※【ぼの】【破壊】



 『 豊胸作戦 』



草の一本も生えていない平原。
そこに、数千人もの男達がいた。
男達は地面に這いつくばって地面を撫でたり、地団駄を踏むようにして踏みつけていた。
全員が全員、何かしらの方法で地面に刺激を与えている。
バラバラに動いているとは言え、数千もの人間が同じような動作を繰り返している様は異様だった。

「ほら、もっとしっかりやりなさいよ」

突如として、大気と大地を震わせる凄まじい大きさの声が轟き、男達は全員が地面に蹲った。
見れば地平線の向こうで山の様な何かが起き上がってくる。
それは、巨大な顔だった。
巨大な顎が、鼻が、高いものから順に現れ、やがて顔全体が見下ろすような形で男たちの前に現れた。
若い少女の顔だ。

男達は今、少女の体の上にいた。
起伏の緩やかな、慎ましい胸の上にだ。
数千の男達は、ベッドの上に横になった上半身のみ裸の少女の胸の上に乗せられていたのだ。

少女の胸囲はカップで言うところのA。膨らみと呼ぶには慎ましい胸であった。
だが男達からすればその範囲は広大でここに東京ドームくらいは余裕で建設できてしまう。
まるで砂漠か何かのように何もない延々と続く大地の上に、男達は立っていた。

それはあまりに突然の事だったのだ。


  *
  *
  *


ある昼下がり、突如として街に轟音が響き渡る事となる。
何かと思って見てみれば、遠く遠くから山のように巨大な少女がこちらに向かって歩いてくるところだった。
横縞のタンクトップ。デニムのショートパンツ。素足にサンダル。金髪のツインテを翻しながら。
一見すると普通の少女だが、その身長は1500mを超えていた。
巨大なサンダルで住宅地やビルなどを次々と踏み潰しながら歩いてきた。

ここは大きく無い町だ。低層ビルがちらほらとあり、他は住宅地やスーパーなどがある程度である。
彼女の、くるぶしに届く建物すら存在しなかった。
この町は彼女にとって平坦も同じなのだ。

街に侵入を果たした巨大な少女は腰に手を当て仁王立ちになって辺りを見回した。
そしてその一角に、目的のものを見つけると、再び家々を踏み潰しながらそちらに向かって歩いて行った。
少女はその目の前まで来ると、それを真上から見下ろした。
それは男子校だった。
グラウンドには運動をしていた男子の姿がいくつも見える。
そんなグラウンドは、少女が足を置けばまるまる踏み潰してしまえる程度の大きさだった。

少女は男子校の前にしゃがみこんだ。
男子たちからは、巨大な脚という肌色の塔が折れ曲がり、巨大な上半身が降下してきたようにも見えた。
ショートパンツから伸びるむっちりとした脚の太ももとふくらはぎが重なり合い、たわわな肉がむちっとはみ出た。

「ちょっとアンタたち、手伝ってもらいたいことがあるんだけど」

少女は足元の学校に向かって言った。
直下の街並みを震わせる大音量の声だ。
そんな凄まじい声が轟いた瞬間、グラウンドに出ていた男子たちは悲鳴を上げて校舎や体育館に向かって逃げ始める。
皆が一目散に学校の入り口を目指す。

「ちょっと、逃げなくてもいいんじゃないの? 別にいじめようってわけじゃないわよ」

少女は言うもその場に止まる男子は無く、皆が校舎などを目指して走り続けていた。

「ねぇ、聞いてる?」

僅かに苛立ちの乗せられた轟く声。
大気だけではない。大地さえもがグラグラと震えそうな声だった。
だが、その大声に耳を塞ぎ蹲る者が出るも、最終的には全員が建物の中に隠れてしまった。

「…ふん、まぁいいわよ。そっちの方が手っ取り早いし」

少女は男子たちが逃げた校舎に手を伸ばすと、その校舎の建物をがしっと鷲掴みにし、そして土台ごと地面から引っこ抜いた。
手に持った校舎を顔の前に持ってくる。
中に逃げた生徒たちからは、窓ガラスの向こう一杯に広がる巨大な少女の顔が見えた。

