫が散歩をしているとまた通りかかった町から声をかけられた。
今度は海賊を退治してほしいとのことだった。
海を見れば確かに沖の方にそれっぽい船が見える。

 姫 「ん~…新しいから汚したくないんだけど、仕方ないか」

姫はブーツを履いた足で海に踏み入った。



けたたましく叫ぶ部下を怒鳴りつけながら甲板へと出た海賊船の船長が見たものは、ブーツを履いた足で海をザブザブ波立ながら歩いてくる巨大な姫の姿だった。
ブーツは姫の膝下くらいまでの高さだったが、海面はそれよりも更に下にある。
巨大なブーツが海面を割って前に進むたびに周囲には大きな波が立ち、通過した後には彼らの乗る海賊船すらあっという間に沈んでしまいそうな巨大な渦が巻き起こっていた。

 姫 「水が染みてこないんだ。これは便利だね」

姫感覚で水深30mほどの海を行く姫はブーツの中に水が入ってこないことを喜んだ。
サンダルだと、指の間や足の裏とサンダルの間に水が残り、どうしても妙な感じが残るのだ。


そんな風に近づいてくる巨大な姫を前に、船長は慌てて砲撃指示を出した。
部下たちも転がるように走り出し大砲を準備して姫へと狙いをつける。
そして、

 ズドン!

砲弾が放たれた。

が、それは姫の体に命中する直前、フッと消えてしまう。

狙いを外したわけではない。不発だったわけでもない。
確かに砲弾はあの巨体に向かって放たれた。
そして消えた。
どこに消えた?

 姫 「ふふ、ここだよ」

海賊たちが上を見上げれば、笑いながら見下ろしてくる姫の顔の横の手に、大砲の弾が摘ままれていた。
海賊たちからすれば一抱えもある大きな砲弾だが、巨大な姫の指の間にあっては、まるで粒のようにちっぽけに見えた。

 姫 「返してあげる」

姫は、砲弾を摘まんだ手を海賊船の上に持ってくると、摘まんでいた指をパッと開いた。
砲弾が落下し始める。真下の海賊船に向かって。
ヒュー…と落下していった砲弾は海賊船の甲板を突き破って船体に侵入し、そして、

 ドカーーーン!

と爆発した。

船体に大穴が開き、一気に浸水が始まる海賊船。
沈没船まっしぐらだった。
沈みゆく船の上で一瞬でパニックになった海賊たちが大慌てで走り回る。

そんな海賊船を膝に手を当て見下ろす姫。

 姫 「あらら、もう壊れちゃった…」

もう少しじっくりお仕置きして反省させるつもりだったのに。
海賊船のあまりの脆さに苦笑してしまった。

だが壊れてしまったものは仕方が無い。
姫は沈みゆく船から飛び降りて海に逃げ込んだ海賊たちを摘まみ上げて手のひらに乗せ始めた。
ヒョイヒョイと摘まみ上げていき、ざっと20人くらいは乗っただろうか。

 姫 「これで全員?」
 海賊 「い、いえ、まだ船長が…」

まだ船長が乗っていなかった。
だが船の上にも周囲の海にも浮いていない。
手の上の海賊に訊いてみると、もしかしたら船長室の財宝を守りに行ったのかもしれないとのこと。

 姫 「沈没するかもしれないって時に宝物の事なんて…。ホント海賊って欲張りだなぁ」

やれやれ、とため息をついた姫は海賊に船長室はどのへんだったかを尋ねると、その部分に向かって、海賊の乗っていない方の手を突き刺した。
海賊船の甲板に、姫の巨大な手がズドンと突き刺さる。
そして引き抜かれた手には、船長室が鷲掴みにされていた。
壊れたドアの向こうでは、宝箱にしがみつきながら震える船長の姿があった。

船は、その姫の一撃が決め手となり、完全に海中に没してしまった。

手に持った船長室を覗き込む姫。

 姫 「もう悪いことしちゃダメだよ。さもないと…」

ベキベキッ! 船長室を掴む姫の手が一段握り込まれた。
手の中の船長室が少し小さくなった。
より狭くなった船長室の中でガクガクと首を縦に振る船長。

 姫 「よしよし。あ。その宝物は町の人に役立ててもらうからね」

ニッコリと笑う巨大な姫の顔を、真っ白に燃え尽きて見上げる船長。

そして姫は、片手に20人の海賊を、もう片方の手には船長室を掴んだまま、海をザブザブかき混ぜながら町へと戻っていった。


  *


その後もしばらく散歩を続けたのちに城へと帰宅した姫だったが、それまでに通りがかった町から4度も助けを求められてしまった。
それもやっぱり、野盗、山賊、盗賊がらみ。
結局 姫は今回の散歩だけで7つの賊を壊滅させていた。

 近衛 「うーむ…、広い地域でモラルが低下しているということでしょうか…。由々しきことですね」

それを聞かされた近衛は腕を組んで唸った。

 近衛 「明日早速会議に挙げ、対策を練ることといたしましょう。必要とあらば全地域を視察することになるかもしれませんね」
 姫 「そうだね。気を引き締めないと」
 近衛 「とりあえず大臣に報告してきます。その間に姫はシャワーでも浴びられてはいかがでしょう?」
 姫 「ん、そう言えば歩き回ったから汗でベトベトかも。じゃあ行ってくるね」

