※ ん~これはヤバイな…。流石にハルが酷い。ちょいと警告をば。






  グシャアアアアアアアアア!!!

幾つものビルがあっという間に崩れ落ち瓦礫の山へと変わる。
辛くもそれに巻き込まれるのを免れた人々が、ビルの合間の道を悲鳴を上げながら逃げていく。

それら瓦礫の中心に立つ巨人、それら破壊の張本人は思い切りため息をついた。

 シュウ 「なぁ…やっぱり凄く嫌なんだが……」

崩れ落ちたビルたちの中に立つ、足元を逃げる人々から見れば身長170mほどの巨人である俺はげんなりした顔で言う。
すると

 ハル 「そんなこと言わないでよー」

凄まじい音量のハルの声が、頭上から降ってきた。
俺のいる、俺の1/100都市がその振動でビリビリと震える。


見上げた先には巨大なハルの顔。
キラキラした目で、口元にはよだれを垂らしながら俺を見下ろしている。

人々の100倍の大きさであるはずの俺はハルに見下ろされている。
理由は単純。ハルの方が巨大だからである。
実際には、ハルが巨大なのではなく、俺や、俺のいる縮小都市が小さいのだ。
ハルの1/100サイズの俺。その俺の1/100サイズの都市。これらはハルの机の上に置かれ、ハルは席について、その様を見下ろしているに過ぎない。

何故こんなことになっているのかと言えば、ハルが、「俺が町を壊して暴れる様が見たい」などと抜かしたことが原因だ。
俺の抵抗もむなしく、俺は縮められ、そしてハルがアプリで呼び出した縮小都市の上に置かれた。
今の俺の周囲には俺の1/100サイズの都市が広がっている。建物だけではない、人も車も、すべてが本物だ。自分が巨人になったのだと錯覚するには十分すぎるほどに精巧だ。
しかし空は無く、見上げればそこには巨大な部屋の内装が広がっている。この都市も、都市にとって巨人の俺も、巨大な部屋の中の小さな小さな存在でしかないということの証明だった。

俺はもう一度ため息をついた。
そんな俺に、頭上からハルの吐息がダウンバースト的な勢いで吹き付けられた。

 ハル 「ハァ…豆粒みたいにちっちゃなお兄ちゃんがもっとちっちゃな町を壊してる…❤」

俺を見下ろして息を荒くするハル。
俺はもう一度、盛大に盛大にため息をついた。

 シュウ 「もういいだろ? 元の大きさに戻してくれ」
 ハル 「何言ってるの、まだ始まったばかりだよ。ほら、もっともっと暴れて」

ハルが更なる破壊を促してくる。
俺はうんざりしていた。ビルを壊して何が楽しいのか。逃げる人々を追いかけて何が楽しいのか。
自分の引き起こした大破壊とそれに巻き込まれた人々の悲鳴。背筋が凍りつく。体震える。怨嗟の声が耳に届くととてつもない罪悪感に押し潰されそうになる。

 ハル 「そんな気にしなくていいんだよ。誰もお兄ちゃんに文句なんて言えないんだから、好きに壊しちゃって。」

ニッコリと笑いながらハルが言う。
なんでこいつは普段からこんなことを平気な顔で出来るのか真面目に疑問だ。ドSってこういう人種なのか?

しかし俺の気持ちはやはりすすまない。
一歩進むたびに足がアスファルトを踏み砕いて地面に沈み込む感触が好きじゃない。歩いた振動で周囲の窓ガラスが砕け散り、ビルに亀裂が入り、崩れ落ちるのが好きじゃない。うっかりと車を踏み潰してしまったりしたら悲鳴を上げて後ずさってしまう。
普段のこいつはまるですべてから解放されたかのようにのびのびと町の上を歩き回っているが、俺にとっては周囲のすべてが割れ物注意の危険物で、それに囲まれているような心境だ。歩くのも嫌だ。動くのも嫌だ。
なんとか動いて逃げようにも今俺のいるハルの机の上はほぼ全面が縮小された街で埋め尽くされている。
この机の上にどこにも逃げ場は無かった。


