※破壊系。



  「 巨大娘専用高等学校 」



最近若い娘の巨大化に歯止めがかからなくなりつつある。
すでにその大きさは1000倍にも達し、誰も止める事が出来ないのだ。
寝ぼけた女子高生が通学路を間違え、住宅街の上を通ってしまったこともあった。
小学生の女の子が転んで尻餅を着いたとき、学校をその下敷きにしてしまったこともあった。
最早狭い日本では巨大な女の子たちを格納しきれないのだ。

だから日本は海外に巨大娘専用の学校を作った。


  *


とある国に建てられた巨大娘専用高等学校。
必然的に女子高である。
巨大娘用でありながらしっかりとした造りで、校舎もグラウンドも体育館もある。
校舎は4階建てで学年ごとにクラスが5つはあり、それぞれに女子が30人以上は在籍している。
教師も含めた全員が1000倍の大きさだ。

が、これらの学校は当国に無断で作られたものだ。
反発は凄まじかった。
だから日本は同じ町並みを用意した。
学校の、その敷地の中に。
グラウンド。体育館の床。校舎教室の床などに。
階層の多い校舎などは、従来あった国の土地よりも多くの範囲を確保できた。
多くの住民が移り住んだ。

彼らは何を失念していたのだろう、そこは、1000倍の大きさの少女たちが闊歩する空間であるというのに。


  *


「おはよー」
「あ、おはよう」

少女たちが登校してくる。
あの国の街並みが広がるグラウンドを横切り校舎に向かう。
少女たちは足元を気にしていない。何を踏んでいようと構わなかった。

足元にある街並み。だが、それはもう無いに等しい。
さんざん踏みにじられたそれは最早荒野以外の何物でもない。家一軒、人ひとり残っていなかった。
街が原型を保っていられたのは学校開設の1日目だけだ。
たった一日で学校中の街が踏み尽くされた。
巨大なローファー。巨大な上履き。巨大な靴下。巨大な素足。
いたるところあらゆる場所で、1000倍の女子の足が街を踏み潰した。
彼らの家など巨大娘の1cmにも満たない。足の指の太さも無いような家をローファーや上履きで踏み潰したところで感じられるだろうか。
彼らの家は紙よりも薄く木の葉よりも弱いのだ。吹けば飛ぶような強度の家を踏んだところで気づけるものか。
少女たちが友人とおしゃべりをしながら歩く廊下のその足元では無数の家々が踏み潰され、彼女たちから逃げようとする車や人々も同じ運命を辿った。

グラウンドはサッカーや陸上競技をする少女たちによって蹂躙され尽くした。
使い込まれた運動靴がそこにあった街を踏みつける。
この時競技に集中している女子は足元の事などまるで気にしていない。もともと気にしている女子の方が少ないが。
体操服ブルマで走っている少女がいる。白い体操服の内側で大きな胸がばいんばいん暴れているのが体操服越しでも分かった。
そんな少女が足を絡ませ転んでしまった。前方に向かって投げ出される少女の体。飛ぶように宙に浮いた。
その直下には街がある。街の上空を少女の体が覆い、そして落下してきた。
あの暴れていた胸が、直下で見上げる人々の頭上から落下してくる。

  ずざー

少女は地面の上を滑った。
あの胸は直下の街と人々を押し潰したあと前方に向かって勢いよくすべり、そこにあった街並みと人々を呑み込み磨り潰した。
少女の胸だけで住宅街が一つ消えたのだ。
その後立ち上がった少女は自分の胸元をパタパタとはたいて街の瓦礫と人々を払落し再び走り始めた。

体育館は少女たちだけではない。彼女たちが扱うボールなどからも身を守らなくてはならない。
バスケットボールなどボールが意図的に床に付けられる競技になると逃げるのは非常に難しい。
バレーボールは、少女たちのスマッシュの威力次第で、それが床に直撃したときひとつの街が吹っ飛ぶ。
床の街が吹っ飛ぶという事はボールが相手コートの床に着いたという事で、瓦礫に変えられ、黒煙を巻き上げるぼろぼろの街の背景で少女たちは手を取り合って喜んだ。

更衣室の中にも街はある。
体操服と制服などを着替える少女などが利用する部屋であるが、その床にもちゃんと街はあり家も車も人もいる。
当然、男もいるが、少女たちはまるで気にせず着替えをする。
男たちも、若い少女の着替えを見て喜ぶことは無かった。そんな事よりも命の方が大切だからだ。

白い靴下をはいた巨大な足が迫ってくる。
底辺は足の形をあらわすように薄汚れている。
生活感というか生々しさが漂う。そんな足が、足元の街を容赦なく踏み付ける。
石造りの家も、鋼鉄製の車も、白い布のソックスの前には無意味だった。
靴下は足元の街をズンと踏みつぶしまた持ち上がった。
別に街を踏もうと思っているわけではなく、ただ足を下したらそこに街があったという程度の感覚だ。
踏もうが踏むまいがどうでもよかった。
人々にとっては少女の足は白い丘だ。ソックスに包まれた指先でさえ見上げる大きさなのだ。
そしてその足が地面をすべると、住宅街などたまらず磨り潰され瓦礫に変えられてしまう。
人々は、ある者は慈悲を乞い、ある者は呪詛の念を込めて少女たちを見上げていた。
だが少女たちは、たった今自分が踏み潰した街を見てもいなかった。
まるで気にしていない。
自分たちを見上げる人々など眼中に無かった。