そして脱衣所へと向かいドレスを脱ぎ始めた姫は、ブーツを脱いだときに足指に人が挟まっているのを見て、自分が彼らを拷問中だったことを思い出した。

 姫 「忘れてたなぁ…。だ、大丈夫?」

足指の間のスパイたちに話しかけてみる姫。
しかし、返事が無い。

 姫 「あれ?」

彼らは魔法によって死ぬことも気絶することもないはず。
なのに彼らはぐったりとして動かなかった。

姫は足指の間からスパイを摘まみだして顔の前まで持ってきてみる。
すると、指先に摘ままれたその小さな体から、ツンとする臭いがした。

 姫 「う…、まさか、このせい…?」

姫は顔をしかめた。
彼らの体からあふれ出す刺激臭の正体。そんなもの一つしかない。


確かに彼らは死ぬどころかケガ一つ気絶一つしなかった。
たとえこの巨大な指にどれほど凶悪に締め上げられても、その状態のままつま先が地面にズドンズドンと叩きつけられても、海中を行き減圧に苛まれようともだ。
だが蒸し暑いブーツの中で姫の足も汗をかき、蒸れてくれば臭いもする。
彼らはどんな凄まじい激痛や圧力でも気を失うことは無かったが、臭いだけは別だった。
自分たちを挟み込む巨大な足の指からはおびただしい量の汗が流れだし、それらと姫の体温とで急激に気温と湿度の上がったブーツの中、はりつけにされ手足を動かすこともできなかったスパイたちは、撤退雨林よりも高い気温と湿度、そして凶悪な足の臭いに対して、まったく防御ができなかったのだ。
口で呼吸しても鼻で呼吸しても、吸い込まれるは空気ではなく濃密な足の臭い。
目鼻に痛みを感じるほどの凄まじい臭いは、姫の魔法によるコーティング以上の威力を持っていた。
流石の姫も予想できなかったこと。
結果、コーティングを突破するほどの威力を持っていた足の臭いに長時間包まれ、彼らは失神してしまっていたのだ。

自分の足の臭いをプンプンとさせるスパイを摘まんだまま、姫はしょっぱい顔になった。

 姫 「まさか魔法防御以上の臭いだなんて…。どうしよう…コレ…」

姫も流石にスパイと一緒に風呂に入る気にはならなかった。
ここで彼らを起こしても自分の裸を見られることになるし、人を呼んでも、スパイが自分の足の臭いで気絶したことを言わなければならなくなる。

 姫 「んー………。ま、それはあとでいいか。とりあえずシャワー浴びよっと」

足の指から取り出したスパイたちをブーツの中に放り込んだ姫は風呂場へと入っていった。



その後、ブーツに入っていたスパイたちは姫自身の手で城の最下層の密室の牢屋に閉じ込められた。
しばし彼らは、誰も来ない薄暗い地下牢の、自分たちの体からあふれ出る凶悪な臭いの充満した密室の中で延々ともがき続けたという。



  *
  *  ******************************************************
  *



 『24:ニプレスにされた国のその後』 1000万倍


 姫 「はー…気持ちい~」

姫はシャワーを浴びていた。
降り注ぐ水は姫の凹凸激しい流線形のダイナマイトボデーをあっちにこっちに流れを変えながら床まで落ちていった。

そんな姫のむき出しの乳房。
その乳首には、かつてニプレスにされた二つの国が張り付いていた。

左右の乳房で一つずつ。緑色の島国はピンク色の乳輪の中にすっぽりと納まっていた。緑の島の周囲にピンク色が見えていた。
乳首は姫の正面を向いていて、つまりそれに張り付いている島は90度傾いていたが、魔法で重力を制御された島国からは何かがこぼれたりすることは無く、姫の巨大な乳房を星として、そちらに引き付けられていた。
乳首周辺は魔法でコーティングされているので、シャワーの水で国を流してしまうこともない。
シャワーを楽しむ姫が身をくねらせるたびに大きな乳房はぶるんぶるんと振り回され、それと一緒に張り付いている二つの国も振りまされた。

不意に、姫が自分の乳首に張り付くそんな国たちを見下ろした。

 姫 「もう、またそんなことしてるの?」

やれやれ。と言った感じで言う姫。

乳首に貼り付けられた二つの国は、姫に対して攻撃を仕掛けていた。
国民の大半は姫の人知を超えた力の前に屈服していたが、軍部だけは姫に対して徹底抗戦の構えだった。
戦車や戦闘機、ミサイルなどの兵器を用いて姫を攻撃する。
彼らが狙うのは、島の中央を突き破って聳え立つ、標高1000kmの乳頭。
緑色の島をズドンと突き破って聳える、ピンク色の山。雲ですらその麓を漂う大きさである。