そうやって俺が最初の位置からほとんど動かずにいると、ハルのつまらなそうな声が降ってきた。

 ハル 「もう、もっとちゃんと動いてよ」
 シュウ 「し、しかしだな…」
 ハル 「お兄ちゃんは気にしすぎ。ほんとヘタレなんだからー」

やれやれ、といった顔で言うハル。
すると、ハルの右手がこの机の上の縮小都市の上にぬぅっと現れた。
手は俺から少し離れた位置にある別のビル群の上にかざされた。
そして手は、俺が止める間もなくあっさりと都市の上に下ろされた。ズズウウン…! という重々しい音と手によって押しのけられた空気が突風となって周囲に広がった。
ハルが手を置いた。たったそれだけのことで、俺が暴れたことの数倍以上の大災害が起きてしまった。ビル群がまるまるその下敷きになって押し潰された。

ハルが手を持ち上げると、ビル群があった場所は何もない平らな土地になっていた。手の形にくぼんでいた。上空に上がっていくハルの手のひらは土と瓦礫で少し汚れていた。

 ハル 「ほーら、こんなに簡単なんだよ。たくさんのビルがちょっとしたことで潰れちゃうと楽しいでしょ? こんなことやっても誰にも文句言われないって気持ちいいよー」
 シュウ 「いやそもそもそうやって町を壊すこと事体が嫌だと…」
 ハル 「あーもう! メンドくさいなー!」

ハルが憤慨する。

 ハル 「わかった。じゃあわたしがお兄ちゃんに町を壊す楽しさを教えてあげる」
 シュウ 「……は?」

ハルがそう言うと、今したがビル群を押し潰した巨大な右手が俺に迫ってきた。
手は人差し指と親指の間に俺の体をつまみ上げるとひょいと上空に持ち去った。都市の中では身長170mの俺も、ハルにとっては身長1.7cmの豆粒だ。

俺を摘まんだ指は縮小都市の上を移動していき、やがて止まった。
指の間から見下ろしてみると、俺の感覚で10mほど下、丁度真下には、スタジアムのようなものがあった。
超満員といった感じ。中央のフィールドでは何かしらの競技が行われているようだ。俺は、そのスタジアムの真上に摘ままれていた。

 ハル 「それじゃあいっくよー」

笑いながらハルが言った。
行く。行くとはまさか…。

と思った瞬間に、俺を摘まんでいたハルの巨大な指がパッと離された。
俺の体は支えを失い真下に落下していく。スタジアムのある真下に。

  ズッドオオオオオオオオオオオオオン!!

息を呑む間も無いような短い落下のあと、俺の体はスタジアムの上に落下した。
都市にとっては170mもある巨大な俺の体が、上空1000mほどの高さから落下してきたのだ。
その衝撃は凄まじい。スタジアムは粉々に砕け散り、そこにいた人々はみなゴミのように吹っ飛んでいた。

砂煙が立ち込める。
俺は打ち付けた背中の痛みよりも、俺が落下したせいで消し飛んでしまった人々のことで頭が呆然としていた。
パラパラと、舞い上がった瓦礫が落下して降り注いでくる。
粉々になったスタジアムのあった場所で大の字になったまま、俺は動けなかった。


そんな俺を、巨大なハルの顔が見下ろしてきた。

 ハル 「ね、どうだった?」

ん? といった感じのハルの顔。
微塵も、罪悪感を感じさせない。

 シュウ 「……お、お前…! なんてことを!」
 ハル 「あれー? まだダメかー。じゃあ次はぁ」

言いながら横たわる俺の体をつまみ上げるとポイと放り投げた。
軽く放物線を描きながら飛んで行った俺の体は、その先にあったビル群に突っ込む。

  ドガアアアアアアアアアアアアアアン!!

俺の体は、ビル群のビルをまるでボウリングのピンのようになぎ倒し、ビル群を壊滅させた。
大量の土煙が舞い上がる。

 ハル 「あはっ。ストラーイク」

ハルの楽し気な声が、町を揺るがした。
ガラガラと、瓦礫を押しのけながら立ち上がる俺。

 シュウ 「……ハルッ! お前っ!!」

俺は怒気をあらわにハルを見上げた。

 ハル 「ん? なぁに?」

クスクスと笑うハルが見下ろしてきていた。
左手で頬杖を突き、右手を俺の方に伸ばしながら。

俺の怒気は一瞬でしぼんでしまう。
見上げるハルの巨大さ。リラックスしているかにも見える仕草と引き起こしている大災害のギャップ。
ハルは縮小都市の人々の存在を歯牙にもかけていない。しかしそれは、俺の存在も同じだった。
まるで虫でも扱うかのように、俺の体を容易く弄ぶ。
ハルにとっての俺という存在のあまりの小ささと意味のなさに、心の中で何かが折れた気がした。
周囲が暗くなる。再び巨大な指が俺の体を持ち上げ空に連れ去った。