「はいはい、無駄な努力ご苦労様。アンタたちが逃げなかったら私もこんなことしなくて済んだのに」

そして少女はその男子校を手に持ったまま再び町の中を歩き始める。
少女のサンダルの下に無数の家や車が次々と踏み潰され、サンダルが持ち上げられた後にはそれらは完全に圧縮され地面の模様となっていた。
そうやって町の中を歩き回っていた少女は他にもいくつかの男子校を拾い上げるとそれらを持って町を去っていった。
あとには、半ば廃墟と化した町だけが残された。

そして攫われた男子校の生徒たちは今、その少女の胸の上に乗せられているのだ。
それらの学校の生徒が全員立ってもあまりある広すぎる胸。
しっかりと踏みしめる事の出来るどっしりとした大地でもある少女の胸の上で男達は途方に暮れたのだ。

そして彼らに言い渡された使命は、その巨人の少女の胸を刺激する事だった。

「男に触ってもらうと大きくなるって言うじゃない? チビでもこれだけいれば足りると思うからガンバてね」

少女は笑顔で言い放った。


  *
  *
  *


そうやって少女の胸を刺激する事を命じられて数日、男達は毎夜毎夜風呂上りの少女の胸の上に乗せられていた。
湯船に浸かって火照った体の上は蒸し暑く、男達はまさに砂漠にいるかのような気分でその熱い大地を刺激していた。
地面でもあるその肌に手で触れればそれが巨大だが非常にキメ細かい事に気付く。
押しても叩いてもビクともせず、上を歩こうが跳ねようがへこみもしない。
男達がどれだけ力を振り絞っても少女の胸の肌は震えもしなかった。

当初はその怒りから肌を殴りつける者も多数いたが、全員が手を故障してしまった。
柔らかそうな少女の胸は男たちにとってはコンクリートよりも硬かった。
彼らが手を故障してまで殴りつけても、少女にとっては大した刺激にはならなかったようだが。
実際少女はその男たちが自分の肌を殴りつけた事にも気づいていなかったそうだ。

それからと言うもの男達は自分達が怪我をしない程度の力で少女の胸を愛撫する事にしていた。
全力で殴りつけても刺激を感じられないのに、ただ撫でたり触れたりするだけで効果があるのかは不明だ。

男達はほぼ胸全体に散らばっていたが、一部の者は少女の乳首を刺激していた。
カップこそ小さいがそれでも乳首の巨大さは変わらない。
男達から見ればその乳頭ですら家よりも巨大な円筒形の物体だ。
10m程の高さと太さがあるだろうか。
根元から見上げればその巨大さと作りの荒々しさに畏怖すら覚える。
抱える事等到底出来はしない巨大な乳頭だ。
男たちの中には、女性の生の胸を見て触れた事のある者もいたが、目の前にあるそれは、それまで見たものとはまるで違うものだった。
あのちょこんと飛び出るかわいらしさがどこにもない。根元に立っても見上げる無骨なそれは見ていると恐怖から体が震えてきてしまう。
そもそも乳頭だけではない。今彼が立っている場所は乳首の上で乳輪は直径だけで何十mもの広さがある。
そしてその乳輪の外には更に広大な胸の大地が広がっている。
その胸も、この巨人の少女の体のほんの一部分であるということが、男たちに大きさのギャップを与え、自身のあまりの卑小さに涙し気を失ってしまった。
地面だけならまだしも、そうやって見上げてしまうことでより正確にその大きさを感じてしまう。
男たちにとっては少女の胸にちょんと飛び出る乳首だけですら恐怖の対象だった。

ふと、その巨大な乳首の周囲が影に包まれ、見れば巨大な手が上にかざされていた。
その内、巨大な人差し指が乳首に向かって降りてきて、そこにいた男達は悲鳴を上げながら避難していった。
直後、直径10m以上ある人差し指が乳輪に触れ、その長い爪の先でポリポリと掻き始めた。
ゴリッ! ゴリッ!
爪が乳輪を掻き毟る度に重々しく乱暴な音が周囲に響き渡った。
たった今まで男たちがいた場所を、巨大な爪が暴力的に掻いているのである。
男達が全力で叩いてもへこみもしなかった乳輪の表面が、爪が触れるとぷにっと柔らかそうにへこんでいた。
爪が乳輪を貪る音が乳房の上に轟き、近くにいた男は耳を押さえて悲鳴を上げながらうずくまり、遠くにいた男はその恐ろしげな光景を呆然と立ち尽くしながら見つめていた。
指の動きにつられて彼らの立つ大地である胸もグラグラと揺れる。
巨大だが手入れをされていて綺麗に煌めく爪が乳輪から離れてゆくと、この乳房の上の世界に再び仮初の平穏が訪れた。