乳頭の全方位から攻撃が仕掛けられていた。
すべての攻撃が乳頭に集中していた。
彼らには、それ以外に姫を攻撃する手段がなかったからだ。

彼らの国の島は乳輪の中に納まってしまっている。
かつて海だった場所が乳輪に変わったのだ。海岸の向こうは青い海原ではなく、ピンク色の平原に変わっていた。

彼らは地面を攻撃する手段を持っていなかった。故に、砲弾でもミサイルでも狙いを外すことの無い乳頭へ攻撃を仕掛けているのである。

ただやはり、それらは姫に対して何の害を与えることもできていなかった。

 姫 「あんまりくすぐらないでほしいんだけどなぁ」

姫の超感覚なら彼らのあまりに貧弱な攻撃も感じ取ることができる。
超感覚を使わねば、攻撃されていることにも気づけないだろう。
しかし超感覚を使ってもなお弱すぎる彼らの攻撃は、姫にとっては、一本の毛先でつつかれている程度の感触にしかならなかった。
ツンツンサワサワ。それを量の乳頭の、それも根元ばかりを狙って続けられるものだからむず痒くてたまらない。

だがそれがまた彼らの攻撃を誘発する要因になっていた。
いくら攻撃を仕掛けても傷一つ付かないどころか呆れられてしまう。
乳頭に傷付けることもできない。乳頭に見下される。
それが彼らのプライドを刺激し、意地を張らせた。


シャワーを浴び終えた姫は湯船に体を沈めた。
湯は姫の胸くらいの深さ。乳房も、半分ほどが湯に沈む。
当然乳首も湯に沈むが、魔法で守られている乳首の周囲は水没せず、国が沈んでしまうことは無い。

 姫 「ふぅ~…」

温い湯につかり、気持ちよさそうに息を吐き出す姫。
しかしやはりその間も、乳頭に対する攻撃は続けられていた。

 姫 「はぁ…気持ちよさに水差さないでよ…」

姫はため息をつきながら湯の中に沈む自分の乳首を見下ろした。

 姫 「ま、いっか。超感覚切っちゃえば何も感じないんだし」

姫は超感覚を切った。
これで彼らがいくら攻撃しようと微細すぎて姫には感じることもできない。
目で見なければ、そこに彼らがいることにすら気づけないだろう。

 姫 「さーこれで邪魔されることもなくなったし、まったりしよ~」

湯船の中で「ん~!」と体を伸ばしのち、姫は体の力を抜いた。
湯のぬくもりに体を包まれる快感。湯に浸かっている部分は足の指の股に至るまで余すところなく包まれ、極上のぬくもりは体だけでなく心までも温めてくれる。
まさに至福。ついでに重い胸も湯に浮いて軽くなるので言うこと無しだ。

幸せ。
まったり。
リラックス。
羽毛の上に寝転がるような心地よさ。

姫はいつの間にかウトウトと眠ってしまっていた。


  *


そして姫自身も知らないことだが、姫は寝ているときに心地よくなると乳首が起つ癖があった。

姫が寝息を立て始めてしばらく、姫の乳首はゆっくりと勃起し始めた。
乳頭がムクムクと膨張し、乳輪がぷっくりと膨らんで行く。

ただそれだけだ。それだけのことだった。
ただそれだけのことが、そこに貼り付けられている国の住民にとっては大変なことだった。

乳首の上の国にとって、乳首の勃起は空前絶後の大地震だった。
勃起が始まった瞬間、人々はとても立っていられないような大揺れに襲われ、国のすべての建築物が崩れ傾き倒壊し始める。
頑強な岩山さえもガラガラと崩れ始め、湖は干上がり、森はすべての木々が捻じれて折れた。

大地に無数の亀裂が走った。勃起により乳輪が膨らみ、表面積が増え、その上に乗っかっていた国は膨張する乳輪に引っ張られ、無数に千切られていった。
島が粉々に分かれていった。
その段階は、姫にとっては乳輪の面積が1?広がった程度の事だったかもしれないが、島にとっては10?も広がったのである。
突然10kmも引っ張られれば、島はいくつにも引き裂かれてしまう。
しかも膨張はまだ続いているのだ。たった今まで目の前にあったものが1km先に、10km先にどんどん引き離されていく。

乳首の勃起によって、国が無数に分解されていく。

乳首の膨張とその揺れで、国はほとんど粉々になっていた。
左右の乳首の国にはそれぞれ数百万の国民がいたが、すでにその9割以上がいなくなっていた。
最早 姫を攻撃するどころではない。
わずかながら生き残っている人々は、粉々になった自分たちの大地と、その下にむき出しになったピンク色のマントルを見た。

国が消滅するほどの大災害の中で唯一変わらずそびえ立っていたのは、島の中央を貫いていたあの巨大な乳頭だけだった。


ようやく勃起の揺れという大地震が収まり始めた頃、人々は、変わり果てた自分たちの世界を見てその場に崩れ落ちた。
すべてが崩れ落ちていた。粉々になり、無数に別れた大地の上では、自分以外の生き残っている人間を探すことすら難しかった。

だがこれで終わりではなかった。

  ボッ!!!