  *


それからもハルは俺を使って縮小都市を破壊し続けた。
俺に縮小都市を破壊する楽しさを教える、という当初の目的もどこへいったか。
今は俺を使って都市を破壊することを楽しんでいた。


先と同じように俺の体をビルに向かって放り投げビルを粉砕しようとした。
的を外れればつまみ上げられ、もう一度そのビルめがけて放り投げられる。
それをビルに命中するまで繰り返された。
結果はビルに命中したときの破壊よりも、はずれたときに飛んで行った俺の体が落下して転がった時の被害の方がはるかに甚大であった。


俺の両手を指先に摘まみ、俺の体をぶらんとぶら下げる。
その状態の俺を都市にこするようにしながら引きずった。
俺の体がハルの指の動きに従ってズリズリと地面にこすりつけられる。引きずられる俺の体に触れてビルや家などが次々と粉砕されすり潰される。俺の体が通ったあとは一本のスジができていた。


町の上に立たせた俺にハルがビルをぶつけてきた。
俺とハルの間にあるビル群に手を寄せると、そのビル群の端のビルから次々とデコピンで弾いてきた。
当然、ビルなど自分と同じくらいの大きさの巨大な爪に激突されて無事でいられるはずもなく、ビルはデコピンされた瞬間に粉々に砕け、その破片がショットガンのように俺にぶつかってくる。
ボシュ! ボシュ! ボシュ! ボシュ! 都市にとって1万倍サイズのハルの手はかなりのペースでビルをはじいて飛ばしてくる。ビル群を成すビルが瞬く間に減っていく。
俺に向かってビルをぶつけてくるという行為は、そのビル群のビルがなくなるまで続けられた。


俺は都市の上を走り回っていた。
俺の意思で、しかし俺の意思でなく。
それは走る俺の背後から、ハルの巨大な指が追いかけてくるからだ。
逃げる俺の背後を、巨大な人差し指が指先を地面にこすりながら追いかけてくる。もしも追いつかれれば、俺の体はあの指先に突き飛ばされてしまう。それはバイクに衝突されるようなものだろう。そうでなく、もし指先と地面の間に挟まれれば、俺の体などあっという間に挽き肉になってしまう。
恐怖だ。恐怖から走っていた。必死に逃げていた。住宅街を突っ切ったり、ビルを撥ね退けたり、車を踏み潰したりすることを気にする余裕など、欠片ももたせてはくれなかった。

  *

都市の上でハルの戯れから逃げ回る俺。
ハルが原因とは言え、俺は都市を大きく破壊してしまっている。
吐きそうだった。腹の中がぐるぐると渦を巻く。
膝に両手をつき、肩を上下させ息を切らす俺。

 ハル 「ふふ、結構町も壊れたね。でもほとんど私が壊したようなものだし、もっとお兄ちゃんには自分の意思で暴れてもらいたいんだけどなー」

半ば廃墟と化した都市の上にいる俺を見下ろしながらハルが思案巡らせる。
そして

 ハル 「そうだ、前にアスカさんにもらったアプリが…」

言ってハルはスマホを手に取る。

 ハル 「えーと……あった、これこれ。これをこうして…」

ポチポチとスマホを操作するハル。
その様を、縮小都市の上から見上げる俺。
今度はいったい何をするつもりなんだ…。と、思っていると、

  クイ

 シュウ 「!?」

俺の右手が上がった。勝手にだ。
その様子を見たハルが「ニパッ」と笑う。

 ハル 「あはっ、すごい、本当に思い通りになるんだ」
 シュウ 「ど、どういうことだ!」
 ハル 「アスカさんの作ったお兄ちゃんコントローラー。これでお兄ちゃんを自由にコントロールできるの」