「ゴメンなさいね。私、乳首 敏感なのよ。だから変な刺激の仕方しないでくれると助かるわ」

少女の口からまたあの衝撃波の様な巨大な声が轟いた。
つまりは、男たちの動きをくすぐったく思った少女が乳首を掻いたのだ。
たったそれだけの事だった。
だがその光景を間近で見ていた乳首周辺の男達は目の前で行われたそのあまりに暴力的な行為を見て呆けてしまった。
刺激が強すぎたのだ。
今日はもう使い物にならなかった。

毎日寝る前の一時間、男達は少女の上で愛撫させられていた。
その間少女は音楽を聴いたりベッドの天井に設置されたテレビを見たりとリラックスして過ごす。
時折お笑い番組を見た少女がお腹を抱えて笑いだすと胸に乗せられていた数千人の男達は全員が少女のお腹やベッドの上に放りだされた。


  *
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それから数週間後。
男達は未だ少女の胸を愛撫させられ続けていた。
少女の胸に変化はない。まだあの緩やかな起伏のままだ。
男達も作業に慣れてきて気を失ったりする者は少なくなっていた。
だが変化の無い自分の胸に、少女は不満を持っているようだった。

「ったく、ちっとも大きくなりゃしないわ。アンタ達、真面目にやってんの?」

少女の僅かに怒気を含んだその声に男達は胸の上で震え上がった。
そして全員が飛び跳ねたり力いっぱい胸を踏みつけたりと必死になって動き始めたのだが少女の不満そうな笑みは消えなかった。


翌日。
再び胸の上に乗せられた男達の前に、少女は手から何かを落とした。
ガラガラガラガラ…!
少女の手から零れ落ち山と積み上げられたのは、ショベルカーやブルドーザーなど土木作業などで用いられる重機だった。

「今日拾ってきたわ。これ使えばアンタ達みたいなチビも多少はマシになるでしょ。全員分は無いから残りはいつも通りやってね」

少女の声が轟き、男達は目の前の重機の山を見上げて唖然とした。

男たちの手ではこの積み上げられた重機を使えるように並べることは出来なかったのでそれは少女がやることとなった。
少女の手荒い扱いのせいでいくつかは壊れ使い物にならなかったがそれらは少女の手で捻り潰され捨てられた。
重機も少女にとっては数mmの小粒でしかない。男達がいくら集まっても動かせないであろうそれも、少女は指先でちょいと摘まんで持ち上げることができる。
力加減が難しいのか、並べてゆく過程でいくつかの重機はその指の間でぷちりと潰されてしまったが。
残りの動くものは少女の胸の上に並べられ男達はそれに乗り込んでゆく。
当然重機の免許や操縦の仕方がわかる者など、家が農家か農家を志す者くらいしかなく、そのほとんどの者が前進の仕方すらわからなかった。
お互いぶつかってしまう者、あり得ない方に走って行ってしまう者、重機に乗れなかった他の男達を轢いてしまいそうになる者もいた。
あるブルドーザーなどは少女の胸から転落してベッドに落ちて行ってしまった。
そんな有様でも、何十もの重機が走り回ればそれなりの刺激にはなるようで、少女は自分の胸の上を数mmほどの重機がいくつも走り回る様を笑顔で見下ろしていた。


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更に数週間後。
やはりベッドの上に横になる少女の胸の上では、以前よりも多くの重機が動き回っていた。
免許も技術も持っていなかった男達も数週間も経てば自在に重機を操れるようになっていた。
ショベルカーで乳房の表面をこすり、ブルドーザーで均すように走り回る。
十数の重機が集まって乳頭を攻めたりもしている。
小さいとは言え重機がキャタピラで走り回るその振動と刺激は、敏感な乳首を掻き毟るように愛撫した。
少女もそんな刺激になれたので、以前のように乳首を刺激されてそれを掻くような事は無くなった。
ただそれでもくすぐったいものはくすぐったいので今にも手を伸ばしたい衝動には駆られているのだが。

そしてそう言う事が続いていたある日、男達は感じていた事を少女に伝えた。
地面に起伏が大きくなってきている。
それはつまり、胸が大きくなってきているという事だ。
その報告を受けた少女は慌てて起き上がりメジャーで胸囲を図り始めた。胸の上に乗っていた男達と重機は全員が放り出されていた。
少女は目を見張った。確かに、大きくなっている。この方法は正しかったのだ。
少女は飛び跳ねながら喜んだ。