そうやって呆然とする人々の乗る島のパーツの一つを、突如、その島の真下から溢れ出した何かが吹き飛ばし、そこにいる人々とともに島を消し飛ばした。
空の彼方までほとばしった直径数十kmにもなる白いそれは、母乳だった。
姫の乳首から飛び出た母乳が、その穴の上にあった島のかけらを吹き飛ばしたのだ。
乳輪、そして乳頭から溢れ出したミルクは島のかけらたちを次々と消し飛ばし、押し流し、洗い流していく。
生き残っていた人々も、姫のミルクで全滅した。
両の乳首の数百万の人々は、姫の乳首が勃起しただけで全滅してしまったのだ。

姫の母乳は魔法のコーティングの影響を受けない。溢れ出た母乳はコーティングの外に流れ出し湯に溶けていった。
あまりにも極小な無数の人々とともに。



数分後、目を覚ました姫が乳首を見下ろしたときには、そこにあった島はキレイに洗い流され、もとの綺麗なピンク色していた。



  *
  *  ******************************************************
  *



 『25:お仕置き』 10億倍


 姫 「わー…、星がたくさん」

周囲に無数に漂う星を見渡して、姫は感嘆の声をあげた。今日は無限平面世界ではない。
身長160万kmの姫からすると、周囲を漂う星のほとんどが1cm程度の大きさの感覚だ。姫の頭に乗っかるティアラの宝石よりも小さい。
膝くらいまでしか無いドレスのスカートも、無重力空間ではふわふわと際限なく翻っている。歩くこともないのでサンダルも履いていない。

そんな姫がここにいるのは、遠方ながら領土であるこの宙域の地質調査ということだったが、

 姫 「こんな小さな星調査しても仕方ないと思うんだけど…」

顔の前を漂う星を見ながら呟く姫。
キラキラと輝く青い玉、まるで飴玉のように見えた。

 姫 「なんだか美味しそう…。ちょっとだけ…」

あーん、と口を開けた姫はその星をパクリと食べた。
舌の上に小さな玉が転がる感触。
口の中で星を弄んでいると唾液が溢れてきて、その唾液でふやけた星がぐしゅぐしゅに崩れてゆくのを感じた。
つばとともにそれをゴクンと飲み込む。

 姫 「んー…まぁほんとの飴玉じゃないんだから甘いわけはないけど、結構美味しいかも。どっちかって言うと飴玉よりクッキーに近いかな」

言いながら別の星にパクついた姫。
今度はその星を奥歯でよく噛んだ。サクサクと心地よい食感が歯に感じられ、程よい甘みが口の中に広がる。

 姫 「…うん、結構いける」

星の味をしめた姫は周囲に漂う星にてを伸ばし、それをつまむと口に放り込み始めた。
一口サイズの星はスナック感覚で食べることができる。数回噛むだけで飲み込めるほどに細かくなる。
ときに2個3個の星を同時に口に放り込み、まとめて咀嚼した。すると心地よい食感がよりはっきりと感じられた。


などと星の味を堪能していた姫は次の星を口に放り込んだとき、その手が止まる。

 姫 「? なんかちょっと違う感触がする…」

姫は今しがた口に入れた星を指で取り出した。
そして自分の指の間で唾液にまみれた星を超感覚で探ってみる。

するとその星には、高度な科学文明が発達し人類が反映していた。

 姫 「うそ! 人間が暮らしてるの!?」

指先につままれたちっぽけな星の上には確かに数十億の人間が暮らしていた。
が、そんな人々も、姫の唾液の大洪水によってほとんど全滅しかけていたが。

 姫 「う…悪い子としちゃったなぁ…。でももう手遅れだし…」

しばしその星を見つめた姫は、

 パクッ

口に放り込んだ。

 姫 「…ゴクン。隠滅隠滅。これでバレないよね。あ、でも今まで食べた星にも人が住んでたのかも。たまたま今のは発展してたから気づけたけど…」

姫は自分のお腹を見下ろし撫でた。
すでに十数個の星をたいらげている。それらの星にも人がいたとしたら、いったい何百億人が自分のお腹の中にいることだろう…。

 姫 「………でも食べちゃったものは仕方ないし。そ、そもそもそんなに小さいのがいけないんだよ。うん」

姫は自分をごまかした。


  *


だがそれでごまかされないのは周辺に漂う星の文明だった。
突如現れた天文学的大きさの巨人の、非人道的な行為。
宇宙航行技術を有する文明たちは、姫に対して迎撃行動をとり始めた。

周囲の星から自分に対して敵意が発せられていることに姫も気づいた。
神経を研ぎ澄ませば、彼らの宇宙戦艦らしきものが、星から近づいてくるのも感じられた。

 姫 「あちゃー…、怒らせちゃったなぁ…。……でも、そもそもこの辺の宇宙はわたしの国の領土なんだし、わたしが何かしたからって怒るのはおかしくない? わたしの勝手でしょ?」