ハルが巨大なスマホをさし出してきて、俺にその画面を見せる。
そこには確かに『シュウ・コントローラー』の文字が。

 シュウ 「じ、自由に…?」
 ハル 「うん。例えばこうするとー…」

ハルがスマホに触れた。
すると俺の体が突然歩き出した。俺の意思ではなく、勝手に。

 シュウ 「うぉ! な、なんだこれ!」

俺は混乱していた。自分の体が自分の意思とは関係なく動く。
止めようと思っても止まらない。動かそうと思っても動かせない。自由に動かせるのはせいぜい首から上だけだ。

などと思っていると勝手に歩く俺の進行方向の先には住宅地があった。
このまま行くと確実に蹂躙してしまう。

 シュウ 「と、止まれ! 止まれ!!」

俺は体を止めようとした。
しかし首から下は俺の言うことを全く聞こうとせず、俺はそのまま住宅街に足を踏み入れた。

  ズシン! ズシン!

俺の足はそこに並ぶ家々を踏み潰していく。
家からは慌てて人が出てきて、俺の足はそんな人々をかすめていく。
狂気だ。今まさに人を踏み潰してしまいそうだ。

 シュウ 「や、やめてくれハル!」

俺は叫んでいた。俺の体を操る俺でない存在に。
しかしそんなハルは俺を見下ろしてニヤニヤ笑うばかりだ。

 ハル 「んー…どうしよっかなー」

などと言いながらも俺の体は止まるそぶりを見せない。
そのまま、住宅街を横断してしまった。

俺の体が振り返らされる。
目に飛び込んできたのは、今しがた俺が横断した住宅街だ。俺が歩いてきた場所一直線に、家々が滅茶苦茶に踏み潰されていた。

 シュウ 「う…うわ……」

気持ちが悪い。
俺は泣きだしてしまいそうだった。

が、そんな俺の気持ちとは裏腹に、俺の体は突然走り出した。
足元の家々を踏み潰し、人々を宙に巻き上げながら走る俺。
そして前方のビル群に飛び込んでいった。

  ドゴオオオオオオオオオオオオオン!

ビルは俺の体当たりを受け一瞬で粉々になった。
更に俺は別のビルを殴り壊し、また別のビルを蹴り壊す。
ビル群の中で暴れる俺はあっという間にそのビル群を壊滅させてしまった。

 ハル 「あはは! まるでゲームみたいだね」

ビル群の中で暴れる俺の背後でハルが笑う。
その様は、まさに使い魔に町を襲わせる魔王のようだった。

 ハル 「でも本当に思い通りに動かせるんだねー。……じゃあ、こうしたら……」

言いながらハルがスマホをいじる。
すると突然、俺は服を脱ぎ始めた。

 シュウ 「な…っ!」

目を見開く俺。しかし体はまったく躊躇することなく服を脱ぎ捨てていく。
あっという間に俺は全裸になった。

 シュウ 「あ……ぁ………」

町の真ん中でいきなり全裸にされる。思考が停止してしまう。

 ハル 「うわホントに脱いじゃった。じゃあさらにこうして~」

ハルがさらにスマホをいじると、俺の股間がむくむくとそそり立っていった。

 シュウ 「ッ!?!??」
 ハル 「あはっ! お兄ちゃんおちんちん大きくしちゃってるよ!」

ハルの笑い声が空気をビリビリと揺るがした。

俺はもう何も考えられなかった。
都市の真ん中で巨大化し、全裸になり、ちんぽを起たせている。
あり得ないの連続。
非常識の連続。
夢なんじゃないかとさえ思う。
だが空気を震わすこの声が俺の体も震わせて、これが現実であることをつきつけてくる。

 ハル 「じゃあせっかくおちんちんも起ったことだし、ちょっとオナニーでもしちゃおっか」

ハルが言うと俺の体は周囲のまだ無事だった高層ビルの一つに近づいていった。
ガラス張りの壁面に、全裸の俺の体が映る。ガチガチなちんぽも映る。
そしてそのガラスの向こうに見えるビル内部には無数の人がいた。
幾つもの階層。至る所に人の姿がある。みな狂ったように逃げ惑う。当然だ。全裸の巨大男が自分のいるビルの横に立ったのだから。