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それから数ヶ月後の事である。
男達は依然として少女の胸の上にいた。
ただし重機は使っていない。
もう役に立たないからだ。

男達は登山用具を身に着け肌色の山を登っていた。
頂上を目指しキツイ勾配を汗を流しながら。
数千人の男達が組みつくのは、今や山と化した少女の乳房である。

かつての平坦な様子からは想像がつかない。
男たちにとっても緩やかな起伏でしかなかった乳房は、今はもう見上げるほど巨大な山と化していた。
下乳方面から見上げた場合、その姿は圧巻である。
少女は横になっているのに乳房の間には谷間ができている。山と山の渓谷である。
もう少女の乳房は男達が素手で登ることは出来ないほど大きくなっていた。
少女の用意した本格的な登山用具を使用してようやく登る事の出来る大きさだ。
当初、その姿を見ただけで畏怖してしまった乳首は、今は見る事すら叶わない高みへと上って行ってしまっていた。
その乳首を拝むためには、この高い乳房山に登らなくてはならないのだ。
先に頂上の乳首へとたどり着いた者は後続の者の為にロープを垂らし上りやすくし、人数が集まれば乳首を攻めるのが最近のパターンとなっていた。
以前と同じく巨大な乳頭の山も、乳房山を登り終えた後に見ると感慨深くすらも感じる。
そしてそこから見える景色もかつてもは一変していた。
高い高い乳房山の頂上からは少女の巨大な体と広大はベッドと部屋を見渡すことができた。
隣には同じ大きさのもう一つの乳房山が見える。
以前は歩いて行けたとなりの乳房だが、今は一度下山してもう一度登山しなければ到達できない遠い場所となってしまった。
そしてもう一つ、乳房山の頂上からは横なっている少女の顔が見下ろせた。
少女も、以前のように顔を起こさなくても自分の乳房を見る事が出来るようになり、同時にそこにいる無数の小人の姿も見る事が出来た。
男達は乳房の上から少女の顔に振った。
少女もそんな男達に笑顔で手を振り返していた。

かつてはAカップだった少女の胸も、今やEカップにして80の後半と言う大台にまで上り詰めた。
男達を手に乗せ体を起こした少女は手のひらに乗る数千人の男達に向かって笑顔で語りかける。

「ありがと。これもアンタ達のおかげよ」

少女の笑顔は、それまで男達が少女の抱いていた畏怖の印象を粉々にしてしまうほど魅力的なものだった。
男達の中にも喜びが湧いてくる。
この巨人の少女の胸は自分達が育てたのだ。
今の手の高さからだと正面に来る、少女の小さな所作でぶるんと揺れ弾むそれは自分達で育て上げたのだ。
そんな経験、そうそう出来るものではない。

「なんか名残惜しくなっちゃったけど、これ以上アンタ達に迷惑かけられないものね。今まで本当にご苦労様」

言うと少女は顔を手に近づけていった。
男たちの視界を、少女の桜色の唇が埋め尽くす。
それは、男たちの乗る掌にそっと触れてきた。
数千人の男達が、一人の少女の唇を受け止めた。


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それからほどなくして男達は自分達の町へ戻された。
かつて町は少女の襲撃を受けて壊滅してしまったが、この数ヶ月で元の繁栄を取り戻していた。
しかし少女が男達を返すためにやってきたとき、またぐしゃぐしゃに踏みにじられてしまった。
男達を町に下した少女は彼らに手を振って地響きを起こしながら去っていった。


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その後暫く、少女は仲間からの質問攻めにあっていた。
仲間内でも最少サイズだった少女の胸が短期間で特盛になってしまった事に仲間達のショックは大きい。
最小サイズだったというのも、少女にその行為に走らせた要因のひとつだった。
馬鹿にされ続けてきた胸を、今は存分に張って仲間たちを見下している。
自分が胸を張ると、仲間の少女たちがあがめるかのように恭しく見つめてきた。

もちろん少女はその方法を教えるつもりはなかった。
これは自分とあの数千人の小人達との秘密なのだ。
もうこれ以上大きくする必要も無いが、今度また彼らを連れてきて胸の上で遊んでもらおうか。
胸の上で動き回る彼らを見るのが、少女の楽しみになっていたから。