そんな考えも過る。
などと考えている間にも、姫の感覚では止まっているかのような速度で宇宙艦隊たちは近づいてくる。

 姫 「ん、やっぱりそうだよね。じゃあ、反抗的な国民にはお仕置きしないと」

再び周囲の星と、それらの宇宙艦隊を見渡して、姫はクスッと笑った。

  *

顔の周辺をただよう3つの星から宇宙艦隊が接近してきていた。

戦艦は一隻が1000m級の大きさで、連合艦隊はそれらが1000隻も集まったものだった。
その総火力は、大型の惑星ですら数分で破壊でき、実際に破壊したこともある。

が、そんな連合艦隊の数百万人の前には、そんな巨大惑星よりも巨大な人間の顔があった。
顔のパーツひとつひとつが、彼らの母星のよりも大きい。
彼らを見つめパチクリと動く巨大な目はその青い瞳だけで彼らの星と同じくらいの大きさがあるし、整った鼻の麓に開く巨大な鼻の穴は小さな星ならそのまま吸い込まれてしまいそうな直径があった。
そして眼前には、ニンマリと笑う、薄紅色の巨大な唇があった。
とんでもない巨大さだ。上唇の厚さだけでも1万kmほどもあり、口の幅は短径でも5万km。これならば星を内に取り込んでしまうのもわけないことだ。実際に、やってみせたのだから。

宇宙戦艦の乗組員たちは、自分たちが如何に無謀なことをしようとしているか骨身に思い知らされた。
勝てるかどうか、考えるまでもなかった。
しかしあの巨人を退治することが自分たちの使命で、そして自分たちの母性を守ることこそが自分たちの義務である。
彼らは恐怖を抑えながらも、果敢に巨人に立ち向かっていった。


そんな宇宙艦隊に向き直った姫は口を軽くすぼめると、

 姫 「ふっ」

軽く息を吹き付けた。
それだけで惑星連合の宇宙艦隊は全滅し、その背後の3つの星も壊滅的な被害を受けた。
姫の吐息は光速以上の速さであり、質量も、範囲も、天文学的な値だった。

1000隻の宇宙戦艦は、まさしく消滅した。船体の爆発すら起こらず、一瞬で粉々に砕け散っていた。
無数の乗組員たちは、走馬灯を見る間もなく消え去った。

吐息にさらされた星たちは、吐息を受けた面が一瞬で赤茶けた色になった。海と陸地を吹き飛ばされてマントルがむき出しになったのだ。
残りの面に至っても壊滅的な被害であることにかわりはない。衝撃であらゆる建物が倒壊し、人類のほぼ100%が消し飛んだ。
唯一原型が残っているのは姫とは正反対の位置にあったほんの一握り地域だけ。赤茶けた星の中で唯一青と緑を保っている部分である。

そんな僅かな陸地と海の上に残った1%未満の人々を乗せて、星たちは姫とは反対方向に向かって流れていった。
姫の吐息によって本来の機動から外れてしまったのだ。
凄まじい速度で飛んでいく3つの星。
いずれは他の星に衝突して砕け散ることだろう。

  *

次の星は口の中に放り込んだ。
どうやら星の味はその上の文明のレベルによって変わるようだ。
そして超感覚を意識して食べれば、その文明の味を味わうことができる。
その星の住民たちのことも。

サクサクと星を咀嚼する。
すると旨味が口の中に溶け出すのがわかる。
これが星と、星の上の文明のエネルギーが混じり合ったものだ。
彼らと、彼らの文明はとてもなめらかで舌触りがよかった。
じっくり味わったあと、飲み込んだ。

 姫 「ふふ、ちょっといたずらしちゃおうかな」

言った姫は次に食べる星に狙いを定めるが、今度は手をのばすのではなく、顔を近づけていった。

 姫 「あーん」

そして口を開いて、ゆっくりと彼らの星へと近づいていく。
超感覚で彼らの意思を感じ取ってみると、ほぼすべての人間が絶望的な気持ちになっているのがわかった。
絶体絶命の恐怖。視覚を感じ取ってみれば、空の彼方から迫る巨大な口を見ることが出来た。姫の口だ。
ただ近づけているだけの口を見て星中がパニックになっている。少し滑稽だった。
どうやら星の前に宇宙艦隊が展開しているようだが、姫は構わず口を近づけ続けた。

彼らの星は、展開していた宇宙艦隊ごと、姫の白い歯の間を通り抜ける。
一つ一つが小惑星サイズの歯はキラキラと輝いていたが、そこから先は暗黒の世界だった。
赤黒い内壁が薄暗く光、その下では巨大な舌がビクビクと動いて獲物を待ちわびている。

姫の口の中に入ってしまったことで星の住民の恐怖は最高潮になった。
星から脱出しようとした人々もいたが、あまりにも遅い。
それら宇宙に脱出しようとした人々も含めて、バクンと口は閉じられた。

口に入れる際に、姫はその星を軽く魔法でコーティングしていた。
でなくば星は瞬く間に潰れてしまって味しか残らないからだ。

 姫 (これはお仕置きなんだから、たっぷりいじめてあげないと)

姫はコーティングした星を、まさに飴玉のように舌の上で転がした。
じゃぶじゃぶとあふれ出る唾液がすでに星の全体をべっとりと塗り潰しているが、コーティングの中にまでは影響しない。