などと、俺が最早活動を停止しつつある脳みそで考えていると、俺の右手は俺のちんぽを握り、そしてシコシコとこすり始めた。
ビルに向かってちんぽをこすり始める俺。ピストンを始める俺。ガラスの向こうの人々の動きが、より一層慌ただしくなるのがわかった。
ちんぽをこすることの快感など微塵も感じられない。
俺の表情は呆然としたまま、俺の体は主の俺の意思を無視して勝手に頂点を向かえ、射精した。

  どぴゅっ

俺のちんぽから精液が飛び出す。快感など全くない射精だ。迸った精液はそのまま正面のビルの壁面にたたきつけられペチャッという音を立てた。
そのまま手は動き続け、ちんぽの先端からは次々と精液が飛び出しビルの壁面に付着する。
壁面には、大量の白濁色の粘液がくっついていた。どろり、ゆっくりと下に向かって垂れ下がっていく。
いくつかの場所ではたたきつけられた精液のせいで壁面にひびが入っていた。

 ハル 「うわぁいっぱいでたねー。次はこっちのビルにー」

ハルの声が轟くと同時、俺の体は別のビルの方を向くと再びせんずりを開始した。
たった今一度出したばかりなのにちんぽは漲るばかりだ。それも操作されているのだろう。
そして再び、俺はビルに向かって射精した。

その後もまた別のビルに向かってオナニーさせられた。
計五つのビルが、その壁面に大量の精液をヌったくられていた。


五度の射精を得ても俺のちんぽはギンギンだった。
体には疲労感すらない。いやむしろ感覚そのものがないようだ。もう体は俺のではない。俺のものではないのだ。
まるでアルコールに苛まれているように頭の中にはモヤがかかっていた。夢か現かも判然としない呆けた脳みそ。
その脳みその片隅で、一握り残っている意識だけが、自分が五つのビルを相手にオナニーしたことを理解していた。

 ハル 「ふふ、お兄ちゃんの精液でビルがコーティングされちゃったね。中にいる人はどんな気分だったのかなー、自分のいるビルに向かって巨人がオナニーするっていうのは。大量の精液が勢いよく飛んでくるっていうのは」

ハルが何を言っているのかすら、もう理解できなかった。

 ハル 「そうだ、ついでにそんなビルたちを犯してあげてよ。外だけじゃなくて、中にもたっぷり注いであげて」

ハルの言葉に、俺の体は勝手に動き出していた。
そして手近なビルに寄ると、大勢の人が悲鳴を上げながら逃げて行っているのが見えるその壁面のガラスに向かって、ちんぽを突き刺した。
ズドン! 壁面のガラスを軽々と突き破った俺のちんぽはあっさりと根元まで刺さってしまう。ビルの壁や床程度ではちんぽの障害にすらならなかった。
そのままビルに向かって腰を振り始める俺の体。ズドン、ズドン、と壁面に腰をたたきつける。
一瞬で俺が腰をたたきつけている面のガラスは全滅した。粉々になったガラスがキラキラと輝きながら俺の体に降り注ぎ落ちていく。
腰をたたきつけるたびにビル全体が大きく揺れる。中で足を取られ、歩くこともできないような揺れに見舞われている。
しかし俺は、そんな逃げられなくなって崩れ始めているビルの中で悲鳴を上げる声が無数に聞こえるビルに向かって腰を振り続け、やがて射精した。

  どぴゅう

ちんぽから精液が飛び出ていく感触だけがした。
その精液はビル内部の壁を突き破り、反対側のガラスを突き破って外に飛び出ていった。

射精を果たした俺がビルから離れる。
するとそのビルはガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
そんなビルに未練など無いように動き出した俺の体はすでに次のビルに向かって歩き始めていた。


  *


俺は瓦礫の上に立ち尽くしていた。
周囲にあったビルはすべて崩れ落ち、そのいずれの瓦礫にも大量の精液が混じっている。
俺がやったのだ。ビルは俺とのセックスに耐えきれずに崩れ落ちてしまった。全部俺がやったのだ。


 ハル 「ふふー。どう、お兄ちゃん? 気持ちよかった?」

そうやって立ち尽くす俺にハルが声をかけてきた。
にっこりと笑うその笑顔は、例えようにとっては太陽のようだ。

しかしその太陽の炎は、地獄のそれのようにすべてを焼き尽くすことを俺はしっている。

俺はゆっくりとハルの顔を見上げた。

 ハル 「ん? どうしたの? なーんか反抗的な目だよ?」

見上げる俺を見下ろしてクスクスと笑うハル。

不意にハルは顔をこの机の上のミニチュア都市に寄せてきた。
俺から少し離れた場所。俺の位置よりも少し右の方。
顔を近づけていったハルは俺の方を向いた。左顔面が上に、右顔面が下に来るように。