「お、着替えてるー?」

そこに別の少女がやってくる。
シャワーでも浴びた後なのか、髪が濡れタオルを肩にかけた体操服ブルマ。
ただし上履きもはいていない素足で。
その少女は更衣室の中にいる別の少女たちに話しかけながら歩いてくるが、自分の素足が街や人々を踏み潰している事に全く無関心だった。
一歩ごとに何百という人々の命を奪っている事に気づいてもいないのか。
足元の自分たちの事など見もせず、前の向いて笑いながら歩いてくる少女の巨大な素足が人々の上に掲げられる。
巨大な足の裏には家の瓦礫などがへばりついていて、少女が足を上げるとそれらがパラパラと落ちるのだ。
車などはぺちゃんこにされ、足の裏にぺったりと張り付いている。
少女たちの体重は約50ギガトン   (50000000000kg(500億kg))である。
普通自動車の積載量がおよそ3トン。少女を乗せるにはあと49999997000kg(499億9999万7千kg)ほど積載量が足りない。
超過した約500億kgの分の圧力で上から踏みつけられれば、鉄製の車など足の裏にへばりつく模様のようにされてしまう。
中に人が乗っていようとそれはかわらない。
どんな大型車でも結果は同じだった。
素足は、それら車や家をシャワーを浴びたばかりでしっとりとした足の裏に張り付かせながら人々に襲いかかった。

なんとトイレにも街がある。
だが少女たちは気にしない。
洋式和式を問わず設置されているが、和式は人々にとって地獄の釜だった。
その白く磨き上げられた便器は深さ100m以上あり、突起も何もない壁面は落ちれば二度と上がっては来れない。
そこに少女がやってきて、大洪水のような勢いで用を足せば、その黄金色の鉄砲水は瞬く間に彼らを溺れさせるだろう。
自分のおしっこが何百人と言う人々を翻弄している事など知りもせず、用を足し終えた少女は自分の小水を人々ごと流してしまう。
これで便器の中には人は一人も残らない。

職員室の床にも街はある。
所属する教職員もみな1000倍の巨体で、全員が女性である。
机の下の空間にも街がある。そこは机のせいで薄暗く光があまりあたらない。
そこにぬっとあらわれたのは白いサンダルを履く黒いストッキングをはいた足だった。
サンダルは底が厚く、20mほどの高さがある。
そんなサンダルで踏まれては家々など気づいてももらえない。
先生が机に着いたのだ。
二つの足が机の下の街の上に降ろされた。
それだけで街は壊滅してしまった。
ふと、椅子が後ろに引かれ、その先生が机の下を覗き込んできた。

「あらあら、ごめんなさいね、みなさん」

苦笑しながら、足元の人々に謝る。
先生は大人。足元の人々の事も承知しているのだ。
ただ、だからといって生徒たちの場合と比べて結果に違いがあるかと言えばそうではないが。
街を踏みしめる大人の女性の足。
動きひとつとっても、学生の少女たちとは違う。
優雅で、落ち着きがある。
逆に言えばそれは、人々をゆっくりと踏み潰すという事だが。
街の上に降ろされているサンダルをはいた足が、先生の無意識のうちに滑るように横に動かされていた。
動かされた巨大な足は家を次々と瓦礫に変えながら土砂の津波を作り出し、同時に人々も呑み込んで行った。
先生はと言えば、机の上で鼻歌交じりに仕事を片付けていた。
そんな先生の足元では、街が一つ横に押しのけられているのだ。

と、校内にチャイムが鳴り響いた。

「ん、次の教室に行かなくちゃ」

先生は教材を持って立ち上がり、るんるんと楽しそうに趣味の鼻歌を歌いながら歩き出した。
しかしその足の下には確実にいくつもの街を踏み潰していた。


  *


この学校ではそれが日常だった。
在学するすべての女子と先生が、毎日必ずどこかで街を踏みしめる。
人々は常に恐怖にさらされているのだ。

しかし最近この学校も手狭になりつつあり、政府はまた別の国に新しい巨大娘専用学校の建造を計画している。
中でも特に力を入れているのが小学校だ。
幼い少女たちをのびのびと教育できる環境が必要だ。
グラウンドも広く、遊具なども欲しい。
1000倍の小学生たちが有意義に過ごせる学び舎が絶対に必要だった。
笑顔で駆け回る数十人の巨大小学生たちの足元では街がいくつも蹂躙される。
子どもたちがあどけない笑みを浮かべながら駆け回る平和な光景と、足元でぐちゃぐちゃに踏み潰される街の地獄のような光景はコインの裏表のように切り離せない限りなく等しいものだ。

例え建造を予定する外国がそれに反発しようとも、教育委員会の女性を数人派遣すれば問題ない。
にっこりと美しい笑顔で外国の人々を説得するも、その足元では巨大な足が街を踏みしめ瓦礫に変え黒煙を巻き上げさせる。
仮に軍隊が担ぎ出されようとも彼女たちならば大丈夫だろう。
戦車など彼女たちから見れば約1cmほどの豆粒なのだ。
ストッキングをはいた足で履く靴をちょっと持ち上げてその上に降ろすだけでぷちりと潰せてしまう。
戦闘機も、目の前を飛ぶハエを落とすように手で払い落とすこともできるし、手のひらの間でぴしゃりと潰してしまう事もできる。
すべてを、笑顔のままでやってのける。
そして軍隊を全滅させた後で、ふたたびにっこりと笑いながら説得をするのだ。
これで落とせない国は無い。

世界各地に次々と巨大娘専用学校が建造されていった。