そして住民たちは、自分が巨人の口の中にいることを思い知らされた。
姫の魔法によって自分たちの現在を知ることができる彼らは舌の上で星が転がされるたびに襲ってくる大揺れにそれを事実と理解しなければならなかった。
数十億人を乗せた星が、一人の少女の舌の上で軽々と転がされている。空の向こうに見える赤黒い内壁が目まぐるしく動くことでこの星が容易く転がされていることを見せつけられている。
コーティングは衝撃からは彼らの星を守っていたが、熱までは遮断しなかった。
星の気温が急激に上昇し始める。姫の口の中という高温の世界の温度に引き上げられる。すると世界中の氷が溶けだして海面上昇が加速し、星のほとんどは一気に水没し始めた。
口の中で転がされる星は、その星を包み込む唾液とは無関係に水没の一途をたどっていた。大津波が世界中の陸地を呑み込み始める。
彼らのあらゆる国が、彼らの星の海面上昇によって水没しようとしていた。

それは姫にも感じられた。口の中の星から感じる人々の恐怖がどんどん減っていっていたからだ。
つまりは住人が減っていっているということだ。

 姫 (んーもう十分反省したかな? ならお終い)

星を奥歯の上に移動させた姫はカリッと噛み潰した。
すると星から感じていた恐怖がまったく感じられなくなった。
これでこの星へのお仕置きは終了した。

  *

次の星も口の中に放り込まれた。
ただし今度は2つ同時にだ。
2つの星を飴玉のように転がす姫。

 姫 「もごもご」(二つ一緒に舐めると味の違いがよくわかる。甘いのと少し酸っぱいの)

2つの星の味を堪能する姫。
時折口の中で星同士がぶつかり合い、そのたびに住人たちは自分たちと同じ運命にあるもう一つの星を見ることができた。

星を左右の頬に分け、リスの頬袋のようにする姫。
それは周辺に漂う他の星や宇宙艦隊から見ることができた。
巨人の膨らんだ頬袋こそが、二つの星がそこに入れられている証拠だった。

  *

次の星はすぐには呑み込まれなかった。
姫は、その星を唇の間にハムッと咥えた。まるでブドウの実を咥えるように優しく。
その様子を他の星たちに見せた。他の星たちからは、確かに巨人の唇の間に一つの星が咥えられている様を見ることができた。

不意に、星を咥える唇が楽しそうに歪められたのが見えた。
このとき姫は、咥えた星の住民たちが、自分たちの星を上下から挟み込む巨大な唇を見て怯えふためいている様を感じ取っていた。

姫は口を開いてその星を解放した。
直後、その星をパクっと食べて見せた。
たった今まで唇の間にいた星は、今は口の中にいた。

  *

次の星は、他の星よりも大きかった。
他の星は直径1万kmほどだが、その星は10万kmはあった。

姫はその星を軽く右手で支えると口を大きく開け、

 ガブッ

と噛みついた。
口を離してみると、星の一部が大きく削られ地殻がむき出しになっていた。
姫に噛み千切られてしまったのだ。
まるでリンゴでもかじったかのように、一部をかじり取られてしまった星。
歯の跡さえも残るその大きな星は、ポイと放り出されて飛んでいった。

  *

次の星を摘まんだ姫はそれを鼻の下に持ってくるとその香りを嗅ぐように息を吸い込んだ。

  ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

その瞬間にその星のすべての大気が吸い尽くされ、同時にすべてのものが巨大な鼻の穴の中に吸い込まれていった。
人々も、動物も、家も、車も、国も、海も、大陸さえも、星の表面から引っぺがされ、激風の中でズタズタに引き裂かれながら鼻の穴の中に消えていった。

星は、一瞬で茶色い星となった。その星の上に乗っていたものはすべて姫の鼻の穴の中に吸い込まれた。
しかし姫の穴の中に入った時点で生きている人間はひとりもいなかった。惑星さえ消し飛ばせる鼻息の吸引は、人々を無数に分解しながら吸い込んでいた。
大陸でさえもそう。なんとか原形を残ったまま吸い込まれた陸地も、直径100km全長1万kmもある無数の鼻毛たちに激突し粉々に砕け散る。

  *

次の星はデコピンで弾かれた。
直径1万5千km全長7万kmの指が、光速の数倍もの速さで放たれ、長さ1万kmほどもある爪で星を弾いていた。
ボシュ! 星は消滅した。
凶悪すぎるデコピンの破壊力は星を一瞬で粉砕してしまっていた。

  *

次の星は指でつまみ潰された。
親指と人差し指の間につままれた星は、姫がほんの少し力を加えるとクシャッと潰れてしまった。
それだけでも十分すぎる最期なのに、そのあと姫は指をすり合わせ、星の残骸をさらに細かく擦り潰した。

  *

次の星は握り潰された。
手の中に3つの星を握り込み、そのまま拳を作ったのだ。
それだけで3つの星が粉砕され、数百億人が犠牲となった。

  *

次の星は挟み潰された。
姫が左右の手をパチンとはたく合わせると、その間に挟まれた星は一瞬でぺちゃんこになってしまった。
開いた両掌を見てみれば、手のひらの中央にわずかに砂が付いている。
それが、星だったものの全てだった。

  *

直径5万kmほどの大きな星は、姫の脇の下で挟み潰された。
大きさ的にフィットした星はしばらく脇の下に挟まれていたが、姫が脇をとじると、あっさりと押し潰された。

  *

胸の谷間に挟まれた星はほとんど挟まれた瞬間には潰れていた。
窮屈なドレスの中にしまわれた巨大惑星サイズの乳房の間に生じる圧力は、大型の惑星ですら耐えることは出来ないだろう。
潰れた星を谷間に収めたままの乳房をすり合わせれば、星だったものは完全に消滅し、蒸し暑い谷間に溜まる汗でへばりつく湿った砂となる。