そうやってハルはそのまま顔をミニチュア都市の上におろした。ビル群のひとつがハルの右顔面の下敷きになって完全に押し潰された。ほっぺの下でいくつものビルがぺちゃんこになった。
俺から見ると都市の上にハルの超巨大な頭が横たわったようなものだ。高層ビルですらハルの横を向いた顔の口端にも届かない。どころか、上にある左目の高さは雲にも匹敵する高さだった。
こんなにも巨大な顔がビル群を押し潰して横たわり、町を押し潰して横たわり、横に立つ小さな俺を見下ろしてくる。

 ハル 「あははは、町に顔をつけてもまだお兄ちゃんがちっちゃく見えるよ。そんな虫けらみたいに小さいくせに、わたしに逆らうの?」

ハルの嘲笑が、今は至近距離から放たれた。
都市全体が今まで以上に激しく揺さぶられる。
むしろ顔を密着させている分、その威力は桁違いだった。特にハルの巨大な口付近のビルはその声の衝撃波で吹っ飛ばされるように崩れ落ち、家々は塵のように粉々にされ、人々は一瞬で炸裂して消し飛んだ。


真横になって横たわってなお巨大な顔が嘲りながら見下ろしてくる。
その巨大な顔に向かって俺は、アプリの効果が切れ、自分の体のコントロールを取り戻していた俺は、一歩前進した。

  ズシン

足の下ですでに瓦礫と化しているビルが踏み潰される。

  ズシン

また一歩踏み出す。
横転して転がっていたバスが踏み潰された。

一歩一歩、壊滅した都市を踏みしめながらハルの顔に向かって前進していく。



そんな小さな小さな兄の 自分に向かってゆっくりと歩いてくる姿を、大きな目をギョロリと動かして見つめるハルは、思う。


 ハル (……………まずい。 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいやりすぎた! お兄ちゃん怒ってる!! 完全に怒ってるッ!!!)


都市に押し付けられている超巨大な顔がガタガタと震え始める。((((;゚Д゚)))


 ハル (どうしようどうしようどうしようどうしよう!! これ謝っても絶対許してもらえないよ! げんこつなんかじゃすまないよ!! だって本気で怒ってるもん!!!)


ハルの顔から血の気が引いていく。
冷や汗が滝のように流れ落ちる。
ついでにハルの顔の震えが大地震となって都市全体を揺るがしていた。

そんな揺れる都市の瓦礫の上をズシンズシンと歩み寄ってくる兄は、もう顔のすぐそばまで来ている。


 ハル (えーとえーとえーとえーとえーとえーとえーとえーとえーと~~~~~~~……………………………………………………………………………………………………えいっ!!)


ハルは顔を動かした。


  パクッ


そして右頬の近くにいたシュウを口の中に含む。
口の中に入れたシュウを舌で全力で転がした。頬裏に押し付け上あごに押し付け奥歯で甘噛みし唾液の海に沈めた。
最初は滅茶苦茶に暴れていたシュウの感触も、舌の上で転がすうちに小さくなっていき、やがてはおとなしくなった。

シュウを口から出してみると、その小さな体は大きな手のひらの上にコロンと転がった。

 ハル 「……ごめんなさい、お兄ちゃん…」

手のひらの上の、唾液の海に浮かぶ気絶したシュウに謝るハル。

 ハル 「はぁ…なんとか気を失ってくれたけど、これお兄ちゃんが目を覚ましたら絶対怒られるよね………。……あ、そうだ、さっきのアプリ! あれにお兄ちゃんの記憶を消してくれる機能とか無いかな!?」

ハルは手に乗せたシュウを潰さぬよう気を付けながらスマホを操作して『シュウ・コントローラー』の機能を調べ始めた。


   *


その後、

ハルは目を覚ましたシュウにこっぴどく叱られた。
床に立つシュウの前に土下座する巨大ハル。

結局、流石のアスカのアプリにも記憶を消す機能はついて無かったのだった。