  *

そんな胸を振り回すだけでもいくつもの星を粉砕できた。
半ばドレスに包まれているとはいえ、乳袋状態で、しかもブラをしていない姫の乳房は、振り回せば軽快に揺れ弾んだ。
バストサイズは今や115万km。地球28周分の距離。
光は一秒間に地球を7周半できる。一周あたりが0.13秒。が、姫の胸を一周するには4秒かかる。
光ですら一周するのに数秒を要する。それほどに、姫の胸は巨大だった。

横にぶぅんと振り回された胸に激突されれば、星などパンと砕け散ってしまう。
ゆさゆさと揺らせば、周囲の星をベシベシと粉砕してしまう。
たとえぶつけなくても、星のそばに胸を寄せれば星はその巨大な胸の引力に引かれ、姫の乳房に隕石となって自ら衝突するだろう。

  *

足の指の間に星を一つずつ挟んだ。
片足に4つ。両足で8つ。
彼らのちっぽけな星が、足の指の間でミシミシと軋み、そのせいで住民たちが発狂しながら逃げ惑うさまを楽しみながら、姫は足の指をキュッと握った。
それぞれ数十億の人類を乗せていた星は、すべて足の指の間で握り潰された。

  *

膝の裏に挟まれた星もいた。
彼らの星は膝が折り畳まれたとき、太ももとふくらはぎの肉の間でクシャッと潰れてしまった。

  *

そうして姫が意図して潰す以外にも、多くの星が犠牲となっていた。
中でももっとも大きな要因は、姫の、その黒く長い髪のせいである。

無重力空間でふわふわと揺蕩う髪は、姫のちょっとした動作で簡単に振り回される。
顔を横に向ければ、その分だけふわりと翻る。
そこに、多くの星が巻き込まれた。

姫の髪は、全長100万km。直径は20km。数は12万本。
そんなものが光を置き去りにするほどの速度で振り回されれば、そのさなかに巻き込まれた星たちなどズタズタに引き裂かれてしまう。

毛の一本でも星を真っ二つにすることができるほど強靭なのだ。
ならば、それが空間を埋め尽くすほどの束で勢いよく振り回されれば、それはその空間の消滅を意味する。

現に星たちがいたはずの空間は、姫の髪が通り過ぎたあとにはかけら一つ残らない完全な真空となっていた。

髪の毛以外にも、手で星を弄んでいる間に足で星を蹴っていたり、逆に足で星を潰している間にお尻が星を突き飛ばしていたりと、姫自身知らないところで多くの星を壊滅させていた。
宇宙空間を泳ぐように移動するだけでも、その巨体に激突されて粉砕された星は数知れない。


結果として、この宙域は姫が思っていたよりも早く壊滅した。


  *


 姫 「―ふぅ…、こんなものかな」

腰に手を当て、周囲を見渡す姫。
周囲の星たちは、最初に見たときよりもかなり少なくなっていた。
まだ近くに残っている星たちはもちろん、今回被害の出なかった遠方の星たちからも、完全降伏の意思が感じ取れた。

 姫 「わたしに逆らったらどうなるかわかったよね」

姫は手近にいた星をつまんで眼の前に持ってきて覗き込む。
指先につまんだ小さな星からは、服従の意思以外何も感じ取れなかった。

 姫 「うんうん、それでよろしい。そう言えば地質調査だったけど、やっぱりこんな小さな星じゃ開拓なんて無駄だね。それよりこのままアクセサリーにしたほうがよさそう」

言うと姫はつまんでいた星に魔法でチェーンをつなげ、首にかけてみた。
青く美しい星の輝くペンダントの出来上がりである。

 姫 「あは、結構綺麗かも。じゃあこれとこれも…」

別の星にも手を伸ばした姫はそれぞれを左右の耳にイヤリングとしてぶら下げてみた。
3つの星が、簡単にアクセサリーになった。
左右の耳と胸元に、青い小さな星が輝く。

 姫 「あといくつか持って帰って、王冠にもつけてもらおうかな」

辛くも生き残っていた星たちが、姫の巨大な手の影に飲み込まれていく。



  *
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  *



 『おまけ』 1倍


 姫 「え…! 近衛くんが大きい…!」

部屋に来た近衛を姫は目を丸くして見つめる。
同じサイズなら、近衛の方が大きいのだ。

 近衛 「まぁ…そりゃそうでしょうとも」
 姫 「へー、ほー。なんか不思議な感じ」

近衛に近寄った姫は自分の頭に乗せた手を近衛の頭の高さまで上げたり下げたりしていた。

 姫 「何センチくらいあるの?」
 近衛 「180cmですが…」
 姫 「わぁー大きいね。わたしより20cmも高い」

近衛の正面に立った姫が、下から見上げてくる。
このとき近衛からは、姫の巨大な乳房の谷間を真上から見下ろすことが出来た。
う、思わず顔を背ける近衛。

 姫 「それじゃあ早速始めよ」

姫が近衛の手を引いていく。

 近衛 「え? 始めるって、何をですか?」
 姫 「へ? そ、それはもちろん…」

着いた先はベッドだった。

 姫 「…子作り」(ポ)


  *


近衛はベッドに全裸で寝かされていた。
しかも体は魔法で固定されてしまって身動きが取れない。

 近衛 「ひ、姫様! お気を確かに!」
 姫 「し、失礼な! ちゃんと正気だよ!」

顔を赤くしながらドレスを脱いでゆく姫。
すぐに、一糸まとわぬ姿になった。ただし王冠以外。

近衛が横たわるベッドに姫も四つん這いで乗ってくる。
すると、巨大な胸が重力に引かれ凄いことになった。

 姫 「隣が言ってたの。好きな男の子が出来たら、責任取らせてつなぎ留めておきなさい。て」
 近衛 「いやいやいや! だからってこれはいけません! 姫様には、姫様にふさわしい人がきっと…」
 姫 「ダメ。わたしの好きなひとはわたしが決めるの」

四つん這いで進んできた姫の顔は、横たわる近衛の真上にあった。
顔と顔が向かい合う。

そして四つん這いで腕を伸ばしている状態にありながら、姫の胸は近衛の胸板にのしかかっていた。

 近衛 「しかs…」

なおも抗議しようとした近衛の口を、姫の口が塞いだ。
すぐに姫の舌が近衛の口に侵入して、近衛の舌と絡み合う。

 近衛 「ッ……!」
 姫 「…」

驚愕するも体を動かせない近衛は、姫にされるがままだった。

たっぷり、濃厚に、互いのつばが混じり合うほどに舌を絡めあったあと、姫の唇は近衛の唇から離れていった。

 姫 「ん……これで舌は絡んだね…。次はわたしたち自身が絡まないと」

姫が鼻息荒く言う。

 姫 「でもその前に」

四つん這いのまま少し前進する姫。
すると、近衛の顔の上に、姫の乳房が来た。

 姫 「まずはこっちをお願いします」

はも。
近衛の口が、姫の乳房で塞がれた。
近衛の口の中に、姫の右の乳房の乳首があった。

 近衛 「も、もごもご!」

近衛は抗議した。
が、

 姫 「あん、咥えたまま喋られたらおっぱいに響いちゃうよ…」

振動に快感を得て、姫の乳首から母乳がほとばしる。
ドプ。ドププ。それはあっという間に近衛の口の中をいっぱいにした。

姫の乳房は口だけでなくほとんど顔全体を覆う格好でのしかかっているので母乳から逃れることは出来ない。
つまり、飲むしか無い。

近衛は、口いっぱいに頬張った、暖かく甘いミルクをゴクゴクと飲みだした。

 姫 「はぅ…近衛くんがわたしのおっぱい飲んでる…!」

その事実に、溢れ出る母乳は更に量を増した。

  *

近衛がようやく姫の乳房から開放されたときには、近衛の腹はぽよんぽよんに膨れていた。
中身は全部姫の母乳である。

 姫 「じゃあ今度こそわたしたちがつながらないと」
 近衛 「ゲフ…。いや、姫様、申し訳ありませんが、このような状況では私の分身は起ちそうにありませぬ…」

近衛のソレはしなびていた。

 姫 「大丈夫。魔法」

近衛のソレは起った。

 近衛 「ぐはぁ…俺の体まで…」
 姫 「だったわたしの近衛兵ならわたしの持ち物みたいなものだもんね。それに、ふふ、絶対逃さないから」

そそり立つ近衛のイチモツの上に膝立ちになる姫。
一気に腰を下ろした。
近衛の分身が、姫の入り口にブスリと突き刺さる。

ブチン!

 姫 「ん~~…っ! これが近衛くんの威力…」

腰を落とし切った姫が歯を食いしばる。

 近衛 「ひ、姫様!」
 姫 「大丈夫…魔法で痛み消すから」

痛みのなくなった姫はすぐに腰を動かし始めた。
近衛の股間の上で、上下に動く姫の体。突き刺さったままの近衛の分身が、姫の中に出入りする。

 姫 「す、すごい…これが近衛くん……。気持ちよすぎておっぱい出ちゃう…!」

腰を上下させる姫の乳房から再び母乳が溢れ出し始める。
姫が腰を動かすと大きな乳房もゆっさゆっさと上下に激しくはずみ、その乳房から飛び出ているミルクは、横になっている近衛の体にドバドバと振りかけられた。

 姫 「イクぅ…! イッちゃうぅぅう!!」

絶頂を迎えた姫はしばらく近衛の股間の上で固まったまま体をビクンビクンと痙攣させていたが、やがてグラリと近衛の体の上に倒れ込んだ。
大きな乳房がクッションの役割を果たす。

 姫 「はぁ…近衛くん大好き…」
 近衛 「俺もです。姫様…」

魔法を解かれた近衛は、自分の意志で姫を抱きしめた。


  *


 姫 「……と、言う夢を見ま…した……」
 近衛 「……」

ベッドに座って、真っ赤になった顔を伏せたままボソボソっと告白する姫。
その前に立って姫を見下ろす、同じく顔を真っ赤にした近衛。

実に気まずい空気が流れた。